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死霊魔術師
PHASE-582【ズバズバと言われるロードウィザード】
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――――おチビ発言でムキになった呼吸を整えようとしたところで、
「あのね。皆に比べると力不足だよ。弱すぎ~」
「な!?」
だめ押しとばかりのきつい発言で、再び呼吸が乱される。
流石は子供だ。普通じゃ言いにくい事をドストレートに言うね。
「足手まといだよ。ちゃんと強くならないとね」
「う、うるさいですよ! ライトニングスネーク」
「ハハハッ! それが大したことないって事。じゃあね~」
言うだけ言って、オムニガルの体は完全に床へと消えていった。
先ほどまで上半身を見せていた床に電撃の蛇が直撃し、バチンと音を立てる。
普段は強力な音なんだけど、今回のは虚しく聞こえる。
「何という生意気な発言。このロードウィザードである私に対して!」
なんて言ってはいるけど、悔しいようで声は先ほどよりも荒ぶっている。
でもその声の中には、暗い物も混ざっていて、落ち込んでいるようでもあった。
登山前にもベルに釘を刺されて拗ねていたからな。
ここに来て、自分が使用出来ない魔法を使用する幼女の幽霊が現れ、あまつさえソレを受けて倒れたわけだし。
周囲を見ればチート二人に、出来るエルフ。
焦りに苛まれるよな。
この辺は俺も分かるところだ。
表には出てなくても、取り残されている感が潜在的にあるんだよな。
周囲との実力差に劣等感にも襲われるし。
「まあ、着実に成長はしているんだから焦らずいこうぜ」
「……分かってますよ」
ありゃ、かなり落ち込んでるな。
あんな小さい子に言われれば仕方ないか。
間違いなく成長はしているんだけどな。
コクリコと俺は他の面子と違って、地道に成長していかないといけないからな。
ひたすらに努力。これしかないんだよ。俺たちには。
「それとトール」
「なんだ?」
「先ほどはあのガキンチョの攻撃から救ってくださり、ありがとうございます」
「おう」
こうやって頭を下げることが出来るのも成長だ。
ん? 普段からこのくらいの事は出来てたかな? どうだったかな? いかんせんコクリコだからな~。
「何ですかその目は?」
「イヤ、ナンデモナイヨ」
「抑揚のない言い様の時は、大抵、私を小馬鹿にしている時です!」
スパンッ! と、俺の大腿四頭筋に綺麗に蹴りを入れてきた。
ハハハ――――、良いじゃないかその元気。いつものコクリコらしい。
――…………。
――……。
「このまな板!」
――――蹴りを入れられた報復にコクリコを追いかけ回し、二人仲良くベルから拳骨をもらって悶絶。その後、皆でジオフロント内を歩き回る。
「見ろトール」
程なくしてゲッコーさんが下へと続く通路を見つける。
オムニガルが床に沈んでいったことから、ここよりも更に下があるとは推測していたけども。
地下へと続く道は建物の中にあった。
建物の構造は教会に似ていた。
礼拝堂には十字架ではなく、ストレイマーターが首からぶら下げていた上下逆の五芒星と同じ物がかけられており、その下にある祭壇は横へと押せば、ズズズズ――っと音を立てて稼働する仕掛け。
動かせば下へと続く階段が現れた。
下からは冷たい風が吹き上がってくる。
冷たくて纏わり付く嫌な風だった。
「さあ次の階に移動しますかね」
螺旋状からなるコンクリート製の階段を下りていく。
下りていくほどに寒気は強くなる。
火龍装備なので、寒冷地が原因の寒さによるものなら防いでくれるはずなんだけども、しっかりと寒気を覚えるということは、これは下にいる存在が原因なんだろう。
「こんなにもプレッシャーを感じるのは久しいな。フルイドを思い出す」
「フルイドってゲッコーさんと長年に渡って戦った強敵ですね」
「ああ」
ゲーム内では兄弟的な存在。俺のプレイギアに入っている最新作では巨大傭兵企業のトップに君臨しており、生身の実力はゲッコーさんと互角。
俺が召喚したJLTVも、この企業のマップに出て来るオブジェクトのからの召喚だ。
伝説の兵士がゲーム内のラスボスと同等のプレッシャーを感じるということは、下にいる存在はそれだけの力を持っている強敵だということだ。
「どれほどの強者なのか胸が躍る」
大きな胸が躍るとか最高だね。と、真っ先に思える俺は、まだまだ下から伝わる冷気に負けてない。
ゲッコーさんと違って、ベルは強者との出会いを楽しみにしているご様子。
後列のシャルナは口数が少なくなっている事から、俺以上にプレッシャーを感じているようだ。
エルフ故に俺たちなんかが感じ取れない、悪霊の類いの力も感じ取っているんだろう。
コクリコは――――、う~ん。
オムニガルの発言が尾を引いているようで、いつもと違って弁が立っていない。というか静かだ。
俺の大腿四頭筋に見舞った蹴りは空元気だったか。
魔法の事を指摘されるとメンタル部分にダメージを受けるようだ。
まだ十三歳だしな。俺よりも幼いんだから精神が不安定なのは仕方がないこと。
こればっかりは時間をかけて鍛えていかないといけない。
「あのね。皆に比べると力不足だよ。弱すぎ~」
「な!?」
だめ押しとばかりのきつい発言で、再び呼吸が乱される。
流石は子供だ。普通じゃ言いにくい事をドストレートに言うね。
「足手まといだよ。ちゃんと強くならないとね」
「う、うるさいですよ! ライトニングスネーク」
「ハハハッ! それが大したことないって事。じゃあね~」
言うだけ言って、オムニガルの体は完全に床へと消えていった。
先ほどまで上半身を見せていた床に電撃の蛇が直撃し、バチンと音を立てる。
普段は強力な音なんだけど、今回のは虚しく聞こえる。
「何という生意気な発言。このロードウィザードである私に対して!」
なんて言ってはいるけど、悔しいようで声は先ほどよりも荒ぶっている。
でもその声の中には、暗い物も混ざっていて、落ち込んでいるようでもあった。
登山前にもベルに釘を刺されて拗ねていたからな。
ここに来て、自分が使用出来ない魔法を使用する幼女の幽霊が現れ、あまつさえソレを受けて倒れたわけだし。
周囲を見ればチート二人に、出来るエルフ。
焦りに苛まれるよな。
この辺は俺も分かるところだ。
表には出てなくても、取り残されている感が潜在的にあるんだよな。
周囲との実力差に劣等感にも襲われるし。
「まあ、着実に成長はしているんだから焦らずいこうぜ」
「……分かってますよ」
ありゃ、かなり落ち込んでるな。
あんな小さい子に言われれば仕方ないか。
間違いなく成長はしているんだけどな。
コクリコと俺は他の面子と違って、地道に成長していかないといけないからな。
ひたすらに努力。これしかないんだよ。俺たちには。
「それとトール」
「なんだ?」
「先ほどはあのガキンチョの攻撃から救ってくださり、ありがとうございます」
「おう」
こうやって頭を下げることが出来るのも成長だ。
ん? 普段からこのくらいの事は出来てたかな? どうだったかな? いかんせんコクリコだからな~。
「何ですかその目は?」
「イヤ、ナンデモナイヨ」
「抑揚のない言い様の時は、大抵、私を小馬鹿にしている時です!」
スパンッ! と、俺の大腿四頭筋に綺麗に蹴りを入れてきた。
ハハハ――――、良いじゃないかその元気。いつものコクリコらしい。
――…………。
――……。
「このまな板!」
――――蹴りを入れられた報復にコクリコを追いかけ回し、二人仲良くベルから拳骨をもらって悶絶。その後、皆でジオフロント内を歩き回る。
「見ろトール」
程なくしてゲッコーさんが下へと続く通路を見つける。
オムニガルが床に沈んでいったことから、ここよりも更に下があるとは推測していたけども。
地下へと続く道は建物の中にあった。
建物の構造は教会に似ていた。
礼拝堂には十字架ではなく、ストレイマーターが首からぶら下げていた上下逆の五芒星と同じ物がかけられており、その下にある祭壇は横へと押せば、ズズズズ――っと音を立てて稼働する仕掛け。
動かせば下へと続く階段が現れた。
下からは冷たい風が吹き上がってくる。
冷たくて纏わり付く嫌な風だった。
「さあ次の階に移動しますかね」
螺旋状からなるコンクリート製の階段を下りていく。
下りていくほどに寒気は強くなる。
火龍装備なので、寒冷地が原因の寒さによるものなら防いでくれるはずなんだけども、しっかりと寒気を覚えるということは、これは下にいる存在が原因なんだろう。
「こんなにもプレッシャーを感じるのは久しいな。フルイドを思い出す」
「フルイドってゲッコーさんと長年に渡って戦った強敵ですね」
「ああ」
ゲーム内では兄弟的な存在。俺のプレイギアに入っている最新作では巨大傭兵企業のトップに君臨しており、生身の実力はゲッコーさんと互角。
俺が召喚したJLTVも、この企業のマップに出て来るオブジェクトのからの召喚だ。
伝説の兵士がゲーム内のラスボスと同等のプレッシャーを感じるということは、下にいる存在はそれだけの力を持っている強敵だということだ。
「どれほどの強者なのか胸が躍る」
大きな胸が躍るとか最高だね。と、真っ先に思える俺は、まだまだ下から伝わる冷気に負けてない。
ゲッコーさんと違って、ベルは強者との出会いを楽しみにしているご様子。
後列のシャルナは口数が少なくなっている事から、俺以上にプレッシャーを感じているようだ。
エルフ故に俺たちなんかが感じ取れない、悪霊の類いの力も感じ取っているんだろう。
コクリコは――――、う~ん。
オムニガルの発言が尾を引いているようで、いつもと違って弁が立っていない。というか静かだ。
俺の大腿四頭筋に見舞った蹴りは空元気だったか。
魔法の事を指摘されるとメンタル部分にダメージを受けるようだ。
まだ十三歳だしな。俺よりも幼いんだから精神が不安定なのは仕方がないこと。
こればっかりは時間をかけて鍛えていかないといけない。
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