662 / 1,668
ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-662【タッグマッチは余裕】
しおりを挟む
炎を振り払おうと体を大きく左右に振る姿は悶えているようにも見える。
「隙だらけだぜ!」
ここが攻めの好機と判断し、切っ先を向けてから駆ける。
狙うは頭部。
「ヴァラ!」
顔が炎に包まれながらも、攻撃が来るとなれば迎撃姿勢をとるのは敵ながらお見事。もう少し様子を見ることも大事だと学ばされる。
眼窩の緑光が好戦的に輝き、炎に苛まれながらも俺へと意識を集中させているのが分かった。
刃幅の広い白刃による渾身の一振りが俺の鼻先を掠める。
剣圧で生じる風は、恐怖を心底に刻み込んでくるものだ。心の中で剣圧をはじき飛ばす気迫を生み出し後退はしない。
下がらず背を反らせるだけで回避し、再び前へと足を出す。
頭部を狙う軌道が逸れたので狙う箇所を変更。
ファルシオンを回避し、懐に潜り込んだところで両膝を曲げ姿勢を更に低くし、次には曲げた両膝を力一杯に伸ばし、その勢いのままにロングソードをディザスターナイトの胸部に突き刺す。
オリハルコンのロングソードによる一点に集中した刺突は、大柄のディザスターナイトが装備する赤紫色のフルプレート胸部に突き刺さり、
「オラ!」
こちらも負けじと、心の中の気迫を体外に発して、全体重をディザスターナイトに預けるかのようにぶつかって、剣身を更に深く突き刺す。
ヒロインが主人公の胸元に飛び込んでいくイメージ。
現実は、童貞がアンデッドの騎士に飛び込んでいるという光景。
そこからはピリアによる踏み込みで巨体を一気に押し込み、反撃を許すことなく壁へと叩き付ければ、ディザスターナイトを貫いたロングソードが壁まで貫通。
昆虫標本のようにして動きを封じる。
もちろんアンデッド。胸部を刺して動きを封じたところで、倒れたり消滅などはしない。
一気に頭を叩きつぶしたかったけども。
「トール。お願いします」
「あいよ!」
逡巡なんかしない。
即断、即決、即答、即応。
二体を相手によく堪えてくれたと称賛したい。
左手にワンド。右手にはミスリルフライパン。
文句を言っていたけども、十分に活躍しているフライパン。
ディザスターナイトにとどめは刺せなかったけども、それは優先すべき事ではない。
「アクセル」
味方こそ優先。
コクリコに迫るリビングアーマーの側面まで瞬時に移動してからの、
「よっこいしょ!」
ホームランバッターの如きフルスイングをミスリルメイスで見舞ってやる。
バイーンと、如何にも鎧の中が空洞というような音が響く。
重鎧の脇腹部分をヘコませ、くの字を書かせて吹き飛ばす。
「よくやったな」
「ロードウィザードなんで」
「おう」
大量に魔法も使用してたみたいだけど――。
――うむ。
リビングアーマー二体の鎧を上から下まで見れば、所々がヘコんでいる。
次に目を移すのは、コクリコが右手に持つ青白く光るフライパン。
検分によるダメージ配分は、右手に持った武器が、最も多くの成果を出しているとジャッジ。
「随分と大活躍のようで」
「思いの外、手に馴染みます」
のようだな。
コクリコがメイン武器を手に入れた。
「せい!」
思っている矢先に残りの一体がハルバートを斜に振り上げるけども、その動作よりも速く、パカーンって爽快で豪快な音が玄室に響く。
コクリコの見舞ったミスリルフライパンが顔面にヒット。
弓なりとなって、殴られた方とは反対方向に仰臥にて倒れる。
兜のスリット部分。倒れる時に伸びる紫色の残光が印象的だった。
「お前は俺!」
ギギギ――と、鎧の軋み音と共に立ち上がろうとする、俺が吹き飛ばした相手。
中腰で立とうとしているところに蹴りを見舞って再び倒し、諸手でしっかりと握ったメイスを頭部へと全力で振り下ろせば、陥没したように兜が大きくヘコむ。
クリティカルだったのか、鎧が関節部分からガラガラと音を立てて床へと転がる。
「お見事」
二人で戦えばこいつらは驚異じゃない。
ディザスターナイトの取り巻きってところだろうから、三体同時に攻めてこられれば面倒だっただろう。
もしかしたら、コンビネーションアタック的な攻撃手段も持っていたかもしれない。
コクリコの活躍でその驚異が取り除かれた事には、心底感謝している。
「隙だらけだぜ!」
ここが攻めの好機と判断し、切っ先を向けてから駆ける。
狙うは頭部。
「ヴァラ!」
顔が炎に包まれながらも、攻撃が来るとなれば迎撃姿勢をとるのは敵ながらお見事。もう少し様子を見ることも大事だと学ばされる。
眼窩の緑光が好戦的に輝き、炎に苛まれながらも俺へと意識を集中させているのが分かった。
刃幅の広い白刃による渾身の一振りが俺の鼻先を掠める。
剣圧で生じる風は、恐怖を心底に刻み込んでくるものだ。心の中で剣圧をはじき飛ばす気迫を生み出し後退はしない。
下がらず背を反らせるだけで回避し、再び前へと足を出す。
頭部を狙う軌道が逸れたので狙う箇所を変更。
ファルシオンを回避し、懐に潜り込んだところで両膝を曲げ姿勢を更に低くし、次には曲げた両膝を力一杯に伸ばし、その勢いのままにロングソードをディザスターナイトの胸部に突き刺す。
オリハルコンのロングソードによる一点に集中した刺突は、大柄のディザスターナイトが装備する赤紫色のフルプレート胸部に突き刺さり、
「オラ!」
こちらも負けじと、心の中の気迫を体外に発して、全体重をディザスターナイトに預けるかのようにぶつかって、剣身を更に深く突き刺す。
ヒロインが主人公の胸元に飛び込んでいくイメージ。
現実は、童貞がアンデッドの騎士に飛び込んでいるという光景。
そこからはピリアによる踏み込みで巨体を一気に押し込み、反撃を許すことなく壁へと叩き付ければ、ディザスターナイトを貫いたロングソードが壁まで貫通。
昆虫標本のようにして動きを封じる。
もちろんアンデッド。胸部を刺して動きを封じたところで、倒れたり消滅などはしない。
一気に頭を叩きつぶしたかったけども。
「トール。お願いします」
「あいよ!」
逡巡なんかしない。
即断、即決、即答、即応。
二体を相手によく堪えてくれたと称賛したい。
左手にワンド。右手にはミスリルフライパン。
文句を言っていたけども、十分に活躍しているフライパン。
ディザスターナイトにとどめは刺せなかったけども、それは優先すべき事ではない。
「アクセル」
味方こそ優先。
コクリコに迫るリビングアーマーの側面まで瞬時に移動してからの、
「よっこいしょ!」
ホームランバッターの如きフルスイングをミスリルメイスで見舞ってやる。
バイーンと、如何にも鎧の中が空洞というような音が響く。
重鎧の脇腹部分をヘコませ、くの字を書かせて吹き飛ばす。
「よくやったな」
「ロードウィザードなんで」
「おう」
大量に魔法も使用してたみたいだけど――。
――うむ。
リビングアーマー二体の鎧を上から下まで見れば、所々がヘコんでいる。
次に目を移すのは、コクリコが右手に持つ青白く光るフライパン。
検分によるダメージ配分は、右手に持った武器が、最も多くの成果を出しているとジャッジ。
「随分と大活躍のようで」
「思いの外、手に馴染みます」
のようだな。
コクリコがメイン武器を手に入れた。
「せい!」
思っている矢先に残りの一体がハルバートを斜に振り上げるけども、その動作よりも速く、パカーンって爽快で豪快な音が玄室に響く。
コクリコの見舞ったミスリルフライパンが顔面にヒット。
弓なりとなって、殴られた方とは反対方向に仰臥にて倒れる。
兜のスリット部分。倒れる時に伸びる紫色の残光が印象的だった。
「お前は俺!」
ギギギ――と、鎧の軋み音と共に立ち上がろうとする、俺が吹き飛ばした相手。
中腰で立とうとしているところに蹴りを見舞って再び倒し、諸手でしっかりと握ったメイスを頭部へと全力で振り下ろせば、陥没したように兜が大きくヘコむ。
クリティカルだったのか、鎧が関節部分からガラガラと音を立てて床へと転がる。
「お見事」
二人で戦えばこいつらは驚異じゃない。
ディザスターナイトの取り巻きってところだろうから、三体同時に攻めてこられれば面倒だっただろう。
もしかしたら、コンビネーションアタック的な攻撃手段も持っていたかもしれない。
コクリコの活躍でその驚異が取り除かれた事には、心底感謝している。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる