601 / 1,668
死霊魔術師
PHASE-601【デカかろうが可愛ければOK】
しおりを挟む
「もう一戦!」
最初の頃のふんぞり返っていた時とは違って、荒ぶる声で召喚をするアルトラリッチ。
凄いのはどのオベリスクも光らないということ。
アンデッドを使役する召喚には、オベリスクの魔力を使用するという事はないようだ。
地力のみでグレータースケルトン百体ほどを再び召喚。
「面倒くせえ」
流石にちまちまとやるのは時間の無駄。
地龍からもらった首にかける曲玉を手に取り、先端を床に走らせる。
「こいゴロ丸!」
「おお!」
と、名前を呼べば、ベルから乙女な喜びの混ざった声が上がった。
デカくても可愛ければOK。
「いけゴロ丸。敵を掃討しろ!」
「キュ!」
「なんと愛らしい返事なのだ」
ゴロ丸にときめく乙女さん。
先程までの無双スタイルは、何所へやらだな……。
「ミスリルゴーレムを召喚できるって報告通りね。形は変だけど」
「何だと」
低く突き刺さるような声を発するのはもちろんベルさん。
可愛らしいものを侮辱されるのは許さないとばかりに、更に一本のオベリスクを断ち切る。
今度のは黄色に輝くオベリスクだ。
「斬らないでよ!」
「貴様が不遜な発言をするからだ」
「本当に、なんなのよ。この女は……」
「どうするの。あのミスリルゴーレムからやる?」
「そうね」
オムニガルとアルトラリッチのやり取りがしっかりと聞こえるが、そんなことは――、
「私がさせるわけがない」
跳躍して一気に同じ目線にまで移動し宙に立つ。
アイコンタクトによるコンビネーションなのか、シャルナが板状のプロテクションを寝かせて宙に留めたことで立つことを可能としている。
一瞬で間合いに詰め寄ってくるベルに、雪肌と玉肌のアンデッドが顔を引きつらせる。
今までのような見下すような余裕はすでにない。
俺やコクリコだけならあんな表情は見せる事はないだろう。
「ダークフレイムピラー!」
「ガストストライク!」
オムニガルに続いてアルトラリッチの魔法は耳にしたことのないもの。
オベリスク先端の緑の球体が光るところからして、上位以上の魔法クラス。
視認できる大気の圧縮。
蜃気楼が一塊になったような魔法。
緑色に輝く球体とクリスタルのオベリスクは、風を司るものと見ていいようだ。
漆黒の炎が直下よりベルを覆い、圧縮された風がそこに入れば、漆黒の炎も呑み込んで風の中で炎が乱れ散っていく。
風の中に無数の漆黒の炎の刃が舞っているかのような光景。
「無駄だ」
何事も無いとばかりに、自身の炎に包まれたベルが二人の魔法に痛痒を感じることなく佇んでいる。
そんな姿を見せられれば、アンデッドにまでなって魔法の研鑽を積んできたアルトラリッチの努力は無意味と言わんばかりだった。
絶望の二文字が頭内を支配していることだろう。
「で、次は?」
とまあ、嘲笑を浮かべて相手の精神世界を攻撃していくのがベルだよ。
王都でバニー姿にした後に、ボコボコにされた一連の記憶が甦り、ついつい両腕をさすってしまう。
「トール。見てないで周囲に対応しましょう」
元気なコクリコの跳び蹴りが俺の目の前を通過する。
ガシャリと金属音がすればグレーターが一体倒れる。
「油断しすぎです」
「油断? これは余裕っていうんだ」
「ほう。随分と言うようになったな」
「あ、すいません……」
しっかりとベルのとこまで聞こえてたんだね……。
でも実際、コクリコに言われなくてもちゃんとグレータースケルトンの動きは見えていたからね。
でもってコクリコだけで対応できるってのも分かっていたからね。
周囲の状況判断が出来るほどには成長はしています。
それに見てよ。俺のゴロ丸を。
「キュキュ、キュゥゥゥゥゥゥゥウ!」
短い足による見事なフットワークからの、短い腕でのワンツーで三体を素早く倒し、群がってくるのに対してはゴロゴロと転がりながら踏みつぶしていく。
まるでロードローラーのように。
「なんと素晴らしい戦士なのだろうか! 我らの新たなる仲間は!」
目の前の強敵よりも、愛らしい存在に目が行く時点でベルは余裕のようだ。
俺の余裕とは別次元の強者による本物の余裕。
しかもしっかりとゴロ丸を仲間確定しているし。
最初の頃のふんぞり返っていた時とは違って、荒ぶる声で召喚をするアルトラリッチ。
凄いのはどのオベリスクも光らないということ。
アンデッドを使役する召喚には、オベリスクの魔力を使用するという事はないようだ。
地力のみでグレータースケルトン百体ほどを再び召喚。
「面倒くせえ」
流石にちまちまとやるのは時間の無駄。
地龍からもらった首にかける曲玉を手に取り、先端を床に走らせる。
「こいゴロ丸!」
「おお!」
と、名前を呼べば、ベルから乙女な喜びの混ざった声が上がった。
デカくても可愛ければOK。
「いけゴロ丸。敵を掃討しろ!」
「キュ!」
「なんと愛らしい返事なのだ」
ゴロ丸にときめく乙女さん。
先程までの無双スタイルは、何所へやらだな……。
「ミスリルゴーレムを召喚できるって報告通りね。形は変だけど」
「何だと」
低く突き刺さるような声を発するのはもちろんベルさん。
可愛らしいものを侮辱されるのは許さないとばかりに、更に一本のオベリスクを断ち切る。
今度のは黄色に輝くオベリスクだ。
「斬らないでよ!」
「貴様が不遜な発言をするからだ」
「本当に、なんなのよ。この女は……」
「どうするの。あのミスリルゴーレムからやる?」
「そうね」
オムニガルとアルトラリッチのやり取りがしっかりと聞こえるが、そんなことは――、
「私がさせるわけがない」
跳躍して一気に同じ目線にまで移動し宙に立つ。
アイコンタクトによるコンビネーションなのか、シャルナが板状のプロテクションを寝かせて宙に留めたことで立つことを可能としている。
一瞬で間合いに詰め寄ってくるベルに、雪肌と玉肌のアンデッドが顔を引きつらせる。
今までのような見下すような余裕はすでにない。
俺やコクリコだけならあんな表情は見せる事はないだろう。
「ダークフレイムピラー!」
「ガストストライク!」
オムニガルに続いてアルトラリッチの魔法は耳にしたことのないもの。
オベリスク先端の緑の球体が光るところからして、上位以上の魔法クラス。
視認できる大気の圧縮。
蜃気楼が一塊になったような魔法。
緑色に輝く球体とクリスタルのオベリスクは、風を司るものと見ていいようだ。
漆黒の炎が直下よりベルを覆い、圧縮された風がそこに入れば、漆黒の炎も呑み込んで風の中で炎が乱れ散っていく。
風の中に無数の漆黒の炎の刃が舞っているかのような光景。
「無駄だ」
何事も無いとばかりに、自身の炎に包まれたベルが二人の魔法に痛痒を感じることなく佇んでいる。
そんな姿を見せられれば、アンデッドにまでなって魔法の研鑽を積んできたアルトラリッチの努力は無意味と言わんばかりだった。
絶望の二文字が頭内を支配していることだろう。
「で、次は?」
とまあ、嘲笑を浮かべて相手の精神世界を攻撃していくのがベルだよ。
王都でバニー姿にした後に、ボコボコにされた一連の記憶が甦り、ついつい両腕をさすってしまう。
「トール。見てないで周囲に対応しましょう」
元気なコクリコの跳び蹴りが俺の目の前を通過する。
ガシャリと金属音がすればグレーターが一体倒れる。
「油断しすぎです」
「油断? これは余裕っていうんだ」
「ほう。随分と言うようになったな」
「あ、すいません……」
しっかりとベルのとこまで聞こえてたんだね……。
でも実際、コクリコに言われなくてもちゃんとグレータースケルトンの動きは見えていたからね。
でもってコクリコだけで対応できるってのも分かっていたからね。
周囲の状況判断が出来るほどには成長はしています。
それに見てよ。俺のゴロ丸を。
「キュキュ、キュゥゥゥゥゥゥゥウ!」
短い足による見事なフットワークからの、短い腕でのワンツーで三体を素早く倒し、群がってくるのに対してはゴロゴロと転がりながら踏みつぶしていく。
まるでロードローラーのように。
「なんと素晴らしい戦士なのだろうか! 我らの新たなる仲間は!」
目の前の強敵よりも、愛らしい存在に目が行く時点でベルは余裕のようだ。
俺の余裕とは別次元の強者による本物の余裕。
しかもしっかりとゴロ丸を仲間確定しているし。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる