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北伐
PHASE-823【クセはあるけどいい連携】
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「大したもんだ。腕にズンッと伝わる威力だったよ」
魔法が使用出来るということで自己満足に浸っている連中とは違う。ちゃんと魔法使用のための修練も培っている。
「上からの物言いだな。威力を理解したならダメージも――」
「有るわけがない」
爆煙を振り払うようにしてガーズの前に姿を見せてやる。
実際に俺が無傷だからか、目を見開いて驚いていた。
長身痩躯の男も髪で目が隠れていたが、この時だけはガーズ同様に驚いた表情を向けてくれる。目は見えないけど。
「あとその剣。魔法による透過なんかの類いじゃないな。爆煙による土埃に触れたのが原因か、剣の影を捉えることが出来たからな。実体剣ではあるみたいだな」
「ふん」
「断空なんて言って、まるで空間を斬ることが出来るような能力者的二つ名だけど、その実、柄や剣身が透明な材質で作られている剣ってだけじゃねえか」
以前の俺ならそんな剣が有るのか? と、固定観念が邪魔をしただろうけど、この世界は魔法ありきの世界だからな。
不思議な材質があっても当然だと思わないと――、
「なっと!」
ちょうど俺の側で倒れている湿布が手にしていたスティレットが目に入ったので、二本とも頂戴して一本をガーズに投擲。
「他愛ない」
見えない剣でしっかりと叩き落とす。
金属音が響いた。
「流石に使い手となると剣身の長さもしっかりと熟知しているようだ」
「当然だろう」
この辺もその他の傭兵団とは違うな。修練に裏打ちされた実力。
ここで更に残ったもう一本を投擲すれば、
「ヒュウ」
独特は気迫と共に縄鏢がスティレットを絡め取る。
高速で飛ぶ物を造作もなく絡め取るのも修練の賜物だな。
「やるね」
素直に称賛。
「まだ名乗ってなかったな。蛇牙のアザグンスという」
「名乗るならちゃんと人の目を見るべきだぞ」
「視線を合わせるのが苦手でな」
とか言ってるけど、自分の視線を悟られたくないだけだろうな。
鏢を投擲する時に、視線から投擲の軌道を読み取られないようにしてるってのが本音だろう。
「シュウ!」
一直線に鏢が迫る。
ロープを切ってやれば問題なし。
「――お!?」
俺の前方で軌道を変える。
上へと鏢が移動すると、その後、直上から落ちてくる。
「ハープーンミサイルのポップアップ、ダイブみたいな芸当だな」
バックステップで躱すと、
「ヒュウ!」
二投目が迫る。これまたおかしな軌道。
大きな弧を描きつつ、俺の側面から迫ってくる。
「本当に芸達者だな」
変幻自在の軌道と、前髪で視線を隠して次の軌道を悟らせないってのが上手くかみ合ってる。
「鍛錬からのものだ」
「おっと」
こっちも上手くかみ合っている。
いい連携だよ。二枚看板に恥じない。
トリッキーな縄鏢の攻撃に合わせて、ラピッドを使用しての正面からの接近戦。しかも見えない剣というこれまた正攻法な攻め方のようでトリッキーな攻撃方法。
「クセがすげぇ!」
大きく後退して距離をとる。
「余裕だな」
「戦いだからな。余裕はないけど、油断しないで向き合わせてもらっている」
格好つけて返す。
「きざったらしい男だな。勇者というのは」
女性陣がいたら言わないけどな。とくにうちの女性陣は俺が格好つけたことを口にすれば嘲笑してくるからな。
さてさて――。
やり手ではあるけども攻撃動作や体の動きは見切れる。
問題があるとするなら見えない剣だ。
爆煙で何となくは捕捉したけども、しっかりとは見えていないからな。
現状、剣身がどれくらいあるか分からない事から、間合いが認識しづらいという不安要素が残ってしまう。
だから無駄に距離をとってしまう。
魔法が使用出来るということで自己満足に浸っている連中とは違う。ちゃんと魔法使用のための修練も培っている。
「上からの物言いだな。威力を理解したならダメージも――」
「有るわけがない」
爆煙を振り払うようにしてガーズの前に姿を見せてやる。
実際に俺が無傷だからか、目を見開いて驚いていた。
長身痩躯の男も髪で目が隠れていたが、この時だけはガーズ同様に驚いた表情を向けてくれる。目は見えないけど。
「あとその剣。魔法による透過なんかの類いじゃないな。爆煙による土埃に触れたのが原因か、剣の影を捉えることが出来たからな。実体剣ではあるみたいだな」
「ふん」
「断空なんて言って、まるで空間を斬ることが出来るような能力者的二つ名だけど、その実、柄や剣身が透明な材質で作られている剣ってだけじゃねえか」
以前の俺ならそんな剣が有るのか? と、固定観念が邪魔をしただろうけど、この世界は魔法ありきの世界だからな。
不思議な材質があっても当然だと思わないと――、
「なっと!」
ちょうど俺の側で倒れている湿布が手にしていたスティレットが目に入ったので、二本とも頂戴して一本をガーズに投擲。
「他愛ない」
見えない剣でしっかりと叩き落とす。
金属音が響いた。
「流石に使い手となると剣身の長さもしっかりと熟知しているようだ」
「当然だろう」
この辺もその他の傭兵団とは違うな。修練に裏打ちされた実力。
ここで更に残ったもう一本を投擲すれば、
「ヒュウ」
独特は気迫と共に縄鏢がスティレットを絡め取る。
高速で飛ぶ物を造作もなく絡め取るのも修練の賜物だな。
「やるね」
素直に称賛。
「まだ名乗ってなかったな。蛇牙のアザグンスという」
「名乗るならちゃんと人の目を見るべきだぞ」
「視線を合わせるのが苦手でな」
とか言ってるけど、自分の視線を悟られたくないだけだろうな。
鏢を投擲する時に、視線から投擲の軌道を読み取られないようにしてるってのが本音だろう。
「シュウ!」
一直線に鏢が迫る。
ロープを切ってやれば問題なし。
「――お!?」
俺の前方で軌道を変える。
上へと鏢が移動すると、その後、直上から落ちてくる。
「ハープーンミサイルのポップアップ、ダイブみたいな芸当だな」
バックステップで躱すと、
「ヒュウ!」
二投目が迫る。これまたおかしな軌道。
大きな弧を描きつつ、俺の側面から迫ってくる。
「本当に芸達者だな」
変幻自在の軌道と、前髪で視線を隠して次の軌道を悟らせないってのが上手くかみ合ってる。
「鍛錬からのものだ」
「おっと」
こっちも上手くかみ合っている。
いい連携だよ。二枚看板に恥じない。
トリッキーな縄鏢の攻撃に合わせて、ラピッドを使用しての正面からの接近戦。しかも見えない剣というこれまた正攻法な攻め方のようでトリッキーな攻撃方法。
「クセがすげぇ!」
大きく後退して距離をとる。
「余裕だな」
「戦いだからな。余裕はないけど、油断しないで向き合わせてもらっている」
格好つけて返す。
「きざったらしい男だな。勇者というのは」
女性陣がいたら言わないけどな。とくにうちの女性陣は俺が格好つけたことを口にすれば嘲笑してくるからな。
さてさて――。
やり手ではあるけども攻撃動作や体の動きは見切れる。
問題があるとするなら見えない剣だ。
爆煙で何となくは捕捉したけども、しっかりとは見えていないからな。
現状、剣身がどれくらいあるか分からない事から、間合いが認識しづらいという不安要素が残ってしまう。
だから無駄に距離をとってしまう。
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