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新公爵
PHASE-923【移動は早いよ】
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「おお! 以前にも目にしたが凄いな」
「左様でございますな」
王様とバリタン伯爵がチヌークの編隊が飛び立つ姿に息を呑む。
侯爵は自身がワイバーンによる竜騎兵を指揮しているだけあって、空に対しては抵抗はないのか、二人の側でただ編隊飛行を眺めていた。
「……王よ。我々もアレに乗るのですね」
「その通りだ」
「いい歳をして情けないですが、緊張しますな」
「私もだバリタン」
「私もですよ陛下」
爺様も参加して三人して苦笑い。
胆力のある面子だけども、やはり初めての経験となると緊張してしまうようだ。
「ではこちらに」
ここで別のS級さんが俺達を誘導。
いよいよかと王侯貴族の面々は肩に力が入る。
「じゃあ行きますかね。留守を頼むよ」
「任せてください」
胸を拳で叩いて呼応するカイル。
その後ろにはマイヤとギムロン。
これに加えてマンザートと一部のサキュバスメイドさん達が屋敷にて留守番をしてくれるので、何か問題があってもこの面子を残しておけば対応できる。
屋敷を任せられる人材がいるので安心してチヌークへと乗り込む俺たち。
腰が引けていた人間世界のトップと爺様の背中を俺やコクリコが押せば、意を決したかのように足を進めてくれる。
俺もハインドには乗った経験はあるけど、チヌークは初めてだな。
大きいし、立派なタンデムローターには安心感もあるから緊張はない。
「やはり鉄の竜が大口を開いているように見えてしまいますな……」
バリタン伯爵だけ未だに足取りが重い様子。
「違いますよ伯爵。開いてるのは後部、つまり俺達は口ではなくケツの穴に入るんですよ」
リラックスさせようと冗談を一つ言えば、
「下品だぞ」
「いでっ!」
乙女であるベルから乙女らしからぬ拳骨を頂く。
ただケツの穴発言に対しては頬を赤らめるというウブさがあり、その表情を見る事が出来たので痛みを伴ったがオッケー。
「さあ伯爵」
「は、はい」
チヌークに乗ることを躊躇するより勇者に拳骨を見舞う美鬼の怖さが上回ったようで、伯爵は足早にチヌークへと乗り込む。
最後であった伯爵が乗り込み後部ハッチが閉じる。
「流石に大型なだけあって広いな」
大型輸送ヘリの名は伊達じゃないね。
空飛ぶバスだ。
皆して座席へと腰を下ろせば、
「座面や背もたれの材質は革ではないですな。生地でしょうか?」
「そのようですね。背もたれのある床几と思えば座り心地はよいものですな叔父上」
爺様と王様のやり取りは対面してのもの。
チヌークの両側面に一列に並んだ椅子に腰掛けて感想を語り合う中で――、
「おお!?」
タンデムローターの回転に伯爵が声を上げる。
「「「「おお!?」」」」
宙にふわりと浮き上がる感覚も加われば、皆から驚きの声が上がった。
この声には侯爵のも混じっていた。
自分でワイバーンを操り、自分のタイミングで宙に浮くのとはやはり勝手が違うんだろうな。
――――移動は快適かと言われれば――、首を傾げて返すのが正解なのかな。
これだけ大型で大人数を収容して空を飛ぶことが可能なんだから、そこに文句は言えないか。
垂直離着陸も出来て、大人数を運ぶことが出来る事がメリットなんだしな。
離陸してから約一時間半が経過したところで――、
「おう」
グンッと腹に伝わる衝撃。
チヌークが無事に着陸したようだ。
S級さんの操縦だからなんの心配もないけどね。
タンデムローターの音が徐々に緩やかになっていけば、それに合わせて後部ハッチも開かれる。
開かれたハッチから見えるのは、先に着陸したチヌークより出てくる諸侯の面々。
でも出るのは搭乗する時より早い。
早く地面に足をつけたいという気持ちがあるようだな。
ビジョンを使用すれば、一様に顔が青い。
子供は泣きじゃくっていた。
やはり空を飛ぶという事はこの世界だと限定的だからな。でもって見たこともない物体に乗せられたあげくに飛び立つのだから、子供はたまったもんじゃないだろう。
女性陣も地面に足がつけば途端に緊張の糸が切れたようで、膝から崩れるようにして地面にへたり込んでいる。
そこに貴族令嬢の気品さは微塵もなかった。
やはりと言うべきか、ヨハンの親父さんである子爵に、行動を一緒にしていた貴族。冒険者ギルドの方々は毅然としており、移動の速さに感動していた。
