719 / 1,668
北伐
PHASE-719【直ぐに拳骨】
しおりを挟む
「いつ頃から始めてんの?」
「城壁の改修は今始めたところよ。田畑は夜中から」
夜中に王都内を動けば物音が出るからという気づかいから、夜の作業は田畑だけにしたんだな。
加えて夜中にアンデッドが街中を徘徊してるのを目撃したら卒倒ものだもんな。
「私はここで監督をしておくから、貴男は貴男の出来る事をやらないとね」
「おう」
田畑が更に広くなれば、大魔法で作物を一気に収穫できるようにしてくれるとも約束してくれた。
昔、この王都の高祖である初代王に協力していたってのは、こういう光景を目にすれば信実だったというのが分かる。
当時はまだ人間だったようだけど。
ちなみにイルマイユはメイドさん達が面倒を見てくれているそうで、今はギルドハウス三階の部屋でゆっくりと寝ているそうだ。
じゃあ俺ももう一休みといきたいけども、この冷気のおかげで完全に目が覚めてしまった。
――――自室で着替えて身だしなみを整え、お茶を一杯楽しんだ後に一階へと移動すれば、いま起きたメンバー達が早めの朝食。
あくびで大口を開けば、そのまま口に食べ物を入れる器用さ。
早朝に出て行った面子よりは遅いけど、それでも十分に早い時間帯だ。
皆と挨拶をしつつテーブルの上の食事を目にすれば、
「いいね」
ふかしたジャガイモを潰して塩で食べるシンプルなものに、収穫したばかりの稗や粟の粥。
質素な味を豪華にするのは干し肉ではなくベーコンだ。
とうとうベーコンが普通に食卓に並ぶようになったか。
パンもあるし、スープだってクリーム色。野菜もゴロゴロだ。
当初の塩のみでの味付けなの? ってのからは脱却できている。
食が豊かになるという事は、それだけ発展しているって事だからな。
「おう会頭」
このフランクな口調は、
「おうギムロン。久しぶり」
立派な髭を赤い玉に通したおしゃれな仕様だけど、その髭に食べかすがついていれば台無しというもの。
「今から道具屋でも開くのか?」
「うんにゃ。今日は若い奴らを朝早くから鍛えるのよ」
要塞トールハンマーにドワーフや腕利きの鍛冶職人が出向しているから、王都では新人の育成に力を入れているそうだ。
ギムロン曰く、覚えがとてもいいそうだ。
習う人材の才能もなんだろうけど、先生のユニークスキル・王佐の才の効果も大きいな。
――……うん……。王佐の才もあるんだろうけども……。
「馬鹿野郎ぃ!」
ドスッと鈍い音が作業場に響く。
続けて転げ回る音に、若者が悶絶する声。
いや~俺の世界の現在の学校だと、間違いなく行き過ぎた体罰だな。
PTAと教育委員会とマスコミが動き出すレベルだね。
めきめきと成長するのは先生のスキルもさることながら、ギムロンたち先達の厳しいご指導によるものなんだろう。
しかし、覚えがとてもいいとは言うけども、とてもいいという者に対する行為じゃないね。
「いいか小僧。お前のは研いでんじゃねえ。削ってんだよ! そんなんを戦いの場に持っていけば、この世界のために戦う奴らがおっちんじまうぞ!」
「は、はい……」
「練習用だからって無駄にすんなよ。それだって新米達が使うには十分な数打ちだからな」
車輪の研ぎ石を使用してショートソードを研いでるのは人間の若者。
俺くらいの年齢だろう。
そんな彼を師事するのはギムロン。
俺と一緒になって冒険したときは、無遠慮ながらも俺を立ててくれていたけど、鍛冶場の中となると、また違った一面を見る事が出来る。
頑固で厳しいおやじだ。
俺たちドワーフやエルフなんかと違って、人間ってのは短命種なんだから、俺たちよりも必死になって覚えろ! と、何とも厳しいが、それに対して心が折れることなく食らいついて行こうとする若者は、教えられたことをしっかりと体に覚えさせていく。
こうやって優秀な人材が育っていく。
前線に立つ者達が命を預けるに足りる装備品を後方にて魂込めて製作していくわけだ。
ギムロンや他のドワーフ達。人間のベテラン職人達に鍛えられれば、直ぐにでも立派な職人になってくれることだろう。
「城壁の改修は今始めたところよ。田畑は夜中から」
夜中に王都内を動けば物音が出るからという気づかいから、夜の作業は田畑だけにしたんだな。
加えて夜中にアンデッドが街中を徘徊してるのを目撃したら卒倒ものだもんな。
「私はここで監督をしておくから、貴男は貴男の出来る事をやらないとね」
「おう」
田畑が更に広くなれば、大魔法で作物を一気に収穫できるようにしてくれるとも約束してくれた。
昔、この王都の高祖である初代王に協力していたってのは、こういう光景を目にすれば信実だったというのが分かる。
当時はまだ人間だったようだけど。
ちなみにイルマイユはメイドさん達が面倒を見てくれているそうで、今はギルドハウス三階の部屋でゆっくりと寝ているそうだ。
じゃあ俺ももう一休みといきたいけども、この冷気のおかげで完全に目が覚めてしまった。
――――自室で着替えて身だしなみを整え、お茶を一杯楽しんだ後に一階へと移動すれば、いま起きたメンバー達が早めの朝食。
あくびで大口を開けば、そのまま口に食べ物を入れる器用さ。
早朝に出て行った面子よりは遅いけど、それでも十分に早い時間帯だ。
皆と挨拶をしつつテーブルの上の食事を目にすれば、
「いいね」
ふかしたジャガイモを潰して塩で食べるシンプルなものに、収穫したばかりの稗や粟の粥。
質素な味を豪華にするのは干し肉ではなくベーコンだ。
とうとうベーコンが普通に食卓に並ぶようになったか。
パンもあるし、スープだってクリーム色。野菜もゴロゴロだ。
当初の塩のみでの味付けなの? ってのからは脱却できている。
食が豊かになるという事は、それだけ発展しているって事だからな。
「おう会頭」
このフランクな口調は、
「おうギムロン。久しぶり」
立派な髭を赤い玉に通したおしゃれな仕様だけど、その髭に食べかすがついていれば台無しというもの。
「今から道具屋でも開くのか?」
「うんにゃ。今日は若い奴らを朝早くから鍛えるのよ」
要塞トールハンマーにドワーフや腕利きの鍛冶職人が出向しているから、王都では新人の育成に力を入れているそうだ。
ギムロン曰く、覚えがとてもいいそうだ。
習う人材の才能もなんだろうけど、先生のユニークスキル・王佐の才の効果も大きいな。
――……うん……。王佐の才もあるんだろうけども……。
「馬鹿野郎ぃ!」
ドスッと鈍い音が作業場に響く。
続けて転げ回る音に、若者が悶絶する声。
いや~俺の世界の現在の学校だと、間違いなく行き過ぎた体罰だな。
PTAと教育委員会とマスコミが動き出すレベルだね。
めきめきと成長するのは先生のスキルもさることながら、ギムロンたち先達の厳しいご指導によるものなんだろう。
しかし、覚えがとてもいいとは言うけども、とてもいいという者に対する行為じゃないね。
「いいか小僧。お前のは研いでんじゃねえ。削ってんだよ! そんなんを戦いの場に持っていけば、この世界のために戦う奴らがおっちんじまうぞ!」
「は、はい……」
「練習用だからって無駄にすんなよ。それだって新米達が使うには十分な数打ちだからな」
車輪の研ぎ石を使用してショートソードを研いでるのは人間の若者。
俺くらいの年齢だろう。
そんな彼を師事するのはギムロン。
俺と一緒になって冒険したときは、無遠慮ながらも俺を立ててくれていたけど、鍛冶場の中となると、また違った一面を見る事が出来る。
頑固で厳しいおやじだ。
俺たちドワーフやエルフなんかと違って、人間ってのは短命種なんだから、俺たちよりも必死になって覚えろ! と、何とも厳しいが、それに対して心が折れることなく食らいついて行こうとする若者は、教えられたことをしっかりと体に覚えさせていく。
こうやって優秀な人材が育っていく。
前線に立つ者達が命を預けるに足りる装備品を後方にて魂込めて製作していくわけだ。
ギムロンや他のドワーフ達。人間のベテラン職人達に鍛えられれば、直ぐにでも立派な職人になってくれることだろう。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる