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北伐
PHASE-854【モドキ】
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「幻獣を貴男なんかが使役しているとは思えない」
こっちの世界だとヒュドラーは幻獣なんだな。怪物のカテゴリーではないようだ。
「美しい者の無礼は許してやる」
シャルナに対して不敵な笑みを見せる事で、シャルナは渋面に変わり後退り。
あいつの笑みには女性を怖じ気づかせる力でもあるのかもしれないな。
「嘘はつかないで!」
一歩下がって踏みとどまったところで反論すれば、
「嘘ではない。使役は可能だ。なぜならば――俺だぞ」
最高に格好つけているんだろうけど、見事にコロッセオ全体を沈黙へと変えた。
体全体が根拠のない自信で形成されている男だな……。
「まあその美しい目で真実を見つめればよい」
「うぇ……」
ウインクされたシャルナは本気で気分を悪くしたようだ。
それを目にして、ういやつだなんて思っているようだな……。
シャルナが可哀想なので、向けられる視線を遮るように立ってやれば、直ぐさま不愉快になる。
「偽りの勇者を食い散らかしてやれ!」
「おお怖い」
木箱が開かれると同時にガシャンと大きな音。
閉じ込められるのは御免とばかりに勢いよく出てくる存在。
「「「「おおぉ……」」」」
不気味な存在にオーディエンスの揃った声は――恐れの混じったものというより、期待していたものとは違った時の残念さといったところか。
「――これがヒュドラーか?」
確かに多頭の蛇だな。
よくファンタジー作品やゲームで目にするのと同様に、竜脚類の体に多頭からなる怪物――ではあるんだけど――――。
「ボスポジとしては迫力に欠けるな」
もっと雄々しい感じがするかと思ったんだけど、そういったものを感じさせないのは、首の太さに統一性がないことが原因。
木の幹のように太いのもいれば、ヒョロヒョロとしたロープくらの首もいる。
首は九つとギリシャ神話のヒュドラーにも共通するものがあるけど、なんとも頼りない。
四脚で支える胴体が象のように大きいから、余計にヒョロヒョロの首が弱々しく見える。
「恐れ戦け!」
「いや無理……」
こんなにも迫力のないヒュドラーもいないだろう。
正直、出来損ないだ。
肩越しにシャルナを見れば首を左右に振る。
つまりは――、
「これも合成獣ってことか」
幻獣であるヒュドラーとは違い、誰かしらの手によって様々な大蛇を四脚の体にくっつけて創られた、ヒュドラーモドキってところだろう。
「やれヒュドラーよ」
「「「「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」」」」
馬鹿息子に従うように九つの首の先にある頭から音を立てる。
太い首に細い首がそろって鎌首を上げると、地を震わせて俺へと迫る。
大きく開いた口から見える凶悪な牙にて噛みつこうとしてくるので、イグニースでまずは防いで様子見。
ジュッという音と、焼けるダメージが嫌だったのか後退。
この程度で後退するのか……。というのが率直な感想だった。
これならガリオンの方がまだ強かったぞ。
切り札がこんな幻獣モドキ……。
大した力もない存在を使役して、あそこまで強気になっている……。
いくら戦況を読めないからといって、ここまで無知蒙昧となると、自分の事ではないけど凄く恥ずかしく思えてしまう。
俺の顔は赤くなっているかもしれないな。
「モドキ。次はどうする」
次に接近して仕掛けてくるなら、申し訳ないけど九つの首を全て斬り落とさせてもらう。
「シャァァァァア」
プスプスと煙を上げる中サイズの頭を先頭にして俺を狙ってくる。
やはりダメージを受けた頭部の思考が最も怒りを感じたようだ。
「フン!」
バッサリと先頭の頭を斬り落とす。
真紅の鮮血――ではなく、紫色のドロドロ血液。
「血中のコレステロール、中性脂肪や糖が多いみたいだな。食生活が偏っている証拠だ。青魚や玉葱を食え」
なんて言いつつ、流れ飛び散るドロドロ血液はなんとも毒々しい。
地面に触れれば煙も立っている。
