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北伐
PHASE-859【これは是非に欲しい】
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剣身に触れてみれば、
「これは驚きだな」
火龍装備の手袋であっても伝わってくる、剣身からのひんやりとした冷たさ。
火龍装備に冷たさを伝えてくるなんてね~。
「こりゃ相当な業物だな。装飾や装身具は残念だけど」
「それはそうでしょうよ」
リンが呆れ口調。なぜ知らないのといった感じだ。
知っていて当然の最上大業物みたいだな。
観客席からのざわつきに、馬鹿で無能だけども、良い物で身を固めたいこの馬鹿息子が所有するとなると――、
「これがアダマンタイト」
「違う」
と、バッサリのリン。
となると――、
「緋緋色金――か」
「そうよ。神やそれに並ぶ存在を除き、この世界に住まう者達が作り出すものにおいて最高の金属」
以前にギムロンも人知の及ぶ範囲において、緋緋色金は最高峰の金属だと言っていたのを思い出す。
火龍装備が神話級なら、緋緋色金は伝説級の筆頭といったところだ。
あ、そんなギムロンがいまにも観客席から飛び降りようとしている。
それをタチアナやクラックリックが必死になって止めているというのが目に入った。
やはり緋緋色金はミスリル大好きなドワーフのギムロンでも狂わせるような金属のようだな。
なんにせよ――。
「お前ごときには過ぎた業物よ」
と、悪役っぽく馬鹿息子に伝えて、
「が、この剣の主ならこの剣を振るってみせろ」
「ひぃ!?」
なんだよ。柄を向けて手渡そうとしているだけだろう。
気骨ある卑怯者ならしっかりと握って、渡そうとする俺を刺そうという気概を見せてみろよ。
全力で拳を頭部に叩き付けてやるのに。
まあそんな事は許さないとばかりに、俺の側で待機するランシェルが、シトリンカラーの瞳で睨みを利かせている。
利かせても意味はないけどね。そもそも気骨が無いから。
「さあ!」
凄めばビクリと体を震わせ、体に負けないくらいに震える手で緋緋色金の剣の柄をしっかりと握る。
「おのれ! やってやる!」
立ち上がれば見事なへっぴり腰。
構えにすらなっていない。
言い様は強気だが、足はまったく動く事がない。
あまりの滑稽な姿に、オーディエンスからは失笑。
「くぅぅ……。いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあ!」
構えた剣を握ったまま俺へと駆けてくる。
失笑がプライドを汚したか。
気骨は無くてもプライドだけは一丁前だからな。
気勢をあげながら俺へと迫る。
上段でも下段でもなく、見ようによっては正眼の構えにも見えるが、見えるだけ。
弓術同様にアマチュアだ。
振るという動作。構えるという姿勢をそもそも知らないわけだ。
全くもって話にならない。
それに――、
「相手は俺じゃないんだけどな」
正眼の構えっぽい位置から剣を振り上げたのは、完全に間合いに入りすぎた後。
振り下ろす時には俺の拳が顔面に届く位置だった。
でも殴らない。
緋緋色金の剣身を籠手で受けてみたかったからだ。
キィーンと高音の良い金属音。
ミスリルのリーンといった音よりも更に高く、よく響く音色だった。
それに、
「流石は緋緋色金ってわけだ。人の手により作られた最高金属は伊達じゃない」
へっぴり腰で、剣技ですらないアマチュアの振り下ろしを受け止めれば、ズシリとした衝撃が籠手から体全体に伝わってくる。
人知によって生み出された最高到達点である金属、緋緋色金。
アマチュアでこれだ。達人が扱えば、火龍装備であっても無事ではすまないかもしれないな。
これはガーズのバニッシュリッパーなんか比べものにならない。
是が非でも――、
「欲しい」
――――おっといかん。
声を漏らし、欲望の笑みを湛えてしまったな。
オーディエンスには勇者として欲に染まった笑みを見せるわけにはいかないからな。
ギルド会頭としては貪欲になってしまうけどね。
「これは驚きだな」
火龍装備の手袋であっても伝わってくる、剣身からのひんやりとした冷たさ。
火龍装備に冷たさを伝えてくるなんてね~。
「こりゃ相当な業物だな。装飾や装身具は残念だけど」
「それはそうでしょうよ」
リンが呆れ口調。なぜ知らないのといった感じだ。
知っていて当然の最上大業物みたいだな。
観客席からのざわつきに、馬鹿で無能だけども、良い物で身を固めたいこの馬鹿息子が所有するとなると――、
「これがアダマンタイト」
「違う」
と、バッサリのリン。
となると――、
「緋緋色金――か」
「そうよ。神やそれに並ぶ存在を除き、この世界に住まう者達が作り出すものにおいて最高の金属」
以前にギムロンも人知の及ぶ範囲において、緋緋色金は最高峰の金属だと言っていたのを思い出す。
火龍装備が神話級なら、緋緋色金は伝説級の筆頭といったところだ。
あ、そんなギムロンがいまにも観客席から飛び降りようとしている。
それをタチアナやクラックリックが必死になって止めているというのが目に入った。
やはり緋緋色金はミスリル大好きなドワーフのギムロンでも狂わせるような金属のようだな。
なんにせよ――。
「お前ごときには過ぎた業物よ」
と、悪役っぽく馬鹿息子に伝えて、
「が、この剣の主ならこの剣を振るってみせろ」
「ひぃ!?」
なんだよ。柄を向けて手渡そうとしているだけだろう。
気骨ある卑怯者ならしっかりと握って、渡そうとする俺を刺そうという気概を見せてみろよ。
全力で拳を頭部に叩き付けてやるのに。
まあそんな事は許さないとばかりに、俺の側で待機するランシェルが、シトリンカラーの瞳で睨みを利かせている。
利かせても意味はないけどね。そもそも気骨が無いから。
「さあ!」
凄めばビクリと体を震わせ、体に負けないくらいに震える手で緋緋色金の剣の柄をしっかりと握る。
「おのれ! やってやる!」
立ち上がれば見事なへっぴり腰。
構えにすらなっていない。
言い様は強気だが、足はまったく動く事がない。
あまりの滑稽な姿に、オーディエンスからは失笑。
「くぅぅ……。いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあ!」
構えた剣を握ったまま俺へと駆けてくる。
失笑がプライドを汚したか。
気骨は無くてもプライドだけは一丁前だからな。
気勢をあげながら俺へと迫る。
上段でも下段でもなく、見ようによっては正眼の構えにも見えるが、見えるだけ。
弓術同様にアマチュアだ。
振るという動作。構えるという姿勢をそもそも知らないわけだ。
全くもって話にならない。
それに――、
「相手は俺じゃないんだけどな」
正眼の構えっぽい位置から剣を振り上げたのは、完全に間合いに入りすぎた後。
振り下ろす時には俺の拳が顔面に届く位置だった。
でも殴らない。
緋緋色金の剣身を籠手で受けてみたかったからだ。
キィーンと高音の良い金属音。
ミスリルのリーンといった音よりも更に高く、よく響く音色だった。
それに、
「流石は緋緋色金ってわけだ。人の手により作られた最高金属は伊達じゃない」
へっぴり腰で、剣技ですらないアマチュアの振り下ろしを受け止めれば、ズシリとした衝撃が籠手から体全体に伝わってくる。
人知によって生み出された最高到達点である金属、緋緋色金。
アマチュアでこれだ。達人が扱えば、火龍装備であっても無事ではすまないかもしれないな。
これはガーズのバニッシュリッパーなんか比べものにならない。
是が非でも――、
「欲しい」
――――おっといかん。
声を漏らし、欲望の笑みを湛えてしまったな。
オーディエンスには勇者として欲に染まった笑みを見せるわけにはいかないからな。
ギルド会頭としては貪欲になってしまうけどね。
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