525 / 1,668
レティアラ大陸
PHASE-525【この面子は最強】
しおりを挟む
「やだ。乗りたくない……」
「何が気に入らない。この雄々しいデザインはよいものだろう?」
「よいどうこうじゃなくて、こんなもんに乗って似合うのは、秘孔の位置が全て逆な聖帝様だけだよ!」
「聖帝とは誰だか分からないが、勇者と同等のような称号ではないか。ならば問題なかろう」
ありありだよ。恥ずかしいよ。
「普通の鞍でお願いします」
「そうか……」
残念がらないでほしい。
――――左右の角のデザインが消え去って、けばけばしい輝きも鳴りを潜め、落ち着きのある黒色に変わり、見た目が普通になった。
鞍と例えるより、背もたれがしっかりとある椅子のままではあるが、だるい体を預けられる背もたれの存在はありがたい。
地龍は角を上手く利用して俺の体を持ち上げれば、器用に椅子へと座らせてくれる。
落ち着いて腰を降ろしたところにリズベッドが回復魔法を唱えてくれた。
脱力以外にも、ブーステッドで無理に体を酷使しているから、その回復のためだ。
「ついでだ、魔王も乗るといい」
半長靴のサイズが合っていないことを悟り、優しさを見せる地龍。
「いえ、私は自らの足で」
俺としては美少女と共に聖龍に乗る姿が、勇者っぽくて様になると思っているんだけども。
長い間、封じられていたから、自身の足で歩きたいという思いが強いそうだ。
決して、俺と一緒なのが嫌だという事ではない。
――――地龍が封じられていた地下施設という名の地底湖を後にする。
ここからは救出成功で弛緩した神経を研ぎ澄まさないといけない。
「指令の仇だ!」
「絶対にここより出すな! 全員でかかるぞ」
当然の如く、デスベアラーと戦闘を繰り広げた室内には、レッドキャップスをはじめ、護衛軍がわんさかと大挙している。
スペースがないのか、柱にしがみついたり、柱に埋め込まれたクリスタルの上に立ち、クロスボウや弓を手にする者達。
鈴生りの状態で鏃をこちらへと向けていた。
「これはなんとも大勢力だ」
不敵な笑みを浮かべるベル。
本来の力なら、レイピアを横に一振りするだけで敵を壊滅させられるだけの力を有しているけども、現在はそうはいかない。
だが、眼前の光景を目にしても驚異と思っていないことは、湛えた笑みで理解できる。
「ちゃっちゃとやろうか」
更にもう一人余裕なのは、言わずもがなゲッコーさん。
再び、一人で面制圧できるもん。であるAA-12が猛威を振るいそうだ。
「流石に多いような……」
「大丈夫だよ。コクリコなら出来るさ」
「地龍に騎乗し、やる気のなさそうな姿勢の人に言われてもね」
集団なんだから、アークディフュージョンやライトニングスネークを唱えればなんとかなるさ。
「不思議とこの面子なら負ける気はしないよね」
シャルナはチート二人ほどじゃないけど、表情は強張らず、余裕だ。
リズベッドを遮るようにして立つランシェルは、眼光を鋭くさせ、口を一文字に結び、ナックルダスターを両拳にはめて構える。
「なめたまねを! この状況で挑むつもりか!」
相対する方向の先頭に立つレッドキャップスのオーガが吠える。
手にした三メートルはありそうな大きなメイスを苛立ちと威嚇を混ぜて床に叩き付ける。
叩き付けを合図とし、集団は戦闘態勢。
穂先と剣先がしっかりと俺たちに向けられ、鏃も標的を捉え直す動きをしていた。
魔法を使用する者達は、スタッフやワンドの先端を向けてくる。
「一斉射を実行されればたまらんな」
発言の内容は驚異だけど、声音はまったく驚異と思っていないゲッコーさん。
先手必勝とばかりに、32発が装填されたドラムマガジンを備えたAA-12を容赦なく発射する。
こちらがまず、一人による一斉射。
「障壁」
オーガの発する言葉に魔道師系が障壁を展開し、更には盾持ちが壁を思わせる横隊。
だが、障壁の間に合わなかった箇所は散弾の雨によってバタバタと倒れ、穴が空いた箇所に、ゲッコーさんは追加で散弾を撃ち込んでいく。
でもって、
「そら」
手に握ったグレネードをその穴部分に投擲すれば、上手い具合に陣形を組んでいる中央に落ち、程なくして爆発。
爆発と破片によって阿鼻叫喚がその場所より上がり、
「……ええい! やれ!」
一人に言い様にされている事に呆気にとられていたオーガが指示を出せば、遠距離攻撃を一斉に仕掛けてくる。
多彩な魔法と矢が飛んでくるけども、
「ここは私が」
ランシェルの後ろにいたリズベッドがランシェルの前へと一歩出て、迫る攻撃に両手を向ければ、地龍戦で活躍した魔法障壁が現出。
単身で向こうの陣営が顕現させた障壁を凌駕するものを展開。
正面だけでなく頭上から迫ってくる攻撃に対しても、半透明の不落の壁は、その悉くを防いでいく。
「何が気に入らない。この雄々しいデザインはよいものだろう?」
「よいどうこうじゃなくて、こんなもんに乗って似合うのは、秘孔の位置が全て逆な聖帝様だけだよ!」
「聖帝とは誰だか分からないが、勇者と同等のような称号ではないか。ならば問題なかろう」
ありありだよ。恥ずかしいよ。
「普通の鞍でお願いします」
「そうか……」
残念がらないでほしい。
――――左右の角のデザインが消え去って、けばけばしい輝きも鳴りを潜め、落ち着きのある黒色に変わり、見た目が普通になった。
鞍と例えるより、背もたれがしっかりとある椅子のままではあるが、だるい体を預けられる背もたれの存在はありがたい。
地龍は角を上手く利用して俺の体を持ち上げれば、器用に椅子へと座らせてくれる。
落ち着いて腰を降ろしたところにリズベッドが回復魔法を唱えてくれた。
脱力以外にも、ブーステッドで無理に体を酷使しているから、その回復のためだ。
「ついでだ、魔王も乗るといい」
半長靴のサイズが合っていないことを悟り、優しさを見せる地龍。
「いえ、私は自らの足で」
俺としては美少女と共に聖龍に乗る姿が、勇者っぽくて様になると思っているんだけども。
長い間、封じられていたから、自身の足で歩きたいという思いが強いそうだ。
決して、俺と一緒なのが嫌だという事ではない。
――――地龍が封じられていた地下施設という名の地底湖を後にする。
ここからは救出成功で弛緩した神経を研ぎ澄まさないといけない。
「指令の仇だ!」
「絶対にここより出すな! 全員でかかるぞ」
当然の如く、デスベアラーと戦闘を繰り広げた室内には、レッドキャップスをはじめ、護衛軍がわんさかと大挙している。
スペースがないのか、柱にしがみついたり、柱に埋め込まれたクリスタルの上に立ち、クロスボウや弓を手にする者達。
鈴生りの状態で鏃をこちらへと向けていた。
「これはなんとも大勢力だ」
不敵な笑みを浮かべるベル。
本来の力なら、レイピアを横に一振りするだけで敵を壊滅させられるだけの力を有しているけども、現在はそうはいかない。
だが、眼前の光景を目にしても驚異と思っていないことは、湛えた笑みで理解できる。
「ちゃっちゃとやろうか」
更にもう一人余裕なのは、言わずもがなゲッコーさん。
再び、一人で面制圧できるもん。であるAA-12が猛威を振るいそうだ。
「流石に多いような……」
「大丈夫だよ。コクリコなら出来るさ」
「地龍に騎乗し、やる気のなさそうな姿勢の人に言われてもね」
集団なんだから、アークディフュージョンやライトニングスネークを唱えればなんとかなるさ。
「不思議とこの面子なら負ける気はしないよね」
シャルナはチート二人ほどじゃないけど、表情は強張らず、余裕だ。
リズベッドを遮るようにして立つランシェルは、眼光を鋭くさせ、口を一文字に結び、ナックルダスターを両拳にはめて構える。
「なめたまねを! この状況で挑むつもりか!」
相対する方向の先頭に立つレッドキャップスのオーガが吠える。
手にした三メートルはありそうな大きなメイスを苛立ちと威嚇を混ぜて床に叩き付ける。
叩き付けを合図とし、集団は戦闘態勢。
穂先と剣先がしっかりと俺たちに向けられ、鏃も標的を捉え直す動きをしていた。
魔法を使用する者達は、スタッフやワンドの先端を向けてくる。
「一斉射を実行されればたまらんな」
発言の内容は驚異だけど、声音はまったく驚異と思っていないゲッコーさん。
先手必勝とばかりに、32発が装填されたドラムマガジンを備えたAA-12を容赦なく発射する。
こちらがまず、一人による一斉射。
「障壁」
オーガの発する言葉に魔道師系が障壁を展開し、更には盾持ちが壁を思わせる横隊。
だが、障壁の間に合わなかった箇所は散弾の雨によってバタバタと倒れ、穴が空いた箇所に、ゲッコーさんは追加で散弾を撃ち込んでいく。
でもって、
「そら」
手に握ったグレネードをその穴部分に投擲すれば、上手い具合に陣形を組んでいる中央に落ち、程なくして爆発。
爆発と破片によって阿鼻叫喚がその場所より上がり、
「……ええい! やれ!」
一人に言い様にされている事に呆気にとられていたオーガが指示を出せば、遠距離攻撃を一斉に仕掛けてくる。
多彩な魔法と矢が飛んでくるけども、
「ここは私が」
ランシェルの後ろにいたリズベッドがランシェルの前へと一歩出て、迫る攻撃に両手を向ければ、地龍戦で活躍した魔法障壁が現出。
単身で向こうの陣営が顕現させた障壁を凌駕するものを展開。
正面だけでなく頭上から迫ってくる攻撃に対しても、半透明の不落の壁は、その悉くを防いでいく。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる