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死霊魔術師
PHASE-547【初めてのハーレム的抱擁(一瞬)】
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俺たちがよその大陸に行っている間に――――、
「いいご身分ですな!」
「おお、勇者殿!」
S級さん達が言うように執務室では一応、政務はこなしているみたいだけど、本当にメイドさん達を侍らせているね。
コトネさんがお気に入りなのかな? 一番近くに侍らせているところから推測すると。
分かるよ。コトネさんの黒髪シニヨンに右目の泣きぼくろは最高だもんね。
「トール様!」
と、そのコトネさんが黄色い声で俺へと駆け寄ってくれば、侯爵はなんとも寂しそうだった。
でもって、他のメイドさん達も俺へと駆け寄ってくる。
更には、俺たちが帰ってきたという事もあって、別邸だけでなく、報を受けて本邸からもメイドさん達が集まっており大人数だ。
「それで、我らが主は……」
いい報告とは限らないからか、コトネさんの声は暗い。
さっきみたいに黄色い声でもいいけども、流石に結果が気になれば、不安の方が大きいようだ。
見れば、コトネさんの周りにいるメイドさん達も同じような表情。
なのでその不安を払拭させてあげようじゃないか。
「コトネさん。俺は不可能を可能にする男ですよ」
と、きざったらしくサムズアップを加えて言ってみれば、その瞬間メイドさん達の表情が明るくなった。
「トール様!」
「おお!? お! おぉぉぉぉぉぉぉ!」
コトネさんの喜びの声に続いて、歓呼の声が執務室に上がる。
と、同時に、俺も喜びから雄叫びを上げる。
だって――――、すっごくいい香りがしますですはい!
全包囲から柔らかなものに包まれている俺は死ぬのでしょうか……。
美人サキュバスさん達から俺は感謝を込めてとばかりに熱い抱擁をいただく。
コトネさんだけでなく、サニアさんを初めとする美人さん達からの柔らかくて暖かい抱擁。
完全にハーレムが築ける状況となっているであります!
たしか、リズベッドの為に自分たちの体を提供とか言ってましたけども、俺が拒んだとしても、お礼として皆さんが俺に素敵な経験をさせてくれそうな予感ビンビンですよ。
「それでトール様。我らが主、リズベッド様は!」
興奮気味にコトネさんが抱擁しつつ更に至近。
鼻先通しが触れ合って、俺の心臓が破裂しそうだった。
「い、いまは応接室の方でガルム氏たちと待機してますです。だけん侯爵に謁見してもらいたいんで、俺が迎えに来たとです」
もの凄く上擦ってしまい、変な方言が出ている童貞が俺です。
「畏まりました」
俺から離れれば典雅な一礼。
「……ああ……」
コトネさんを先頭に、疾風の如く走り去っていくメイドさん達。
足音を立てることなく、素早い走法で瞬く間に俺の視界から消え去ってしまう。
柔らかく暖かい感触の記憶と甘い残り香だけを残して…………。
チラリと執務室の椅子に腰を降ろしている侯爵に目を向ければ、自分から離れていったメイドさん達を思ってか、なんとも寂しげな表情だ。
いいご身分だと言ってなんだが、俺も今、侯爵と同じ表情なんだろうな……。
「……あの、応接室に来てもらっていいでしょうか」
本来ならこの屋敷の主である侯爵の元に、リズベッド達が足を運ぶのが礼儀なのかもしれないけど、いかんせん相手は魔王だからね。
「もちろん喜んで拝謁いたしましょう。勇者殿、お見事でした」
「ありがとうございます」
ようやく大貴族の侯爵らしい凜々しい姿に変わって、俺を称えてくれた。
――――二人して応接室に向かえば、
「なんと麗しく華やかな人垣だろうか」
「いい表現です。勇者殿」
応接室の前では、室内に入れないメイドさん達がわんさかと集まっており、一帯は素敵な香りに満ちていた。
極楽浄土とはこういう所なんだろう。
「申し訳ないですが通りますよ」
軽く会釈して道を譲ってもらおうとすれば、
「トール様!」
「トール様よ!」
おいおいマジですか。なんなのこの美人メイドさん達からの黄色い歓声は。
俺を憧れのアイドルでも見るかのようなキラキラとした瞳で見つめてきている。
緊張のあまり、右手と右足。左手と左足が同時に出ている歩き方になっているよ。
正直この中のメイドさんの誰でもいいから、見つめられて、好きなんて言われれば、それだけでその方とのルートに突入してもいいくらいの美人しかいないのに、全員と言っていいメイドさん達から黄色い声を浴びる俺。
モテていると言っても――――、問題ないでしょう!
「はい、どいてください。トールと侯爵が通れないですよ」
場を仕切っているのはコクリコ。
大勢の前では借りてきた猫のようになっていた頃に比べると、本当に成長したもんだ。
中々にうまい仕切りのようで、ワンドを指揮棒みたいにして人垣を割いていくのはお見事だった。
「さあトール。我が親友であるリズベッドが待っております」
即座に俺は真顔になってコクリコに接近し、小声で苦言。
「コンプライアンス重視だから。二人でいる時はいいけど、大勢の前ではちゃんと魔王様なり殿をつけような」
「分かったので、本気のトーンで言うのはやめてください……」
別に親友関係なのはいいんだ。
だが身分というのをわきまえないといけない。リズベッドがいいと言っても、周囲はよくないから。
笑顔で見ていても、腹の中では不快感が怒りに変わるかも知れないからな。
――応接室に入れば、リズベッドの無事を知ったコトネさんが涙を流していたようで、拭った後なのか、目の周囲が赤くなっている。
椅子にちょこんと座るリズベッドの左右には、ヴィルコラクのガルム氏とゴブリン老のアルスン翁が立っていた。
現状この二人がリズベッドの派閥において、最高幹部って事なんだろう。
ガルム氏が将軍で、翁が特別顧問って立ち位置だな。
「いいご身分ですな!」
「おお、勇者殿!」
S級さん達が言うように執務室では一応、政務はこなしているみたいだけど、本当にメイドさん達を侍らせているね。
コトネさんがお気に入りなのかな? 一番近くに侍らせているところから推測すると。
分かるよ。コトネさんの黒髪シニヨンに右目の泣きぼくろは最高だもんね。
「トール様!」
と、そのコトネさんが黄色い声で俺へと駆け寄ってくれば、侯爵はなんとも寂しそうだった。
でもって、他のメイドさん達も俺へと駆け寄ってくる。
更には、俺たちが帰ってきたという事もあって、別邸だけでなく、報を受けて本邸からもメイドさん達が集まっており大人数だ。
「それで、我らが主は……」
いい報告とは限らないからか、コトネさんの声は暗い。
さっきみたいに黄色い声でもいいけども、流石に結果が気になれば、不安の方が大きいようだ。
見れば、コトネさんの周りにいるメイドさん達も同じような表情。
なのでその不安を払拭させてあげようじゃないか。
「コトネさん。俺は不可能を可能にする男ですよ」
と、きざったらしくサムズアップを加えて言ってみれば、その瞬間メイドさん達の表情が明るくなった。
「トール様!」
「おお!? お! おぉぉぉぉぉぉぉ!」
コトネさんの喜びの声に続いて、歓呼の声が執務室に上がる。
と、同時に、俺も喜びから雄叫びを上げる。
だって――――、すっごくいい香りがしますですはい!
全包囲から柔らかなものに包まれている俺は死ぬのでしょうか……。
美人サキュバスさん達から俺は感謝を込めてとばかりに熱い抱擁をいただく。
コトネさんだけでなく、サニアさんを初めとする美人さん達からの柔らかくて暖かい抱擁。
完全にハーレムが築ける状況となっているであります!
たしか、リズベッドの為に自分たちの体を提供とか言ってましたけども、俺が拒んだとしても、お礼として皆さんが俺に素敵な経験をさせてくれそうな予感ビンビンですよ。
「それでトール様。我らが主、リズベッド様は!」
興奮気味にコトネさんが抱擁しつつ更に至近。
鼻先通しが触れ合って、俺の心臓が破裂しそうだった。
「い、いまは応接室の方でガルム氏たちと待機してますです。だけん侯爵に謁見してもらいたいんで、俺が迎えに来たとです」
もの凄く上擦ってしまい、変な方言が出ている童貞が俺です。
「畏まりました」
俺から離れれば典雅な一礼。
「……ああ……」
コトネさんを先頭に、疾風の如く走り去っていくメイドさん達。
足音を立てることなく、素早い走法で瞬く間に俺の視界から消え去ってしまう。
柔らかく暖かい感触の記憶と甘い残り香だけを残して…………。
チラリと執務室の椅子に腰を降ろしている侯爵に目を向ければ、自分から離れていったメイドさん達を思ってか、なんとも寂しげな表情だ。
いいご身分だと言ってなんだが、俺も今、侯爵と同じ表情なんだろうな……。
「……あの、応接室に来てもらっていいでしょうか」
本来ならこの屋敷の主である侯爵の元に、リズベッド達が足を運ぶのが礼儀なのかもしれないけど、いかんせん相手は魔王だからね。
「もちろん喜んで拝謁いたしましょう。勇者殿、お見事でした」
「ありがとうございます」
ようやく大貴族の侯爵らしい凜々しい姿に変わって、俺を称えてくれた。
――――二人して応接室に向かえば、
「なんと麗しく華やかな人垣だろうか」
「いい表現です。勇者殿」
応接室の前では、室内に入れないメイドさん達がわんさかと集まっており、一帯は素敵な香りに満ちていた。
極楽浄土とはこういう所なんだろう。
「申し訳ないですが通りますよ」
軽く会釈して道を譲ってもらおうとすれば、
「トール様!」
「トール様よ!」
おいおいマジですか。なんなのこの美人メイドさん達からの黄色い歓声は。
俺を憧れのアイドルでも見るかのようなキラキラとした瞳で見つめてきている。
緊張のあまり、右手と右足。左手と左足が同時に出ている歩き方になっているよ。
正直この中のメイドさんの誰でもいいから、見つめられて、好きなんて言われれば、それだけでその方とのルートに突入してもいいくらいの美人しかいないのに、全員と言っていいメイドさん達から黄色い声を浴びる俺。
モテていると言っても――――、問題ないでしょう!
「はい、どいてください。トールと侯爵が通れないですよ」
場を仕切っているのはコクリコ。
大勢の前では借りてきた猫のようになっていた頃に比べると、本当に成長したもんだ。
中々にうまい仕切りのようで、ワンドを指揮棒みたいにして人垣を割いていくのはお見事だった。
「さあトール。我が親友であるリズベッドが待っております」
即座に俺は真顔になってコクリコに接近し、小声で苦言。
「コンプライアンス重視だから。二人でいる時はいいけど、大勢の前ではちゃんと魔王様なり殿をつけような」
「分かったので、本気のトーンで言うのはやめてください……」
別に親友関係なのはいいんだ。
だが身分というのをわきまえないといけない。リズベッドがいいと言っても、周囲はよくないから。
笑顔で見ていても、腹の中では不快感が怒りに変わるかも知れないからな。
――応接室に入れば、リズベッドの無事を知ったコトネさんが涙を流していたようで、拭った後なのか、目の周囲が赤くなっている。
椅子にちょこんと座るリズベッドの左右には、ヴィルコラクのガルム氏とゴブリン老のアルスン翁が立っていた。
現状この二人がリズベッドの派閥において、最高幹部って事なんだろう。
ガルム氏が将軍で、翁が特別顧問って立ち位置だな。
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