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北伐
PHASE-783【常勝? 勘違いもいいところ】
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やっぱり肌寒さを感じられない装備も善し悪しだな。
眠気を宿している時は冷気に肌を当てて覚ますのもいいからな。
昨晩のベルのお茶をしっかりと堪能するには、寒さを感じた方が良かったわけだし。
「あまり眠れていないようですね」
「――まあな」
空に向けていた視線を声の方へと向ける。
ランシェルを含めたメイドさんが、横一列にて待機した光景がそこにはある。
俺の視線が向いたことを確認したところで、揃ったカーテシーによる朝の挨拶。
いいじゃない。俺、権力者みたい。
「お疲れでしたら癒やしを」
「いや、大丈夫――」
ランシェルじゃなくて、横にいるサキュバスメイドさん達なら大歓迎――って、危うく口から出てしまうところだった。
流石に傷つけたくはないからね――友人として。
拒むと拗ねる顔をするので、そこが可愛いと思ってしまうのを全力で振り払う俺。
一日が始まったばかりなのに、もうしんどいよ……。
うん――――。皆さん早い。というか、寝てないってのが正解かな。
『HQ』
「こちらHQ」
HQとか言ってるよ先生……。
モスグリーンのテントとストライカーの中央にはテントに加えてタープテント。
その下では通信機器が置かれた折りたたみ式のミリタリーテーブルが並んでおり、バラクラバを被った数人のS級さん達がそこに座っている。
その中でただ一人、三国志ファッションの人がスピーカーマイクを片手に、通信相手と会話を行っているところに出くわす。
普段、手にしない物だから楽しいだろうと思いきや表情は真剣。
理由は連絡先からだ。
声からして別働隊として破壊工作の任に就いているスチュワートさんだろう。
『街道にて、砦へと向かう騎兵あり。速度はギャロップ。数四。装備はケトルハットが目立つ公爵軍の軽装の正規兵。伝令と思われる。連絡遮断のため、これより対処する。オーバー』
「ギャロップ――襲歩ですね。了承。驚異対象として対処を願います――。オーバー」
『了解。アウト』
うん。不慣れながらに対応する先生ってのも珍しいな。
完璧超人にも不得手があるって事だな。
どうせ直ぐに通信とかもこなせるようになるんだろうけどさ。
そもそもがスチュワートさん達は別働隊として指示を受けて行動しているから、即応のためにも一々こっちに伺いを立てなくてもいいんだよね。
通信機器がちゃんと使用出来るのかの確認と、先生のスキルアップの為ってのが理由だろうな。
周囲のS級さん達にもっと素早く応対できるように師事を受けるくらいだからね。
一分もしないうちに対処したって通信が入ってくるあたり、手早い仕事をこなしてくれる別働隊は流石のS級さん達である。
四人三分隊が街道に光学迷彩ありで潜伏すれば、それだけで公爵サイドの道は閉ざされたと考えていいだろう。
街道にはC-4 だけでなく、地雷なんかも仕掛けていることだろう……。
事が済んだら絶対に撤去させないとな。
「さあ、どうぞ」
捕らえた方々も今では協力的。
本日もお手伝いに励むために朝食をしっかりと口に運んでいる。
けども――、
「ぬぅ……」
「食べないと持たないですよ」
流石に先生に突撃を敢行しただけあって、この廠の中でも反骨心を未だに見せている兵士長は、俺に苦々しい表情を向けてくる。
そんな人物に俺は、木皿にたっぷりの麦粥をよそってあげる。
コクリコが本日も大盤振る舞いした干し肉もしっかりと入れてあげて。
でも受け取ろうとはしない。腕組みをして、眉間に皺を寄せた愛想のない顔で丸太に腰掛けているだけ。
武士は食わねど高楊枝ってやつかな。
「純粋な正規兵なんですよね」
「無論だ」
公爵軍の編制は、農民からなる足軽ポジションの正規兵がメインだけども、職業軍人のような方々も当然いるわけだ。
精兵の征北と違い、農民を鍛える立ち位置の人物。
先生の挑発によって突撃したのも兵を鼓舞するためだったし、ここで自分が反骨心を見せる事で、範を示そうとしているんだろう。
気骨ある人物だ。
「情けない……」
「まあ、人生ってのは勝ち負けで判定すると、負けが多いのが普通なんで、こういった事もありますよ」
と、フォロー。
こういう時にベルなんかがいれば、「そうか?」って真顔で言いそうなので、こういった場には適してないから周辺の警戒をしてもらっている。
「常勝の勇者殿がそんなことを言うとはな」
「ハハ――」
乾いた笑いでしか返せねえよ。
俺が常勝とかちゃんちゃらおかしいね。
負け続けの人生だっての。
仲間達がいるから勝つ事が出来ているのであって、俺一人ならとっくの昔に負けている。
