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増やそう経験
PHASE-318【化粧水みたい】
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が、やはり止めるべきだった……。
皆なんでこんなに暑い中で頑張れるんだろう。
ホップを投入したタンクに、脚立を使って上まで移動した二人の作業員が、棒を使ってタンクの中をかき混ぜる作業を始める。
汗が入らないように慎重になりつつグルグルとかき回す――――。
この後タンクに金属パイプを投入し、パイプに水を通してタンク内を冷ます工程に移行する。
ビールを製造するために厳選した麦芽とホップ。
わざわざ山から天然水まで運ばせての製造。
如何に王都に余裕が出てきたからって、本気出しすぎじゃないかな。
無駄使いを許した覚えはない。
「そんな顔をするな。王様からの許可も出ているし、出来上がりを楽しみにもしている。そんな楽しみにしている酒を王様よりも先にお前に飲ませてやるから」
最早、俺が未成年だと、ゲッコーさんは考えていないようだ。
この世界だと俺の年齢は大人あつかいだし。実際、果実酒も楽しんだ。
苦いのは苦手だが、グラス一杯くらいならいただこう。
大人の味とは如何なものかと、楽しみは増える。
「お~い」
と、聞いたことのある胴間声。
振り返れば、樽のような体型が白衣を着ていた。
全体が白で隠れているが、ギムロンだと直ぐに分かる。
鍛冶なんかの仕事が終われば、酒蔵を手伝うって言ってたもんな。
というか、もうそんな時間か。
朝から昼過ぎまで採取。
森から王都に戻れば夕暮れ時。
で、天窓から見える光景は、幕が下りたような黒に染まっている。
「ポーションの蒸溜が済んだぞ」
「お! やっとか」
「んなわけあるかい。会頭達のじゃなくて、以前の素材を使ったやつが出来たんだ。結構な量のレッサーポーションが出来たぞい」
「え~……せめてポーションがいいんだけど」
「別に会頭が使うもんじゃねえぞ」
酷くねえ……。
「使わせてくれよ、ポーション!」
「贅沢を言うな。そんだけ元気なら一番安いので十分だ。会頭達が集めたのはギルドの面々や冒険者、兵士のために販売する」
まあ、皆のためになるならこの体は犠牲にしようじゃないか。
うん、今の俺はちょっと格好良かった。
「まあ一本くらいなら。ほれ」
でっかい手に握られた物をおもむろに手渡される。
渡された物を目にする。
双五角錐からなるガラスの小瓶。
形からクリスタルのようにも見える。ギルドハウスで見たのは白磁の小瓶だったが、これは小粋な入れ物だ。
頂点部分が切頂されていて、コルクで栓がされている。
中に入った液体の色は薄い緑色だ。ぱっと見、緑茶のようだ。
「コレを飲めばいいのか?」
「でもいいし、痛みのある箇所にかけるのもいい」
量としては栄養ドリンクほどだから、グッと一飲みでいける。
「よし」
初めての体験だからか、意を決したように気概を口に出し、キュポンと栓を取る。
顔全体の痛みよりも口内をまずは優先。痛いからな。
頭を仰角四十五度にて固定し、グイッと半分ほどを飲んでみる――――。
うん――。なんだろうな。草を茹でたお湯を冷まして飲んだら、こんな感じなのだろうか。
青臭すぎて飲みにくいという事はない。抵抗なく飲める。
まずくも美味くもない。
なので、特別に感動を覚えるという事もない。
ファンタジー代表の回復薬を初めて飲んだが、感想となると、草を薄めた味がする水――――だ。
「さて――――」
残った半分は手に注いでからパチャパチャと顔にかけていく。
この動作――――、化粧水を使っているみたいだな。
母ちゃんが鏡の前で化粧水を使っていた光景を思い出す。
「ついでに今回の素材の報酬として、ポーションと交換しとくか?」
「いや、だったらポーションを最初にくれよ。それを飲んだのに」
「じゃから、その程度で飲むな勿体ない。そもそもお前さん、回復してやらんか」
「嫌よ。自業自得なんだから」
「それもそうじゃな」
おい、ドワーフとエルフが仲良く楽しげに会話をするんじゃないよ。
そこはお互いがツンケンしながら話す姿を俺たち人間が微笑ましく眺めるところだろう。
二人して馬鹿をあしらうような対応をしてくれる。
いいか、俺は馬鹿じゃない。人よりやや劣るだけだ。
「ポーションは戦闘時のためにとっておけ。時間はかかるが怪我も治せて疲労も癒やしてくれるし、痛みの緩和に精神安定とありがたいアイテムじゃ。今飲んで塗布したレッサーポーションの効果は小一時間くらいたてば出て来るじゃろう」
「時間がかかるのがネックだな?」
「十分じゃろ。ここは王都であって戦場ではないからの」
まあそうだけど。
とにかく口内が治ってくれればそれでいい。
このままだとスープとか熱いのを口に出来ないからな。
顎もガクガクだし。
皆なんでこんなに暑い中で頑張れるんだろう。
ホップを投入したタンクに、脚立を使って上まで移動した二人の作業員が、棒を使ってタンクの中をかき混ぜる作業を始める。
汗が入らないように慎重になりつつグルグルとかき回す――――。
この後タンクに金属パイプを投入し、パイプに水を通してタンク内を冷ます工程に移行する。
ビールを製造するために厳選した麦芽とホップ。
わざわざ山から天然水まで運ばせての製造。
如何に王都に余裕が出てきたからって、本気出しすぎじゃないかな。
無駄使いを許した覚えはない。
「そんな顔をするな。王様からの許可も出ているし、出来上がりを楽しみにもしている。そんな楽しみにしている酒を王様よりも先にお前に飲ませてやるから」
最早、俺が未成年だと、ゲッコーさんは考えていないようだ。
この世界だと俺の年齢は大人あつかいだし。実際、果実酒も楽しんだ。
苦いのは苦手だが、グラス一杯くらいならいただこう。
大人の味とは如何なものかと、楽しみは増える。
「お~い」
と、聞いたことのある胴間声。
振り返れば、樽のような体型が白衣を着ていた。
全体が白で隠れているが、ギムロンだと直ぐに分かる。
鍛冶なんかの仕事が終われば、酒蔵を手伝うって言ってたもんな。
というか、もうそんな時間か。
朝から昼過ぎまで採取。
森から王都に戻れば夕暮れ時。
で、天窓から見える光景は、幕が下りたような黒に染まっている。
「ポーションの蒸溜が済んだぞ」
「お! やっとか」
「んなわけあるかい。会頭達のじゃなくて、以前の素材を使ったやつが出来たんだ。結構な量のレッサーポーションが出来たぞい」
「え~……せめてポーションがいいんだけど」
「別に会頭が使うもんじゃねえぞ」
酷くねえ……。
「使わせてくれよ、ポーション!」
「贅沢を言うな。そんだけ元気なら一番安いので十分だ。会頭達が集めたのはギルドの面々や冒険者、兵士のために販売する」
まあ、皆のためになるならこの体は犠牲にしようじゃないか。
うん、今の俺はちょっと格好良かった。
「まあ一本くらいなら。ほれ」
でっかい手に握られた物をおもむろに手渡される。
渡された物を目にする。
双五角錐からなるガラスの小瓶。
形からクリスタルのようにも見える。ギルドハウスで見たのは白磁の小瓶だったが、これは小粋な入れ物だ。
頂点部分が切頂されていて、コルクで栓がされている。
中に入った液体の色は薄い緑色だ。ぱっと見、緑茶のようだ。
「コレを飲めばいいのか?」
「でもいいし、痛みのある箇所にかけるのもいい」
量としては栄養ドリンクほどだから、グッと一飲みでいける。
「よし」
初めての体験だからか、意を決したように気概を口に出し、キュポンと栓を取る。
顔全体の痛みよりも口内をまずは優先。痛いからな。
頭を仰角四十五度にて固定し、グイッと半分ほどを飲んでみる――――。
うん――。なんだろうな。草を茹でたお湯を冷まして飲んだら、こんな感じなのだろうか。
青臭すぎて飲みにくいという事はない。抵抗なく飲める。
まずくも美味くもない。
なので、特別に感動を覚えるという事もない。
ファンタジー代表の回復薬を初めて飲んだが、感想となると、草を薄めた味がする水――――だ。
「さて――――」
残った半分は手に注いでからパチャパチャと顔にかけていく。
この動作――――、化粧水を使っているみたいだな。
母ちゃんが鏡の前で化粧水を使っていた光景を思い出す。
「ついでに今回の素材の報酬として、ポーションと交換しとくか?」
「いや、だったらポーションを最初にくれよ。それを飲んだのに」
「じゃから、その程度で飲むな勿体ない。そもそもお前さん、回復してやらんか」
「嫌よ。自業自得なんだから」
「それもそうじゃな」
おい、ドワーフとエルフが仲良く楽しげに会話をするんじゃないよ。
そこはお互いがツンケンしながら話す姿を俺たち人間が微笑ましく眺めるところだろう。
二人して馬鹿をあしらうような対応をしてくれる。
いいか、俺は馬鹿じゃない。人よりやや劣るだけだ。
「ポーションは戦闘時のためにとっておけ。時間はかかるが怪我も治せて疲労も癒やしてくれるし、痛みの緩和に精神安定とありがたいアイテムじゃ。今飲んで塗布したレッサーポーションの効果は小一時間くらいたてば出て来るじゃろう」
「時間がかかるのがネックだな?」
「十分じゃろ。ここは王都であって戦場ではないからの」
まあそうだけど。
とにかく口内が治ってくれればそれでいい。
このままだとスープとか熱いのを口に出来ないからな。
顎もガクガクだし。
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