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北伐
PHASE-789【禿頭伯爵と異形の騎兵】
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【陥陣営】は拠点があれば高順氏を含めて指揮下にある者達の能力が25%向上するけど、今回は拠点はない。
でも、野戦であっても15%の能力向上。
これにSランクスキルの【騎兵用兵】により移動速度、旋回、機動性が向上しているから高順氏が指揮する騎兵達は一つの生き物のように戦場を駆ける。
正面からぶつかっても絶望的な強さだろうに、戦わずに逃げることに徹する者達は一体どれほどの恐怖に支配されているのだろうか。
清廉潔白でクソ真面目な高順氏。
本来なら挑んでくる者達と戦いたいだろうけど、こと戦となればそこは一切の手を抜かない。
背中からの一突きだろうが辺然と行使する。
後ろ袈裟ばかりは武人として恥とも考えているだろうけど、それ以上に勝つための戦いを選択する事に重きを置くからこそ、戦えば敵陣を必ず陥落させるという戦い方を身につけていったのかもな。
そう思っていれば追撃速度が緩やかになってくる。
代わりに――、
「ぐぅうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「うへ……」
ドローンのマイクが声を拾ったわけじゃない。
この拠点までしっかりと聞こえてくる大音声は大気すら震わせるものだった。
「巨獣のような雄叫びですな」
流石の先生も目を丸くしている。
逃げる公爵軍の悲鳴をかき消すたった一人の雄叫び。
声の主はバリタン伯爵。
猿叫とはまた違った気の狂ったような声。
声と共に愛馬を疾駆させ、高順氏を追い抜けば、手綱から両手を離して下半身だけで馬を御しながら、真鍮色のオリハルコンからなる硬鞭を振るっていく。
『ばっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
独特な気迫を今度はドローンが拾う……。
硬鞭をケトルハットへと叩き込めば容易くひしゃげ、見舞われた者は力なく膝から崩れ落ちる。
独特の気迫から繰り出された馬上からの二撃により二人の兵が倒れる。
間違いなく絶命というのが分かる。
『「ウラララララララララララララァァァァァァイ!!!!」』
今度はドローンからと遠方からのもの。
伯爵の大音声は生声が若干だけど遅れて俺たちの耳朶に届いた。
「正に狂乱の双鉄鞭という異名のままですな」
わずかに呆れ口調の先生。
俺たちは皆して首肯で返す。
俺たちの呆れなんてどこ吹く風。更に高順氏と騎兵を引き離して爆走する伯爵。
ゲームだと確実に【出過ぎだぞ。自重せよ】って言われるレベル。
マグナートクラスの爵位持ちが相手が逃げているからとはいえ単騎駆けはどうかと思うよ……。
でも心配ご無用とばかりの光景をドローンから送られる映像で確認。
「これは恐怖ですね……」
と、コクリコ。
「流石に相手が可哀想だよ……」
と、シャルナ。
二人揃って仄暗さのある声音。
それも仕方ないこと。
緩やかな進軍になった高順氏たちと併走しつつ、そのまま伯爵に続く騎兵の姿。
淡い緑光を纏わせた馬に乗り、乗り手も眼窩に緑光を灯し、残光の尾を引く。
手にするのは鉄製の槍。金属のブレストプレートに、伯爵とお揃いのT字型の鼻あてがある金属兜。
それを被っている存在は――スケルトン。
「スケルトンライダーってやつだな」
騎乗する緑光を纏わせた馬ももちろん骨だけのスケルトンホース。
高順氏たちの進軍ペースが落ちる中でスケルトンライダー達が先頭へと飛び出してくる。
砦からの追撃だからな。流石に高順氏が跨がるワーグに、騎士団の馬たちにも疲労が出ててきたようだな。
ゆっくりとした速度を維持しつつ、追撃から追走に変更。
だがしかし、代わりに出てきた連中はアンデッド。
疲労なんか一切無い連中。
生者に対し敵意を見せる者達は、リンの指揮下にあっても生者の命を奪えるとあらば、容赦なく槍にて突き刺していく。
よく手入れされた矛先は公爵軍のレザーアーマーを貫き、胸から槍を生やした兵士をそのままに駆ける。
馬の突進力と突きに特化した槍の相性は抜群。
次々に突き刺し、命が消えたことを確認すれば、引きずる死体から槍を引き抜いて死体をかなぐり捨てると、新たな獲物へと槍を突き刺していく光景。
糧秣廠からの射撃。
廠から離れ、何とか要塞へと舵を切ったところで高順氏たちの追撃。
その追撃が緩やかになったかと思えば、だめ押しとばかりにこれだ……。
「二人の言うとおりだな。これはあんまりだ。俺は公爵軍の兵士には絶対になりたくないよ」
猛る伯爵に、死を振りまいていくスケルトンライダー達。