あの面子。一人一人しっかりと覚えておかないといけないな。
必ず頼りになる人達だ。
「左様でございますな」
王様とバリタン伯爵がチヌークの編隊が飛び立つ姿に息を呑む。
侯爵は自身がワイバーンによる竜騎兵を指揮しているだけあって、空に対しては抵抗はないのか、二人の側でただ編隊飛行を眺めていた。
「……王よ。我々もアレに乗るのですね」
「その通りだ」
「いい歳をして情けないですが、緊張しますな」
「私もだバリタン」
「私もですよ陛下」
爺様も参加して三人して苦笑い。
胆力のある面子だけども、やはり初めての経験となると緊張してしまうようだ。
「ではこちらに」
ここで別のS級さんが俺達を誘導。
いよいよかと王侯貴族の面々は肩に力が入る。
「じゃあ行きますかね。留守を頼むよ」
「任せてください」
胸を拳で叩いて呼応するカイル。
その後ろにはマイヤとギムロン。
これに加えてマンザートと一部のサキュバスメイドさん達が屋敷にて留守番をしてくれるので、何か問題があってもこの面子を残しておけば対応できる。
屋敷を任せられる人材がいるので安心してチヌークへと乗り込む俺たち。
腰が引けていた人間世界のトップと爺様の背中を俺やコクリコが押せば、意を決したかのように足を進めてくれる。
俺もハインドには乗った経験はあるけど、チヌークは初めてだな。
大きいし、立派なタンデムローターには安心感もあるから緊張はない。
「やはり鉄の竜が大口を開いているように見えてしまいますな……」
バリタン伯爵だけ未だに足取りが重い様子。
「違いますよ伯爵。開いてるのは後部、つまり俺達は口ではなくケツの穴に入るんですよ」
リラックスさせようと冗談を一つ言えば、
「下品だぞ」
「いでっ!」
乙女であるベルから乙女らしからぬ拳骨を頂く。
ただケツの穴発言に対しては頬を赤らめるというウブさがあり、その表情を見る事が出来たので痛みを伴ったがオッケー。
「さあ伯爵」
「は、はい」
チヌークに乗ることを躊躇するより勇者に拳骨を見舞う美鬼の怖さが上回ったようで、伯爵は足早にチヌークへと乗り込む。
最後であった伯爵が乗り込み後部ハッチが閉じる。
「流石に大型なだけあって広いな」
大型輸送ヘリの名は伊達じゃないね。
空飛ぶバスだ。
皆して座席へと腰を下ろせば、
「座面や背もたれの材質は革ではないですな。生地でしょうか?」
「そのようですね。背もたれのある床几と思えば座り心地はよいものですな叔父上」
爺様と王様のやり取りは対面してのもの。
チヌークの両側面に一列に並んだ椅子に腰掛けて感想を語り合う中で――、
「おお!?」
タンデムローターの回転に伯爵が声を上げる。
「「「「おお!?」」」」
宙にふわりと浮き上がる感覚も加われば、皆から驚きの声が上がった。
この声には侯爵のも混じっていた。
自分でワイバーンを操り、自分のタイミングで宙に浮くのとはやはり勝手が違うんだろうな。
――――移動は快適かと言われれば――、首を傾げて返すのが正解なのかな。
これだけ大型で大人数を収容して空を飛ぶことが可能なんだから、そこに文句は言えないか。
垂直離着陸も出来て、大人数を運ぶことが出来る事がメリットなんだしな。
離陸してから約一時間半が経過したところで――、
「おう」
グンッと腹に伝わる衝撃。
チヌークが無事に着陸したようだ。
S級さんの操縦だからなんの心配もないけどね。
タンデムローターの音が徐々に緩やかになっていけば、それに合わせて後部ハッチも開かれる。
開かれたハッチから見えるのは、先に着陸したチヌークより出てくる諸侯の面々。
でも出るのは搭乗する時より早い。
早く地面に足をつけたいという気持ちがあるようだな。
ビジョンを使用すれば、一様に顔が青い。
子供は泣きじゃくっていた。
やはり空を飛ぶという事はこの世界だと限定的だからな。でもって見たこともない物体に乗せられたあげくに飛び立つのだから、子供はたまったもんじゃないだろう。
女性陣も地面に足がつけば途端に緊張の糸が切れたようで、膝から崩れるようにして地面にへたり込んでいる。
そこに貴族令嬢の気品さは微塵もなかった。
やはりと言うべきか、ヨハンの親父さんである子爵に、行動を一緒にしていた貴族。冒険者ギルドの方々は毅然としており、移動の速さに感動していた。
あの面子。一人一人しっかりと覚えておかないといけないな。
必ず頼りになる人達だ。
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