507 / 1,668
レティアラ大陸
PHASE-507【庇護欲が芽生えそう】
しおりを挟む
「当然だけど、そこから出せばいいんだよね」
「可能ならばお願いいたします」
典雅な一礼だ。俺がイメージする魔王とは本当にかけ離れている。
「んじゃ、やりま――」
「どっせいや!」
俺の見せ場を奪う気満々のコクリコが、ハイキックで金魚鉢のデカいのに蹴りを入れる。
とても美しいハイキックだった。見せ場を奪われたという苛立ちよりも、蹴りの姿勢に感嘆する方が勝ったくらいだ。
だがしかし、美しい蹴撃であったとしても、全くもってびくともしない。
流石に蹴りでは無理があるだろう。
試しにノックをしてみれば、
「透明だけどガラスのような、そうじゃないような」
「強化ガラスに似ているな」
俺に続いてノックするゲッコーさんの感想。
ちょっとやそっとの衝撃には耐えうる代物のようだ。
「はっ」
コクリコに続いて自分も試してみたかったのか、ベルもハイキックを打ち込む。
先ほどの、お手本になるようなコクリコのハイキックの美しさをあっという間に更新する蹴撃だった。
やはり足の長さは大事なんやな。って、考えさせられた。
「ふむ」
流石にベルの蹴りであっても、傷をつけるのは無理だったようだ。
「ならば! ファイ――」
「ランシェル」
貴石を赤く輝かせたワンドを構えるお馬鹿を即座に拘束してくれる男の娘のメイドさん。
場所を考えて魔法は使用してもらいたいね。
当たっても問題はないだろうけども、爆発が俺たちの方に来ても困るからな。
「これは魔力付与されたクリスタルからなる物ですので、そうそう簡単には破壊できません」
拘束しつつ説明をしてくれるランシェル。
多分C-4 だったら開けられるだろうけど、結界魔法が使用出来るとはいえ、球体内を襲うであろう爆発と衝撃を魔王が絶対に防げると思ってはいけないからな。
可能な限り安全に助け出したい。
なので、
「ちょっと離れてて」
「はい」
俺の残火が活躍する時だな。
大上段で構えて、
「キェェェェェェェェイ!」
猿叫と共に振るえば――――、バイィィィィィンと、音を奏でて弾き返してくる。
流石は魔力付与されている代物だ。
金属とかバターみたいに斬ってしまう残火にも耐えるか。
振り下ろした部分に目立った傷はない。強度はかなりあるようだ。
「細かく解体して、素材に使いたいくらいだな」
「余裕ある発言だな。次は本気の一太刀を見せてもらおう」
美人中佐に期待されれば、やる気なんて簡単に出る。
「トール様」
閉じ込められている美少女が祈るように手を組んで、俺の名を口にして期待すれば、更にやる気は倍増だ。
「ブレイズ」
俺の気合いが伝播したかのように、刀身にはゴウゴウと炎が激しく逆巻く。
コントロールを上達させれば、一人でも終の秘剣もどきが出来そうな気がしてきたな。
再度、大上段に構えて、クリスタルを炯眼で睨み、柄を搾るように握り直してから、気勢と共に残火を振り下ろせば――――、
今度はすぅぅぅっと、クリスタルへと刀身が入る。
入ればこっちのものとばかりに、体重を乗せて腕を動かせば、苦も無く刃が動き、クリスタルの金魚鉢に切れ目が入って行く。
後は長方形を描くようにして残火を動かし、
「――ほいっと」
斬ったクリスタルを外側へと手で出してやれば、立派な自由への出口の出来上がり。
切り出した部分からは、内部に溜まっていた多色からなる燐光が、ほうっと外へと出てきて、すっと消えていく。
その光景は幻想的だった。
「さあ」
「ちょっと!?」
俺が残火を収めている間に、ゲッコーさんが両手を伸ばして、魔王ちゃんの両脇を持ちながらおろしてあげる。
いいところを持って行かれた気がしてならない。
しかも紳士なゲッコーさんは、水たまりに素足をつけないように、床ではなく、台座の出っ張りに立たせてあげる。
「半長靴を出してやってくれ」
いいところを奪った人からの要求。
魔王ちゃんの御御足に合いそうな半長靴は無いとは思うけど、素足で歩かせるよりはましだからね。
プレイギアより半長靴を出す。
「便利な力ですね」
感心しつつサイズが大きい半長靴を履き終える。
――――うん。可愛い。
水色の長い髪に、雪肌。白いワンピースに、大きいサイズの黒色の半長靴。
この不釣り合いな半長靴が、逆に可愛さを引き立たせている。
守ってあげたいという気持ちになるね。
「改めまして、皆様、お救いくださりありがとうございます。リズベッド・フロイス・アンダルク・ネグレティアンと申します」
ワンピースの裾を摘まんでのカーテシーでの挨拶。
魔王ちゃんの横では、主が救われたことにランシェルが涙を浮かべて喜び、主に続いて俺たちに深々と一礼。
にしても、一度では覚えられない名前である。
