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北伐
PHASE-735【これぞ駄目貴族】
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「では名を聞かせてもらおうか」
一室へと入れば長テーブル。
円卓と違ってしっかりと上座があるテーブルのもっとも位の高い位置に愚息が腰を下ろす。
流石にその行為には、使者のロイドルと征北騎士団のミランドが引きつった笑みになり、こちらに頭を下げる。
侯爵が伯爵に耳打ちするように、我々は客人のようなものですからと諫める。
同じ武闘派でもインテリは違う。
「さあ、適当に座ってくれ」
本人はそんなつもりはないんだろうけど、一々と挑発じみている。
ラノベで典型的な嫌な貴族然たる男が、俺たちの目の前に座っているわけだ。
こういうヤツって、無能なんだけど悪趣味な遊びとかは天才的ってヤツなんだよな。
そうであってほしくないけど、ランシェルが男だったとしても問題ないとかってタイプだったりすると大変だな……。
確かローマ皇帝の中にもそういうのが当たり前ってのが何人かいるってのを雑学で得た記憶がある。
貴族とかになると普通では物足りなくなったりする可能性があるから、やはりここは俺が前に立ってマイヤとランシェルに向ける視線を遮っておこう。
俺の配慮を理解したのか、ランシェルから感謝の小声を背中で受ける。
でも、黄色い声が混じっているのはやめてくれ……。
マイヤからだったら嬉しかったけど。
俺が遮ることで、わずかだが馬鹿息子が眉根を寄せる。
おもしろくないと言ったところだろう。
「貴様は?」
問いかけには顎をしゃくってのもの。
勇者に対してなんたる不遜! なんとも生意気なヤツだ! と、更にお怒りの伯爵。
俺の為に怒りを覚えてくれる素敵な貴族だ。
それに怒り状態の人が近くにいると、なぜか冷静になる法則のおかげで俺の心にはさざ波も立たない。
「俺は遠坂 亨。勇者であり名代の護衛だ」
「貴様が?」
う~ん。流石に慣れてはいるんだけどね~。
俺よりも俺の横に立つゲッコーさんやミュラーさんの方がってのはいつも思うことだから慣れてはいるんだけど……。
なんだろう……、コイツに言われるとスゲーむかつく!
実力の無い存在に言われているからだろうな。
さっきまで心にはさざ波も立っていなかったのに、若干だけど時化になりかけているよ。
「周囲が否定しないと言うことは信実か」
ほう。小馬鹿にした笑みを向けられたよ。
とてつもなく殴りたいおっさんだよ! 心が大嵐になりそうだ。
「ならば俺も勇者に対して名乗っておこう。英邁にして豪放磊落。次期公爵である、カリオネル・グリー・ゼハートその人である」
自分で言ってるよ。
英邁も豪放磊落も人に言ってもらうような言葉じゃないの?
自分で言う時点で周囲には言ってもらってないって事なのかな?
口には出さないで履歴書の長所にだけ書いとけ。
だから俺の周りの皆さんが嘲笑を浮かべてしまうんだぞ。
本当に、絵に描いたようなラノベの駄目貴族じゃないか。
「名乗りはよいがなカリオネル殿」
「――――様に変えてはどうか。バリタン伯」
「ほお」
駄目貴族というのは、人を怒らせるってのだけは天賦の才ってのがあるんだろうな。
伯爵は限界寸前。
「俺は次期公爵だぞ。王族の血を引く存在を敬うのは当然」
「だがいまは爵位を有していないただの嫡子であろう。そちらこそこちらに対し敬意を払うべきだ」
「俺はまだ爵位を持ってはいないが、そんなものは関係ない」
「ほお!」
伯爵いまにも躍りかかりそうだな。
「だってそうだろう。さっきも言ったが、俺には純然たる王家の血が流れている。尊き存在である者を前にして恭しくするのは、万物全てに適用される」
「うぇ……」
大丈夫かランシェル。
あまりにも不快な言い様に気持ち悪くなったかな?
安心しろ。俺もだから。
一室へと入れば長テーブル。
円卓と違ってしっかりと上座があるテーブルのもっとも位の高い位置に愚息が腰を下ろす。
流石にその行為には、使者のロイドルと征北騎士団のミランドが引きつった笑みになり、こちらに頭を下げる。
侯爵が伯爵に耳打ちするように、我々は客人のようなものですからと諫める。
同じ武闘派でもインテリは違う。
「さあ、適当に座ってくれ」
本人はそんなつもりはないんだろうけど、一々と挑発じみている。
ラノベで典型的な嫌な貴族然たる男が、俺たちの目の前に座っているわけだ。
こういうヤツって、無能なんだけど悪趣味な遊びとかは天才的ってヤツなんだよな。
そうであってほしくないけど、ランシェルが男だったとしても問題ないとかってタイプだったりすると大変だな……。
確かローマ皇帝の中にもそういうのが当たり前ってのが何人かいるってのを雑学で得た記憶がある。
貴族とかになると普通では物足りなくなったりする可能性があるから、やはりここは俺が前に立ってマイヤとランシェルに向ける視線を遮っておこう。
俺の配慮を理解したのか、ランシェルから感謝の小声を背中で受ける。
でも、黄色い声が混じっているのはやめてくれ……。
マイヤからだったら嬉しかったけど。
俺が遮ることで、わずかだが馬鹿息子が眉根を寄せる。
おもしろくないと言ったところだろう。
「貴様は?」
問いかけには顎をしゃくってのもの。
勇者に対してなんたる不遜! なんとも生意気なヤツだ! と、更にお怒りの伯爵。
俺の為に怒りを覚えてくれる素敵な貴族だ。
それに怒り状態の人が近くにいると、なぜか冷静になる法則のおかげで俺の心にはさざ波も立たない。
「俺は遠坂 亨。勇者であり名代の護衛だ」
「貴様が?」
う~ん。流石に慣れてはいるんだけどね~。
俺よりも俺の横に立つゲッコーさんやミュラーさんの方がってのはいつも思うことだから慣れてはいるんだけど……。
なんだろう……、コイツに言われるとスゲーむかつく!
実力の無い存在に言われているからだろうな。
さっきまで心にはさざ波も立っていなかったのに、若干だけど時化になりかけているよ。
「周囲が否定しないと言うことは信実か」
ほう。小馬鹿にした笑みを向けられたよ。
とてつもなく殴りたいおっさんだよ! 心が大嵐になりそうだ。
「ならば俺も勇者に対して名乗っておこう。英邁にして豪放磊落。次期公爵である、カリオネル・グリー・ゼハートその人である」
自分で言ってるよ。
英邁も豪放磊落も人に言ってもらうような言葉じゃないの?
自分で言う時点で周囲には言ってもらってないって事なのかな?
口には出さないで履歴書の長所にだけ書いとけ。
だから俺の周りの皆さんが嘲笑を浮かべてしまうんだぞ。
本当に、絵に描いたようなラノベの駄目貴族じゃないか。
「名乗りはよいがなカリオネル殿」
「――――様に変えてはどうか。バリタン伯」
「ほお」
駄目貴族というのは、人を怒らせるってのだけは天賦の才ってのがあるんだろうな。
伯爵は限界寸前。
「俺は次期公爵だぞ。王族の血を引く存在を敬うのは当然」
「だがいまは爵位を有していないただの嫡子であろう。そちらこそこちらに対し敬意を払うべきだ」
「俺はまだ爵位を持ってはいないが、そんなものは関係ない」
「ほお!」
伯爵いまにも躍りかかりそうだな。
「だってそうだろう。さっきも言ったが、俺には純然たる王家の血が流れている。尊き存在である者を前にして恭しくするのは、万物全てに適用される」
「うぇ……」
大丈夫かランシェル。
あまりにも不快な言い様に気持ち悪くなったかな?
安心しろ。俺もだから。
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