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死霊魔術師

PHASE-578【油断大敵】

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「よし」
 火葬と手を合わせる所作を終えてから、一人、勝利の喜びを口からこぼす。

「無事だったか」

「良いタイミングできますね。ゲッコーさん」
 間違いなく出るタイミングを窺っていただろう。
 自分のノルマはこなして、助力もしないで俺の戦いを見ていたな。

「中々に愛らしいゴーレムを召喚できるのだな。羨ましいぞ」

「ベルも見てたのかよ!」
 助けろよ。パーティーなんだから。
 いつまでも放任主義はよくないぞ。
 言い返してみれば、あの程度の手合いくらい最早、敵ではないだろうって言い返してくるからね。
 勝てたけども、トリッキータイプは苦手なんですよ。
 これを言えば、ならば慣れればいいだけだろう。って、間違いなく言ってくるだろうからもう何も言わない。

「さて、二人は?」

「ここですよ」
 屋根の上に立って腕組み。
 スケルトンを大量に倒してご満悦なのか表情がホクホクしている。
 なぜか手にしているのはワンドではなく、スケルトンが持っていたであろうメイスが握られていた。
 にしても、ここのスケルトンは数は多いが弱い。
 でもしっかりとした装備も多いよな。
 刃毀れ装備もいたけど、ソルジャークラスになると革鎧に盾に武器と、正直、王都の兵よりも整っているし、新米冒険者なら羨ましがるレベル。
 倒してドロップした大量の武具を繁華街に運んでから街商でも開けば、一財産築けそうなくらいにいい装備なんだよな。

「他愛なし。他愛なし」

「いいから降りてこい」
 未だに圧倒的勝利に酔いしれているコクリコ。
 弱いとはいえ、かなりの数のスケルトンを相手に無双したわけだからな。インスタントな一騎当千にご満悦だ。
 ま、俺が相手にしてたのを倒せてたら褒めてもいいけど。と、内心にてマウントを取りたがる俺。
 シャルナはそそくさと降りて合流。流石にコクリコのノリにはついて行けないらしい。
 ま、屋根上で勝利のポージングをしている様は中々にイタイ光景だからな……。
 
 勝利の余韻に浸り、メイスを高らかに掲げているコクリコの方向から、名状しがたい生ぬるい風が俺の頬を撫でていくのを感じ取った。
 同時に感じる悪寒。
 俺以外も察知した模様。勝ちに酔いしれるコクリコを除いて。

「コクリコ! いいから早く合流しろ!」
 勘がやばいと告げている。
 何がやばいか分からないし、俺の勘が当てになるとは思えないが、悪い時の勘ってのは大抵は当たるってのが大半だろう。
 咄嗟にラピッドでコクリコの元まで跳躍。

「ダークフレイムピラー」
 突如として聞こえてきた声と、突如としてコクリコの足元から立ち上がる漆黒の炎。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 コクリコの叫びが聞こえてくる炎の中にダイブ。
 黒い炎の柱からコクリコを押し倒すようにして脱出させる。

「おい! 大丈夫か!」
 ぶすぶすと上がる煙と、意識がとんでいるのか返事がない。
 呼吸はあるから問題はない――と思いたい……。
 漆黒の炎の柱がコクリコを完全に覆い隠す前に、柱から救出できたのがよかった。
 もう少し遅れていたら大きなダメージを受けていただろう。
 一瞬でこれなんだから。
 シャルナを呼ぶよりも早く、雑嚢からハイポーションを二本取り出してコクリコの体にかける。
 ファンタジーの素晴らしいところはこういったところか。
 火傷をおった体から、見る見ると火傷が消えていく。

「へ~。お兄ちゃんにはあんまり効果がないみたいだね」
 あどけない声が聞こえる。ダークフレイムとか言っていた声と一緒。
 建物の壁が原因なのか、声は反響していてどこから語りかけているのか位置が掴みにくい。

「コクリコ!」
 俺に続いてシャルナが屋根へと来てくれると、プロテクションを展開してからヒールを唱える。

「クスクス」

「なにが――おかしいんだ?」
 冷静に返答できてる。
 コクリコがやられて声を荒げるかと自分でも思ったけど、存外、冷静だ。
 ここで熱くなれば相手のペースになるからな。
 感情のコントロールは出来ている。

 ――――今のところは――――。
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