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極東

PHASE-450【マナのような存在】

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 俺の異世界にはあり得ないとは分かっていても、ハーレムは浪漫だ。目指せるなら目指したい。
 だが、ここで喜んでしまえばゲスですよ。俺は素っ頓狂な声を上げてしまったが、その後はポーカーフェイスを貫いています。
 だってにやければベルに殺されるから……。
 精神を集中させるために俺は流れる水をイメージ。
 別の事を考えることで邪な考えを――――、

「見てください。トールの鼻の穴が大きく開いています。アレはやましいことを考えていますよ」
 ――……よい洞察力だな。コクリコ!
 おかげでベルから刺すような目を向けられているし、シャルナは俺を汚物でも見ているかのような目。

「私は妻一筋なので、そのような濡れ事への誘いには興味ありません」
 くぅぅぅぅぅ……。文化系硬派の嫁さん大事イケメンの好感度が凄く上がっておりますね。
 でも、濡れ事って言わないでもらえます。すげーリアルな発言だから。

「あのね。体をそんなに簡単に差し出そうとするのは良くないですよ。俺、勇者なんで!」
 性欲で気持ちが揺らぐわけが…………ない。

「でも、夢の中では楽しい思いをしていたのでしょう?」
 本当にこのまな板は余計なことをぺちゃくちゃと喋りやがる!
 冷ややかを通り越して、てつく視線が俺に集中しているから余計な事を発言するな!

「まあ、主が色欲旺盛なのは今に始まったことではありませんが。話を戻しましょう。地龍と前魔王殿を救ったとして、その後、前魔王殿と貴方方は我々に協力をすると誓えますか?」

「誓います」
 即答のコトネさん。

「直ぐさま了承をすれば、虚言とも疑ってしまいますが、今回の場合は、必死さからの即答と捉えましょう」

「では!」
 コトネさんだけでなく、他のメイドさん達の表情が晴れやかになる。
 チラリと俺を見てくる先生。
 俺に良いところで最高のパスを出してくれる。後はシュートを決めるだけ。
 最高のシュートを決めて、俺を突き刺してくる視線を振り払いたい。

「この勇者トール。地龍とメイドさん達の主である前魔王を救い出しましょう!」

「「「「トール様」」」」
 ほほう。いまのメイドさん達のシンクロした発言は、言葉尻にハートマークつけてもいいくらいに黄色い声でしたよ。
 これは頑張れば、サキュバスハーレムルートの道が本当に開拓できるのでは?

「不純な動機で動かないことだ」

「ええ、その通りですともベルさん」
 だから、俺を睨まないように。

「前とはいえ魔王なんだからな。味方になってくれたら強力な魔法でばったばったと敵を倒してもらおう」
 RPGでも稀に魔王が主人公の仲間になって、強力な攻撃や魔法で活躍するってのもあるからな。

「それは難しいかと……」
 申し訳なさそうなコトネさん。

「なぜです?」

「我らが主に戦う力はありません」
 ん? 疑問符が浮かぶよね。
 メイドさん以外が首を傾げている。俺だけだったらどうしようかと思っていたよ。

 戦う力が無い。魔王なのに。
 普通、魔王っていったら、世界を滅ぼす力を有している存在だろう。
 力があるからこそ、森羅万象を司る聖龍の一柱である地龍を封じる結界を展開できるのだろうからね。

「我らが主はマナとの干渉に非情に優れております。これが主の力なのです」
 前魔王は、ネイコスとピリアからなるマナへの干渉が図抜けているそうで、マナを自在にあやつり、その場に存在するマナを自身の周囲に集めることも可能なのだそうだ。
 そうなると、マナが無くなったのと同様なので、周囲の者たちは必然的にマナが使用不可能になるという。十分にチートな力に分類される力だ。

 前魔王はその力を使い、マナの使用が苦手な者たちに、自身がマナをコントロールする力を作用させ、マナの利用を促せるようにしてやっていた。
 特に力を持っていない魔族に対して、恩恵を与えてくれる存在だったそうだ。
 マナを使用するコツを施し、力のない者達の実力を底上げする。
 力の均衡を保つことで、魔大陸は前魔王の元で、安寧と秩序によって豊かに発展していった。

「マナを自在にコントロール出来るって、前魔王はマナが具現化したような存在だな。魔王というより、マナの王だな。略してマ王」

「全然面白くないですよ」

「ア~ハン?」
 余計な事をくっちゃべった後は、俺に喧嘩を売る気なのかこのまな板は?
 いつでもカルロ・ヴェローチェ召喚してやっかんな。

「トール様が言いますように、我らが主は存在自体がマナのようなもの。マナに干渉は出来ますが、力に特化しているわけではありません」
 力を振るうよりも、力の無い者たちへとマナのコントロールを授ける事に従事しており、自身が戦うための力を有することはなかった。
 
 力の根源とはなるが、力を振るうということはない。それが前魔王。
 だからこそ、魔大陸に住む者たちから愛された存在だったそうだ。
 
 使。だとコトネさんは言う。
 力なき者たちを守るためだけに発達した結界魔法。
 でもさ、使用するのは――であって、使用出来るのはと限定していないから、本来は力のある攻撃系魔法も使えるのではないだろうか。
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