「可能ならばお願いいたします」
典雅な一礼だ。俺がイメージする魔王とは本当にかけ離れている。
「んじゃ、やりま――」
「どっせいや!」
俺の見せ場を奪う気満々のコクリコが、ハイキックで金魚鉢のデカいのに蹴りを入れる。
とても美しいハイキックだった。見せ場を奪われたという苛立ちよりも、蹴りの姿勢に感嘆する方が勝ったくらいだ。
だがしかし、美しい蹴撃であったとしても、全くもってびくともしない。
流石に蹴りでは無理があるだろう。
試しにノックをしてみれば、
「透明だけどガラスのような、そうじゃないような」
「強化ガラスに似ているな」
俺に続いてノックするゲッコーさんの感想。
ちょっとやそっとの衝撃には耐えうる代物のようだ。
「はっ」
コクリコに続いて自分も試してみたかったのか、ベルもハイキックを打ち込む。
先ほどの、お手本になるようなコクリコのハイキックの美しさをあっという間に更新する蹴撃だった。
やはり足の長さは大事なんやな。って、考えさせられた。
「ふむ」
流石にベルの蹴りであっても、傷をつけるのは無理だったようだ。
「ならば! ファイ――」
「ランシェル」
貴石を赤く輝かせたワンドを構えるお馬鹿を即座に拘束してくれる男の娘のメイドさん。
場所を考えて魔法は使用してもらいたいね。
当たっても問題はないだろうけども、爆発が俺たちの方に来ても困るからな。
「これは魔力付与されたクリスタルからなる物ですので、そうそう簡単には破壊できません」
拘束しつつ説明をしてくれるランシェル。
多分C-4 だったら開けられるだろうけど、結界魔法が使用出来るとはいえ、球体内を襲うであろう爆発と衝撃を魔王が絶対に防げると思ってはいけないからな。
可能な限り安全に助け出したい。
なので、
「ちょっと離れてて」
「はい」
俺の残火が活躍する時だな。
大上段で構えて、
「キェェェェェェェェイ!」
猿叫と共に振るえば――――、バイィィィィィンと、音を奏でて弾き返してくる。
流石は魔力付与されている代物だ。
金属とかバターみたいに斬ってしまう残火にも耐えるか。
振り下ろした部分に目立った傷はない。強度はかなりあるようだ。
「細かく解体して、素材に使いたいくらいだな」
「余裕ある発言だな。次は本気の一太刀を見せてもらおう」
美人中佐に期待されれば、やる気なんて簡単に出る。
「トール様」
閉じ込められている美少女が祈るように手を組んで、俺の名を口にして期待すれば、更にやる気は倍増だ。
「ブレイズ」
俺の気合いが伝播したかのように、刀身にはゴウゴウと炎が激しく逆巻く。
コントロールを上達させれば、一人でも終の秘剣もどきが出来そうな気がしてきたな。
再度、大上段に構えて、クリスタルを炯眼で睨み、柄を搾るように握り直してから、気勢と共に残火を振り下ろせば――――、
今度はすぅぅぅっと、クリスタルへと刀身が入る。
入ればこっちのものとばかりに、体重を乗せて腕を動かせば、苦も無く刃が動き、クリスタルの金魚鉢に切れ目が入って行く。
後は長方形を描くようにして残火を動かし、
「――ほいっと」
斬ったクリスタルを外側へと手で出してやれば、立派な自由への出口の出来上がり。
切り出した部分からは、内部に溜まっていた多色からなる燐光が、ほうっと外へと出てきて、すっと消えていく。
その光景は幻想的だった。
「さあ」
「ちょっと!?」
俺が残火を収めている間に、ゲッコーさんが両手を伸ばして、魔王ちゃんの両脇を持ちながらおろしてあげる。
いいところを持って行かれた気がしてならない。
しかも紳士なゲッコーさんは、水たまりに素足をつけないように、床ではなく、台座の出っ張りに立たせてあげる。
「半長靴を出してやってくれ」
いいところを奪った人からの要求。
魔王ちゃんの御御足に合いそうな半長靴は無いとは思うけど、素足で歩かせるよりはましだからね。
プレイギアより半長靴を出す。
「便利な力ですね」
感心しつつサイズが大きい半長靴を履き終える。
――――うん。可愛い。
水色の長い髪に、雪肌。白いワンピースに、大きいサイズの黒色の半長靴。
この不釣り合いな半長靴が、逆に可愛さを引き立たせている。
守ってあげたいという気持ちになるね。
「改めまして、皆様、お救いくださりありがとうございます。リズベッド・フロイス・アンダルク・ネグレティアンと申します」
ワンピースの裾を摘まんでのカーテシーでの挨拶。
魔王ちゃんの横では、主が救われたことにランシェルが涙を浮かべて喜び、主に続いて俺たちに深々と一礼。
にしても、一度では覚えられない名前である。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる