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レティアラ大陸
PHASE-537【安心と快適な移動を提供するようです】
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「準備が出来たな。では勇者よ、力を示せ」
家畜を運び終わり、皆がこれからどうするのかと思っていたところで地龍の発言。
言われるままに俺は、以前リド砦でも使用した軍用トラックを二台召喚する。
もちろん運転はゲッコーさんとベルが担当。
いま思えばS級さん達を遠隔召喚して、一気に多数のトラックで海岸まで移動ってのもよかったんだろうけど、地龍にお願いしたことだし、色々と試してみるのもいいだろう。
「これは立派な鉄の箱だ。これも飛ぶのか?」
「いや、飛ばないよ」
ハインドを経験しているからどういう感じの乗り物なのかは理解してくれている。
「よし。では――」
といって、トラックの荷台部分に地龍は自らが作り出した土の荷台を連結させる。
――……う、む……。
一応、土の荷台を触って叩いてみる。
カンカンとまるで金属のように硬くて丈夫だ。
硬質化された土の造形は、ご丁寧にトラックの荷台を真似て、座る部分も作ってくれている。
だがしかし……、
「なにこれ?」
「この部分に全てを乗せていく。無論これだけでは足りないからな。延長させる」
う~んと……、電車にでもするのかな?
でもね……。
「タイヤがないぞ。このままだと削れるぞ」
乗り心地最悪だ。それ以前に完全に重量過多だ。燃費は悪いし横転する可能性大だ。
これは駄目だと訳を説明して却下すれば、専門家であるゲッコーさんも俺に賛同する。
「これで最後ではない。我は地龍だぞ。大地や毒だけでなく、重力に関する魔法も使用出来ると言ったはずだ。そもそも空飛ぶ風車の時には、私自身の重さを無くすという芸当も披露したであろう」
「そうだったね。で、その重力魔法でどうすんの?」
地龍自体が軽くなって、吊り下げ輸送されてたのは今日のことだけど。
「こうするのだ。――――バタリオン。ゼログラビティ」
集まった集落の皆さんに発動すると、皆さんが金色の輝き、その後、闇に覆われる。
直ぐに光と闇は不可視に変わる。
前者の輝きがバタリオンなる魔法で、後者の闇のオーラみたいなのが重力魔法であるゼログラビティが付与されたと見ていいだろう。
バタリオンは、リズベッドが地龍戦で俺たちに使用したスクワッドの上位魔法だそうだ。
この後に発動する魔法を集落の住人に付与させる効果がある。
スクワッドの上位なだけあって、一度の発動で住人全員に付与を可能とする。
なんとも便利だな。
力が十全でなくても流石は四大聖龍の一柱というべきだな。
「これで集落の者達は現状、重さが存在しない」
試して見ろと言われたので、長躯で体毛に覆われていても分かるくらいの筋肉隆々なガルム氏で試させてもらう。
両手をガルム氏の腰に添えてから持ち上げれば――、
「おお!?」
本当に重さを感じることがなかった。羽毛のような軽さだ。
「すげー」
「凄いぞトール!」
俺以上に興奮する声が上がる。
声の主はベルだ。
俺が逞しく見えたのかと思い、嬉しくなって声の方へと顔を向けると、珍しく興奮に染まった声は俺に向けられたものではなかったのが直ぐに分かった……。
ガルム氏のちびっ子たちを抱きかかえていた。
モフモフを一気に抱きかかえられる幸せといったところだ……。
時折ポンコツになるのはもう慣れたよ。
喜んでいるベルから地龍へと顔を戻し、
「これで簡単に運べるわけだ」
「そうだ。私の作った荷台にも同じ効果が施してある。ここに――」
長い首から頭だけを動かしてリズベッドへと向ければ、
「お任せください。フロート」
「なるほど」
納得。重量を無にしてからフロートで荷台を浮かせるわけだ。これで荷台底が地面に擦れる心配もない。
もう一台にも同じ施しをすれば、こちらには家畜を乗せればいいだけ。
現代技術とファンタジーを上手く混ぜ合わせるのって初めての試みだったかも。
技術と魔法の融合によって、一度で問題解決に繋がった。
「出来るだけ真っ直ぐにハンドルを維持した運転を心がけないとな」
車体が延長したぶん安定性はないだろうからね。重さがなくてもハンドルを大きく切れば振り落とされる可能性があるとゲッコーさん。
でもゲッコーさんなら問題なく運転できるだろう。
「でもさ。家畜はどうすんの?」
家畜をいきなりこんなのに乗せても、驚いて暴れそうな気がするんだけど。
ゴロ太みたいに動物と会話をするように、地龍が言い聞かせるのだろうか?
「それも問題ない。乗るがよい」
やはりというべきか、地龍の声を聞き入れて、家畜たちがトラックと硬質化した土の荷台へ次々に乗り込んでいく。
ドナドナを歌いたくなる光景だ。
全てが乗り込んだところで、地龍が優しくバインドにて家畜を荷台に固定。
動き出せば怖がるかも知れないからと、ここでもリズベッドに魔法をと地龍が指示。
「バタリオン」
まずは地龍が唱えて、
「コンフォート」
と、続けてリズベッドが唱えれば、家畜たちを優しく暖かな光が覆う。
荷台に使用したゼログラビティとフロートもそうだったけど、前者と後者で術者が違っても、対象全体に魔法付与を行う事は可能なんだな。
コンフォートなる魔法の効果なのか、家畜たちは安心しきったように目が半眼に変わる。
微睡んでいるようで気持ちよさそうだった。
家畜を運び終わり、皆がこれからどうするのかと思っていたところで地龍の発言。
言われるままに俺は、以前リド砦でも使用した軍用トラックを二台召喚する。
もちろん運転はゲッコーさんとベルが担当。
いま思えばS級さん達を遠隔召喚して、一気に多数のトラックで海岸まで移動ってのもよかったんだろうけど、地龍にお願いしたことだし、色々と試してみるのもいいだろう。
「これは立派な鉄の箱だ。これも飛ぶのか?」
「いや、飛ばないよ」
ハインドを経験しているからどういう感じの乗り物なのかは理解してくれている。
「よし。では――」
といって、トラックの荷台部分に地龍は自らが作り出した土の荷台を連結させる。
――……う、む……。
一応、土の荷台を触って叩いてみる。
カンカンとまるで金属のように硬くて丈夫だ。
硬質化された土の造形は、ご丁寧にトラックの荷台を真似て、座る部分も作ってくれている。
だがしかし……、
「なにこれ?」
「この部分に全てを乗せていく。無論これだけでは足りないからな。延長させる」
う~んと……、電車にでもするのかな?
でもね……。
「タイヤがないぞ。このままだと削れるぞ」
乗り心地最悪だ。それ以前に完全に重量過多だ。燃費は悪いし横転する可能性大だ。
これは駄目だと訳を説明して却下すれば、専門家であるゲッコーさんも俺に賛同する。
「これで最後ではない。我は地龍だぞ。大地や毒だけでなく、重力に関する魔法も使用出来ると言ったはずだ。そもそも空飛ぶ風車の時には、私自身の重さを無くすという芸当も披露したであろう」
「そうだったね。で、その重力魔法でどうすんの?」
地龍自体が軽くなって、吊り下げ輸送されてたのは今日のことだけど。
「こうするのだ。――――バタリオン。ゼログラビティ」
集まった集落の皆さんに発動すると、皆さんが金色の輝き、その後、闇に覆われる。
直ぐに光と闇は不可視に変わる。
前者の輝きがバタリオンなる魔法で、後者の闇のオーラみたいなのが重力魔法であるゼログラビティが付与されたと見ていいだろう。
バタリオンは、リズベッドが地龍戦で俺たちに使用したスクワッドの上位魔法だそうだ。
この後に発動する魔法を集落の住人に付与させる効果がある。
スクワッドの上位なだけあって、一度の発動で住人全員に付与を可能とする。
なんとも便利だな。
力が十全でなくても流石は四大聖龍の一柱というべきだな。
「これで集落の者達は現状、重さが存在しない」
試して見ろと言われたので、長躯で体毛に覆われていても分かるくらいの筋肉隆々なガルム氏で試させてもらう。
両手をガルム氏の腰に添えてから持ち上げれば――、
「おお!?」
本当に重さを感じることがなかった。羽毛のような軽さだ。
「すげー」
「凄いぞトール!」
俺以上に興奮する声が上がる。
声の主はベルだ。
俺が逞しく見えたのかと思い、嬉しくなって声の方へと顔を向けると、珍しく興奮に染まった声は俺に向けられたものではなかったのが直ぐに分かった……。
ガルム氏のちびっ子たちを抱きかかえていた。
モフモフを一気に抱きかかえられる幸せといったところだ……。
時折ポンコツになるのはもう慣れたよ。
喜んでいるベルから地龍へと顔を戻し、
「これで簡単に運べるわけだ」
「そうだ。私の作った荷台にも同じ効果が施してある。ここに――」
長い首から頭だけを動かしてリズベッドへと向ければ、
「お任せください。フロート」
「なるほど」
納得。重量を無にしてからフロートで荷台を浮かせるわけだ。これで荷台底が地面に擦れる心配もない。
もう一台にも同じ施しをすれば、こちらには家畜を乗せればいいだけ。
現代技術とファンタジーを上手く混ぜ合わせるのって初めての試みだったかも。
技術と魔法の融合によって、一度で問題解決に繋がった。
「出来るだけ真っ直ぐにハンドルを維持した運転を心がけないとな」
車体が延長したぶん安定性はないだろうからね。重さがなくてもハンドルを大きく切れば振り落とされる可能性があるとゲッコーさん。
でもゲッコーさんなら問題なく運転できるだろう。
「でもさ。家畜はどうすんの?」
家畜をいきなりこんなのに乗せても、驚いて暴れそうな気がするんだけど。
ゴロ太みたいに動物と会話をするように、地龍が言い聞かせるのだろうか?
「それも問題ない。乗るがよい」
やはりというべきか、地龍の声を聞き入れて、家畜たちがトラックと硬質化した土の荷台へ次々に乗り込んでいく。
ドナドナを歌いたくなる光景だ。
全てが乗り込んだところで、地龍が優しくバインドにて家畜を荷台に固定。
動き出せば怖がるかも知れないからと、ここでもリズベッドに魔法をと地龍が指示。
「バタリオン」
まずは地龍が唱えて、
「コンフォート」
と、続けてリズベッドが唱えれば、家畜たちを優しく暖かな光が覆う。
荷台に使用したゼログラビティとフロートもそうだったけど、前者と後者で術者が違っても、対象全体に魔法付与を行う事は可能なんだな。
コンフォートなる魔法の効果なのか、家畜たちは安心しきったように目が半眼に変わる。
微睡んでいるようで気持ちよさそうだった。
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