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北伐
PHASE-870【軋轢があるようだね】
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公爵サイドは戦闘の意思はなし、負けも認めるようだし――、
「素直に話し合いだけですみそうですね」
「ええ、後はどういった方向で今後のミルドを治めるかといったところでしょう」
素直に王様たちに協力して、魔王軍に対抗できる力を出してもらう。
奴隷制の撤廃。
というか、違法でもあるからな。封建とはいえ見過ごしてはならないよな。
最悪な展開だと、先生が言っていたように領地はまるまる没収という流れにもなるかも。
恨みを買わないためにも少しは残すべきだろうな。
どうなるかは公爵をはじめとする、貴族や豪族の出方次第ではあるけど。
他にも傭兵団が使用する薬物であるベルセルクルのキノコに、上位のエッセンスに合成獣。これらをしっかりと調べないといけない。
公爵領に入る事になってもやることは山積み。
これらを全て調べるだけでも時間がかかりそうだ。
その辺りは先生が全てスマートにこなしてくれると信じよう。
もし、先生でも大変となるなら、先生の為に有能な人材を投入しないとな。
――謁見の間でてっきり話すのかと思ったけど、その道中であるコロッセオで公爵の足が止まった。
「これは……なんとも……な」
「おお父上! この不忠な者共を討伐してください」
当然だけどやはりここで足が止まるか……。
どうするよ。逆鱗に触れる事になるんじゃないの。
名誉の戦死とかの方が良かったかもしれない。
「なぜアンデッドになってしまったのだ」
冷静に語るところが余計に怖いよ公爵。
「それは……」
流石に王様も言葉を続ける事が出来ないよね。
「それはこちらにおられる我が主が行わせたこと」
言葉を続ける事が出来ない王様に代わって先生が続けてくれるけど、ここで俺に振るか。
まあアンデッドになったきっかけは俺にあるし、当然といえば当然か。
「ほう」
しわくちゃの顔であるも眼力はやはり鋭い。
でも、俺も負けてやらない。
確かに鋭いけど、ゲッコーさんやベルの炯眼に比べれば、笑みみたいなもんだ。
なので、
「なにか問題でも?」
強気に出てやる。聞きようによっては、逆ギレしているように思われるかも。
「問題だらけだこのエセ勇者め! 我が父上を敵に回して無事に――」
「うるせぇ!」
「ひぃ!?」
父親の前だろうが思いっきり蹴りを入れてやれば、公爵を守る征北の面々は驚くも、実の父親は表情を変えることなく俺を見るだけ。
「いつまで父親とか言ってんだよ。生前は四十を過ぎてんだろうが! 困ったら父親頼みか? 自分で始めた戦で負けて囀るなよ。公爵――」
ここで父親の方に顔を向けて、
「貴男のご子息は手を出してはいけない事に手を出しています。我々はその辺りを徹底的に調べます。戦死なんてさせませんよ。得られる情報はしっかりと得ますから。そしたら成仏させてあげますよ」
「ほう」
じっと俺を見る公爵の圧が原因か、周囲は黙りこくる。
ゴクリと唾を飲み込む音が伯爵の方から聞こえてきたのは分かった。
武闘派すらも押し黙らせる公爵の圧。
「父上ぇぇぇぇ」
四十過ぎたおっさんアンデッドが何とも情けない声。
「黙れ」
「ち、父上!?」
「お前は負けたのだ。見苦しい姿を見せるな。敗軍の将として堂々としていろ」
「何を言いますか! 貴男の子がこの様な姿になったのですよ」
「成るべくして成ったのだ。運命として受け入れよ」
「我が子が可愛くないのですか!」
「出来のいい可愛い我が子が二人、謎の死を遂げているがな」
「な、何を急に!?」
焦る馬鹿を鼻で笑う公爵。
「そもそもが本気で勝てると思ったのか? ここに居並ぶ者たちを見てよくも思えたものだ。お前の浅はかな行動で、私は大部分の領土を失うことになるだろう。この面々とは戦いたくはないからな」
「何を情けないことを! 前王の時代に勇名を馳せた賢人とは思えませんな」
「年を取れば耄碌もするし臆病にもなる。その上お前が勝手に動いている間、私は寝たきりだったからな。さぞ権力をいいように行使したのだろうな」
「俺はミルドの事を! そしてこの大陸の事を思って行動したんですよ!」
「私利私欲の間違いだ」
熱く語る馬鹿の薄っぺらい思いに冷たく対応。それが虚言だというのが分かっているからだろう。
「素直に話し合いだけですみそうですね」
「ええ、後はどういった方向で今後のミルドを治めるかといったところでしょう」
素直に王様たちに協力して、魔王軍に対抗できる力を出してもらう。
奴隷制の撤廃。
というか、違法でもあるからな。封建とはいえ見過ごしてはならないよな。
最悪な展開だと、先生が言っていたように領地はまるまる没収という流れにもなるかも。
恨みを買わないためにも少しは残すべきだろうな。
どうなるかは公爵をはじめとする、貴族や豪族の出方次第ではあるけど。
他にも傭兵団が使用する薬物であるベルセルクルのキノコに、上位のエッセンスに合成獣。これらをしっかりと調べないといけない。
公爵領に入る事になってもやることは山積み。
これらを全て調べるだけでも時間がかかりそうだ。
その辺りは先生が全てスマートにこなしてくれると信じよう。
もし、先生でも大変となるなら、先生の為に有能な人材を投入しないとな。
――謁見の間でてっきり話すのかと思ったけど、その道中であるコロッセオで公爵の足が止まった。
「これは……なんとも……な」
「おお父上! この不忠な者共を討伐してください」
当然だけどやはりここで足が止まるか……。
どうするよ。逆鱗に触れる事になるんじゃないの。
名誉の戦死とかの方が良かったかもしれない。
「なぜアンデッドになってしまったのだ」
冷静に語るところが余計に怖いよ公爵。
「それは……」
流石に王様も言葉を続ける事が出来ないよね。
「それはこちらにおられる我が主が行わせたこと」
言葉を続ける事が出来ない王様に代わって先生が続けてくれるけど、ここで俺に振るか。
まあアンデッドになったきっかけは俺にあるし、当然といえば当然か。
「ほう」
しわくちゃの顔であるも眼力はやはり鋭い。
でも、俺も負けてやらない。
確かに鋭いけど、ゲッコーさんやベルの炯眼に比べれば、笑みみたいなもんだ。
なので、
「なにか問題でも?」
強気に出てやる。聞きようによっては、逆ギレしているように思われるかも。
「問題だらけだこのエセ勇者め! 我が父上を敵に回して無事に――」
「うるせぇ!」
「ひぃ!?」
父親の前だろうが思いっきり蹴りを入れてやれば、公爵を守る征北の面々は驚くも、実の父親は表情を変えることなく俺を見るだけ。
「いつまで父親とか言ってんだよ。生前は四十を過ぎてんだろうが! 困ったら父親頼みか? 自分で始めた戦で負けて囀るなよ。公爵――」
ここで父親の方に顔を向けて、
「貴男のご子息は手を出してはいけない事に手を出しています。我々はその辺りを徹底的に調べます。戦死なんてさせませんよ。得られる情報はしっかりと得ますから。そしたら成仏させてあげますよ」
「ほう」
じっと俺を見る公爵の圧が原因か、周囲は黙りこくる。
ゴクリと唾を飲み込む音が伯爵の方から聞こえてきたのは分かった。
武闘派すらも押し黙らせる公爵の圧。
「父上ぇぇぇぇ」
四十過ぎたおっさんアンデッドが何とも情けない声。
「黙れ」
「ち、父上!?」
「お前は負けたのだ。見苦しい姿を見せるな。敗軍の将として堂々としていろ」
「何を言いますか! 貴男の子がこの様な姿になったのですよ」
「成るべくして成ったのだ。運命として受け入れよ」
「我が子が可愛くないのですか!」
「出来のいい可愛い我が子が二人、謎の死を遂げているがな」
「な、何を急に!?」
焦る馬鹿を鼻で笑う公爵。
「そもそもが本気で勝てると思ったのか? ここに居並ぶ者たちを見てよくも思えたものだ。お前の浅はかな行動で、私は大部分の領土を失うことになるだろう。この面々とは戦いたくはないからな」
「何を情けないことを! 前王の時代に勇名を馳せた賢人とは思えませんな」
「年を取れば耄碌もするし臆病にもなる。その上お前が勝手に動いている間、私は寝たきりだったからな。さぞ権力をいいように行使したのだろうな」
「俺はミルドの事を! そしてこの大陸の事を思って行動したんですよ!」
「私利私欲の間違いだ」
熱く語る馬鹿の薄っぺらい思いに冷たく対応。それが虚言だというのが分かっているからだろう。
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