神話ではメジャーな方であるヒュドラーの特徴は俺も知っている。
体に息、血や胆汁は猛毒。
まあ、本物ならね。
こっちの世界だとヒュドラーは幻獣なんだな。怪物のカテゴリーではないようだ。
「美しい者の無礼は許してやる」
シャルナに対して不敵な笑みを見せる事で、シャルナは渋面に変わり後退り。
あいつの笑みには女性を怖じ気づかせる力でもあるのかもしれないな。
「嘘はつかないで!」
一歩下がって踏みとどまったところで反論すれば、
「嘘ではない。使役は可能だ。なぜならば――俺だぞ」
最高に格好つけているんだろうけど、見事にコロッセオ全体を沈黙へと変えた。
体全体が根拠のない自信で形成されている男だな……。
「まあその美しい目で真実を見つめればよい」
「うぇ……」
ウインクされたシャルナは本気で気分を悪くしたようだ。
それを目にして、ういやつだなんて思っているようだな……。
シャルナが可哀想なので、向けられる視線を遮るように立ってやれば、直ぐさま不愉快になる。
「偽りの勇者を食い散らかしてやれ!」
「おお怖い」
木箱が開かれると同時にガシャンと大きな音。
閉じ込められるのは御免とばかりに勢いよく出てくる存在。
「「「「おおぉ……」」」」
不気味な存在にオーディエンスの揃った声は――恐れの混じったものというより、期待していたものとは違った時の残念さといったところか。
「――これがヒュドラーか?」
確かに多頭の蛇だな。
よくファンタジー作品やゲームで目にするのと同様に、竜脚類の体に多頭からなる怪物――ではあるんだけど――――。
「ボスポジとしては迫力に欠けるな」
もっと雄々しい感じがするかと思ったんだけど、そういったものを感じさせないのは、首の太さに統一性がないことが原因。
木の幹のように太いのもいれば、ヒョロヒョロとしたロープくらの首もいる。
首は九つとギリシャ神話のヒュドラーにも共通するものがあるけど、なんとも頼りない。
四脚で支える胴体が象のように大きいから、余計にヒョロヒョロの首が弱々しく見える。
「恐れ戦け!」
「いや無理……」
こんなにも迫力のないヒュドラーもいないだろう。
正直、出来損ないだ。
肩越しにシャルナを見れば首を左右に振る。
つまりは――、
「これも合成獣ってことか」
幻獣であるヒュドラーとは違い、誰かしらの手によって様々な大蛇を四脚の体にくっつけて創られた、ヒュドラーモドキってところだろう。
「やれヒュドラーよ」
「「「「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」」」」
馬鹿息子に従うように九つの首の先にある頭から音を立てる。
太い首に細い首がそろって鎌首を上げると、地を震わせて俺へと迫る。
大きく開いた口から見える凶悪な牙にて噛みつこうとしてくるので、イグニースでまずは防いで様子見。
ジュッという音と、焼けるダメージが嫌だったのか後退。
この程度で後退するのか……。というのが率直な感想だった。
これならガリオンの方がまだ強かったぞ。
切り札がこんな幻獣モドキ……。
大した力もない存在を使役して、あそこまで強気になっている……。
いくら戦況を読めないからといって、ここまで無知蒙昧となると、自分の事ではないけど凄く恥ずかしく思えてしまう。
俺の顔は赤くなっているかもしれないな。
「モドキ。次はどうする」
次に接近して仕掛けてくるなら、申し訳ないけど九つの首を全て斬り落とさせてもらう。
「シャァァァァア」
プスプスと煙を上げる中サイズの頭を先頭にして俺を狙ってくる。
やはりダメージを受けた頭部の思考が最も怒りを感じたようだ。
「フン!」
バッサリと先頭の頭を斬り落とす。
真紅の鮮血――ではなく、紫色のドロドロ血液。
「血中のコレステロール、中性脂肪や糖が多いみたいだな。食生活が偏っている証拠だ。青魚や玉葱を食え」
なんて言いつつ、流れ飛び散るドロドロ血液はなんとも毒々しい。
地面に触れれば煙も立っている。
神話ではメジャーな方であるヒュドラーの特徴は俺も知っている。
体に息、血や胆汁は猛毒。
まあ、本物ならね。
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