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北伐
PHASE-705【円卓】
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「さて、これからの事を話し合うために場所を変えようか」
王様の発言に臣下の皆さんが動き出すので俺たちも後に続く。
――――初めて入室した部屋は四十畳ほどの広さがある軍議室。
王様も話しに参加するこの軍議室は、大本営と考えていいだろう。
室内の中央にはドーナツ状の円卓があり、それを囲うようにもう一つの円卓という二重の作り。
上座も下座もないが、一応は階級によって座る場所は決まっているようだ。
内側の円卓には王様、侯爵。ゲストであり魔大陸サイドの代表者であるリズベッドが王様の隣。
で、その隣に俺。
隣と行っても間隔はあいており、肘が触れ合うような距離ではない。
外周には貴族やナブル将軍。ベル、ゲッコーさん。コクリコ、シャルナにガルム氏とアルスン翁。
非戦闘員ということもあり、姫は外周の円卓に腰を下ろすのでライラはその横。
翁が苦労しないように、ちゃんとゴブリン用に座高の高い椅子を用意してくれる配慮はお見事。
そんな椅子を準備してくれたのは、壁際と扉に立つ完全武装の近衛の方々。
以前よりも洗練された装備と面構えだ。
さっきも穂先はピクリと動いたけども、刺激しないように構えるまでにはいたらなかったからね。
しっかりと胆力もついてきている。
ドーナツ状の円卓なので、もちろん真ん中は空洞となっている。
空洞となった位置には先生が一メートルほどの長さがある指揮棒を持って佇立。
先生の足元の床には大きな地図が描かれている。
大陸がでかでかと描かれている事から、この王都を中心とした地図なのかな?
海が端っこ描かれてないから多分そうだろう。
しかし――、床には地図。二重になったドーナツ型の円卓というデザインは、明らかに時代が違うような気がする。
木で出来た円卓に触れれば真新しい。
深呼吸をすれば木の香りもしっかりと鼻腔に届く。
うむ、このデザイン……。
肩越しにゲッコーさんを見れば、俺の視線に気付きドヤ顔でサムズアップ。
どうやらこの軍議室はゲッコーさんがリフォームに携わったようだ。
このまま携わり続ければ、世界情勢を映し出すモニターを壁一面に設置しそうだな。
「リズベッド殿も大変でしたな。この大陸の驚異がまさか造反によるものだったとは」
「止める事も出来ず皆様には大変なご迷惑を……」
「いえ、リズベッド殿に罪はありません。その――」
「ショゴスですな」
先生が口にした名を耳にし、「そうショゴス」と頷く王様は、スライムである存在がそこまでの驚異になった事と、その配下には忠誠心が揺るがない護衛軍が存在する事を知り、まだまだ魔王軍の力の底が見えないことに戦慄を覚えていた。
反面、護衛軍という存在が明らかになった事と、人間サイドが知り得ない魔王軍の実態などを得ることが可能になったことで、今後の対策の幅が広がったという収穫もあったと喜ぶ。
縮地による移動からの攻撃を仕掛けてくるレッドキャップス達に対抗するために、兵達には死角を補うための連係を今後の調練に組み込まなければならないとナブル将軍。
「ですがやはりショゴスの驚異が問題でしょう」
と、一人の臣下である貴族が口を開けば、周囲も然りと続く。
どの様な強者も捕食さえ出来れば、その能力を自身のものにする。
これが想定できる程度の強者が有する能力ならまだ可愛げがあるが、リズベッドが有するマナと触れ合うことが出来るという能力は、想定どころの問題ではない。
人間からすれば神の如き能力。
周囲のマナをコントロールされれば、その近くにいる者達はマナによる力の発動が封じられてしまう。
そんな能力すらもショゴスは捕食し得たという。しかもリズベッドは生かしたままに。
更には四大聖龍をも自身の力で封じて支配下に置き、浄化の力を反転させて、自身の瘴気を拡散させるための媒体へと変えてしまう力。
神にも等しい四大聖龍を支配下に置くだけの力を有している時点で、神と同等の力を有した存在だと見ていい。
「そして魔大陸で出会った護衛軍の指揮官であるデスベアラー・フサルク・アンスールと、サブジェクト・フサルク・エオローか。名からして後者も指揮官級なのだろう」
王様の声は重々しい。
強者として俺達の前に立ちふさがったデスベアラー。フランベルジュの剣音が今でも耳に残っている。
「ショゴスより作り出され、そのショゴスを聖祚と敬称する二体に共通するのは――フサルクというミドルネーム。となれば、フサルクと名の付く者達が他にもいると考えるのが妥当でしょうね。そしてデスベアラーの力を継承した仙狐の存在。重複はなく上書きという欠点もありますが、力を継承し更に強くなっていくという敗者の鮮血なる帽子。中々に手厳しい相手のようですな。フサルクにレッドキャップスなる精鋭達は」
デスベアラーの力を継承し、野狐から仙狐となったデミタスの怨嗟の瞳を思い出せば、背筋に冷たいものが走る……。
