917 / 1,668
新公爵
PHASE-917【絶対に廃止しないと】
しおりを挟む
「かなりの苦労をしたんだろうな」
「そうだろうよ……」
苦労すると老けるってはいうけども、俺より年下とは思えない。
初対面なら間違いなく敬語を使う相手だぞ。
「でだ、あいつは見込みがある。公都までの移動の間に剣の腕を見てやったが、飲み込みが早い。半年もあれば俺よりも強くなるだろう」
――……正直ラルゴの強さが分からないんだけどな。
一般的な兵士よりは強いだろうけど、申し訳ないが並よりやや上って感じだからな。
要塞ではコクリコと一緒に活躍もしたようだし、傭兵団相手にも負けてなかったから、この世界だとマナ未習得者というカテゴリーなら強い方に分類されるのかな。
「素養があるなら後は本人次第だけど、やる気はあるんだよな」
「自由にしてくれた事への感謝が大きい。大いに励むつもりだそうだ」
商品となっていた時は人生を諦めたような顔だったが、今は強い目になってる。
「お~い」
ラルゴが腕を派手に振り、大声で褐色君を呼ぶ。
公爵家の者達を前にしての所作としては粗暴で下品。
俺の私兵のようなポジションということを理解しているから、皆さん顔の表面には不平を出す事はない。
正式に俺の私兵となるなら、こういった場に見合った礼儀作法と服装を教え与えないといけないんだろうな。
作法はしかたないとしても、装備は直ぐにでも準備は出来るからな。まずはそっちを優先するか。
寒冷地用の厚着と生産性重視のレザーアーマーは、征北や近衛と比べるとはっきりと見劣りしてる。
俺が恥ずかしくなって……なるほど……な。貴族ってのはそういった見栄も周囲に見せないといけないんだなというのを垣間見た気分だ。
公爵の私兵というポジションだからこそ、良い装備で揃えないといけないんだな。
公爵となれば自由に動かせる金ってのもあるんだろうけど、それを使って良いのだろうか? 公私混同みたいに見られないかな。
領民達からのイメージダウンは避けたい。
となると、
「自腹か……」
勇者として、会頭としての立場で稼いだ金から出さないといけないな……。
パーティーメンバーから少しは出資をしてほしいところ。
などと考え事をしていれば、褐色君が俺や公爵家の面々に会釈をしつつ恐る恐るこちらへとやって来る。
周囲が高そうな服装で着飾っている中、質素な服装というのは恥ずかしいというより、申し訳ないといった感じがあるようだ。
「何でしょうラルゴさん」
ああ。確かに姿は二十代だけど、声の感じは俺と近いものがあるね。
「ちゃんと礼を言いたかったんだろう」
「あ、はい。勇者様、公爵様、会頭様……」
「好きに呼んでいいよ」
「では勇者様。自分を救ってくださってありがとうございます」
呼称に勇者を選択したのは、救われた思いが大きいからだろう。
「勇者として当然のことをしただけだよ」
なので勇者として対応する。
「このご恩は全身全霊の忠義でお返しします」
「自由になったんだから、別に俺の所じゃなくてもいいんだけど」
「お願いです。働かせてください!」
俺の所じゃなくてもという発言を見捨てられると受け取ったようで、懇願するように俺へと縋ろうとする。
こっちとしても人材は多ければ多いほどいいから、働いてもらうのはありがたい。
「君が留まりたいなら好きにするといいよ。ただし薄給だよ。冒険者になるなら話はまた変わるけど」
「いえ、自分はトール様の下で励みたいのです」
なので冒険者とかには興味がないそうだ。
ただ働きでもいい、今までがそうだったんだから。少なくても給金がもらえるという前提の話にむしろ驚いていた。
どんだけ辛い日々を過ごしてたんだよ……。
ラルゴ達の装備を自腹で調達しないといけない程度の事で、気が重くなっていたのが恥ずかしい。
そんなもん褐色君の今までの人生に比べれば些末な事だったよ。
奴隷制は絶対にこの地だけでなく、他の地でも二度と生まれないように仕組みを作っていかないとな。
「じゃあ今後もラルゴ達と一緒に俺を支えてくれ」
「分かりました!」
快活な声で返事をもらう。
その時の笑い顔を見て、俺と同年代なんだというのが分かった。
大人のような顔立ちだけど、笑みには幼さがあったからね。
「そうだろうよ……」
苦労すると老けるってはいうけども、俺より年下とは思えない。
初対面なら間違いなく敬語を使う相手だぞ。
「でだ、あいつは見込みがある。公都までの移動の間に剣の腕を見てやったが、飲み込みが早い。半年もあれば俺よりも強くなるだろう」
――……正直ラルゴの強さが分からないんだけどな。
一般的な兵士よりは強いだろうけど、申し訳ないが並よりやや上って感じだからな。
要塞ではコクリコと一緒に活躍もしたようだし、傭兵団相手にも負けてなかったから、この世界だとマナ未習得者というカテゴリーなら強い方に分類されるのかな。
「素養があるなら後は本人次第だけど、やる気はあるんだよな」
「自由にしてくれた事への感謝が大きい。大いに励むつもりだそうだ」
商品となっていた時は人生を諦めたような顔だったが、今は強い目になってる。
「お~い」
ラルゴが腕を派手に振り、大声で褐色君を呼ぶ。
公爵家の者達を前にしての所作としては粗暴で下品。
俺の私兵のようなポジションということを理解しているから、皆さん顔の表面には不平を出す事はない。
正式に俺の私兵となるなら、こういった場に見合った礼儀作法と服装を教え与えないといけないんだろうな。
作法はしかたないとしても、装備は直ぐにでも準備は出来るからな。まずはそっちを優先するか。
寒冷地用の厚着と生産性重視のレザーアーマーは、征北や近衛と比べるとはっきりと見劣りしてる。
俺が恥ずかしくなって……なるほど……な。貴族ってのはそういった見栄も周囲に見せないといけないんだなというのを垣間見た気分だ。
公爵の私兵というポジションだからこそ、良い装備で揃えないといけないんだな。
公爵となれば自由に動かせる金ってのもあるんだろうけど、それを使って良いのだろうか? 公私混同みたいに見られないかな。
領民達からのイメージダウンは避けたい。
となると、
「自腹か……」
勇者として、会頭としての立場で稼いだ金から出さないといけないな……。
パーティーメンバーから少しは出資をしてほしいところ。
などと考え事をしていれば、褐色君が俺や公爵家の面々に会釈をしつつ恐る恐るこちらへとやって来る。
周囲が高そうな服装で着飾っている中、質素な服装というのは恥ずかしいというより、申し訳ないといった感じがあるようだ。
「何でしょうラルゴさん」
ああ。確かに姿は二十代だけど、声の感じは俺と近いものがあるね。
「ちゃんと礼を言いたかったんだろう」
「あ、はい。勇者様、公爵様、会頭様……」
「好きに呼んでいいよ」
「では勇者様。自分を救ってくださってありがとうございます」
呼称に勇者を選択したのは、救われた思いが大きいからだろう。
「勇者として当然のことをしただけだよ」
なので勇者として対応する。
「このご恩は全身全霊の忠義でお返しします」
「自由になったんだから、別に俺の所じゃなくてもいいんだけど」
「お願いです。働かせてください!」
俺の所じゃなくてもという発言を見捨てられると受け取ったようで、懇願するように俺へと縋ろうとする。
こっちとしても人材は多ければ多いほどいいから、働いてもらうのはありがたい。
「君が留まりたいなら好きにするといいよ。ただし薄給だよ。冒険者になるなら話はまた変わるけど」
「いえ、自分はトール様の下で励みたいのです」
なので冒険者とかには興味がないそうだ。
ただ働きでもいい、今までがそうだったんだから。少なくても給金がもらえるという前提の話にむしろ驚いていた。
どんだけ辛い日々を過ごしてたんだよ……。
ラルゴ達の装備を自腹で調達しないといけない程度の事で、気が重くなっていたのが恥ずかしい。
そんなもん褐色君の今までの人生に比べれば些末な事だったよ。
奴隷制は絶対にこの地だけでなく、他の地でも二度と生まれないように仕組みを作っていかないとな。
「じゃあ今後もラルゴ達と一緒に俺を支えてくれ」
「分かりました!」
快活な声で返事をもらう。
その時の笑い顔を見て、俺と同年代なんだというのが分かった。
大人のような顔立ちだけど、笑みには幼さがあったからね。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる