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北伐
PHASE-872【蒸し返す】
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以前ベルがドヌクトスの門で、王様のことを殿下って言っていたような記憶がある。
王様って敬称は殿下でも陛下でもいいはずだけども、陛下ってなると、全てに認められたって感じがするな。
殿下だとまだ幼い感じを覚える。でも公爵が陛下と呼び認めることで、大陸全土が王様を認めたように思える。
陛下って敬称は、王様を今以上に大きく感じさせる二文字だ。
ベルが殿下って使用したのも、まだ大陸を一つにする事が出来ていなかった王様を認めていなかったから使用したとも考えられるな。
王侯貴族だろうが、厳しく接するのがベルだから。
「さて、感動的になってはいますが、ご子息の処遇をこちらに丸投げして、ご自身の手を汚さずに子を排斥できた公爵殿」
「中々に辛辣な言い様ではあるが、恩もあるので強くは出られないのも事実。荀彧殿は意地が悪い」
排斥に対して辛辣とは言っても反論はしない。
これは公爵が馬鹿息子を本当に処断したかったと見るべきだな。仕込み杖の白刃を馬鹿に使用したかったのも本心だったんだろう。
実の子とはいえ、有能な兄二人を謀殺し、父親を薬物で寝たきりにさせ、あげく領内で好き勝手やってたんだからな。
子に対する愛情よりも、公爵としての領内の者達に対する責任の方が勝ったようだ。
まあ、自分の手を汚さずに我が子を排斥したところは、したたかで腹黒いけど。
後世の歴史家に笑われたくないから子殺しはしないって言ってたしな。
政治屋としては有能な人物のようだ。
「ミルド領の今後について公爵殿はどのように考えておいでです?」
悪そうに先生が笑みを湛えて問う。
これは……、先ほどの名代の騎士に対しての物言いを蒸し返すつもりかな……。
寝たきりだったとはいえ、その間に馬鹿がやらかしているし、王軍と公爵軍の戦いという形にはなっている。
名代は約束したけども、しっかりと戦争賠償を払ってもらおうと先生は暗に示している。
ミルド領の最高権力者からの言質をしっかりと取っておきたいようだ。
「無論、責任は取る」
「具体的に言っていただきたい。私としてはこのまま領内に侵攻も考えているのですが」
「荀彧殿!?」
王様が素っ頓狂な声を上げる。
流石に名代に言うのと、公爵に言うのでは違いすぎるからね。
「王――いえ陛下。このまま広大な公爵領に手をつけないのはよろしくないでしょう」
また第二第三の愚息のような愚者が現れるかもしれない。
非合法の温床にもなっている。
それらに対応するためにも、しっかりとこちらで目を光らせて統治するのが一番です。
なので公爵殿には隠居を勧めて、狭い庭付きの屋敷で余生を楽しんでもらいましょう。だってよ……。
いやいや……。
なんで先生は本人の前でなんの気づかいもせずに恐ろしいことを口にするかな。
この人はガチで恐ろしいよ。
障害となる存在がいるのなら、どんな手段を使用しても排除する。
冷酷な謀略家の姿を見せた時の先生を前にすれば、ベルやゲッコーさんでも緊張するからな。
イケメンのアルカイク・スマイルは普段なら女性をときめかせるけど、ここでは場を凍りつかせるってもんだ。
「先ほどの会話にあったように、私は対話が出来る人間だと思っているつもりだ。荀彧殿」
「では――」
「賠償はする。その証拠として――この要塞を陛下へと譲渡する」
つまりは公爵領の一部が王土に変わるということが口約束だけど確約された。
これには先生も満足して……いるようではない。
「足りませんな」
「荀彧殿」
諫めようと王様が二人の間に入るけど、先生は譲らない。
ここまでの事をしでかしたのだから、もっと出してもらわないといけないと先生。
「では――どれだけ望むのか率直に言ってもらいたい。が、度合いは領内の者達と話し合わねばならない。流石に私一人だけでは決められないからな」
「先ほど公爵殿も言っていたでしょう。大部分を失うことになるだろうと」
悪魔のように口角を吊り上げれば、
「私が欲するのはミルド領の全てです」
と、継ぐ先生。
「「「「な!?」」」」
これには王侯貴族の面々が大きく表情を歪める。
それをすれば抵抗が必ずある。
公爵が条件をのんだとしても、公爵領の他の貴族や豪族達が敵対行動を見せるのは必須。
どれだけ圧力をかけたところで、権力者が自身が座る椅子から腰を上げることはないと面々が先生を諭す。
落としどころは必要だし、別段、自分たちは侵略をするつもりはない。
これは混乱を生み出したカリオネルに対しての討伐であり、それ以上は望まない。
望めばそれこそ王が我欲を見せたと思われるかもしれない。
だからこそそれを避けるような戦いをしてきたのだろう。と、先生に詰め寄る王侯貴族の皆さん。
いやはや……。
名代に対して族誅という発言をしたけど、先生と公爵に繋がりがあると分かった後は、あの発言は名代を脅すためのだけの悪い冗談かと思ったが、領地の全てを欲するとその領主に対して発言すれば、返答次第では本当に実行する可能性が出てきた。
威光ある面々に攻め立てられてもどこ吹く風。
胆力ならば、王侯貴族の面々よりも遙かに格上の先生はすっと右手を胸元まで挙げて、詰め寄る面々の動きを制する。
でもって俺は胃が痛い……。
王様って敬称は殿下でも陛下でもいいはずだけども、陛下ってなると、全てに認められたって感じがするな。
殿下だとまだ幼い感じを覚える。でも公爵が陛下と呼び認めることで、大陸全土が王様を認めたように思える。
陛下って敬称は、王様を今以上に大きく感じさせる二文字だ。
ベルが殿下って使用したのも、まだ大陸を一つにする事が出来ていなかった王様を認めていなかったから使用したとも考えられるな。
王侯貴族だろうが、厳しく接するのがベルだから。
「さて、感動的になってはいますが、ご子息の処遇をこちらに丸投げして、ご自身の手を汚さずに子を排斥できた公爵殿」
「中々に辛辣な言い様ではあるが、恩もあるので強くは出られないのも事実。荀彧殿は意地が悪い」
排斥に対して辛辣とは言っても反論はしない。
これは公爵が馬鹿息子を本当に処断したかったと見るべきだな。仕込み杖の白刃を馬鹿に使用したかったのも本心だったんだろう。
実の子とはいえ、有能な兄二人を謀殺し、父親を薬物で寝たきりにさせ、あげく領内で好き勝手やってたんだからな。
子に対する愛情よりも、公爵としての領内の者達に対する責任の方が勝ったようだ。
まあ、自分の手を汚さずに我が子を排斥したところは、したたかで腹黒いけど。
後世の歴史家に笑われたくないから子殺しはしないって言ってたしな。
政治屋としては有能な人物のようだ。
「ミルド領の今後について公爵殿はどのように考えておいでです?」
悪そうに先生が笑みを湛えて問う。
これは……、先ほどの名代の騎士に対しての物言いを蒸し返すつもりかな……。
寝たきりだったとはいえ、その間に馬鹿がやらかしているし、王軍と公爵軍の戦いという形にはなっている。
名代は約束したけども、しっかりと戦争賠償を払ってもらおうと先生は暗に示している。
ミルド領の最高権力者からの言質をしっかりと取っておきたいようだ。
「無論、責任は取る」
「具体的に言っていただきたい。私としてはこのまま領内に侵攻も考えているのですが」
「荀彧殿!?」
王様が素っ頓狂な声を上げる。
流石に名代に言うのと、公爵に言うのでは違いすぎるからね。
「王――いえ陛下。このまま広大な公爵領に手をつけないのはよろしくないでしょう」
また第二第三の愚息のような愚者が現れるかもしれない。
非合法の温床にもなっている。
それらに対応するためにも、しっかりとこちらで目を光らせて統治するのが一番です。
なので公爵殿には隠居を勧めて、狭い庭付きの屋敷で余生を楽しんでもらいましょう。だってよ……。
いやいや……。
なんで先生は本人の前でなんの気づかいもせずに恐ろしいことを口にするかな。
この人はガチで恐ろしいよ。
障害となる存在がいるのなら、どんな手段を使用しても排除する。
冷酷な謀略家の姿を見せた時の先生を前にすれば、ベルやゲッコーさんでも緊張するからな。
イケメンのアルカイク・スマイルは普段なら女性をときめかせるけど、ここでは場を凍りつかせるってもんだ。
「先ほどの会話にあったように、私は対話が出来る人間だと思っているつもりだ。荀彧殿」
「では――」
「賠償はする。その証拠として――この要塞を陛下へと譲渡する」
つまりは公爵領の一部が王土に変わるということが口約束だけど確約された。
これには先生も満足して……いるようではない。
「足りませんな」
「荀彧殿」
諫めようと王様が二人の間に入るけど、先生は譲らない。
ここまでの事をしでかしたのだから、もっと出してもらわないといけないと先生。
「では――どれだけ望むのか率直に言ってもらいたい。が、度合いは領内の者達と話し合わねばならない。流石に私一人だけでは決められないからな」
「先ほど公爵殿も言っていたでしょう。大部分を失うことになるだろうと」
悪魔のように口角を吊り上げれば、
「私が欲するのはミルド領の全てです」
と、継ぐ先生。
「「「「な!?」」」」
これには王侯貴族の面々が大きく表情を歪める。
それをすれば抵抗が必ずある。
公爵が条件をのんだとしても、公爵領の他の貴族や豪族達が敵対行動を見せるのは必須。
どれだけ圧力をかけたところで、権力者が自身が座る椅子から腰を上げることはないと面々が先生を諭す。
落としどころは必要だし、別段、自分たちは侵略をするつもりはない。
これは混乱を生み出したカリオネルに対しての討伐であり、それ以上は望まない。
望めばそれこそ王が我欲を見せたと思われるかもしれない。
だからこそそれを避けるような戦いをしてきたのだろう。と、先生に詰め寄る王侯貴族の皆さん。
いやはや……。
名代に対して族誅という発言をしたけど、先生と公爵に繋がりがあると分かった後は、あの発言は名代を脅すためのだけの悪い冗談かと思ったが、領地の全てを欲するとその領主に対して発言すれば、返答次第では本当に実行する可能性が出てきた。
威光ある面々に攻め立てられてもどこ吹く風。
胆力ならば、王侯貴族の面々よりも遙かに格上の先生はすっと右手を胸元まで挙げて、詰め寄る面々の動きを制する。
でもって俺は胃が痛い……。
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