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レティアラ大陸

PHASE-525【この面子は最強】

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「やだ。乗りたくない……」

「何が気に入らない。この雄々しいデザインはよいものだろう?」

「よいどうこうじゃなくて、こんなもんに乗って似合うのは、秘孔の位置が全て逆な聖帝様だけだよ!」

「聖帝とは誰だか分からないが、勇者と同等のような称号ではないか。ならば問題なかろう」
 ありありだよ。恥ずかしいよ。

「普通の鞍でお願いします」

「そうか……」
 残念がらないでほしい。
 ――――左右の角のデザインが消え去って、けばけばしい輝きも鳴りを潜め、落ち着きのある黒色に変わり、見た目が普通になった。
 鞍と例えるより、背もたれがしっかりとある椅子のままではあるが、だるい体を預けられる背もたれの存在はありがたい。
 地龍は角を上手く利用して俺の体を持ち上げれば、器用に椅子へと座らせてくれる。
 落ち着いて腰を降ろしたところにリズベッドが回復魔法を唱えてくれた。
 脱力以外にも、ブーステッドで無理に体を酷使しているから、その回復のためだ。

「ついでだ、魔王も乗るといい」
 半長靴のサイズが合っていないことを悟り、優しさを見せる地龍。

「いえ、私は自らの足で」
 俺としては美少女と共に聖龍に乗る姿が、勇者っぽくて様になると思っているんだけども。
 長い間、封じられていたから、自身の足で歩きたいという思いが強いそうだ。
 決して、俺と一緒なのが嫌だという事ではない。

 ――――地龍が封じられていた地下施設という名の地底湖を後にする。
 ここからは救出成功で弛緩した神経を研ぎ澄まさないといけない。

「指令の仇だ!」

「絶対にここより出すな! 全員でかかるぞ」
 当然の如く、デスベアラーと戦闘を繰り広げた室内には、レッドキャップスをはじめ、護衛軍がわんさかと大挙している。
 スペースがないのか、柱にしがみついたり、柱に埋め込まれたクリスタルの上に立ち、クロスボウや弓を手にする者達。
 鈴生りの状態で鏃をこちらへと向けていた。

「これはなんとも大勢力だ」
 不敵な笑みを浮かべるベル。
 本来の力なら、レイピアを横に一振りするだけで敵を壊滅させられるだけの力を有しているけども、現在はそうはいかない。
 だが、眼前の光景を目にしても驚異と思っていないことは、湛えた笑みで理解できる。

「ちゃっちゃとやろうか」
 更にもう一人余裕なのは、言わずもがなゲッコーさん。
 再び、一人で面制圧できるもん。であるAA-12が猛威を振るいそうだ。

「流石に多いような……」

「大丈夫だよ。コクリコなら出来るさ」

「地龍に騎乗し、やる気のなさそうな姿勢の人に言われてもね」
 集団なんだから、アークディフュージョンやライトニングスネークを唱えればなんとかなるさ。

「不思議とこの面子なら負ける気はしないよね」
 シャルナはチート二人ほどじゃないけど、表情は強張らず、余裕だ。
 リズベッドを遮るようにして立つランシェルは、眼光を鋭くさせ、口を一文字に結び、ナックルダスターを両拳にはめて構える。

「なめたまねを! この状況で挑むつもりか!」
 相対する方向の先頭に立つレッドキャップスのオーガが吠える。
 手にした三メートルはありそうな大きなメイスを苛立ちと威嚇を混ぜて床に叩き付ける。
 叩き付けを合図とし、集団は戦闘態勢。
 穂先と剣先がしっかりと俺たちに向けられ、鏃も標的を捉え直す動きをしていた。
 魔法を使用する者達は、スタッフやワンドの先端を向けてくる。

「一斉射を実行されればたまらんな」
 発言の内容は驚異だけど、声音はまったく驚異と思っていないゲッコーさん。
 先手必勝とばかりに、32発が装填されたドラムマガジンを備えたAA-12を容赦なく発射する。
 こちらがまず、一人による一斉射。

「障壁」
 オーガの発する言葉に魔道師系が障壁を展開し、更には盾持ちが壁を思わせる横隊。
 だが、障壁の間に合わなかった箇所は散弾の雨によってバタバタと倒れ、穴が空いた箇所に、ゲッコーさんは追加で散弾を撃ち込んでいく。
 でもって、

「そら」
 手に握ったグレネードをその穴部分に投擲すれば、上手い具合に陣形を組んでいる中央に落ち、程なくして爆発。
 爆発と破片によって阿鼻叫喚がその場所より上がり、

「……ええい! やれ!」
 一人に言い様にされている事に呆気にとられていたオーガが指示を出せば、遠距離攻撃を一斉に仕掛けてくる。
 多彩な魔法と矢が飛んでくるけども、

「ここは私が」
 ランシェルの後ろにいたリズベッドがランシェルの前へと一歩出て、迫る攻撃に両手を向ければ、地龍戦で活躍した魔法障壁が現出。

 単身で向こうの陣営が顕現させた障壁を凌駕するものを展開。
 正面だけでなく頭上から迫ってくる攻撃に対しても、半透明の不落の壁は、その悉くを防いでいく。
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