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北伐
PHASE-775【廠内探索】
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「要塞にも備蓄しているでしょうが、四万からなる兵達の食糧拠点ともなれば、流石の量ですね」
「こちらは号して一万五千。手持ちの兵糧だけでもこの戦は十分に戦えますが、今後の対魔王軍戦を考えれば、今後の収穫量と合わせ、非常に潤ったものとなります」
ずっとご満悦の先生。
兵の士気に不可欠な食事。
今後、その心配をしなくてもいい事になった。最悪ミズーリからの食料調達ってのもあるけど、現地で得られて且つ困らないというのが素晴らしい。
俺たちはウハウハ。相手からすると大痛打。
「さて、相手が必死になる前にもう少し見て回りましょう」
「余裕ですね」
「無論ですとも。主もおりますし、現在はS級殿たちが壁上から全体を見ているのですからね」
うん。確かに安心だな。
正直、ここがライム渓谷の砦を通り越しての最前線となっているけど、S級さん達が見張り行ってくれれば、枕を高くして熟睡できる。
「主。提案が」
「分かりますよ。倉を開放して投降した兵と人足さん達の腹を満たしてやるって事でしょ?」
「素晴らしいです」
だって、三国志の漫画なんかだとよくあるシチュエーションだからね。
実行することで敵意を薄めることが出来るもんね。
現状のメイドさん達だけでも十分だろうけど、更に腹を満たせば敵意どころか投降した兵とも信頼関係を結べそうだ。
「ただ、食を満たせば、色を求めますので――」
「大丈夫ですよ先生。皆、強いですから」
「ですね」
メイドさん達を襲うって事はないよ。
あっても先ほどみたいに倒されるだけだしな。
――二人で話しをしつつ、次の建物へと到着。
歩きながらの話の内容は、伝令としてメイドさん数人に、馬にて瘴気ルートから王軍の砦まで行ってもらい、糧秣廠を陥落させた事を伝えてもらうというもの。
瘴気ルートからだと砦まで直ぐだから、向こうもこちらの報を受けて一気に動くことだろう。
「どうやら武器庫も無事ですね」
前回ここを訪れた時に、S級さん達がしっかりとC-4 を設置してくれてたけど、食糧庫同様にこの一帯も無事だ。
訪れた時にしっかりと地図も描いてくれていて、それを手にする先生と俺は迷うことなく廠内を歩いて回れる。
もし食糧庫のように潜伏している兵がいたとしても問題なし。
俺たちの後ろでは常にチコが犬みたいに鼻をスンスンと動かして周辺を警戒してくれているし、ヒッポグリフとスピットワイバーンの二頭も俺たちの直上でラフベリーサークルを描いて目を光らせている。
占拠は出来てもこっちは人が少ないからね。
しっかりと一人一人が役割をもって行動し、数の少なさを補っていかないといけない。
だから中央で指揮する立場の先生も、こうやって行動しているわけだし。
「では開けますね」
一応、武器庫だからね。
強力な武具を装備した兵士が、開けたと同時に仕掛けてくる可能性もある。
鍵がかかっていないのが余計に怪しいし。
チコに先生を守らせつつ、俺も万全を期す。
首にさげた曲玉を象る地龍の角の一欠片にて地面を擦る。
「来いゴロ丸」
「キュゥゥウ!」
打てば響く返事。
声と共に地面から快活良く片腕を突き出して飛び出してくるのは、ラグビーボール体型の青白く輝くミスリルゴーレム。
「これはまた何ともベル殿が好みそうな姿ですね」
「実際にそうでしたよ」
短い手足にて俺に一礼をする礼儀正しいゴロ丸。
「よしゴロ丸。そこの扉を開いてくれ」
「キュ!」
元気に返事をし、扉をゆっくり丁寧に開く。
三メートルサイズの巨体とは裏腹に、膝をついて、両手で開く所作には品があった。
「こちらは号して一万五千。手持ちの兵糧だけでもこの戦は十分に戦えますが、今後の対魔王軍戦を考えれば、今後の収穫量と合わせ、非常に潤ったものとなります」
ずっとご満悦の先生。
兵の士気に不可欠な食事。
今後、その心配をしなくてもいい事になった。最悪ミズーリからの食料調達ってのもあるけど、現地で得られて且つ困らないというのが素晴らしい。
俺たちはウハウハ。相手からすると大痛打。
「さて、相手が必死になる前にもう少し見て回りましょう」
「余裕ですね」
「無論ですとも。主もおりますし、現在はS級殿たちが壁上から全体を見ているのですからね」
うん。確かに安心だな。
正直、ここがライム渓谷の砦を通り越しての最前線となっているけど、S級さん達が見張り行ってくれれば、枕を高くして熟睡できる。
「主。提案が」
「分かりますよ。倉を開放して投降した兵と人足さん達の腹を満たしてやるって事でしょ?」
「素晴らしいです」
だって、三国志の漫画なんかだとよくあるシチュエーションだからね。
実行することで敵意を薄めることが出来るもんね。
現状のメイドさん達だけでも十分だろうけど、更に腹を満たせば敵意どころか投降した兵とも信頼関係を結べそうだ。
「ただ、食を満たせば、色を求めますので――」
「大丈夫ですよ先生。皆、強いですから」
「ですね」
メイドさん達を襲うって事はないよ。
あっても先ほどみたいに倒されるだけだしな。
――二人で話しをしつつ、次の建物へと到着。
歩きながらの話の内容は、伝令としてメイドさん数人に、馬にて瘴気ルートから王軍の砦まで行ってもらい、糧秣廠を陥落させた事を伝えてもらうというもの。
瘴気ルートからだと砦まで直ぐだから、向こうもこちらの報を受けて一気に動くことだろう。
「どうやら武器庫も無事ですね」
前回ここを訪れた時に、S級さん達がしっかりとC-4 を設置してくれてたけど、食糧庫同様にこの一帯も無事だ。
訪れた時にしっかりと地図も描いてくれていて、それを手にする先生と俺は迷うことなく廠内を歩いて回れる。
もし食糧庫のように潜伏している兵がいたとしても問題なし。
俺たちの後ろでは常にチコが犬みたいに鼻をスンスンと動かして周辺を警戒してくれているし、ヒッポグリフとスピットワイバーンの二頭も俺たちの直上でラフベリーサークルを描いて目を光らせている。
占拠は出来てもこっちは人が少ないからね。
しっかりと一人一人が役割をもって行動し、数の少なさを補っていかないといけない。
だから中央で指揮する立場の先生も、こうやって行動しているわけだし。
「では開けますね」
一応、武器庫だからね。
強力な武具を装備した兵士が、開けたと同時に仕掛けてくる可能性もある。
鍵がかかっていないのが余計に怪しいし。
チコに先生を守らせつつ、俺も万全を期す。
首にさげた曲玉を象る地龍の角の一欠片にて地面を擦る。
「来いゴロ丸」
「キュゥゥウ!」
打てば響く返事。
声と共に地面から快活良く片腕を突き出して飛び出してくるのは、ラグビーボール体型の青白く輝くミスリルゴーレム。
「これはまた何ともベル殿が好みそうな姿ですね」
「実際にそうでしたよ」
短い手足にて俺に一礼をする礼儀正しいゴロ丸。
「よしゴロ丸。そこの扉を開いてくれ」
「キュ!」
元気に返事をし、扉をゆっくり丁寧に開く。
三メートルサイズの巨体とは裏腹に、膝をついて、両手で開く所作には品があった。
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