アンデッドの騎兵は三百騎ほどと決して多くはない数だけど、その追撃はこの世の終わりを告げているようにも見える。
終焉からの使者という例えが似合う者達だった。
でも、野戦であっても15%の能力向上。
これにSランクスキルの【騎兵用兵】により移動速度、旋回、機動性が向上しているから高順氏が指揮する騎兵達は一つの生き物のように戦場を駆ける。
正面からぶつかっても絶望的な強さだろうに、戦わずに逃げることに徹する者達は一体どれほどの恐怖に支配されているのだろうか。
清廉潔白でクソ真面目な高順氏。
本来なら挑んでくる者達と戦いたいだろうけど、こと戦となればそこは一切の手を抜かない。
背中からの一突きだろうが辺然と行使する。
後ろ袈裟ばかりは武人として恥とも考えているだろうけど、それ以上に勝つための戦いを選択する事に重きを置くからこそ、戦えば敵陣を必ず陥落させるという戦い方を身につけていったのかもな。
そう思っていれば追撃速度が緩やかになってくる。
代わりに――、
「ぐぅうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「うへ……」
ドローンのマイクが声を拾ったわけじゃない。
この拠点までしっかりと聞こえてくる大音声は大気すら震わせるものだった。
「巨獣のような雄叫びですな」
流石の先生も目を丸くしている。
逃げる公爵軍の悲鳴をかき消すたった一人の雄叫び。
声の主はバリタン伯爵。
猿叫とはまた違った気の狂ったような声。
声と共に愛馬を疾駆させ、高順氏を追い抜けば、手綱から両手を離して下半身だけで馬を御しながら、真鍮色のオリハルコンからなる硬鞭を振るっていく。
『ばっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
独特な気迫を今度はドローンが拾う……。
硬鞭をケトルハットへと叩き込めば容易くひしゃげ、見舞われた者は力なく膝から崩れ落ちる。
独特の気迫から繰り出された馬上からの二撃により二人の兵が倒れる。
間違いなく絶命というのが分かる。
『「ウラララララララララララララァァァァァァイ!!!!」』
今度はドローンからと遠方からのもの。
伯爵の大音声は生声が若干だけど遅れて俺たちの耳朶に届いた。
「正に狂乱の双鉄鞭という異名のままですな」
わずかに呆れ口調の先生。
俺たちは皆して首肯で返す。
俺たちの呆れなんてどこ吹く風。更に高順氏と騎兵を引き離して爆走する伯爵。
ゲームだと確実に【出過ぎだぞ。自重せよ】って言われるレベル。
マグナートクラスの爵位持ちが相手が逃げているからとはいえ単騎駆けはどうかと思うよ……。
でも心配ご無用とばかりの光景をドローンから送られる映像で確認。
「これは恐怖ですね……」
と、コクリコ。
「流石に相手が可哀想だよ……」
と、シャルナ。
二人揃って仄暗さのある声音。
それも仕方ないこと。
緩やかな進軍になった高順氏たちと併走しつつ、そのまま伯爵に続く騎兵の姿。
淡い緑光を纏わせた馬に乗り、乗り手も眼窩に緑光を灯し、残光の尾を引く。
手にするのは鉄製の槍。金属のブレストプレートに、伯爵とお揃いのT字型の鼻あてがある金属兜。
それを被っている存在は――スケルトン。
「スケルトンライダーってやつだな」
騎乗する緑光を纏わせた馬ももちろん骨だけのスケルトンホース。
高順氏たちの進軍ペースが落ちる中でスケルトンライダー達が先頭へと飛び出してくる。
砦からの追撃だからな。流石に高順氏が跨がるワーグに、騎士団の馬たちにも疲労が出ててきたようだな。
ゆっくりとした速度を維持しつつ、追撃から追走に変更。
だがしかし、代わりに出てきた連中はアンデッド。
疲労なんか一切無い連中。
生者に対し敵意を見せる者達は、リンの指揮下にあっても生者の命を奪えるとあらば、容赦なく槍にて突き刺していく。
よく手入れされた矛先は公爵軍のレザーアーマーを貫き、胸から槍を生やした兵士をそのままに駆ける。
馬の突進力と突きに特化した槍の相性は抜群。
次々に突き刺し、命が消えたことを確認すれば、引きずる死体から槍を引き抜いて死体をかなぐり捨てると、新たな獲物へと槍を突き刺していく光景。
糧秣廠からの射撃。
廠から離れ、何とか要塞へと舵を切ったところで高順氏たちの追撃。
その追撃が緩やかになったかと思えば、だめ押しとばかりにこれだ……。
「二人の言うとおりだな。これはあんまりだ。俺は公爵軍の兵士には絶対になりたくないよ」
猛る伯爵に、死を振りまいていくスケルトンライダー達。
アンデッドの騎兵は三百騎ほどと決して多くはない数だけど、その追撃はこの世の終わりを告げているようにも見える。
終焉からの使者という例えが似合う者達だった。
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