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死霊魔術師

PHASE-592【側面から食い散らかす感じ】

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「なんだこの速さと強さは!」
 ベルの動きを目にしていたリッチの一体が驚くけども、そいつはその後の言葉を発する事も出来ずに浄化。
 他のリッチへの攻撃を妨げるように立ちふさがる護衛のスケルトンソルジャーにキャスター達も悉く浄化。

「鋒矢は突破力は絶大だが側面に回ると脆くなる。そもそもが壁を自分たちで展開し歩みを止めるところがいただけない」
 てな声が敵陣から聞こえてくる。
 ゲッコーさんのM60とダネルMGLによる進軍阻止が効いたな。
 その間に俺たちが側面を突く事が出来たからな。
 ゲッコーさんの事だからそこまで考えての事なんだろうけど。

「おら」
 遅れてようやく俺も一太刀。
 一振りでアーチャー三体を炎に包む。
 左翼からベル。右翼から俺。
 特に陣の奥に入り込んでいるベルが亀裂を入れてくれているから、こっちへの警戒が薄いのは有りがたい。

「おい! こちらからも――」

「遅いぜ!」
 俺の方も危険だと理解してくれないとな。
 警戒色を強めたリッチの一体を大上段の唐竹割りで仕留める。
 リッチが一体ずついなくなれば、展開していたプロテクションも同じ数だけ消滅する。
 開いた部分にこっちの後衛からの攻撃が実行。
 陣の内側と外側から食い散らかしていく感じだ。
 スケルトン達はどうすればいいのかとばかりに、忙しく頭を左右に動かしている。

「しょら!」
 指示を受けないと上手く動けないのがスケルトン系の弱点なのかもな。
 自分の意思を持っていないのが弱さだろう。
 これがグレーターやエルダー、それ以上となれば自分で考えて行動するのも可能になるのだろうけど、この場にはリッチの指示待ちタイプしかいない。

「もういっちょ」
 スケルトンソルジャーを残火で袈裟斬り。
 バラバラとあばら骨が落ちながら燃えていく。

「おっと」
 それでも剣で反撃。やはり打撃系が効果的だな。
 動けるうちは槍や剣で反撃してくる。
 スケルトンアーチャーは燃やせば炎が直ぐに弓の弦を燃やしてくれるから、反撃はないから問題はない。
 いや――、矢を握って刺してくるって事も想定して、しっかりと対処した方がいいな。

「だったらこいつだ」
 ストレイマーターの時にも使用した素早く打てる烈火にて頭部を殴ればそれだけで容易く頭部破壊が可能。
 大きな盾から圧縮して作り出さないから威力は大したことないけど、鉄兜に守られた程度のスケルトンソルジャーの頭部なら一撃必殺だ。

「中々におもしろいわね」

「高みの見物なんてしてないで、俺たちと同じ目線に下りてきたらどうだ」

「とりあえず目の前に集中しなさい」
 強者の余裕は崩れない。
 ま、直ぐに崩してやるさ!
 迫ってくるスケルトンソルジャーを倒しつつ、アーチャーとキャスターも反撃を出来ないようにしっかりと倒して数を削っていく。
 乱戦だから俺たち前衛に対して遠距離からの攻撃はないけども――。
 ドドン! と、爆発音が響けばスケルトン達は吹き飛ぶ。
 こっちの遠距離はしっかりと効果を出している。
 なので、こっちの後衛に対して反撃はさせたくないので、しっかりと遠距離タイプも倒していく。
 リッチを倒した事で穴が空き、その部分からゲッコーさん以外にもシャルナとコクリコも参加。
 前面は二人の魔法。直上からはゲッコーさんのダネルMGLによる曲射攻撃。
 敵陣前衛を崩してくれている。

「おのれ小僧!」
 護衛と周囲のキャスターを倒せば、相対するリッチはお怒り。
 どこから取り出したのかリッチが大鎌を握って俺へと振るってくる。
 フードの中身がスケルトンと同じ髑髏なら、典型的な死神だったんだけどな。
 まあ俺が知ってる死神セラとは全くの別物だけ――――、

「ど!」
 鎌ごとリッチを気概で斬り伏せる。
 接近を許したからって、魔術に特化したのがその分野で挑んでくるのは悪手だろう。

「ライトニングボア」
 コクリコのライトニングスネークの上位の魔法発動の台詞が耳朶に届く。
 俺の背後では別のリッチが不気味に笑みを湛えて、禍々しいオーラを纏わせたスッタフを俺へと向け、大蛇のような雷を放ってくる。
 ゼノの時とは俺も違う。
 向上した動体視力なら、雷撃がどのように空中をのたうち回っているかもしっかりと見て取れる。

「よいしょ!」
 炎を纏った残火にて、突きを打ち込んで雷の大蛇を突き殺す。

「馬鹿な!?」

「俺もビックリ!」
 まさかこんなにもしっかりと防げるとは思わなかった。
 吹き飛ぶくらいの覚悟はしてたんだけどね。
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