874 / 1,668
北伐
PHASE-874【勝ち戦なのに、ここに来て最高難易度て……】
しおりを挟む
「しかし、このような冷静で剛胆で酷薄でもある素晴らしき知恵者はそうはいない。陛下もよき人材を側に置くことが出来ております」
「私のことをよく支えてくれて感謝しています。勇者トールの従者は皆が有能です」
「確かに」
すっと俺の方を見てくる公爵に会釈で返す。
続いて俺の側に立つパーティーメンバーを瞥見すれば、
「本当に百戦して必敗は必定。カリオネル如きでは勝てんよな」
如きって。
「息子さんに対して情とかは?」
「甘やかしたところもある。特に上の二人を失った後はな。が、それが愚息の行為だとなれば薄れるというものだ」
ですよね~。
「その点、勇者殿は真面目なようだな」
「そうですか?」
――……なんでコクリコが俺に代わって答えるんだろうね。
そこは俺が謙遜しながら同じ言葉を使用するつもりだったんだけども。お前が使用すると完全に俺を馬鹿にした言葉としか思えないよ。
実際にそうなんだろうけどさ。
「周囲の者達の力は、勇者殿以上とお見受けする」
「勿論ですとも!」
いやだから。コクリコはお呼びじゃない。
お前にだけは負けているとは思ってないし。
「それでも仕えているのだ。勇者殿の徳の高さというものだろうな」
「「「「それはない」」」」
「おぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい! 先生以外! なんでそこをしっかりと合わせるんですかね! そこは嘘でもいいから肯定しときなさいよ!」
「嘘をつくと、後々に痛い目にあうからな~」
なにを白々しく言ってんですかねゲッコーさん……。
俺に対して遠回しに言ってんですかね?
すげー嫌な予感しかしない。
「ベル、一度だけしかトールの新技を見る事が出来なかったが、あれはどうだった」
なんでベルに振るの……。
やっぱりそういうことなの?
「離れた対象に攻撃が可能となれば、それだけ戦い方の手段も増えるので、これから更にトールは成長するかと」
今後の成長に期待してくれるベルの優しさに嬉しくもあり、部下に対する期待のような感じで寂しくもある。
「試してみたらどうだ。ここはコロッセオだしな。公爵殿に勇者トールとその仲間の強さも見てもらうのもいいだろう」
「それはいい」
ちょっと公爵。ゲッコーさんの口車に乗らないで。
これは俺がインスタントでマスリリースを取得した事に対する折檻なんですよ。
貴男の息子に対してミランドが折檻したのと同様のやつなんすよ。
しかもその折檻の執行役が、最強の存在なんだよ。
「あ~」
とても嫌だったのでついつい声が出てしまう。
「なんだその腑抜けた声は」
擬音をつけるならギンッ! だろう。そんな目でベルに睨まれる。
「あ、いや……。ちょっと疲れて」
「確かに連戦だったからな。二時間ほど休憩を取るといい」
そうじゃなくて……。ベルとは戦いたくないでござる。
拙者、戦いたくないでござる!
「私も休息を取りたかったから丁度いい。流石に老体での山越えは疲れるからな」
「横から失礼いたします。よろしければ主賓席に軽食をご用意いたしますが」
「これは素晴らしいメイド達だ」
コトネさんが気を利かせて公爵と征北騎士団の面々をエスコートすれば、素直についていく爺さん。
爺さんながら美人を見れば、顔はほころんだものになる。
その辺は馬鹿息子にもしっかりと遺伝してる。
「にしても……」
まさかここでベルと戦うとは……。
「まったく! なんでトールばかりが目立つのですか!」
「だったら俺に代わってコクリコが戦っていいぞ」
「それは嫌です」
目立ちたいのにベルとは戦いたくないとは、我が儘なまな板だ。
流石にベルとの戦闘は誰もが避けたいよな……。
でも俺はそれを避けることが出来ないわけだ……。
「楽しみにしている」
「……おう…………」
俺の成長がどれほどのものなのか。それを見る事が出来るからと、ベルは何とも嬉しそうに笑みを湛えていた。
可愛いものを見る時のソレではなく。部下がどれだけ出来るようになったかを楽しみにしているというものだ。
もう……。ここに来て最強の存在と戦うのかよ……。
今回はちょっとだけど、俺TUEEEEEEEな気持ちになれたのに。
そこから直下で落とされるのかよ……。
やだも~……。
「私のことをよく支えてくれて感謝しています。勇者トールの従者は皆が有能です」
「確かに」
すっと俺の方を見てくる公爵に会釈で返す。
続いて俺の側に立つパーティーメンバーを瞥見すれば、
「本当に百戦して必敗は必定。カリオネル如きでは勝てんよな」
如きって。
「息子さんに対して情とかは?」
「甘やかしたところもある。特に上の二人を失った後はな。が、それが愚息の行為だとなれば薄れるというものだ」
ですよね~。
「その点、勇者殿は真面目なようだな」
「そうですか?」
――……なんでコクリコが俺に代わって答えるんだろうね。
そこは俺が謙遜しながら同じ言葉を使用するつもりだったんだけども。お前が使用すると完全に俺を馬鹿にした言葉としか思えないよ。
実際にそうなんだろうけどさ。
「周囲の者達の力は、勇者殿以上とお見受けする」
「勿論ですとも!」
いやだから。コクリコはお呼びじゃない。
お前にだけは負けているとは思ってないし。
「それでも仕えているのだ。勇者殿の徳の高さというものだろうな」
「「「「それはない」」」」
「おぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい! 先生以外! なんでそこをしっかりと合わせるんですかね! そこは嘘でもいいから肯定しときなさいよ!」
「嘘をつくと、後々に痛い目にあうからな~」
なにを白々しく言ってんですかねゲッコーさん……。
俺に対して遠回しに言ってんですかね?
すげー嫌な予感しかしない。
「ベル、一度だけしかトールの新技を見る事が出来なかったが、あれはどうだった」
なんでベルに振るの……。
やっぱりそういうことなの?
「離れた対象に攻撃が可能となれば、それだけ戦い方の手段も増えるので、これから更にトールは成長するかと」
今後の成長に期待してくれるベルの優しさに嬉しくもあり、部下に対する期待のような感じで寂しくもある。
「試してみたらどうだ。ここはコロッセオだしな。公爵殿に勇者トールとその仲間の強さも見てもらうのもいいだろう」
「それはいい」
ちょっと公爵。ゲッコーさんの口車に乗らないで。
これは俺がインスタントでマスリリースを取得した事に対する折檻なんですよ。
貴男の息子に対してミランドが折檻したのと同様のやつなんすよ。
しかもその折檻の執行役が、最強の存在なんだよ。
「あ~」
とても嫌だったのでついつい声が出てしまう。
「なんだその腑抜けた声は」
擬音をつけるならギンッ! だろう。そんな目でベルに睨まれる。
「あ、いや……。ちょっと疲れて」
「確かに連戦だったからな。二時間ほど休憩を取るといい」
そうじゃなくて……。ベルとは戦いたくないでござる。
拙者、戦いたくないでござる!
「私も休息を取りたかったから丁度いい。流石に老体での山越えは疲れるからな」
「横から失礼いたします。よろしければ主賓席に軽食をご用意いたしますが」
「これは素晴らしいメイド達だ」
コトネさんが気を利かせて公爵と征北騎士団の面々をエスコートすれば、素直についていく爺さん。
爺さんながら美人を見れば、顔はほころんだものになる。
その辺は馬鹿息子にもしっかりと遺伝してる。
「にしても……」
まさかここでベルと戦うとは……。
「まったく! なんでトールばかりが目立つのですか!」
「だったら俺に代わってコクリコが戦っていいぞ」
「それは嫌です」
目立ちたいのにベルとは戦いたくないとは、我が儘なまな板だ。
流石にベルとの戦闘は誰もが避けたいよな……。
でも俺はそれを避けることが出来ないわけだ……。
「楽しみにしている」
「……おう…………」
俺の成長がどれほどのものなのか。それを見る事が出来るからと、ベルは何とも嬉しそうに笑みを湛えていた。
可愛いものを見る時のソレではなく。部下がどれだけ出来るようになったかを楽しみにしているというものだ。
もう……。ここに来て最強の存在と戦うのかよ……。
今回はちょっとだけど、俺TUEEEEEEEな気持ちになれたのに。
そこから直下で落とされるのかよ……。
やだも~……。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる