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新公爵
PHASE-892【この領地は大変そうだ】
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――――ベルに見入っている中で、俺に誰何をした兵がはたとなり、
「あの……どちら様でしょうか?」
と、再度の誰何。
王様の列に自由に行き来が出来る立場から俺が位の高い人物と判断しての丁寧な問いかけ。
それくらいの事が出来るくらいには冷静にはなっているようだ。
もう拳骨はくらいたくないので、
「ええっと――どうも。新しく公爵になった遠坂 亨です」
立ち上がって今度は素直に名乗る。
「……はぁ?」
いいよその気の抜けた返事。
久しいよ。俺を勇者だと信じなかった時の連中と同様のリアクションだね。
慣れたくはないけど慣れてしまっているからメンタルは幾分か平気。
「本当だ」
ここで爺様が一言。
これによって沿道警備に当たっていた兵達も信じてくれる。
ざわつきが生まれる。それが静かになるまで待ってから――、
「このたびミルド領の新領主となった遠坂 亨です。トール・トオサカ・ゼハートとへんてこな名前になってますがよろしくお願いいたします。気軽にトールと呼んでください」
全体を見渡してから典雅な一礼にて挨拶。
公爵が一兵士と領民に一礼という光景。
この光景はあり得ない事なのか、皆して膝をついて顔を伏せてくる。
「そういうのはやめていただきたい」
俺に対してそこまでする必要性はないよ。そんな事をされるとこっちが困るというもの。
ナチュラルボーンな貴族ではなく、成り上がりの貴族って感じだからね。
恭しくされると困る。
「先の戦いでは貴方方にとって敵でした。敵として公爵軍の方々の命を奪うように直接命令も下しました。石を投げるなら王ではなく俺に恨みをぶつけてくればいいと思います」
「トールよ何を言う。最高責任者は私だ。私が恨みの矢面に立たねばならん」
すかさず王様。
「孫や甥よりも年長者である私に向けてほしい」
ここで爺様も馬車から降りて参加。
俺が俺がといった流れだ。どうぞ、どうぞと譲ることは無いので笑いが生まれる事もなく、三人で主張しあうだけ。
大陸にて人類が統べる領土の第一位と第二位、元第二位による謝罪を受ければ、大人たちは顔を見合わせる。
先ほどまで気が高ぶっていた子供も周囲の大人達の困惑さを身で感じたのか、高ぶりより困惑が勝ったことで落ち着いて来ている。
「下がっていい」
ベルが俺を下がらせる。
「今後はあの子のような残された者たちの為に力を発揮しなければならない」
「だったらここで宣言しとこうか。補償も伝えよう」
「やめとけ」
ゲッコーさんによる制止。
簡単に遺族には補償をするなんて言うものではないという。
そういったのは結果を出してから。
出せる段取りが整っていないままに公約などを行えば、公約を実行できなかった。もしくは遅延しているとそれが不満となって爆発する。
やることはしっかりとやり、それが人々の目に見えるような成果となって信頼を得てから公約や補償は出せということだ。
見たこともない少年が突如として公爵となっているだけでも領民は混乱する。収拾の後に生活に関しての保障や雇用を実行するのがいいそうだ。
先生もそう言いたかったのか、ゲッコーさんの発言に鷹揚に頷いていた。
――――。
「信頼を得てから実行ね~」
個室にて一人ソファーに座って独白。
現在の時間帯は夕方。
王様や公爵は一息入れて直ぐさま公都を目指して町から出立。
俺たちはククナルにて居を構える貴族の屋敷を借り受けて宿とさせてもらっている。
信頼を得るにしても、現状は遺族から恨まれる対象と言ってもいい。
そんな人々に受け入れてもらえるように励むにしても、何をすればいいのかは俺程度では脳漿をしぼっても妙案なんて生み出せない。
真っ先に思いついたのは、越後のちりめん問屋というネタを口にしたからか、この領地の世直し旅をするっていうものだった。
時間がかかりすぎるから全くもって現実的ではない子供じみた発想が俺の限界。
「あの……どちら様でしょうか?」
と、再度の誰何。
王様の列に自由に行き来が出来る立場から俺が位の高い人物と判断しての丁寧な問いかけ。
それくらいの事が出来るくらいには冷静にはなっているようだ。
もう拳骨はくらいたくないので、
「ええっと――どうも。新しく公爵になった遠坂 亨です」
立ち上がって今度は素直に名乗る。
「……はぁ?」
いいよその気の抜けた返事。
久しいよ。俺を勇者だと信じなかった時の連中と同様のリアクションだね。
慣れたくはないけど慣れてしまっているからメンタルは幾分か平気。
「本当だ」
ここで爺様が一言。
これによって沿道警備に当たっていた兵達も信じてくれる。
ざわつきが生まれる。それが静かになるまで待ってから――、
「このたびミルド領の新領主となった遠坂 亨です。トール・トオサカ・ゼハートとへんてこな名前になってますがよろしくお願いいたします。気軽にトールと呼んでください」
全体を見渡してから典雅な一礼にて挨拶。
公爵が一兵士と領民に一礼という光景。
この光景はあり得ない事なのか、皆して膝をついて顔を伏せてくる。
「そういうのはやめていただきたい」
俺に対してそこまでする必要性はないよ。そんな事をされるとこっちが困るというもの。
ナチュラルボーンな貴族ではなく、成り上がりの貴族って感じだからね。
恭しくされると困る。
「先の戦いでは貴方方にとって敵でした。敵として公爵軍の方々の命を奪うように直接命令も下しました。石を投げるなら王ではなく俺に恨みをぶつけてくればいいと思います」
「トールよ何を言う。最高責任者は私だ。私が恨みの矢面に立たねばならん」
すかさず王様。
「孫や甥よりも年長者である私に向けてほしい」
ここで爺様も馬車から降りて参加。
俺が俺がといった流れだ。どうぞ、どうぞと譲ることは無いので笑いが生まれる事もなく、三人で主張しあうだけ。
大陸にて人類が統べる領土の第一位と第二位、元第二位による謝罪を受ければ、大人たちは顔を見合わせる。
先ほどまで気が高ぶっていた子供も周囲の大人達の困惑さを身で感じたのか、高ぶりより困惑が勝ったことで落ち着いて来ている。
「下がっていい」
ベルが俺を下がらせる。
「今後はあの子のような残された者たちの為に力を発揮しなければならない」
「だったらここで宣言しとこうか。補償も伝えよう」
「やめとけ」
ゲッコーさんによる制止。
簡単に遺族には補償をするなんて言うものではないという。
そういったのは結果を出してから。
出せる段取りが整っていないままに公約などを行えば、公約を実行できなかった。もしくは遅延しているとそれが不満となって爆発する。
やることはしっかりとやり、それが人々の目に見えるような成果となって信頼を得てから公約や補償は出せということだ。
見たこともない少年が突如として公爵となっているだけでも領民は混乱する。収拾の後に生活に関しての保障や雇用を実行するのがいいそうだ。
先生もそう言いたかったのか、ゲッコーさんの発言に鷹揚に頷いていた。
――――。
「信頼を得てから実行ね~」
個室にて一人ソファーに座って独白。
現在の時間帯は夕方。
王様や公爵は一息入れて直ぐさま公都を目指して町から出立。
俺たちはククナルにて居を構える貴族の屋敷を借り受けて宿とさせてもらっている。
信頼を得るにしても、現状は遺族から恨まれる対象と言ってもいい。
そんな人々に受け入れてもらえるように励むにしても、何をすればいいのかは俺程度では脳漿をしぼっても妙案なんて生み出せない。
真っ先に思いついたのは、越後のちりめん問屋というネタを口にしたからか、この領地の世直し旅をするっていうものだった。
時間がかかりすぎるから全くもって現実的ではない子供じみた発想が俺の限界。
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