333 / 1,668
増やそう経験
PHASE-333【なぜに皆して上を脱ぐ……】
しおりを挟む
王様や貴族たちの明るい笑みを湛える姿を目にすれば、先生やゲッコーさんの言っていた、俺に負けは許されないっていう発言が胃をキリキリとさせてくるね……。
まあベルにはボコボコに負けてるけども。仲間内なのでもちろんノーカンなのだが。
「あらましは荀彧殿から今聞いた」
俺がおっさん達にハグやら握手をされている間に、話を進めてくれている先生。
助かりますと会釈をすれば、俺の方に体を向けて、先生も会釈を返してくれる。
先生の姿勢が真っ直ぐに伸びたところで王様が口を開く。
「しかしダイヒレンを記念硬貨のシンボルと考えるとは、トールの発想は他者の想像の枠外であるな。流石は天からの使者である」
「しかり。ですが正鵠は射ております」
「旅人。冒険者に兵達が使用するシュールコーはダイヒレンの素材が多くを占めています。生活に溶け込んだ親しみのある存在でしょう」
王様に続くのはナブル将軍、ダンブル子爵。
でっかいGが生活に溶け込んだってのもどうかと思うが……。
心の友の発言で真っ先に俺の頭内を占めたのは、生活に溶け込む前に害虫駆除会社に連絡ってものだ。
肯定的な心の友の発言に、先の二名も鷹揚に頷いて賛同を示している。
残った皆さんもいいのではと、同調の頷きを見せてくれる。
やはり後押しとなったのは、紅髪の美姫に加え、新たに白髪の美鬼の称号を得たベルの存在だろう。
最強の存在がダイヒレンの亡骸を目にして叫び声を上げ取り乱した。
この事は王都全体に知れ渡っているようだ。
もちろん修練場の一件もしっかりとこの王城に轟いていた。
屈強なるギルドの猛者達が、たった一人になすすべも無く壊滅に近い状態に陥り、それにより一日の間、ギルドが麻痺した状態になった事が話題に上がれば、胆力の戻った大貴族の方々も大層に肝を冷やしているようで、両腕をさすりながらぶるりと震えていた。
ベルの話をしている大貴族様の中には、ベル様と様をつける人もいる。
畏敬の念を強く抱いているようだ――――。
「トールの案に異論も出なかった事であるし。このまま記念硬貨のシンボルはダイヒレンとし、貨幣流通の再開を祝して乾杯だ」
「「「「乾杯」」」」
王様が音頭をとり、言葉尻の切れがいい乾杯の輪唱が貴族達によって続く。
ビアマグタイプの白磁の容器になみなみと注がれた酒をグイグイと飲んでいく。
酒宴の場所は謁見の間から移動し、長テーブルが用意されたガボゼと呼ばれる東屋にて開かれる。
石畳と、整えられた芝生。白亜のガボゼの周囲は川から流れる水を利用しただだっ広い池。
王侯貴族が家族なんかと、ゆったりとした時間を過ごすために用意された空間だ。
金持ちになった気分である。
外ということもあってか、開放的になったようで、王様だけでなく貴族の皆様も上半身裸になってから酒を楽しむ。
やはり皆よく鍛え抜かれている。
ナイスカットとついつい口から出そうになったくらいに逞しい。
ハグや握手に加えて、鍛えられた上半身を目にして、打たれ弱そうな貴族のイメージが完全に崩壊してしまった。
上半身裸で色黒の筋肉が隆起した体で、ガブガブと酒を飲む姿は荒々しくもあるが、貴族としての教養があるからか、下品ではない。
飲んで、ゲハハハ――――! と、下品な笑いと共に、口内に残った物を飛ばすなんて事はない。
豪快でありつつ節度もある。
【気品あふれる山賊たちの酒宴】と、命名したい光景である。
「さあさあトール殿も」
心の友であるダンブル子爵はまだまだ鍛えが足りないが、それでも普通の人に比べられば鍛えられているな。
短期間でよくもまあと言いたい。塔の最上階まで登ってきた時は、それだけで死にかけていたのに。
俺の前にも白磁のビアマグが置かれれば、濃い紫の液体が揺らめいている。
色からしてワインだろう。
グイグイとはいけないので、ちびちびと舐めるように飲む。
うむ、独特の渋みのあるワインは、十六の俺にはまだ早いかな。
そもそもが、こんなでっかいビアマグに入れて飲む物じゃないと思うの。
「美味すぎる!!」
俺の横では、ここで合流してきた蔵元こと伝説の兵士が、誰よりも早くワインの味を堪能し、さっきからずっと喜んでいる光景。
親の声より聞いた台詞を耳朶に入れながら、俺もワインを更に一口。
渋みがあるが、不思議と嫌な渋さではなくスッキリとしている。
