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新公爵
PHASE-911【複雑……】
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「素晴らしい。正に壮麗にして華美」
高さと堅牢さだけでなく美しさも有する防御壁の色は白亜。煉瓦などを積んだ王都の城壁と違って継ぎ目がないので余計に美しい。
全体がローマンコンクリートに似た材料を使用しているようで、まるで一枚壁のようにも思わせる。
巨大な門が開かれ潜り、大通りではなくドヌクトスでも目にした兵達が使用する専用の道を使用し屋敷へと入る。
案内をしてくれたのはヨハンだった。
聞けばここはヨハンの一族――つまりは子爵家の別邸だそうで、もしこの公都が攻められた時、西側外周の防御壁に近いこの屋敷が軍議の拠点として使用されるという。
だからなのか屋敷の外観に華美さはなく、無骨さが主張している。
戦闘時の西側最前線指揮所という役割に華美さは必要ないというのが、ヨハンの父親である子爵の考え。
話を聞くだけでもヨハンの父親は、このミルド領において必要な人材だというのが分かる。
「華やかさはない屋敷ですが、公爵様がくつろげる部屋はしっかりと用意させております」
「ありがとうヨハン。出来れば皆もゆっくりと過ごせる部屋を頼むよ」
「最前線の指揮所として建造されていますので、兵を多く収容するようにもなっています。十分に対応できます」
助かるよ。
少数で動いているといっても普段のパーティーからしたら大所帯だからね。
「トール様よろしいでしょうか」
「どうしましたコトネさん」
「この子たちがトール様の為に働きたいと言うことでして」
「ああ」
奴隷売買で商品になっていた姉妹か。
助け出した後、モンド達にお願いして今後の身の振り方を考えてもらおうとしていたけど、ククナルにはいたくないと頑なに拒まれて、メイドさん達に面倒を見てもらっていたが、働きたいという選択肢を選んだか。
俺の所で働きたいというなら拒みはしない。人材は多い方がいいしな。
若い分、覚えも早いだろう。
「ランシェル」
「はい」
「コトネさんと一緒にこの子たちの世話を頼むよ」
「畏まりました。トール様のお役に立てる立派な戦闘メイドに鍛え上げます」
うん。普通のメイドでいいんだけどね。
「大将」
「はいはい」
ここでラルゴも参加。
「無礼では」
「気にしなくて良いよヨハン。あいつ等は公爵としての俺じゃなくて、ギルド会頭としての俺と行動してるんだから」
こっちは救い出した褐色の男性がラルゴ達と一緒に行動したいということだった。
似た境遇であったのに、現在は自由に活動するラルゴ達を見て、ここなら自分も自由に行動できると考えたからだそうだ。
「面倒は俺が責任を持って見る」
砦群でも規律を重んじさせたラルゴの発言は説得力がある。
「任せるよ。でもラルゴ達と行動するということは、戦闘にも参加することになるわけだ。その覚悟は?」
「あると言ってくれた。目に宿る力も本物だ」
「それは何より」
「本当はもう一つ頼み事があるんだが、今は忙しそうだな。今度その頼み事を聞いてくれ」
「俺に出来る事なら協力する」
と、約束してラルゴが下がる。
下がる方向には褐色の成人もいる。笑顔の姿を見れば、現環境に満足しているのが分かる。
売りに出されていた時はどうでもいいといった表情だったけど、そんな表情から目に力が宿るまでに立ち戻れたのなら問題はないな。
「この様に各地での問題を解決させていけば、主の元で働きたいと思いたい者たちも多く出てくるでしょうね」
「となると金の問題も」
「それは戦勝側としてしっかりと各地より徴収しますよ。相当に貯めているのでしょうからね。最低限の権力を残してやるかわりに、代償として金銭を頂きましょう。ククナルの男爵のように」
「ですね」
先生とこういったやり取りをすると、自然と二人揃って悪い笑みを湛えるというのも通例となったな。
――……でも最近になって思うこともあるんですよ。
「あのですよ。この領地って俺が代表になったわけじゃないですか」
「その通りです」
「なんか複雑な気分になります」
「ハハハッ――確かに。主は戦勝側であるはずなのに、この地の公爵でもあるので敗戦側にも立つ事になりますね」
そうなんだよ。王様たちと一緒に戦って少なからず勝利につながる為の活躍をしたと自負もある。
なのに負け側の代表になっている。釈然としないのは俺が小者だからだろうな。
心の疑問符が払拭されないんですよ。
なんだろうか。この複雑な気持ちは……。
試合に勝って勝負に負けた感じだな……。
高さと堅牢さだけでなく美しさも有する防御壁の色は白亜。煉瓦などを積んだ王都の城壁と違って継ぎ目がないので余計に美しい。
全体がローマンコンクリートに似た材料を使用しているようで、まるで一枚壁のようにも思わせる。
巨大な門が開かれ潜り、大通りではなくドヌクトスでも目にした兵達が使用する専用の道を使用し屋敷へと入る。
案内をしてくれたのはヨハンだった。
聞けばここはヨハンの一族――つまりは子爵家の別邸だそうで、もしこの公都が攻められた時、西側外周の防御壁に近いこの屋敷が軍議の拠点として使用されるという。
だからなのか屋敷の外観に華美さはなく、無骨さが主張している。
戦闘時の西側最前線指揮所という役割に華美さは必要ないというのが、ヨハンの父親である子爵の考え。
話を聞くだけでもヨハンの父親は、このミルド領において必要な人材だというのが分かる。
「華やかさはない屋敷ですが、公爵様がくつろげる部屋はしっかりと用意させております」
「ありがとうヨハン。出来れば皆もゆっくりと過ごせる部屋を頼むよ」
「最前線の指揮所として建造されていますので、兵を多く収容するようにもなっています。十分に対応できます」
助かるよ。
少数で動いているといっても普段のパーティーからしたら大所帯だからね。
「トール様よろしいでしょうか」
「どうしましたコトネさん」
「この子たちがトール様の為に働きたいと言うことでして」
「ああ」
奴隷売買で商品になっていた姉妹か。
助け出した後、モンド達にお願いして今後の身の振り方を考えてもらおうとしていたけど、ククナルにはいたくないと頑なに拒まれて、メイドさん達に面倒を見てもらっていたが、働きたいという選択肢を選んだか。
俺の所で働きたいというなら拒みはしない。人材は多い方がいいしな。
若い分、覚えも早いだろう。
「ランシェル」
「はい」
「コトネさんと一緒にこの子たちの世話を頼むよ」
「畏まりました。トール様のお役に立てる立派な戦闘メイドに鍛え上げます」
うん。普通のメイドでいいんだけどね。
「大将」
「はいはい」
ここでラルゴも参加。
「無礼では」
「気にしなくて良いよヨハン。あいつ等は公爵としての俺じゃなくて、ギルド会頭としての俺と行動してるんだから」
こっちは救い出した褐色の男性がラルゴ達と一緒に行動したいということだった。
似た境遇であったのに、現在は自由に活動するラルゴ達を見て、ここなら自分も自由に行動できると考えたからだそうだ。
「面倒は俺が責任を持って見る」
砦群でも規律を重んじさせたラルゴの発言は説得力がある。
「任せるよ。でもラルゴ達と行動するということは、戦闘にも参加することになるわけだ。その覚悟は?」
「あると言ってくれた。目に宿る力も本物だ」
「それは何より」
「本当はもう一つ頼み事があるんだが、今は忙しそうだな。今度その頼み事を聞いてくれ」
「俺に出来る事なら協力する」
と、約束してラルゴが下がる。
下がる方向には褐色の成人もいる。笑顔の姿を見れば、現環境に満足しているのが分かる。
売りに出されていた時はどうでもいいといった表情だったけど、そんな表情から目に力が宿るまでに立ち戻れたのなら問題はないな。
「この様に各地での問題を解決させていけば、主の元で働きたいと思いたい者たちも多く出てくるでしょうね」
「となると金の問題も」
「それは戦勝側としてしっかりと各地より徴収しますよ。相当に貯めているのでしょうからね。最低限の権力を残してやるかわりに、代償として金銭を頂きましょう。ククナルの男爵のように」
「ですね」
先生とこういったやり取りをすると、自然と二人揃って悪い笑みを湛えるというのも通例となったな。
――……でも最近になって思うこともあるんですよ。
「あのですよ。この領地って俺が代表になったわけじゃないですか」
「その通りです」
「なんか複雑な気分になります」
「ハハハッ――確かに。主は戦勝側であるはずなのに、この地の公爵でもあるので敗戦側にも立つ事になりますね」
そうなんだよ。王様たちと一緒に戦って少なからず勝利につながる為の活躍をしたと自負もある。
なのに負け側の代表になっている。釈然としないのは俺が小者だからだろうな。
心の疑問符が払拭されないんですよ。
なんだろうか。この複雑な気持ちは……。
試合に勝って勝負に負けた感じだな……。
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