俺もそうなんだけど、先生の喋々な語りを耳にすれば、軍議室には沈黙の帳が降りる。
王様の発言に臣下の皆さんが動き出すので俺たちも後に続く。
――――初めて入室した部屋は四十畳ほどの広さがある軍議室。
王様も話しに参加するこの軍議室は、大本営と考えていいだろう。
室内の中央にはドーナツ状の円卓があり、それを囲うようにもう一つの円卓という二重の作り。
上座も下座もないが、一応は階級によって座る場所は決まっているようだ。
内側の円卓には王様、侯爵。ゲストであり魔大陸サイドの代表者であるリズベッドが王様の隣。
で、その隣に俺。
隣と行っても間隔はあいており、肘が触れ合うような距離ではない。
外周には貴族やナブル将軍。ベル、ゲッコーさん。コクリコ、シャルナにガルム氏とアルスン翁。
非戦闘員ということもあり、姫は外周の円卓に腰を下ろすのでライラはその横。
翁が苦労しないように、ちゃんとゴブリン用に座高の高い椅子を用意してくれる配慮はお見事。
そんな椅子を準備してくれたのは、壁際と扉に立つ完全武装の近衛の方々。
以前よりも洗練された装備と面構えだ。
さっきも穂先はピクリと動いたけども、刺激しないように構えるまでにはいたらなかったからね。
しっかりと胆力もついてきている。
ドーナツ状の円卓なので、もちろん真ん中は空洞となっている。
空洞となった位置には先生が一メートルほどの長さがある指揮棒を持って佇立。
先生の足元の床には大きな地図が描かれている。
大陸がでかでかと描かれている事から、この王都を中心とした地図なのかな?
海が端っこ描かれてないから多分そうだろう。
しかし――、床には地図。二重になったドーナツ型の円卓というデザインは、明らかに時代が違うような気がする。
木で出来た円卓に触れれば真新しい。
深呼吸をすれば木の香りもしっかりと鼻腔に届く。
うむ、このデザイン……。
肩越しにゲッコーさんを見れば、俺の視線に気付きドヤ顔でサムズアップ。
どうやらこの軍議室はゲッコーさんがリフォームに携わったようだ。
このまま携わり続ければ、世界情勢を映し出すモニターを壁一面に設置しそうだな。
「リズベッド殿も大変でしたな。この大陸の驚異がまさか造反によるものだったとは」
「止める事も出来ず皆様には大変なご迷惑を……」
「いえ、リズベッド殿に罪はありません。その――」
「ショゴスですな」
先生が口にした名を耳にし、「そうショゴス」と頷く王様は、スライムである存在がそこまでの驚異になった事と、その配下には忠誠心が揺るがない護衛軍が存在する事を知り、まだまだ魔王軍の力の底が見えないことに戦慄を覚えていた。
反面、護衛軍という存在が明らかになった事と、人間サイドが知り得ない魔王軍の実態などを得ることが可能になったことで、今後の対策の幅が広がったという収穫もあったと喜ぶ。
縮地による移動からの攻撃を仕掛けてくるレッドキャップス達に対抗するために、兵達には死角を補うための連係を今後の調練に組み込まなければならないとナブル将軍。
「ですがやはりショゴスの驚異が問題でしょう」
と、一人の臣下である貴族が口を開けば、周囲も然りと続く。
どの様な強者も捕食さえ出来れば、その能力を自身のものにする。
これが想定できる程度の強者が有する能力ならまだ可愛げがあるが、リズベッドが有するマナと触れ合うことが出来るという能力は、想定どころの問題ではない。
人間からすれば神の如き能力。
周囲のマナをコントロールされれば、その近くにいる者達はマナによる力の発動が封じられてしまう。
そんな能力すらもショゴスは捕食し得たという。しかもリズベッドは生かしたままに。
更には四大聖龍をも自身の力で封じて支配下に置き、浄化の力を反転させて、自身の瘴気を拡散させるための媒体へと変えてしまう力。
神にも等しい四大聖龍を支配下に置くだけの力を有している時点で、神と同等の力を有した存在だと見ていい。
「そして魔大陸で出会った護衛軍の指揮官であるデスベアラー・フサルク・アンスールと、サブジェクト・フサルク・エオローか。名からして後者も指揮官級なのだろう」
王様の声は重々しい。
強者として俺達の前に立ちふさがったデスベアラー。フランベルジュの剣音が今でも耳に残っている。
「ショゴスより作り出され、そのショゴスを聖祚と敬称する二体に共通するのは――フサルクというミドルネーム。となれば、フサルクと名の付く者達が他にもいると考えるのが妥当でしょうね。そしてデスベアラーの力を継承した仙狐の存在。重複はなく上書きという欠点もありますが、力を継承し更に強くなっていくという敗者の鮮血なる帽子。中々に手厳しい相手のようですな。フサルクにレッドキャップスなる精鋭達は」
デスベアラーの力を継承し、野狐から仙狐となったデミタスの怨嗟の瞳を思い出せば、背筋に冷たいものが走る……。
俺もそうなんだけど、先生の喋々な語りを耳にすれば、軍議室には沈黙の帳が降りる。
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