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北伐
PHASE-801【ムキーッ!】
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「魔導隊」
相手さんは、数人に言い様にされている状況。
シャルナの魔法による範囲攻撃を警戒したのか、征北の一人が指示を出せば、横隊の魔導師たちが手にするスタッフを一斉にシャルナへと向ける。
ワンドの先端から色彩豊かな輝きが顕現する――ところに――爆発音。
「あらあら容易いわね」
上空にて腕組みをし、漆黒のマントを靡かせるのはリン。
さっきまで王様の横でゆったりとしていたのに、ここで動いてくれたのは俺の突撃に感化されたからだと信じたい。
「まだ強者がいるか」
「当然じゃない」
四男坊へと微笑みつつ、手を下方へと向けるところで、
「攻撃中止! プロテクションだ」
微笑みから察したのか、これは不味いと判断し、今度は四男坊が直接に指示を出す。
爆発の難を逃れた一部の魔導隊は怯むことなく、指示に従い即座にワンドをリンの方向へと向ける。
術者一人一人の前に畳一畳ほどの障壁。
三列横隊からなる魔導隊のプロテクションは壮観でもある。
その加護に守られている者達はこれで一安心。
って、思いたいだろうけど、
「ファイヤーボール」
「「「「な!?」」」」
魔導隊が一様に驚くのは、やはりサイズが原因だろう。
野球ボールでもバスケットボールでもなく、バランスボールサイズの火球が放たれる光景。
地下施設のオベリスクバフがなくてもこれだもんな。
火球が障壁へと着弾すれば大爆発。その中に混じる苦痛の声。
「あらあら脆い障壁ね~。もう少し鍛錬しなさい。それじゃただの紙よ。紙。私のを止めたいなら、おばあさまくらいの実力が必須ね」
「はあ!!」
「あら、誰も貴女なんて一言も言ってないわよ。自覚しているのかしら?」
「ムキーッ!」
安心しろシャルナ。お年寄りはムキーッ! なんて発言はしないだろうからな。十分若いよ。
約二千歳だけど若いよ。ムキーッ! は若い。
というか、ようやっと目立ってきたなシャルナ。ここ最近は影が薄かったのにな。
「なんという……先ほどのが本当にファイヤーボールだとでも」
「そうだよ」
「勇者殿が言うならば本当なのでしょうね……。ノービスの魔法であの威力。本気になられたら、この兵力でも……」
「勝てないだろうね。実際こっちは本気を出していないし」
きっぱりと四男坊に言ってやる。
「鞘から刀身を見せてもくれませんからね」
いや、それもそうなんだけど、プレイギアを封じ手にしてる時点で本気じゃないんだよね。
正確に言うと、ベルやゲッコーさんに先生なんかは召喚された方々だから、プレイギアの力ではあるんだけど、仲間というカテゴリーだからな。
仲間なので、プレイギアの力を使用しているという対象からは外してもいい事にする。という俺ルール。
それよりもだ。力の差は歴然だし、この四男坊は賢いので、
「撤退するなら見逃すぜ。さっきの珍妙団みたいにな」
と、交渉してみる。
「お断りする」
即答だった。
「お叱りを受けるからか? 問題ないよ。その人物からお叱りを受けることはないから」
「もう勝った気でおられる」
「勝つつもりだから戦争してんだよ」
「なるほど。しかし騎士として何もせずに退くことは出来ません」
偉いね。
俺が転生する前、公爵サイドがこういった面々を王都の援軍に派遣してくれていたなら、魔王軍にあそこまで好き勝手させなかっただろうな。
「気概は良いな」
「また前に出てきて……」
伯爵が軍勢を引き連れて相手とぶつかる。その中にはスケルトンライダー達の姿もあった。
で、四男坊と対面すれば、伯爵に対して恭しく挨拶。
俺のパーティーだけでなくギルドメンバーに兵達も本格的に戦闘開始。
加えて――、
「一気に敵中を貫き、敵陣最奥部に楔を打ち込むための縦深攻撃を敢行する。我に続け!」
と、ワーグに跨がる高順氏が睥睨しつつ敵陣深くに切り込んでいくのが見える。
白銀の鎧に真紅の外套は目立つね。
偉丈夫に睨まれればそれだけで相手側の動きがぎこちなくなり、そこに征東騎士団を中心とした騎兵隊が猛然と続く。
俯瞰から見る事が出来るなら、高順氏が指揮する騎兵は、錐状となって敵陣を穿っているところだろう。
今回は敵が陣形により対応しているから拠点あつかいになるので、ユニークスキル【陥陣営】も15パーセントから25パーセントに向上しての能力付与になる。
突破して敵後方に回り込んで、包囲攻撃の段取りをするのが縦深攻撃だったな。
【陥陣営】発動の高順氏が指揮をしている時点で、縦深攻撃は間違いなく成功する。
突破後はそのまま左右に広がって敵陣を最奥部からの翼包囲。
こちら側もそれに連動しての翼包囲を行い、全包囲へとなれば、包囲殲滅戦へと移行するんだろうな。
この流れが先生の考えだろう。