ベルとの鍛錬だってえらい目にしか遭わされないし……。美鬼の恐怖の記憶はこれから先も消えることがないだろうさ。
眠気を宿している時は冷気に肌を当てて覚ますのもいいからな。
昨晩のベルのお茶をしっかりと堪能するには、寒さを感じた方が良かったわけだし。
「あまり眠れていないようですね」
「――まあな」
空に向けていた視線を声の方へと向ける。
ランシェルを含めたメイドさんが、横一列にて待機した光景がそこにはある。
俺の視線が向いたことを確認したところで、揃ったカーテシーによる朝の挨拶。
いいじゃない。俺、権力者みたい。
「お疲れでしたら癒やしを」
「いや、大丈夫――」
ランシェルじゃなくて、横にいるサキュバスメイドさん達なら大歓迎――って、危うく口から出てしまうところだった。
流石に傷つけたくはないからね――友人として。
拒むと拗ねる顔をするので、そこが可愛いと思ってしまうのを全力で振り払う俺。
一日が始まったばかりなのに、もうしんどいよ……。
うん――――。皆さん早い。というか、寝てないってのが正解かな。
『HQ』
「こちらHQ」
HQとか言ってるよ先生……。
モスグリーンのテントとストライカーの中央にはテントに加えてタープテント。
その下では通信機器が置かれた折りたたみ式のミリタリーテーブルが並んでおり、バラクラバを被った数人のS級さん達がそこに座っている。
その中でただ一人、三国志ファッションの人がスピーカーマイクを片手に、通信相手と会話を行っているところに出くわす。
普段、手にしない物だから楽しいだろうと思いきや表情は真剣。
理由は連絡先からだ。
声からして別働隊として破壊工作の任に就いているスチュワートさんだろう。
『街道にて、砦へと向かう騎兵あり。速度はギャロップ。数四。装備はケトルハットが目立つ公爵軍の軽装の正規兵。伝令と思われる。連絡遮断のため、これより対処する。オーバー』
「ギャロップ――襲歩ですね。了承。驚異対象として対処を願います――。オーバー」
『了解。アウト』
うん。不慣れながらに対応する先生ってのも珍しいな。
完璧超人にも不得手があるって事だな。
どうせ直ぐに通信とかもこなせるようになるんだろうけどさ。
そもそもがスチュワートさん達は別働隊として指示を受けて行動しているから、即応のためにも一々こっちに伺いを立てなくてもいいんだよね。
通信機器がちゃんと使用出来るのかの確認と、先生のスキルアップの為ってのが理由だろうな。
周囲のS級さん達にもっと素早く応対できるように師事を受けるくらいだからね。
一分もしないうちに対処したって通信が入ってくるあたり、手早い仕事をこなしてくれる別働隊は流石のS級さん達である。
四人三分隊が街道に光学迷彩ありで潜伏すれば、それだけで公爵サイドの道は閉ざされたと考えていいだろう。
街道にはC-4 だけでなく、地雷なんかも仕掛けていることだろう……。
事が済んだら絶対に撤去させないとな。
「さあ、どうぞ」
捕らえた方々も今では協力的。
本日もお手伝いに励むために朝食をしっかりと口に運んでいる。
けども――、
「ぬぅ……」
「食べないと持たないですよ」
流石に先生に突撃を敢行しただけあって、この廠の中でも反骨心を未だに見せている兵士長は、俺に苦々しい表情を向けてくる。
そんな人物に俺は、木皿にたっぷりの麦粥をよそってあげる。
コクリコが本日も大盤振る舞いした干し肉もしっかりと入れてあげて。
でも受け取ろうとはしない。腕組みをして、眉間に皺を寄せた愛想のない顔で丸太に腰掛けているだけ。
武士は食わねど高楊枝ってやつかな。
「純粋な正規兵なんですよね」
「無論だ」
公爵軍の編制は、農民からなる足軽ポジションの正規兵がメインだけども、職業軍人のような方々も当然いるわけだ。
精兵の征北と違い、農民を鍛える立ち位置の人物。
先生の挑発によって突撃したのも兵を鼓舞するためだったし、ここで自分が反骨心を見せる事で、範を示そうとしているんだろう。
気骨ある人物だ。
「情けない……」
「まあ、人生ってのは勝ち負けで判定すると、負けが多いのが普通なんで、こういった事もありますよ」
と、フォロー。
こういう時にベルなんかがいれば、「そうか?」って真顔で言いそうなので、こういった場には適してないから周辺の警戒をしてもらっている。
「常勝の勇者殿がそんなことを言うとはな」
「ハハ――」
乾いた笑いでしか返せねえよ。
俺が常勝とかちゃんちゃらおかしいね。
負け続けの人生だっての。
仲間達がいるから勝つ事が出来ているのであって、俺一人ならとっくの昔に負けている。
ベルとの鍛錬だってえらい目にしか遭わされないし……。美鬼の恐怖の記憶はこれから先も消えることがないだろうさ。
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