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北伐

PHASE-836【徒手空拳の使い手だね】

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「生意気な事だ――」
 お? 一気に雰囲気が変わったな。
 すぅぅぅぅっと気配が体から抜け出ていくような目の前の存在。

「トール来ますよ」

「分かってる」
 気配を捉えられなくしたところで、一気に虚を衝くような攻撃方法といったところだろう。
 ガリオンの職種はアサシンとか忍者系かな?

「アクセル」

「!? コクリコ防御!」

「理解しています――よっと!」
 なんて言いつつも後方に吹き飛んでいった。
 突如としてコクリコの目の前に現れたガリオンの一撃は掌底。
 虚を衝くなどという搦め手ではなく、正々堂々な正面からの掌底は腰を深く落としての高速の一撃だった。

「ふん」

「おう!?」
 ターゲットを直ぐさま俺に変更。
 弓なりになって鎌を思わせる蹴撃を回避する。
 直撃すれば首を持っていかれた。と、想像させる鋭い蹴りだった。

「ふん」

「わっと!?」
 回し蹴りからの掌底へ繋げるコンボ。
 籠手部分でガードするも俺の体が浮き上がる。

「せいや!」
 浮き上がったところにこれまた腰を落とした見事な正拳突きが見舞われる。
 これも籠手でガードするも、浮いた体では威力を殺すことが出来ず、後方に勢いよく飛ばされる。

「「「「おお!」」」」
 その他の傭兵団からは感嘆の声。
 あっという間に勇者とそのパーティーの一人を吹き飛ばしたという強さに魅了されたようだ。
 ま、こういった状況をちゃんと窺えるくらいの余裕はこちらにはあるんだけどね。

「ほいっと」
 宙空で姿勢を正してトンボを切って着地。
 勿論ガードしたのでノーダメージ。

「コクリコ」

「はいはい」
 軽妙な返事だからノーダメージだな。
 手にしたミスリルフライパンでしっかりと掌底を防いでいたのも見えていたから、そこまで心配はしてなかったけど。
 防ぐ事には成功したけど、ガリオンの膂力とスピードは素直に驚異だと思った。
 普通にアクセルも使用するし。

「流石に勇者一行か」

「感心してくれてどうも」
 ノーダメージに対して素直に称賛。

「アクセルからの一撃に対応できたのは団長だけだ」

「そうかい」
 ま、こちとらアクセル以上のピリアである縮地の驚異を知っているし、それに対応してきたからな
 本当に今思うと、レッドキャップスってまじで難敵だったんだな。
 何とか対応はしたけども、ベルとゲッコーさんの存在に依存していたからな。
 超長距離から一瞬にして間合いまで移動してくるとかチートだった。
 
 アクセルは自分も使用するから便利なのは分かっているけど、移動範囲を考えると、やはり縮地はチートだな。
 出来れば魔王護衛軍とはこの先あんまり戦いたくないな~。
 まあ、魔王を倒さないといけない時点でぶつかる相手だけど。
 それに……、デミタスもいるしな……。あの美人狐さんは俺を仇として狙ってくるだろうし……。

「ふぅ……」

「何を物思いに耽っている。それほどに俺は容易いか龍鱗鬼。それともその嘆息は俺と対峙しての後悔か?」

「それで呼んでくれるのは、嬉しいようで恥ずかしくもある。よく自分で鋼鬼とか言えるね」

「自信があるからな。そしてその発言からして、嘆息は俺を驚異と判断して吐いたものではないようだな」

「まあね」

「ならば嘆息は吐かせなくても、血反吐は吐かせてやろう。この鋼鬼、ガリオン・バフマンがな!」
 この傭兵団は皆して強気だしポジティブだな。
 相対する度にその部分は見習いたいと思わされる。
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