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ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-675【弱攻撃も蓄積すれば大ダメージ】
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「痛い……痛いけども解決だ」
コクリコにビンタされて分かったことは、
「幻術の類いじゃないな」
と、二の句を継ぐ。
「のようですね」
痛みで幻術が解けているなら、目の前の霧の獣たちも消えるはずだが消えていない。
俺が痛みで立証し、コクリコだけは痛みを感じず立証する。
――……この不公平感……。
まあ、それはいい。問題は、
「物理も魔法も通用しない相手って事か。知ってる魔法か?」
「いえ知りません。このドラゴン特有の能力かも知れません」
ディザスターナイトのインフェクションと同じか。
「どうだ凄いだろう! もう謝っても許さないからな。さあやれ! 愚か者達を倒すんだ!」
俺たちに対処法がないというように見えたのか、ミストドラゴンの声は高揚している。
「ティンダー」
言えば直ぐに出せるようになる辺り、一度の発動さえ成功すれば習得魔法は簡単に唱える事が出来るようだな。
スプリームフォールだってそうだしな。
火炎瓶に火を付けて投擲。
「なんだ!? 瓶が爆発!?」
しっかりと驚いてくれるが――。
霧の獣たちの足元に向かって投擲したけども、投げた瓶が体をすり抜けるし、ダメージが入っているのか分かりづらい。
ただ分かることは、爆発と炎が巻き起こっても、霧から作れただけの存在だからか、感情というのが無いようで、気にせずに突っ込んでくる。
「おっと」
なのにこっちにはしっかりと攻撃判定がある。
霧の獣の前足による攻撃を防いだロングソードには、しっかりとした重量が伝わってきた。
「これはやっかいな相手ですね」
見ていたコクリコはそう言うも、攻撃を受けた感想は、強さとしては驚異じゃない。
今の俺ならタフネスもあるし、オリハルコンの鎧に守られているので、もし攻撃を受けてもダメージってのほぼない。
RPGだと9999のHPに対して、1ポイントだけダメージが入るって感じだ。
「でもそうだとしても……」
こっちの攻撃が通用しない無敵の群れの攻撃を受け続ければ流石にダメージだって蓄積する。
いくらHPが9999あろうとも、9999回攻撃を受ければ死ぬわけだしな。
しかもこの霧の怖いところはそれだけじゃないだろう。
「エクトプラズマーも霧って事だろうから触れられれば――」
「発動のために、どのくらいの接触時間を要するのかは分かりませんが、まず間違いないでしょう」
つまりは、霧の獣に体を触れさせてしまえば、幻術であるイリュージョンダンサーという小粋な名前の魔法に囚われて、馬鹿踊りを披露するって事になるんだろうな。
「どのくらいと言うより、霧には直接ふれないようにした方が賢明だな」
「その通りですね。で、トール。こういった場合は」
フライパンを巧みに操り、襲いかかってくる獣たちの攻撃を払いのけるのは見事。
攻撃時は実体化するって事みたいだから、タイミングを見計らえば倒すことも可能かもしれないけども、防ぐだけで手一杯な俺たちの技量でそれが可能かというと難しい。
まだ一対一なら可能性もあるけども、群れとなるとな。一体に集中すれば囲まれて対応できなくなる。
ならば攻めるのは――、
「こういう時は本体を狙う」
「できるものか!」
割って入ってくる言い様は正に子供だ。
威嚇するように意味も無く羽を広げるのも、自分を大きく見せたいっていう虚栄心ってやつだろう。
「アクセル」
獣を無視で一気に迫る。
流石に斬るのはよくないと判断したので、優しい俺はメイスでの打撃を選択。
「あら?」
「む、無駄だよ!」
の、割には焦った声だ。
咄嗟に体を霧状にして攻撃を躱した。
エクトプラズマーによる獣たち同様に、術者も霧状になれるわけだな。
「ティンダー」
指先に火を灯す。
霧状の部分に火が触れれば簡単に消える。
「こそばゆいね」
「なるほど」
こそばゆいか。
ミストドラゴンは他愛なしとばかりに発したけども、俺はそうは捉えなかったぞ。
実体化すると、反撃のアイスブリック。
それをメイスで打ち砕けば、次の攻めは前足の爪に、刃状にした氷をコーティングしてからの振り下ろし。
ゴロ太のナイフを素早く左手で取り出して、絡め取って氷を砕く。
――――こそばゆいという事は、霧状になっても感覚はあるということ。
圧倒的な火力となれば、ミストドラゴンと霧の眷属たちもかき消すことが出来るって事かもしれない。
まあ、ミストドラゴンをかき消すという選択はないけども。
「大した魔法も使用出来ない勇者め!」
嘲笑。
焦ったと思えば直ぐさま高圧的。
発言や態度、感情の振り幅からして、コクリコの言うように間違いなくキッズだ。
であるなら、攻略法も見えてくる。
コクリコにビンタされて分かったことは、
「幻術の類いじゃないな」
と、二の句を継ぐ。
「のようですね」
痛みで幻術が解けているなら、目の前の霧の獣たちも消えるはずだが消えていない。
俺が痛みで立証し、コクリコだけは痛みを感じず立証する。
――……この不公平感……。
まあ、それはいい。問題は、
「物理も魔法も通用しない相手って事か。知ってる魔法か?」
「いえ知りません。このドラゴン特有の能力かも知れません」
ディザスターナイトのインフェクションと同じか。
「どうだ凄いだろう! もう謝っても許さないからな。さあやれ! 愚か者達を倒すんだ!」
俺たちに対処法がないというように見えたのか、ミストドラゴンの声は高揚している。
「ティンダー」
言えば直ぐに出せるようになる辺り、一度の発動さえ成功すれば習得魔法は簡単に唱える事が出来るようだな。
スプリームフォールだってそうだしな。
火炎瓶に火を付けて投擲。
「なんだ!? 瓶が爆発!?」
しっかりと驚いてくれるが――。
霧の獣たちの足元に向かって投擲したけども、投げた瓶が体をすり抜けるし、ダメージが入っているのか分かりづらい。
ただ分かることは、爆発と炎が巻き起こっても、霧から作れただけの存在だからか、感情というのが無いようで、気にせずに突っ込んでくる。
「おっと」
なのにこっちにはしっかりと攻撃判定がある。
霧の獣の前足による攻撃を防いだロングソードには、しっかりとした重量が伝わってきた。
「これはやっかいな相手ですね」
見ていたコクリコはそう言うも、攻撃を受けた感想は、強さとしては驚異じゃない。
今の俺ならタフネスもあるし、オリハルコンの鎧に守られているので、もし攻撃を受けてもダメージってのほぼない。
RPGだと9999のHPに対して、1ポイントだけダメージが入るって感じだ。
「でもそうだとしても……」
こっちの攻撃が通用しない無敵の群れの攻撃を受け続ければ流石にダメージだって蓄積する。
いくらHPが9999あろうとも、9999回攻撃を受ければ死ぬわけだしな。
しかもこの霧の怖いところはそれだけじゃないだろう。
「エクトプラズマーも霧って事だろうから触れられれば――」
「発動のために、どのくらいの接触時間を要するのかは分かりませんが、まず間違いないでしょう」
つまりは、霧の獣に体を触れさせてしまえば、幻術であるイリュージョンダンサーという小粋な名前の魔法に囚われて、馬鹿踊りを披露するって事になるんだろうな。
「どのくらいと言うより、霧には直接ふれないようにした方が賢明だな」
「その通りですね。で、トール。こういった場合は」
フライパンを巧みに操り、襲いかかってくる獣たちの攻撃を払いのけるのは見事。
攻撃時は実体化するって事みたいだから、タイミングを見計らえば倒すことも可能かもしれないけども、防ぐだけで手一杯な俺たちの技量でそれが可能かというと難しい。
まだ一対一なら可能性もあるけども、群れとなるとな。一体に集中すれば囲まれて対応できなくなる。
ならば攻めるのは――、
「こういう時は本体を狙う」
「できるものか!」
割って入ってくる言い様は正に子供だ。
威嚇するように意味も無く羽を広げるのも、自分を大きく見せたいっていう虚栄心ってやつだろう。
「アクセル」
獣を無視で一気に迫る。
流石に斬るのはよくないと判断したので、優しい俺はメイスでの打撃を選択。
「あら?」
「む、無駄だよ!」
の、割には焦った声だ。
咄嗟に体を霧状にして攻撃を躱した。
エクトプラズマーによる獣たち同様に、術者も霧状になれるわけだな。
「ティンダー」
指先に火を灯す。
霧状の部分に火が触れれば簡単に消える。
「こそばゆいね」
「なるほど」
こそばゆいか。
ミストドラゴンは他愛なしとばかりに発したけども、俺はそうは捉えなかったぞ。
実体化すると、反撃のアイスブリック。
それをメイスで打ち砕けば、次の攻めは前足の爪に、刃状にした氷をコーティングしてからの振り下ろし。
ゴロ太のナイフを素早く左手で取り出して、絡め取って氷を砕く。
――――こそばゆいという事は、霧状になっても感覚はあるということ。
圧倒的な火力となれば、ミストドラゴンと霧の眷属たちもかき消すことが出来るって事かもしれない。
まあ、ミストドラゴンをかき消すという選択はないけども。
「大した魔法も使用出来ない勇者め!」
嘲笑。
焦ったと思えば直ぐさま高圧的。
発言や態度、感情の振り幅からして、コクリコの言うように間違いなくキッズだ。
であるなら、攻略法も見えてくる。
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