実行されれば、ここにいる面子は投降しない限り、凄惨な状況下で命を失うことになる。
相手さんは、数人に言い様にされている状況。
シャルナの魔法による範囲攻撃を警戒したのか、征北の一人が指示を出せば、横隊の魔導師たちが手にするスタッフを一斉にシャルナへと向ける。
ワンドの先端から色彩豊かな輝きが顕現する――ところに――爆発音。
「あらあら容易いわね」
上空にて腕組みをし、漆黒のマントを靡かせるのはリン。
さっきまで王様の横でゆったりとしていたのに、ここで動いてくれたのは俺の突撃に感化されたからだと信じたい。
「まだ強者がいるか」
「当然じゃない」
四男坊へと微笑みつつ、手を下方へと向けるところで、
「攻撃中止! プロテクションだ」
微笑みから察したのか、これは不味いと判断し、今度は四男坊が直接に指示を出す。
爆発の難を逃れた一部の魔導隊は怯むことなく、指示に従い即座にワンドをリンの方向へと向ける。
術者一人一人の前に畳一畳ほどの障壁。
三列横隊からなる魔導隊のプロテクションは壮観でもある。
その加護に守られている者達はこれで一安心。
って、思いたいだろうけど、
「ファイヤーボール」
「「「「な!?」」」」
魔導隊が一様に驚くのは、やはりサイズが原因だろう。
野球ボールでもバスケットボールでもなく、バランスボールサイズの火球が放たれる光景。
地下施設のオベリスクバフがなくてもこれだもんな。
火球が障壁へと着弾すれば大爆発。その中に混じる苦痛の声。
「あらあら脆い障壁ね~。もう少し鍛錬しなさい。それじゃただの紙よ。紙。私のを止めたいなら、おばあさまくらいの実力が必須ね」
「はあ!!」
「あら、誰も貴女なんて一言も言ってないわよ。自覚しているのかしら?」
「ムキーッ!」
安心しろシャルナ。お年寄りはムキーッ! なんて発言はしないだろうからな。十分若いよ。
約二千歳だけど若いよ。ムキーッ! は若い。
というか、ようやっと目立ってきたなシャルナ。ここ最近は影が薄かったのにな。
「なんという……先ほどのが本当にファイヤーボールだとでも」
「そうだよ」
「勇者殿が言うならば本当なのでしょうね……。ノービスの魔法であの威力。本気になられたら、この兵力でも……」
「勝てないだろうね。実際こっちは本気を出していないし」
きっぱりと四男坊に言ってやる。
「鞘から刀身を見せてもくれませんからね」
いや、それもそうなんだけど、プレイギアを封じ手にしてる時点で本気じゃないんだよね。
正確に言うと、ベルやゲッコーさんに先生なんかは召喚された方々だから、プレイギアの力ではあるんだけど、仲間というカテゴリーだからな。
仲間なので、プレイギアの力を使用しているという対象からは外してもいい事にする。という俺ルール。
それよりもだ。力の差は歴然だし、この四男坊は賢いので、
「撤退するなら見逃すぜ。さっきの珍妙団みたいにな」
と、交渉してみる。
「お断りする」
即答だった。
「お叱りを受けるからか? 問題ないよ。その人物からお叱りを受けることはないから」
「もう勝った気でおられる」
「勝つつもりだから戦争してんだよ」
「なるほど。しかし騎士として何もせずに退くことは出来ません」
偉いね。
俺が転生する前、公爵サイドがこういった面々を王都の援軍に派遣してくれていたなら、魔王軍にあそこまで好き勝手させなかっただろうな。
「気概は良いな」
「また前に出てきて……」
伯爵が軍勢を引き連れて相手とぶつかる。その中にはスケルトンライダー達の姿もあった。
で、四男坊と対面すれば、伯爵に対して恭しく挨拶。
俺のパーティーだけでなくギルドメンバーに兵達も本格的に戦闘開始。
加えて――、
「一気に敵中を貫き、敵陣最奥部に楔を打ち込むための縦深攻撃を敢行する。我に続け!」
と、ワーグに跨がる高順氏が睥睨しつつ敵陣深くに切り込んでいくのが見える。
白銀の鎧に真紅の外套は目立つね。
偉丈夫に睨まれればそれだけで相手側の動きがぎこちなくなり、そこに征東騎士団を中心とした騎兵隊が猛然と続く。
俯瞰から見る事が出来るなら、高順氏が指揮する騎兵は、錐状となって敵陣を穿っているところだろう。
今回は敵が陣形により対応しているから拠点あつかいになるので、ユニークスキル【陥陣営】も15パーセントから25パーセントに向上しての能力付与になる。
突破して敵後方に回り込んで、包囲攻撃の段取りをするのが縦深攻撃だったな。
【陥陣営】発動の高順氏が指揮をしている時点で、縦深攻撃は間違いなく成功する。
突破後はそのまま左右に広がって敵陣を最奥部からの翼包囲。
こちら側もそれに連動しての翼包囲を行い、全包囲へとなれば、包囲殲滅戦へと移行するんだろうな。
この流れが先生の考えだろう。
実行されれば、ここにいる面子は投降しない限り、凄惨な状況下で命を失うことになる。
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