なので一口目は抵抗があったのだが、自然と二口、三口と進み、口内がさわやかさに染め上げられていく。
まあベルにはボコボコに負けてるけども。仲間内なのでもちろんノーカンなのだが。
「あらましは荀彧殿から今聞いた」
俺がおっさん達にハグやら握手をされている間に、話を進めてくれている先生。
助かりますと会釈をすれば、俺の方に体を向けて、先生も会釈を返してくれる。
先生の姿勢が真っ直ぐに伸びたところで王様が口を開く。
「しかしダイヒレンを記念硬貨のシンボルと考えるとは、トールの発想は他者の想像の枠外であるな。流石は天からの使者である」
「しかり。ですが正鵠は射ております」
「旅人。冒険者に兵達が使用するシュールコーはダイヒレンの素材が多くを占めています。生活に溶け込んだ親しみのある存在でしょう」
王様に続くのはナブル将軍、ダンブル子爵。
でっかいGが生活に溶け込んだってのもどうかと思うが……。
心の友の発言で真っ先に俺の頭内を占めたのは、生活に溶け込む前に害虫駆除会社に連絡ってものだ。
肯定的な心の友の発言に、先の二名も鷹揚に頷いて賛同を示している。
残った皆さんもいいのではと、同調の頷きを見せてくれる。
やはり後押しとなったのは、紅髪の美姫に加え、新たに白髪の美鬼の称号を得たベルの存在だろう。
最強の存在がダイヒレンの亡骸を目にして叫び声を上げ取り乱した。
この事は王都全体に知れ渡っているようだ。
もちろん修練場の一件もしっかりとこの王城に轟いていた。
屈強なるギルドの猛者達が、たった一人になすすべも無く壊滅に近い状態に陥り、それにより一日の間、ギルドが麻痺した状態になった事が話題に上がれば、胆力の戻った大貴族の方々も大層に肝を冷やしているようで、両腕をさすりながらぶるりと震えていた。
ベルの話をしている大貴族様の中には、ベル様と様をつける人もいる。
畏敬の念を強く抱いているようだ――――。
「トールの案に異論も出なかった事であるし。このまま記念硬貨のシンボルはダイヒレンとし、貨幣流通の再開を祝して乾杯だ」
「「「「乾杯」」」」
王様が音頭をとり、言葉尻の切れがいい乾杯の輪唱が貴族達によって続く。
ビアマグタイプの白磁の容器になみなみと注がれた酒をグイグイと飲んでいく。
酒宴の場所は謁見の間から移動し、長テーブルが用意されたガボゼと呼ばれる東屋にて開かれる。
石畳と、整えられた芝生。白亜のガボゼの周囲は川から流れる水を利用しただだっ広い池。
王侯貴族が家族なんかと、ゆったりとした時間を過ごすために用意された空間だ。
金持ちになった気分である。
外ということもあってか、開放的になったようで、王様だけでなく貴族の皆様も上半身裸になってから酒を楽しむ。
やはり皆よく鍛え抜かれている。
ナイスカットとついつい口から出そうになったくらいに逞しい。
ハグや握手に加えて、鍛えられた上半身を目にして、打たれ弱そうな貴族のイメージが完全に崩壊してしまった。
上半身裸で色黒の筋肉が隆起した体で、ガブガブと酒を飲む姿は荒々しくもあるが、貴族としての教養があるからか、下品ではない。
飲んで、ゲハハハ――――! と、下品な笑いと共に、口内に残った物を飛ばすなんて事はない。
豪快でありつつ節度もある。
【気品あふれる山賊たちの酒宴】と、命名したい光景である。
「さあさあトール殿も」
心の友であるダンブル子爵はまだまだ鍛えが足りないが、それでも普通の人に比べられば鍛えられているな。
短期間でよくもまあと言いたい。塔の最上階まで登ってきた時は、それだけで死にかけていたのに。
俺の前にも白磁のビアマグが置かれれば、濃い紫の液体が揺らめいている。
色からしてワインだろう。
グイグイとはいけないので、ちびちびと舐めるように飲む。
うむ、独特の渋みのあるワインは、十六の俺にはまだ早いかな。
そもそもが、こんなでっかいビアマグに入れて飲む物じゃないと思うの。
「美味すぎる!!」
俺の横では、ここで合流してきた蔵元こと伝説の兵士が、誰よりも早くワインの味を堪能し、さっきからずっと喜んでいる光景。
親の声より聞いた台詞を耳朶に入れながら、俺もワインを更に一口。
渋みがあるが、不思議と嫌な渋さではなくスッキリとしている。
なので一口目は抵抗があったのだが、自然と二口、三口と進み、口内がさわやかさに染め上げられていく。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる