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極東
PHASE-418【ヴァンパイア】
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「流石だベル!」
「感心してないで、素振りを終えたなら構えろ。本番だ」
「で、あるな」
侯爵から離れた影が波打ちながら蠢く。
次第に高さのある波へと変貌すれば――、
「この私を脅すとは――――な!」
影より姿を現したのは、漆黒の三つ揃いのスーツと、表地が同色のマント。裏地は真紅だ。
金髪オールバック、煌めく黄色い瞳に、上顎の犬歯が異様に長い。
なんともヴァンパイア然としたヴァンパイアが姿を現す。
白蝋のような肌のこめかみ部分には血管が浮き出ていて、生き物でも飼っているのかとばかりに脈動している。
ベルの殺意の籠もった一突きに騙され、怒り心頭のご様子。
いくら芝居とはいえ、この世界で最強のポジションと言ってもいいチートさんの一刺しは、魔族であろうともやはり恐ろしかったようで、死が迫った感覚に囚われたあまり、侯爵から逃げ出した。
これが並のヤツの芝居なら、ヴァンパイアもブラフとして逃げ出さなかったんだろうな。
偉大なるかな帝国軍中佐。
「だがこれで本気が出せるのではないか?」
鼻で笑いつつのベルの問いかけに、
「その言は正しい。侯爵の中にいれば本気は出せなかった。どうしても人間の器では魔力仕様に限界があるからな」
と、返してくる。
なんだろうか、この小者間溢れる発言は。
完全にやられ役の虚勢発言じゃないですか。
張り子の虎が目の前にいた。
「では――――」
片腕を横に薙ぎればマントが派手に棚引き、真紅の裏地は燃えているように見えた。
流石はヴァンパイア。ナルシスト入ってる。
動きの一つ一つが大仰で気取っている。
人間の美的センスで言うなら、今回の敵のルックスは今までの中で一番のイケメンだ。
普通に女性が声をかけられたら、容易く籠絡するくらいのイケメンなのは確かだ。
俺の嫉妬メーターが激しく動いているから間違いない。
「フロックエフェクト。バーストフレア」
嫉妬する対象が魔法を発動。
「聞いた事ないけど、意味合いが正しいなら――イグニース!」
炎の盾を展開。
――――やって正解だ。
侯爵の中にいた時、俺に使用しようとした魔法はこれだったようだ。
術の発動が先ほどと同じである。
先ほどのバーストフレアは不発だったし、発動までに時間がかかった。
しかも一発。
でも、今回のは棚引くマントの前方に六つの火の玉が同時に顕現。
手を俺へと向ければ、六つの頭サイズの火の玉が真っ直ぐだったり、弧を描き、唸りを上げて俺へと向かってくる。
ピーカブースタイルで籠手を前面へと出すことで、炎の盾もそれに連動。
――爆音が耳朶へと届く。
火龍の装備は伊達じゃない!
俺の周囲は、連続で爆発する衝撃によって、派手にガラスや鏡が割れていくが、俺への衝撃は軽い揺れ程度ですんでいる。
六つの火球だったから、六発の爆発。というわけではなく、連続する爆発は優に二桁を超える。
フレアって名乗る魔法なだけあって、一発が何度も爆発しているのが、炎の盾越しに見て取れた。
観察するだけの余裕がある。
強力な魔法だけど、防ぎきっている。
「トールの力も凄いけど、正直あのヴァンパイアすごいよ」
俺の余裕を揺るがすようなシャルナの発言。
最初に唱えた魔法をシャルナは称賛していた。
フロックエフェクト――――。自然魔法や木属性魔法と呼称される上級魔法の中でも、高位に位置する魔法だそうだ。
効果は、この魔法を発動する事で、その後に発動する魔法の数を増やす事が出来るという魔法。
それを聞かされれば確かに脅威だ。
つまりは、対個人用魔法だけでなく、広範囲を攻撃できる魔法に対してフロックエフェクトを使用すれば、大規模な範囲攻撃も可能ということだろう。
ちょっとした大魔法だ。
自然魔法に闇魔法を使いこなす存在。今までの中で間違いなく強敵だ。
張り子の虎って口に出さないでよかった。俺が恥をかくところだった。
ベルに対しては恐怖を覚えたり、尻餅をついていたが、現状、浮かべる嘲笑には強者としての余裕がある。
「よく防いだ。中級魔法とはいえ、六つを同時に見舞えば、そこいらの上級魔法以上なのだがな」
「どうも。ヴァンパイアに褒められても嬉しくはないけども」
「そのヴァンパイアとばかり呼ばれるのも気に入らん」
「じゃあ、どう呼べばいいんだよ」
魔王軍のボスクラスはプライドが高いのが多いよな。
こだわりがありすぎだ。
「では自己紹介をさせてもらう。ヴライン・アニカラス・ゼノ・フェニメルエス」
「……もう一回、言ってくれる」
一回では覚えられないね。
書き取りで練習するから、小一時間ほど時間が欲しいな。
「仕方ない。ヴライ――!?」
名乗りのところで突如として、不意打ちの火の玉がヴァンパイアを襲う。
名乗りを中断はしたものの、意にも介さないとばかりに、切れ長の目がキッと見開けば、目力だけで火の玉がヴァンパイアこと、ゼノの前で弾け飛ぶ。
ミドルネームのゼノが一番短いから、これで呼ぼう。
「本当にさっきから無粋な小娘だ。仕付けをしていないようだな」
「これでも努力はしているんだけどな」
「何を敵と意気投合しているのですか!」
お前が原因だよ。
ま、別に良いけど。
戦いだからな。不意を突くのは悪くない。ここはナイス、コクリコ! と、思っておこう。
調子づかせたくないので、口に出して褒めることはないけどな。
「感心してないで、素振りを終えたなら構えろ。本番だ」
「で、あるな」
侯爵から離れた影が波打ちながら蠢く。
次第に高さのある波へと変貌すれば――、
「この私を脅すとは――――な!」
影より姿を現したのは、漆黒の三つ揃いのスーツと、表地が同色のマント。裏地は真紅だ。
金髪オールバック、煌めく黄色い瞳に、上顎の犬歯が異様に長い。
なんともヴァンパイア然としたヴァンパイアが姿を現す。
白蝋のような肌のこめかみ部分には血管が浮き出ていて、生き物でも飼っているのかとばかりに脈動している。
ベルの殺意の籠もった一突きに騙され、怒り心頭のご様子。
いくら芝居とはいえ、この世界で最強のポジションと言ってもいいチートさんの一刺しは、魔族であろうともやはり恐ろしかったようで、死が迫った感覚に囚われたあまり、侯爵から逃げ出した。
これが並のヤツの芝居なら、ヴァンパイアもブラフとして逃げ出さなかったんだろうな。
偉大なるかな帝国軍中佐。
「だがこれで本気が出せるのではないか?」
鼻で笑いつつのベルの問いかけに、
「その言は正しい。侯爵の中にいれば本気は出せなかった。どうしても人間の器では魔力仕様に限界があるからな」
と、返してくる。
なんだろうか、この小者間溢れる発言は。
完全にやられ役の虚勢発言じゃないですか。
張り子の虎が目の前にいた。
「では――――」
片腕を横に薙ぎればマントが派手に棚引き、真紅の裏地は燃えているように見えた。
流石はヴァンパイア。ナルシスト入ってる。
動きの一つ一つが大仰で気取っている。
人間の美的センスで言うなら、今回の敵のルックスは今までの中で一番のイケメンだ。
普通に女性が声をかけられたら、容易く籠絡するくらいのイケメンなのは確かだ。
俺の嫉妬メーターが激しく動いているから間違いない。
「フロックエフェクト。バーストフレア」
嫉妬する対象が魔法を発動。
「聞いた事ないけど、意味合いが正しいなら――イグニース!」
炎の盾を展開。
――――やって正解だ。
侯爵の中にいた時、俺に使用しようとした魔法はこれだったようだ。
術の発動が先ほどと同じである。
先ほどのバーストフレアは不発だったし、発動までに時間がかかった。
しかも一発。
でも、今回のは棚引くマントの前方に六つの火の玉が同時に顕現。
手を俺へと向ければ、六つの頭サイズの火の玉が真っ直ぐだったり、弧を描き、唸りを上げて俺へと向かってくる。
ピーカブースタイルで籠手を前面へと出すことで、炎の盾もそれに連動。
――爆音が耳朶へと届く。
火龍の装備は伊達じゃない!
俺の周囲は、連続で爆発する衝撃によって、派手にガラスや鏡が割れていくが、俺への衝撃は軽い揺れ程度ですんでいる。
六つの火球だったから、六発の爆発。というわけではなく、連続する爆発は優に二桁を超える。
フレアって名乗る魔法なだけあって、一発が何度も爆発しているのが、炎の盾越しに見て取れた。
観察するだけの余裕がある。
強力な魔法だけど、防ぎきっている。
「トールの力も凄いけど、正直あのヴァンパイアすごいよ」
俺の余裕を揺るがすようなシャルナの発言。
最初に唱えた魔法をシャルナは称賛していた。
フロックエフェクト――――。自然魔法や木属性魔法と呼称される上級魔法の中でも、高位に位置する魔法だそうだ。
効果は、この魔法を発動する事で、その後に発動する魔法の数を増やす事が出来るという魔法。
それを聞かされれば確かに脅威だ。
つまりは、対個人用魔法だけでなく、広範囲を攻撃できる魔法に対してフロックエフェクトを使用すれば、大規模な範囲攻撃も可能ということだろう。
ちょっとした大魔法だ。
自然魔法に闇魔法を使いこなす存在。今までの中で間違いなく強敵だ。
張り子の虎って口に出さないでよかった。俺が恥をかくところだった。
ベルに対しては恐怖を覚えたり、尻餅をついていたが、現状、浮かべる嘲笑には強者としての余裕がある。
「よく防いだ。中級魔法とはいえ、六つを同時に見舞えば、そこいらの上級魔法以上なのだがな」
「どうも。ヴァンパイアに褒められても嬉しくはないけども」
「そのヴァンパイアとばかり呼ばれるのも気に入らん」
「じゃあ、どう呼べばいいんだよ」
魔王軍のボスクラスはプライドが高いのが多いよな。
こだわりがありすぎだ。
「では自己紹介をさせてもらう。ヴライン・アニカラス・ゼノ・フェニメルエス」
「……もう一回、言ってくれる」
一回では覚えられないね。
書き取りで練習するから、小一時間ほど時間が欲しいな。
「仕方ない。ヴライ――!?」
名乗りのところで突如として、不意打ちの火の玉がヴァンパイアを襲う。
名乗りを中断はしたものの、意にも介さないとばかりに、切れ長の目がキッと見開けば、目力だけで火の玉がヴァンパイアこと、ゼノの前で弾け飛ぶ。
ミドルネームのゼノが一番短いから、これで呼ぼう。
「本当にさっきから無粋な小娘だ。仕付けをしていないようだな」
「これでも努力はしているんだけどな」
「何を敵と意気投合しているのですか!」
お前が原因だよ。
ま、別に良いけど。
戦いだからな。不意を突くのは悪くない。ここはナイス、コクリコ! と、思っておこう。
調子づかせたくないので、口に出して褒めることはないけどな。
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