607 / 1,668
死霊魔術師
PHASE-607【光の世界】
しおりを挟む
「さて、好機」
と、何とも楽しげなリン。
そんな顔を見て俺の表情は苦虫を噛み潰したようなものになっていることだろうな。
「天より零れし裁きの輝き――」
「おお」
なんかゼノ以来の詠唱だな。
あいつのはゲッコーさんが防いでくれたけども、今回は……。
詠唱を初めてもエビルプラントなるラフレシアの親玉みたいなのはこっちに対しての攻撃をやめることはない。
蔓とトゲ、舞い散らせる毒花粉と三パターンしかないけども、一つ一つが広範囲の攻撃なので対応するだけで手一杯。
俺が懸命に防いでいる状況下であっても、リンの言葉は途切れることなく継がれていく。
「――悪道歩む愚者を光の制裁にて断罪すべし。救いなき光にて断罪すべし。清浄なる世界を照らす輝きよ、明白、掻暮、全ての悪を光の下に晒し審判を下せ――――ヘイローシャイン」
魔法名を口にした次の瞬間、エビルプラントの背後にある後光が激しく輝く。
ストレイマーターの首にかけていた物に、礼拝堂に掲げられていたものと同じ上下逆の五芒星による輝き。
サタニズムなマークと同様なのに、禍々しさなどなく、神々しい輝きが力の間全体を照らす。
「――!? あっつ!」
火龍装備なのに熱さを感じる。
ジリジリと皮膚を焼くような痛みが走る。
火龍装備なのだからこれは炎熱系からくる痛みではないだろう。
聖なる光が体を焼こうとしているのか?
「アンデッドでネクロマンサーが聖光魔法とか」
「あら、喋る元気があるのね」
逆光となっているエビルプラントは黒色に染まっているから術者の姿は分かりづらいが、声はしっかりと俺の耳朶に届いてくる。
「……イグ、ニース……」
必死になって両腕を広げて炎のドームの中に身を置く。
先ほどまでのジリジリとした痛みからは抜け出せることが出来たけども、それも気休め程度。
明らかに俺のイグニースで防ぐには無理があるようだ。
炎の障壁が、光によって浸食されているのが確認できる。
だが少しは時間が稼げる。
その間に――、
「皆――は?」
見渡したところで全てが白光の世界。
ビジョンを使用してみるが、視界を確保することは出来ない。
「痛ぇ……」
光が炎を侵食すれば、イグニースに複数の穴が空く。
雲の切れ間から差してくる光芒のように、障壁の中に光が入り込み、それが体に触れる事で痛みに襲われる。
イメージを行い半球のサイズを縮小させていくことで、空いた穴を防ぐことに成功。
それでもジリジリとシールドを破ろうとする光に恐怖を覚えてしまう。
――…………。
「はぁ……はぁ……。ふぅぅぅぅぅぅ――――」
長い呼気を行って体全体を見渡す。
火龍装備に損傷はない。それどころか六花のマントも無事だった。
ジリジリと皮膚を焼くような痛みからするに、マントは燃えていてもおかしくないはずなんだけども……。
どうやら人体のみに影響をおよぼす攻撃だったようだ。
火龍装備の加護がなく、イグニースで防がない状態だったら、間違いなく死が俺に歩み寄ってきただろう。
死は回避できたけども、ちょっとした風が体を掠めるだけで激痛を覚えてしまう。
急ぎ雑嚢からコクリコに使用して残り一つになったハイポーションを体にかければ、痛みが少しずつだけど緩和していくのが分かった。
勿体なくもあるけど、現在が戦闘中ということもあるから即応するために、解毒であるアンチドーテの栓をとって、グッと一口で飲み干し体内から痛みを癒やしていく。
アンチドーテは始めて口にしたけど、味の感想はない。
そんな余裕はないとばかりに、脳が味覚をカットして、周囲に全集中するよう自己防衛本能が発動しているようだ。
地龍から貰った曲玉があるから毒攻撃は無効に出来るけども、アンチドーテにはハイポーションと同じ効果もあるので、即効性の回復という方で使用。
ハイポーション二個の消費と同等の回復量によって、体からは痛みが消えていくのが分かる。
でも二個使用しても、痛みが残るから完全回復にはほど遠い。
それほどに大きな威力の魔法だったというのを体で理解する。
装備に恵まれているからこそ、この程度で済んだということも同時に理解する。
と、何とも楽しげなリン。
そんな顔を見て俺の表情は苦虫を噛み潰したようなものになっていることだろうな。
「天より零れし裁きの輝き――」
「おお」
なんかゼノ以来の詠唱だな。
あいつのはゲッコーさんが防いでくれたけども、今回は……。
詠唱を初めてもエビルプラントなるラフレシアの親玉みたいなのはこっちに対しての攻撃をやめることはない。
蔓とトゲ、舞い散らせる毒花粉と三パターンしかないけども、一つ一つが広範囲の攻撃なので対応するだけで手一杯。
俺が懸命に防いでいる状況下であっても、リンの言葉は途切れることなく継がれていく。
「――悪道歩む愚者を光の制裁にて断罪すべし。救いなき光にて断罪すべし。清浄なる世界を照らす輝きよ、明白、掻暮、全ての悪を光の下に晒し審判を下せ――――ヘイローシャイン」
魔法名を口にした次の瞬間、エビルプラントの背後にある後光が激しく輝く。
ストレイマーターの首にかけていた物に、礼拝堂に掲げられていたものと同じ上下逆の五芒星による輝き。
サタニズムなマークと同様なのに、禍々しさなどなく、神々しい輝きが力の間全体を照らす。
「――!? あっつ!」
火龍装備なのに熱さを感じる。
ジリジリと皮膚を焼くような痛みが走る。
火龍装備なのだからこれは炎熱系からくる痛みではないだろう。
聖なる光が体を焼こうとしているのか?
「アンデッドでネクロマンサーが聖光魔法とか」
「あら、喋る元気があるのね」
逆光となっているエビルプラントは黒色に染まっているから術者の姿は分かりづらいが、声はしっかりと俺の耳朶に届いてくる。
「……イグ、ニース……」
必死になって両腕を広げて炎のドームの中に身を置く。
先ほどまでのジリジリとした痛みからは抜け出せることが出来たけども、それも気休め程度。
明らかに俺のイグニースで防ぐには無理があるようだ。
炎の障壁が、光によって浸食されているのが確認できる。
だが少しは時間が稼げる。
その間に――、
「皆――は?」
見渡したところで全てが白光の世界。
ビジョンを使用してみるが、視界を確保することは出来ない。
「痛ぇ……」
光が炎を侵食すれば、イグニースに複数の穴が空く。
雲の切れ間から差してくる光芒のように、障壁の中に光が入り込み、それが体に触れる事で痛みに襲われる。
イメージを行い半球のサイズを縮小させていくことで、空いた穴を防ぐことに成功。
それでもジリジリとシールドを破ろうとする光に恐怖を覚えてしまう。
――…………。
「はぁ……はぁ……。ふぅぅぅぅぅぅ――――」
長い呼気を行って体全体を見渡す。
火龍装備に損傷はない。それどころか六花のマントも無事だった。
ジリジリと皮膚を焼くような痛みからするに、マントは燃えていてもおかしくないはずなんだけども……。
どうやら人体のみに影響をおよぼす攻撃だったようだ。
火龍装備の加護がなく、イグニースで防がない状態だったら、間違いなく死が俺に歩み寄ってきただろう。
死は回避できたけども、ちょっとした風が体を掠めるだけで激痛を覚えてしまう。
急ぎ雑嚢からコクリコに使用して残り一つになったハイポーションを体にかければ、痛みが少しずつだけど緩和していくのが分かった。
勿体なくもあるけど、現在が戦闘中ということもあるから即応するために、解毒であるアンチドーテの栓をとって、グッと一口で飲み干し体内から痛みを癒やしていく。
アンチドーテは始めて口にしたけど、味の感想はない。
そんな余裕はないとばかりに、脳が味覚をカットして、周囲に全集中するよう自己防衛本能が発動しているようだ。
地龍から貰った曲玉があるから毒攻撃は無効に出来るけども、アンチドーテにはハイポーションと同じ効果もあるので、即効性の回復という方で使用。
ハイポーション二個の消費と同等の回復量によって、体からは痛みが消えていくのが分かる。
でも二個使用しても、痛みが残るから完全回復にはほど遠い。
それほどに大きな威力の魔法だったというのを体で理解する。
装備に恵まれているからこそ、この程度で済んだということも同時に理解する。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる