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北伐
PHASE-793【数は互角。質は上】
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「トールよよくぞ手早くこの糧秣廠を占拠してくれた」
「いえ、皆のお陰ですよ」
「奇跡を目にしたかったが、それはまた次の機会だろうな」
「直ぐにその機会も来るでしょう」
「その時はバリタンも平常心を失わず、私の横で奇跡を目にすることだな」
「御意」
カラカラと笑い合う二人。
伯爵の突撃に関してそこまでお叱りがないとなると、今までの戦いでもそういった場面が多かったんだろう。
感覚が麻痺してんだろうな。
そして人の死に対する感覚も、俺と比べて麻痺の度合いが強いようだ。
「しかしあそこで征北が動くのは見事でしたな」
「だが公爵の兵達はあの川で一万は討ち死にした」
「然り。これも荀彧殿の指揮によるもの。そう考えると馬鹿みたいな突撃でその指揮を妨げたことお許しいただきたい」
「いえいえ、上手くいったのでよしとしましょう」
――――公爵軍の死者は一万を超えた。
絶望的な状況下にあったが、逃走する兵達を上手く収拾したのは、救援に来た征北騎士団だった。
対岸ではタワーシールドによる陣形を素早く展開。徒渉に成功した公爵軍を鉄壁の中へと誘導し、麓まで誘導。
これにより徒渉成功の者達からは死傷者がでなかった。
だが、それでも川には多くの死者が未だ倒れているままだ。
死体に死体が覆いかぶさり、流れる血によって下流が赤く染まった光景は地獄絵図。
当分の間、あの光景が俺の頭から消えることはないだろう。
「投降した兵も多いと聞く。おおよそ半数まで減らしたと考えてよいだろう」
水に続いて麦粥の入った木皿をメイドさんから受け取ると、豪快に口に運び嚥下した後、王様がそう発せば先生は首肯。
麦粥を掻き込み腹を満たせば、投降兵にもしっかりと食事を与えて欲しいとメイドさん達にお願いしていた。
命令でなくお願いってところがこの王様らしい。
「王。後方からの伝令です」
「口伝でよいぞナブル」
手にして書簡を広げて読む時間も惜しいと王様。
内容は――、各地の諸侯たちが王軍へと参加するために馳せ参じているというものだった。
先生の親書に、馬鹿息子の愚行。これに加えて王軍の快進撃が参加の要因だろう。
現在確認できるだけでも五千の数が後続に合流したそうだ。
にしても素早い合流だな。
大方、この戦を私兵に偵察させていた日和見の諸侯たちが、王様優勢となった時点で直ぐに合流できるよう、息を潜めて待機していたんだろう。
「助力に感謝せねばな」
今度は水ではなく、タンカートに並々と注がれたワインを一気に呷って、
「これで数の上では互角になったとみてよいな」
と、上機嫌に王様が継ぐ。
数は互角。質は圧倒的にこちらが上。
これは揺るがぬ勝利を得ると、バリタン伯爵が禿頭をペチンと叩きつつ、相槌を入れての呵々大笑。
「しかしリン様には感謝しかありません」
王様達よりも後に廠内へと入ってきたリンの姿を目にすれば、王様が感謝の言葉。
「そう。もっと感謝していいのよ」
ドヤ顔で王様に返せば、王様はただひたすらに頭を下げるだけ。
やはり太祖の時代の英雄にはどうしても頭が上がらないようだ。というか、心酔しているようにも思える。
でも感謝は分かる。
リンが使役するスケルトンライダー達が川に浸かる遺体を回収してくれる活躍。
もちろん王兵にギルドメンバーも回収には参加してくれているけど、精神的にも肉体的にも負担は少ない。
アンデッドの存在はこういった時も頼りになる。
「遺体の身元なんかを調べるのも大変でしょうね」
「いえ勇者殿。その様な時間はありませぬ。戦に出た以上は名無しの死者としての覚悟もあります。無論それは我々とて同じです」
呵々大笑から表情を真顔へと変えて、伯爵がそう言う。
リンが魔法によって大穴を掘り、そこに遺体を埋葬するだけでも十分すぎるという。
戦いが終わればこの地に慰霊碑を作り供養すればいいと、王様も続く。
なんか死に対してドライなような気もするが、これがこの世界の普通なんだな。
むしろ打ち捨てたままにする事がざらで、多くの死に反応したマナが原因となってアンデッド地帯になったりもするらしいから、しっかりと埋葬して祈りを捧げることが出来るだけ、ここの戦場はましなんだそうな。
この辺は俺にとってファンタジーな内容だった。
放っておけばマナが原因でアンデッドになることもあるんだな……。
「いえ、皆のお陰ですよ」
「奇跡を目にしたかったが、それはまた次の機会だろうな」
「直ぐにその機会も来るでしょう」
「その時はバリタンも平常心を失わず、私の横で奇跡を目にすることだな」
「御意」
カラカラと笑い合う二人。
伯爵の突撃に関してそこまでお叱りがないとなると、今までの戦いでもそういった場面が多かったんだろう。
感覚が麻痺してんだろうな。
そして人の死に対する感覚も、俺と比べて麻痺の度合いが強いようだ。
「しかしあそこで征北が動くのは見事でしたな」
「だが公爵の兵達はあの川で一万は討ち死にした」
「然り。これも荀彧殿の指揮によるもの。そう考えると馬鹿みたいな突撃でその指揮を妨げたことお許しいただきたい」
「いえいえ、上手くいったのでよしとしましょう」
――――公爵軍の死者は一万を超えた。
絶望的な状況下にあったが、逃走する兵達を上手く収拾したのは、救援に来た征北騎士団だった。
対岸ではタワーシールドによる陣形を素早く展開。徒渉に成功した公爵軍を鉄壁の中へと誘導し、麓まで誘導。
これにより徒渉成功の者達からは死傷者がでなかった。
だが、それでも川には多くの死者が未だ倒れているままだ。
死体に死体が覆いかぶさり、流れる血によって下流が赤く染まった光景は地獄絵図。
当分の間、あの光景が俺の頭から消えることはないだろう。
「投降した兵も多いと聞く。おおよそ半数まで減らしたと考えてよいだろう」
水に続いて麦粥の入った木皿をメイドさんから受け取ると、豪快に口に運び嚥下した後、王様がそう発せば先生は首肯。
麦粥を掻き込み腹を満たせば、投降兵にもしっかりと食事を与えて欲しいとメイドさん達にお願いしていた。
命令でなくお願いってところがこの王様らしい。
「王。後方からの伝令です」
「口伝でよいぞナブル」
手にして書簡を広げて読む時間も惜しいと王様。
内容は――、各地の諸侯たちが王軍へと参加するために馳せ参じているというものだった。
先生の親書に、馬鹿息子の愚行。これに加えて王軍の快進撃が参加の要因だろう。
現在確認できるだけでも五千の数が後続に合流したそうだ。
にしても素早い合流だな。
大方、この戦を私兵に偵察させていた日和見の諸侯たちが、王様優勢となった時点で直ぐに合流できるよう、息を潜めて待機していたんだろう。
「助力に感謝せねばな」
今度は水ではなく、タンカートに並々と注がれたワインを一気に呷って、
「これで数の上では互角になったとみてよいな」
と、上機嫌に王様が継ぐ。
数は互角。質は圧倒的にこちらが上。
これは揺るがぬ勝利を得ると、バリタン伯爵が禿頭をペチンと叩きつつ、相槌を入れての呵々大笑。
「しかしリン様には感謝しかありません」
王様達よりも後に廠内へと入ってきたリンの姿を目にすれば、王様が感謝の言葉。
「そう。もっと感謝していいのよ」
ドヤ顔で王様に返せば、王様はただひたすらに頭を下げるだけ。
やはり太祖の時代の英雄にはどうしても頭が上がらないようだ。というか、心酔しているようにも思える。
でも感謝は分かる。
リンが使役するスケルトンライダー達が川に浸かる遺体を回収してくれる活躍。
もちろん王兵にギルドメンバーも回収には参加してくれているけど、精神的にも肉体的にも負担は少ない。
アンデッドの存在はこういった時も頼りになる。
「遺体の身元なんかを調べるのも大変でしょうね」
「いえ勇者殿。その様な時間はありませぬ。戦に出た以上は名無しの死者としての覚悟もあります。無論それは我々とて同じです」
呵々大笑から表情を真顔へと変えて、伯爵がそう言う。
リンが魔法によって大穴を掘り、そこに遺体を埋葬するだけでも十分すぎるという。
戦いが終わればこの地に慰霊碑を作り供養すればいいと、王様も続く。
なんか死に対してドライなような気もするが、これがこの世界の普通なんだな。
むしろ打ち捨てたままにする事がざらで、多くの死に反応したマナが原因となってアンデッド地帯になったりもするらしいから、しっかりと埋葬して祈りを捧げることが出来るだけ、ここの戦場はましなんだそうな。
この辺は俺にとってファンタジーな内容だった。
放っておけばマナが原因でアンデッドになることもあるんだな……。
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