848 / 1,668
北伐
PHASE-848【コロッセオ】
しおりを挟む
「明るいな」
通路の先から光が差す。次の広間なのか、それとも外へと続くのか。
――結果は、
「外であり、空間でもあるな」
よくもまあ――
「無駄な物を建設している」
「ですよね」
俺の心の発言を続けてくれたのはゲッコーさん。
火山灰などを使用したローマンコンクリートにも似た材料を使用しての建築物の中に俺たちは立っている。
上を見ればしっかりと空。
淡い朱色に染まる時間帯。
夕陽が沈み、宵の藍色へと変わる前ってところか。
なので通路の先から差した光は空が原因ではない。
方々に立つ白光色の外灯が光の原因。まるでグランドなんかのナイター照明のようだった。
「本当にここまでこれたか。ガリオン達も存外に不甲斐ない」
「おう。胸くそ悪い声による7.1サラウンドは地獄だぜ」
俯瞰から見れば円形の形状となっているだろう建築物。
なので声が壁に反響し、いやでも全包囲から聞こえてくる空間。
「コロッセオなんて無駄なものを要塞につくるなよ」
「無駄ではない。ここは罪を犯した者を公開処刑にする場所であり、もし生き残ることが出来れば、俺の兵として戦うことが許される、誉れを得ることも出来る場所でもある」
なに胸を反らして言ってんだか……。
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるぞ。
謁見の間のように無駄にこった彫刻が施されている。とはいえあそこに比べれば派手さはなく、悪くはない。
後の世界で歴史的な価値がある場所にはなりそうだ。
「お前のせいでいい造りも台無しだけどな」
「本当にふざけたヤツだ!」
俺たちが立つ地面を見下ろすように、コロッセオに設けている主賓席のような場所から、相も変わらず顔真っ赤で俺にお怒りの馬鹿息子。
「馬鹿と煙は高いところが好きっていうけど本当だな」
「その口を閉じろ! 然もなくば――」
「手ずから首を刎ねてやるってか? あんな弓術しかないのにか? ハッ! 笑わせる」
コイツ相手だと気持ちいいくらいに嘲った言葉が口から溢れてくる。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あんまり怒らせるな」
ベルがここで割って入る。
「頭の血管が切れてそれで死なれても困る」
と、小馬鹿にするところは流石だね。
「黙って我が妃となればいいものを」
「……お前の自信はどこから来るんだよ!」
残念ルックスが勘違い発言ばかりしやがって。
俺だってそのめげないメンタルさえあれば、常にパーティーにいるベルにしつこく言い寄りたいよ。
根負けして付き合ってもらえるかもしれないからな。
「どうした?」
「なんでもないよ」
――――しつこく言い寄るよりは男磨きに励んで、必殺必中のほうが格好いいかな。
「ええい! ベルヴェットから離れろ」
「ええ……」
普通にやり取りしただけで嫉妬丸出し。
自分の恋人とすでに認定してんのかな?
ベルにとってはいい迷惑だな。
当の本人は馴れ馴れしくベルヴェットと名を出されていることに若干の疲れを見せている。
「ベルはここで待機してろよ。木箱の中身は理解できているからな。あいつの自信は俺たちの想像通りだろうさ。それが出てきた時、サクサクと解決してあいつの自信を粉々にしてやる」
「では任せよう。粉々どころか、塵も残すな」
「お、おう」
厳しいね~。
「だから親しくするな! 我が妃だぞ」
俺の妃だよ! って即答で言えたら格好いいんだろうけどな。
「俺の仲間だよ。勝手に妃にするな!」
が、関の山だった。
通路の先から光が差す。次の広間なのか、それとも外へと続くのか。
――結果は、
「外であり、空間でもあるな」
よくもまあ――
「無駄な物を建設している」
「ですよね」
俺の心の発言を続けてくれたのはゲッコーさん。
火山灰などを使用したローマンコンクリートにも似た材料を使用しての建築物の中に俺たちは立っている。
上を見ればしっかりと空。
淡い朱色に染まる時間帯。
夕陽が沈み、宵の藍色へと変わる前ってところか。
なので通路の先から差した光は空が原因ではない。
方々に立つ白光色の外灯が光の原因。まるでグランドなんかのナイター照明のようだった。
「本当にここまでこれたか。ガリオン達も存外に不甲斐ない」
「おう。胸くそ悪い声による7.1サラウンドは地獄だぜ」
俯瞰から見れば円形の形状となっているだろう建築物。
なので声が壁に反響し、いやでも全包囲から聞こえてくる空間。
「コロッセオなんて無駄なものを要塞につくるなよ」
「無駄ではない。ここは罪を犯した者を公開処刑にする場所であり、もし生き残ることが出来れば、俺の兵として戦うことが許される、誉れを得ることも出来る場所でもある」
なに胸を反らして言ってんだか……。
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるぞ。
謁見の間のように無駄にこった彫刻が施されている。とはいえあそこに比べれば派手さはなく、悪くはない。
後の世界で歴史的な価値がある場所にはなりそうだ。
「お前のせいでいい造りも台無しだけどな」
「本当にふざけたヤツだ!」
俺たちが立つ地面を見下ろすように、コロッセオに設けている主賓席のような場所から、相も変わらず顔真っ赤で俺にお怒りの馬鹿息子。
「馬鹿と煙は高いところが好きっていうけど本当だな」
「その口を閉じろ! 然もなくば――」
「手ずから首を刎ねてやるってか? あんな弓術しかないのにか? ハッ! 笑わせる」
コイツ相手だと気持ちいいくらいに嘲った言葉が口から溢れてくる。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あんまり怒らせるな」
ベルがここで割って入る。
「頭の血管が切れてそれで死なれても困る」
と、小馬鹿にするところは流石だね。
「黙って我が妃となればいいものを」
「……お前の自信はどこから来るんだよ!」
残念ルックスが勘違い発言ばかりしやがって。
俺だってそのめげないメンタルさえあれば、常にパーティーにいるベルにしつこく言い寄りたいよ。
根負けして付き合ってもらえるかもしれないからな。
「どうした?」
「なんでもないよ」
――――しつこく言い寄るよりは男磨きに励んで、必殺必中のほうが格好いいかな。
「ええい! ベルヴェットから離れろ」
「ええ……」
普通にやり取りしただけで嫉妬丸出し。
自分の恋人とすでに認定してんのかな?
ベルにとってはいい迷惑だな。
当の本人は馴れ馴れしくベルヴェットと名を出されていることに若干の疲れを見せている。
「ベルはここで待機してろよ。木箱の中身は理解できているからな。あいつの自信は俺たちの想像通りだろうさ。それが出てきた時、サクサクと解決してあいつの自信を粉々にしてやる」
「では任せよう。粉々どころか、塵も残すな」
「お、おう」
厳しいね~。
「だから親しくするな! 我が妃だぞ」
俺の妃だよ! って即答で言えたら格好いいんだろうけどな。
「俺の仲間だよ。勝手に妃にするな!」
が、関の山だった。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる