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死霊魔術師
PHASE-617【他人とは思えない】
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戦闘に発展したら面倒くさそうだけども、リンの発言どおりなら再戦なんて馬鹿な事はしないだろう。
なので俺たちはリンが口を開くのを素直に待つ――。
「この人達に私の本気をちょっと見せたくてね。それで呼んだだけ」
「……そうか。あまり迷惑をかけないようにと具申する」
「なによそれ。まるで私が普段から迷惑をかけているみたいじゃない」
「……では」
「ちょっと!」
なんか主って感じがしないな。
召喚者の意思とは関係ないとばかりにエルダー達が消えていった。
――……この既視感たるや。
リンが他人に見えない。
俺も同じような立ち位置だから……。
――…………。
変な間が生まれてしまう。
「ネクロマンサーなのにちゃんと使役できていないんですね」
しじまを打ち破るコクリコの嘲笑混じりの発言。
「お子様には分からないものなのよ。主従だけが使役というわけではないの」
対して余裕をもって返すリン。
「ふん。負け惜しみを」
って台詞が既に負けてる側なんだよな~。
コクリコの調子がいつもの感じになってきているような気がした。
「ま、俺たちみたいな関係って事だろう」
と、ゲッコーさんが纏める。
主従と言うより仲間って事なんだろうな。
顔はスケルトン、ソルジャー、キャスター、グレーター、エルダーともに同じようにしか見えないけども、関係性は別物って事だろう。
「ベルの評価ではどうだ?」
剣を交えていないからエルダーの実力はしっかりとは分からないけども、佇まいからだけでも強者であるというのは、俺でもしっかりと理解できる。
「強者だな。はっきりと言ってしまえば、現在のトールの敵ではないが」
喋れて魔法付与装備であっても、現状の俺のレベルなら問題ないみたいだな。
ここで俺のみに限定するのは、ベルやゲッコーさんにとっては端から驚異ではないってことなんだろう。
「私はどうです」
俺が大丈夫なら、私もいけるんじゃないだろうかとコクリコ。
ベルの見立てだと、一対一なら問題ないだろうけど、集団となれば別。
魔法付与の装備もある事から魔法防御も高そうだもんな。
長期戦で接近戦オンリーとなれば、数と疲れを知らないアンデッドによってコクリコは敗れるとの事だった。
コクリコは何とも悔しそうだったけど、集団であっても一対一に持ち込みながら戦えば私の勝ちは揺るがないので、やはり私は凄い! と口に出す辺りメンタルは強い。
「で、どうすんだ? ちゃんと俺たちに従ってくれるのか?」
「まあいいでしょう。ここも大体出来上がってきたし。といっても、今回で大損害も発生したけどね」
リンの声が荒くなる。同時にベルを睨むが、強者は意にも介さない。
お怒りの理由はオベリスクを破壊された事。
この力の間は別段リンの力を補助する為のものとして有るのではなく、この地下施設全体を機能させるための大事な中枢として存在するものだったそうだ。
オベリスクに蓄えたマナを各階層に供給して、日の当たらない地下でも人々が生活を営む事が出来るようにする為のシステムだったらしい。
陽射しが無くても力の間の効果で灯りの恩恵もあり、疑似太陽的な物を顕現させて作物を育てさせ、飲料としての水もマナにより大量に賄う事も出来る。
長期的に立てこもる事を前提とした要塞。それがこの地だ。
「もう一度、建てないといけなくなったわよ」
「それは申し訳なく思うが、そもそも貴女が我々の声に耳を傾ければよかっただけだ」
「力を試すためだったんだから仕方ないでしょう」
「ならば必要な損害だったと思ってもらえれば、こちらとしては助かる」
「中々に図太い神経してるわね……」
呆れ口調のリン。
破壊した側の言い様じゃないからな。
まあ実際、戦いになった以上は、こっちだって相手を弱体化させるためにその部分を狙うのは当然だからな。
リン自身も最低限の損害は出るとは思っていたようだけど、想像以上の損害だったと、後悔と諦念を感じさせる面持ちだった。
四大要素だけでなく、組み合わせた力をオベリスクのピラミディオン先端にある球体に留めているのは、オベリスクの何本かに問題が起きても地下施設に影響が出ないようにするためのものでも有るらしい。
例えば、水魔法のオベリスクに問題が生じた時、飲み水が供給できなくなる事態が発生するが、風と水の組み合わせである氷結魔法のオベリスクが健在なら、水のオベリスクの代用にも使えるとの事だった。
他の組み合わせで出来たオベリスクでもそれらが可能なので、現状を維持する事は出来るみたいだけど、今回ベルによって五本のオベリスクが切り倒されたことは、維持は出来ても大痛打といったところ。
戦闘中に頭を掻きむしる狂気じみた姿も、理由が分かれば理解できるというもの。
しかしこのアルトラリッチは便利なものを造っている。
なので俺たちはリンが口を開くのを素直に待つ――。
「この人達に私の本気をちょっと見せたくてね。それで呼んだだけ」
「……そうか。あまり迷惑をかけないようにと具申する」
「なによそれ。まるで私が普段から迷惑をかけているみたいじゃない」
「……では」
「ちょっと!」
なんか主って感じがしないな。
召喚者の意思とは関係ないとばかりにエルダー達が消えていった。
――……この既視感たるや。
リンが他人に見えない。
俺も同じような立ち位置だから……。
――…………。
変な間が生まれてしまう。
「ネクロマンサーなのにちゃんと使役できていないんですね」
しじまを打ち破るコクリコの嘲笑混じりの発言。
「お子様には分からないものなのよ。主従だけが使役というわけではないの」
対して余裕をもって返すリン。
「ふん。負け惜しみを」
って台詞が既に負けてる側なんだよな~。
コクリコの調子がいつもの感じになってきているような気がした。
「ま、俺たちみたいな関係って事だろう」
と、ゲッコーさんが纏める。
主従と言うより仲間って事なんだろうな。
顔はスケルトン、ソルジャー、キャスター、グレーター、エルダーともに同じようにしか見えないけども、関係性は別物って事だろう。
「ベルの評価ではどうだ?」
剣を交えていないからエルダーの実力はしっかりとは分からないけども、佇まいからだけでも強者であるというのは、俺でもしっかりと理解できる。
「強者だな。はっきりと言ってしまえば、現在のトールの敵ではないが」
喋れて魔法付与装備であっても、現状の俺のレベルなら問題ないみたいだな。
ここで俺のみに限定するのは、ベルやゲッコーさんにとっては端から驚異ではないってことなんだろう。
「私はどうです」
俺が大丈夫なら、私もいけるんじゃないだろうかとコクリコ。
ベルの見立てだと、一対一なら問題ないだろうけど、集団となれば別。
魔法付与の装備もある事から魔法防御も高そうだもんな。
長期戦で接近戦オンリーとなれば、数と疲れを知らないアンデッドによってコクリコは敗れるとの事だった。
コクリコは何とも悔しそうだったけど、集団であっても一対一に持ち込みながら戦えば私の勝ちは揺るがないので、やはり私は凄い! と口に出す辺りメンタルは強い。
「で、どうすんだ? ちゃんと俺たちに従ってくれるのか?」
「まあいいでしょう。ここも大体出来上がってきたし。といっても、今回で大損害も発生したけどね」
リンの声が荒くなる。同時にベルを睨むが、強者は意にも介さない。
お怒りの理由はオベリスクを破壊された事。
この力の間は別段リンの力を補助する為のものとして有るのではなく、この地下施設全体を機能させるための大事な中枢として存在するものだったそうだ。
オベリスクに蓄えたマナを各階層に供給して、日の当たらない地下でも人々が生活を営む事が出来るようにする為のシステムだったらしい。
陽射しが無くても力の間の効果で灯りの恩恵もあり、疑似太陽的な物を顕現させて作物を育てさせ、飲料としての水もマナにより大量に賄う事も出来る。
長期的に立てこもる事を前提とした要塞。それがこの地だ。
「もう一度、建てないといけなくなったわよ」
「それは申し訳なく思うが、そもそも貴女が我々の声に耳を傾ければよかっただけだ」
「力を試すためだったんだから仕方ないでしょう」
「ならば必要な損害だったと思ってもらえれば、こちらとしては助かる」
「中々に図太い神経してるわね……」
呆れ口調のリン。
破壊した側の言い様じゃないからな。
まあ実際、戦いになった以上は、こっちだって相手を弱体化させるためにその部分を狙うのは当然だからな。
リン自身も最低限の損害は出るとは思っていたようだけど、想像以上の損害だったと、後悔と諦念を感じさせる面持ちだった。
四大要素だけでなく、組み合わせた力をオベリスクのピラミディオン先端にある球体に留めているのは、オベリスクの何本かに問題が起きても地下施設に影響が出ないようにするためのものでも有るらしい。
例えば、水魔法のオベリスクに問題が生じた時、飲み水が供給できなくなる事態が発生するが、風と水の組み合わせである氷結魔法のオベリスクが健在なら、水のオベリスクの代用にも使えるとの事だった。
他の組み合わせで出来たオベリスクでもそれらが可能なので、現状を維持する事は出来るみたいだけど、今回ベルによって五本のオベリスクが切り倒されたことは、維持は出来ても大痛打といったところ。
戦闘中に頭を掻きむしる狂気じみた姿も、理由が分かれば理解できるというもの。
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