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極東
PHASE-396【崩れるイメージ】
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この煌びやかな鏡と豪奢な調度品。
回廊を歩きながらゆったりと眺める様は、さながら美術館を歩いているようだ。
実際は社会科見学以外では歩いたことはないが。
目にして思うことは、綺麗とか素晴らしいではなく、THE・権力者。
本邸があって、別邸でもこんな絢爛豪華な造りをするなんて。金持ちって偉大。
俺も金持ちになりたいと、夢と嫉妬を与えてくれる。
だが、この権力的な造りからして、多分だけどこっから先に執務室があると睨んでいるんだよね。
――――更に先へと向かうために、鏡の回廊を歩いて行く。
一人だけの足音の反響はちょっと怖い……。
夜には歩きたくない場所だ。
なんかドヌクトスって、ホラーを連想させるの事が多いよな。
姫様の白蝋じみた肌もだし、エロエロな夢はありがたいけど妙にリアルだし。
街の人々は活力の無い人が多いし。
今歩いてる回廊側面の鏡を見たら、俺以外が映るとかないよ……ね?
なんて思えば、不思議と鏡の方を見る事が出来ないヘタレな俺。
――――通路を渡り角を曲がったところで、
「愚か者が!」
荒々しい男の声が曲がり角の部屋の方から聞こえてくる。
しっかりとドアが閉められている状況下でこれだけ聞こえると言うことは、相当の大音声だ。
「侯爵だな」
声は俺が独白した人物のものだ。
怒気に染まった声からして、何かしらの失態をした人物を説教しているってところだろう。
これは侯爵とその下で働く人達のやりとりと判断したので、俺は入室を避けて、説教が終わるまで外で待ってることを選択しようとした――――が、
ゴスッと、鈍い音がしたので、これはよくないと判断。
上司と部下のやり取りで、部外者の俺が口を挟んではいけないかもしれないが、勇者だからね。暴力的なものなら見過ごすことは出来ない。
「失礼します」
ドアを開けば、最初に目が合ったのは侯爵。
「トール殿」
――……ついつい体を仰け反らせてしまった。
理由は侯爵の目。
驚くほどに冷たい目だ。
初対面の時とは違う、爬虫類のような目。
俺が良からぬ方向へ考えを巡らせてしまう時に睨んでくる、ゲッコーさんの目にも似ているが、侯爵からは優しさの一欠片も伝わってこない。
「せめてノックくらいはしてほしいものです」
「すいません」
一応、失礼しますとは言ったけども、配慮が足りなかったな。鈍い音に思考が傾倒していたからな。
部屋へと足を進めていけば、部屋のソファーなんかで死角になっていた部分も見えてくるようになる。
で、見えてきたのは、メイド服を着た人物。
やはり手を上げられていたのか、向こう側を向いて床に倒れていた、
「ランシェルちゃん!?」
肩口まで伸びた紫色の髪に小柄な体。
床に倒れているのは間違いなくランシェルちゃんだ。
今日は休暇だと大広間ではメイドさんが言っていたが、その時のどもった声が頭の中で鮮明に再生される。
なぜどもっていたのか。
休暇じゃなくて、こういう事だったのか。
「侯爵。いくら何でもやり過ぎでしょう」
俺が聞いた鈍い音は一度だけ。でも、肩部分に、白タイツの破れなど、随分前から結構な暴行を受けているのが分かる。
「いくらなんでも度が過ぎてますよ!」
継いで怒号を飛ばしてしまう。
「これは雇い主として、使用人を仕置きしているのです」
「これはただの暴力ですよ!」
顔を見れば、白い肌に青あざが出来ている。
辛抱強いのか、ランシェルちゃんは涙を流していない。これだけの暴力を受けて大したもんだ。
「流石に見過ごせません」
「――――ほお」
凄い重圧。
ランシェルちゃんを抱き起こそうとする俺を見下してくる目は、気を抜けば身震いを起こしてしまうくらいに強くて冷たい。
隙を見せれば今にも攻撃してきそうな、そんな圧を受けてくる。
俺もこの異世界で修羅場を潜ってきている。睨みを受けても、気丈にしていれば呑まれることはない。
負けじと睨み返す。
「ふむ、よい気概ですな。本来ならば、まだ仕置きをしなければなりませんが、勇者殿に免じて、これで終いにしましょう」
「当然ですよ。殺す気ですか」
「使用人が不遜を働けば、死に直結することは当然ありますよ」
王様が信頼する大貴族とは思えないな。
転生当初は駄目駄目だったが、以前の姿に立ち戻った王都の貴族たちは、少なくともこんな事はしないと思う。
回廊を歩きながらゆったりと眺める様は、さながら美術館を歩いているようだ。
実際は社会科見学以外では歩いたことはないが。
目にして思うことは、綺麗とか素晴らしいではなく、THE・権力者。
本邸があって、別邸でもこんな絢爛豪華な造りをするなんて。金持ちって偉大。
俺も金持ちになりたいと、夢と嫉妬を与えてくれる。
だが、この権力的な造りからして、多分だけどこっから先に執務室があると睨んでいるんだよね。
――――更に先へと向かうために、鏡の回廊を歩いて行く。
一人だけの足音の反響はちょっと怖い……。
夜には歩きたくない場所だ。
なんかドヌクトスって、ホラーを連想させるの事が多いよな。
姫様の白蝋じみた肌もだし、エロエロな夢はありがたいけど妙にリアルだし。
街の人々は活力の無い人が多いし。
今歩いてる回廊側面の鏡を見たら、俺以外が映るとかないよ……ね?
なんて思えば、不思議と鏡の方を見る事が出来ないヘタレな俺。
――――通路を渡り角を曲がったところで、
「愚か者が!」
荒々しい男の声が曲がり角の部屋の方から聞こえてくる。
しっかりとドアが閉められている状況下でこれだけ聞こえると言うことは、相当の大音声だ。
「侯爵だな」
声は俺が独白した人物のものだ。
怒気に染まった声からして、何かしらの失態をした人物を説教しているってところだろう。
これは侯爵とその下で働く人達のやりとりと判断したので、俺は入室を避けて、説教が終わるまで外で待ってることを選択しようとした――――が、
ゴスッと、鈍い音がしたので、これはよくないと判断。
上司と部下のやり取りで、部外者の俺が口を挟んではいけないかもしれないが、勇者だからね。暴力的なものなら見過ごすことは出来ない。
「失礼します」
ドアを開けば、最初に目が合ったのは侯爵。
「トール殿」
――……ついつい体を仰け反らせてしまった。
理由は侯爵の目。
驚くほどに冷たい目だ。
初対面の時とは違う、爬虫類のような目。
俺が良からぬ方向へ考えを巡らせてしまう時に睨んでくる、ゲッコーさんの目にも似ているが、侯爵からは優しさの一欠片も伝わってこない。
「せめてノックくらいはしてほしいものです」
「すいません」
一応、失礼しますとは言ったけども、配慮が足りなかったな。鈍い音に思考が傾倒していたからな。
部屋へと足を進めていけば、部屋のソファーなんかで死角になっていた部分も見えてくるようになる。
で、見えてきたのは、メイド服を着た人物。
やはり手を上げられていたのか、向こう側を向いて床に倒れていた、
「ランシェルちゃん!?」
肩口まで伸びた紫色の髪に小柄な体。
床に倒れているのは間違いなくランシェルちゃんだ。
今日は休暇だと大広間ではメイドさんが言っていたが、その時のどもった声が頭の中で鮮明に再生される。
なぜどもっていたのか。
休暇じゃなくて、こういう事だったのか。
「侯爵。いくら何でもやり過ぎでしょう」
俺が聞いた鈍い音は一度だけ。でも、肩部分に、白タイツの破れなど、随分前から結構な暴行を受けているのが分かる。
「いくらなんでも度が過ぎてますよ!」
継いで怒号を飛ばしてしまう。
「これは雇い主として、使用人を仕置きしているのです」
「これはただの暴力ですよ!」
顔を見れば、白い肌に青あざが出来ている。
辛抱強いのか、ランシェルちゃんは涙を流していない。これだけの暴力を受けて大したもんだ。
「流石に見過ごせません」
「――――ほお」
凄い重圧。
ランシェルちゃんを抱き起こそうとする俺を見下してくる目は、気を抜けば身震いを起こしてしまうくらいに強くて冷たい。
隙を見せれば今にも攻撃してきそうな、そんな圧を受けてくる。
俺もこの異世界で修羅場を潜ってきている。睨みを受けても、気丈にしていれば呑まれることはない。
負けじと睨み返す。
「ふむ、よい気概ですな。本来ならば、まだ仕置きをしなければなりませんが、勇者殿に免じて、これで終いにしましょう」
「当然ですよ。殺す気ですか」
「使用人が不遜を働けば、死に直結することは当然ありますよ」
王様が信頼する大貴族とは思えないな。
転生当初は駄目駄目だったが、以前の姿に立ち戻った王都の貴族たちは、少なくともこんな事はしないと思う。
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