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新公爵
PHASE-926【色気のある店だって必要】
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そして大人達がもっとも楽しむのは、ジュースではなくビール。
雑味がどうとかは俺にはよく分からんが、一度グラスに口が触れたが最後。
一気に飲み干すのどごしの快感を知ってしまえば後は酔いつぶれるだけだな。
「ああ。やっぱり最高だな」
――……。
「いや……ゲッコーさんがゴクゴク飲まないでください。後でちゃんと仕事があるんですから」
「俺は指示するだけだからな」
だからってここぞとばかりに飲むなよ。
「何とも豪快ですね。見ていてこちらまで気持ちよくなってきます」
「そ、そうかね。ではもう一杯いただいても」
「もちろんです。おかわりをお願い」
コトネさんが言えば別の美人サキュバスメイドさんが注ぐ。
コトネさんともう一人。両手に花でご満悦の貴族さん。当然ながら飲むペースも速くなるというもの。
自分たちもメイド達に囲まれたいと思うのは男の性だろう。しかも見栄を張りたい貴族だからこそ、囲まれたいという欲望は人並み以上。
我も我もと手に持つグラスをジュースから酒に変えていく。
――サキュバスメイドさん達にチヤホヤされる野郎たちの姿は、キャバクラ通いの重役たちそのものだな。
もちろん未成年なので行ったことはないけども、こういった場所なんだろう。
そして俺が求めているおピンク街は、ああやって酒を楽しむ野郎たちの楽園を作るというもの。
最近はバタバタとしてその進捗はまったく進んでいないがいずれは――、
「ああやって男達に傅くお店を作りたいのだな」
冷ややかな声が背後より届く……。
鋭利な切っ先が体に突き刺さる錯覚に陥ってしまう……。
でも俺だって負けてやらない。
「あのくらいならいいだろ。ああやって心と体の疲れをとるんだよ。美人に癒やされるか、ゴロ太みたいな可愛いのに癒やされるかの違いさ」
「――まあ、あれで済むのならな」
お久しぶりの無敵の風紀委員長様降臨だな。
当然ながらあれだけでは済まないのだろう? という含みが声音から伝わってくる……。
はたして正にその通り。
「あ、ああやって楽しむのさ……」
当然、正直には返せない。返せばしばかれるからな。
喉にへばりつく声をなんとか絞り出して返すが、その声で嘘だというのは丸わかりだよね……。
「公都ほどではありませんが、王都の人口が増えていることも事実。様々な職を増やすことも大事。どのような仕事を選択するかというのは個人の自由というもの。そこにベル殿の個人的な感情が入ることは許されません」
ここで先生が助け船。
これにはベルも言い返せない。私的な感情で人々の営みを縛るのは独裁でしかない。
酒を楽しむ場を提供するのはいい事だし、その後、情事に発展することになってもそれは個人間での問題。
そこをツッコむのはそれこそ無粋だと先生はどストレートに述べる。
こうなると乙女であるベルは頬を紅潮させてうつむくだけ。
美人より可愛さが優先される状態。
「行き過ぎた経営さえなければいいだけです。ねえ主」
「その通りですね」
「経営が行き過ぎなくても、個人間の行き過ぎで情事となれば性病の危険性もあります。医療機関の設立は重要ですね」
行き過ぎた経営でなければからのサラッと性病と言えるのは凄いよ。
嫌らしい意味ではなく、大事なことだからサラッと言えるんだろうけどさ。
でも流石にパワーワードすぎるね。性病。
ベルに続いて俺も顔が熱くなってくる……。
治療となれば、この世界だと回復魔法やポーションなどである程度の事は対応できる。
そういった人材やアイテムを戦場だけでなく、一般生活の中にもしっかりと浸透させることも重要。
各町村に一箇所は必ず病院を建てたいね。
特に魔王軍からの脅威にさらされた王都近辺ではレベルの高い医療施設も必要になってくる。
魔法にポーションなどを作る薬学に精通した者たちの育成もしないとね。
有りがたいのはこの世界では魔法やポーションで治療が出来るから、外科的な医術が必要ないぶん、薬学育成はそこまで難しくなさそうなところかな。
――……まさかおピンク街の事を考えていたら、医療設備を真剣に考えるという流れになるとはね……。
いい感じに先生に流されてるね――俺。
雑味がどうとかは俺にはよく分からんが、一度グラスに口が触れたが最後。
一気に飲み干すのどごしの快感を知ってしまえば後は酔いつぶれるだけだな。
「ああ。やっぱり最高だな」
――……。
「いや……ゲッコーさんがゴクゴク飲まないでください。後でちゃんと仕事があるんですから」
「俺は指示するだけだからな」
だからってここぞとばかりに飲むなよ。
「何とも豪快ですね。見ていてこちらまで気持ちよくなってきます」
「そ、そうかね。ではもう一杯いただいても」
「もちろんです。おかわりをお願い」
コトネさんが言えば別の美人サキュバスメイドさんが注ぐ。
コトネさんともう一人。両手に花でご満悦の貴族さん。当然ながら飲むペースも速くなるというもの。
自分たちもメイド達に囲まれたいと思うのは男の性だろう。しかも見栄を張りたい貴族だからこそ、囲まれたいという欲望は人並み以上。
我も我もと手に持つグラスをジュースから酒に変えていく。
――サキュバスメイドさん達にチヤホヤされる野郎たちの姿は、キャバクラ通いの重役たちそのものだな。
もちろん未成年なので行ったことはないけども、こういった場所なんだろう。
そして俺が求めているおピンク街は、ああやって酒を楽しむ野郎たちの楽園を作るというもの。
最近はバタバタとしてその進捗はまったく進んでいないがいずれは――、
「ああやって男達に傅くお店を作りたいのだな」
冷ややかな声が背後より届く……。
鋭利な切っ先が体に突き刺さる錯覚に陥ってしまう……。
でも俺だって負けてやらない。
「あのくらいならいいだろ。ああやって心と体の疲れをとるんだよ。美人に癒やされるか、ゴロ太みたいな可愛いのに癒やされるかの違いさ」
「――まあ、あれで済むのならな」
お久しぶりの無敵の風紀委員長様降臨だな。
当然ながらあれだけでは済まないのだろう? という含みが声音から伝わってくる……。
はたして正にその通り。
「あ、ああやって楽しむのさ……」
当然、正直には返せない。返せばしばかれるからな。
喉にへばりつく声をなんとか絞り出して返すが、その声で嘘だというのは丸わかりだよね……。
「公都ほどではありませんが、王都の人口が増えていることも事実。様々な職を増やすことも大事。どのような仕事を選択するかというのは個人の自由というもの。そこにベル殿の個人的な感情が入ることは許されません」
ここで先生が助け船。
これにはベルも言い返せない。私的な感情で人々の営みを縛るのは独裁でしかない。
酒を楽しむ場を提供するのはいい事だし、その後、情事に発展することになってもそれは個人間での問題。
そこをツッコむのはそれこそ無粋だと先生はどストレートに述べる。
こうなると乙女であるベルは頬を紅潮させてうつむくだけ。
美人より可愛さが優先される状態。
「行き過ぎた経営さえなければいいだけです。ねえ主」
「その通りですね」
「経営が行き過ぎなくても、個人間の行き過ぎで情事となれば性病の危険性もあります。医療機関の設立は重要ですね」
行き過ぎた経営でなければからのサラッと性病と言えるのは凄いよ。
嫌らしい意味ではなく、大事なことだからサラッと言えるんだろうけどさ。
でも流石にパワーワードすぎるね。性病。
ベルに続いて俺も顔が熱くなってくる……。
治療となれば、この世界だと回復魔法やポーションなどである程度の事は対応できる。
そういった人材やアイテムを戦場だけでなく、一般生活の中にもしっかりと浸透させることも重要。
各町村に一箇所は必ず病院を建てたいね。
特に魔王軍からの脅威にさらされた王都近辺ではレベルの高い医療施設も必要になってくる。
魔法にポーションなどを作る薬学に精通した者たちの育成もしないとね。
有りがたいのはこの世界では魔法やポーションで治療が出来るから、外科的な医術が必要ないぶん、薬学育成はそこまで難しくなさそうなところかな。
――……まさかおピンク街の事を考えていたら、医療設備を真剣に考えるという流れになるとはね……。
いい感じに先生に流されてるね――俺。
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