上 下
597 / 1,668
死霊魔術師

PHASE-597【上位の連続使用】

しおりを挟む
「とりあえず動け」

「分かってます――よ!」

「おお」
 シールドバッシュで吹っ飛ばしたのが態勢を整えて再び俺たちに襲いかかってくると、対するコクリコは俺を押しのけて、金属のブレストプレートに蹴り一閃。
 左腕に備えたカイトシールドで防げない速さで胸部に直撃。よろけるところにコクリコが躍りかかり、

「ファイヤーボール」

「動けとは言ったが、無茶しすぎだ!」
 よろけるグレーターに追撃の一撃。
 兜に守られた頭部に目がけて、ほぼ零距離で火球をぶつける。
 流石に一撃でダウンさせることが出来た。

「無茶をしなければ強くなれないそうなので。トールがそのようですから」
 
「お、おお」
 なんだよ以外と元気だな。
 頬に煤がついてるが怪我はないようだな。

「へ~。弱い魔法でも使い方次第だね」

「ええ、使い方次第ですよ」

「ふ~ん」
 オムニガルの思っている事を素直に発した発言は挑発にも受け取れるが、それに対してコクリコは冷静だ。
 偉いぞコクリコと言おうとしたが、「あのガキンチョ。絶対にキツいの入れてやる!」って、独白だったんだろうけど、しっかりと俺の耳朶に負けず嫌いな発言が届いた。

「よっしゃ行くか! あの小生意気なのに隙が出来たらキツいのかましてやれ! アンデッドがなんぼのもんじゃい!」

「最高ですね。決めて見せますよ。アンデッドがなんぼのもんじゃい! ところで――なんぼのもんじゃいってどういう意味です?」

「知ったことじゃないって意味じゃなかっただろうか。というかそんなもん気にすんな。こんなもんはのりなんだよ!」
 質問してきたコクリコに返してから驀地。
 前線でベルが頑張ってくれているから俺もそこへと馳せ参じる。
 背後からは元気にライトニングスネークと声が聞こえてくる。

「頑張るわね。ならばこれはどうかしら」

「どうもこうもない」

「ちょっと!?」
 アルトラリッチの次なる攻めに対していつまでも守勢のポジションで満足するほど内の最強さんは気が長い方ではない。
 柱の直下に展開していたグレーター達を一蹴し、アルトラリッチの真下で佇立。
 白銀の長髪と白い軍服が、レイピアが纏う炎によって煌々と彩られる美。

「命はとらん」
 と言って跳躍。

「既に死んでるんですけど。というか、明らかに触れたら消滅しちゃいそうなんだけど」
 レイピアによる下方からの斬撃。迎え撃つアルトラリッチは障壁を展開。
 炎を纏ったレイピアが障壁に弾かれるのかと思ったけど。

「嘘でしょ!? レビテーション!!」
 アルトラリッチが咄嗟に飛翔を選択。
 いままで足を組んで余裕を持って座っていた姿とは違い、アンデッドでありながら頬から汗を伝わらせて、慌てて飛び立つ。
 ようやく動かすことが出来た。
 ま、ベルからしたらようやくではないのかもな。
 いつでもどかせることは出来たと思う。

「何なのよその炎は!? この世界の理や事象を完全に無視しているじゃない」

「知らん。降りてきてはどうだ」
 この世界の存在じゃないからな。チートな存在の振るう炎自体もチートって事だな。

「お断りよ! ランドイーター」
 宙に浮いたアルトラリッチの腕が上がれば、

「ん?」
 銅色に輝くオベリスクのピラミディオン部分に浮かんでいる同色の光が強くなる。
 気になるけども、それ以上にベルの足元から巨大な口が現れた方に意識を持って行かれる。
 ノコギリ状の歯が幾重にも口に沿って生えている生き物の口が、バクリッとベルを捕食――――することはない。
 口が閉じきる前に浄化の炎が円を描けば、巨大な口はそのまま塵芥へと変わる。

「先ほどから下から攻めてくる攻撃が好きなようだ。主がそうだから隣の子供もそれを真似るのかな?」
 たしかにダークフレイムピラーって魔法もコクリコの足元からだったな。

「ブラックコフィンにランドイーターまで……。なんなのよ本当に」

「それはこっちの台詞」
 呼吸が整ったシャルナが口を開く。しっかりとした語気だ。
 先ほどから上位魔法に超上位魔法のオンパレード。
 しかも矢継ぎ早にライトニングサーペントを使用するとか考えられないと驚いている。
 集中して唱えないと発動できない魔法を息切れ一つせずに唱えるなんて不可能と断言。

「それを可能としているから私は凄いの。そもそもアンデッドが息切れなんてするわけないでしょう。スタミナ無限大よ」
 アンデッドと言えば疲労がないのが代名詞。
 絶え間なく動き続ける事が出来るってのは、様々な作品でも描写されているからな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...