上 下
304 / 1,668
増やそう経験

PHASE-304【回復、状態回復の存在】

しおりを挟む
 ムロ茸に豚の蹄なんかの薬草を混ぜて蒸留して、抽出して出来るのがレッサーポーションってポーションだそうだ。
 
 レッサーポーションの効能は擦り傷や打ち身など、軟膏かな? と言いたくなるような効能。
 一般家庭で使用されるのがレッサーポーションだそうだ。
 飲んでよし、傷口にかけてよしの体に優しい使用。
 
 欠点は即効性が無いことと、回復の上限が低いこと。
 冒険者や兵士など、戦いに場をおく者たちにとっては、あっても意味の無い物のようだが、消費量はレッサーポーションが一番だそう。
 ポーションの中で最も効果は低いが、一番の売れ筋。
 効果が低いと言ってもそれは戦場での話だからだ。
 戦いに参加する人数よりも、一般の人々の方が数は多いわけだから、生活必需品であるレッサーポーションが、ポーション界のシェアナンバーワンなのは当然だ。
 
 続いてポーション。ゲームでもお馴染みの回復薬。
 数種類あるポーションを一括りにしてポーションとも呼称するが、レッサーポーションの上位に位置するのもポーションと呼ぶらしい。
 このポーションを作り出すには、レッサーポーションを蒸溜して不純物を取り除き、濃度を高める事で出来るそうだ。
 薬草からレッサーポーションを作り出す時と同じ工程。
 本当に酒造りに似ている。

「酒造りだよな~」
 思っていることを口に出す。

「実際、ポーション作りの始まりはお酒造りから始まってるからね」
 この世界の回復薬は酒からが始まりのようだ。
 アルコールは消毒効果もある。酒は世界が変わっても人々とともに有るんだな。
 
 ポーション蒸溜の歴史は酒蔵と隣接する蒸溜所から始まったそうだ。

 酒同様にレッサーポーションを蒸溜する作業が古くから行われているそうで、以前は酒屋にポーションが当たり前のように売っていたそうだ。
 
 蒸溜されたポーションから冒険のお供になるそうで、痛みを緩和したり、傷を徐々に回復してくれる。
 しかし、即効性が有るわけではなく、もちろん致命傷になる傷を負えば、それを治すことは不可能。
 お金が使用されていた時は、手ごろな価格から冒険者の頼れる人気のアイテムだったそうだ。
 と言っても、これも以前まで。

「今は生産に尽力しないとな」

「王都が攻められてからは生産が止まってたみたいだしね。王都でこの状況だから、一部を除いたら他も同じような状況だろうね」
 様々な機関がストップしていたからな。
 ストックしていたポーションなんかも、魔王軍との長い戦いで消耗。
 瘴気で素材集めも難しかったから、現在は枯渇状態。
 先生の指示の元、急ピッチで生産が始まっているそうだ。
 クラックリックも素材集めって言ってたし、先生は素材収集にかなりの力を入れている模様。

「酒造りからポーションは始まったって言ってたよな。て、ことは――」

「そうだよ。ゲッコーが取り仕切ってる」

「へ~」

「まあゲッコーはお酒造りに力を入れてて、ポーション生成は専門知識のある薬師メンバーが中心になって作ってる」

「へ~……」
 欲する物の順序を間違ってないですかい? 伝説の兵士さんよ~。
 この王都で大きな蒸溜所は、東門近くにある酒蔵の一帯にしかなく、そこにギルドメンバーや王様の臣下、住人が集まりポーションを生成しているそうだ。
 生成の知識がある者たちから結成された、ポーション専門のシンクタンクだ。
 酒蔵一帯は、官民合同の第三セクターって感じになっているな。

「で、ポーションの上位にハイポーションがあって、ポーションに回復魔法や、解毒魔法を封じることで、前者がグレーターポーション。後者がアンチドーテになるの」
 前者は致命的な傷もそく治し、直ぐに戦線に立てる状態とする。
 しかしポーションに回復魔法を封じるのは、生物に唱えるのとは違い難しいそうで、封じて留めるには熟達したハイヒーラーやプリーストを要するそうだ。
 その人材を確保することも重要になってくるわけだな。

「ちなみに私は出来ます」

「だから俺のを治してくれよ」

「嫌」
 あっかんべーをしてくるエルフのシャルナさん。
 一見、美人の愛らしい仕草だが、二千年ちかく生きてるって考えると、年甲斐も無くって言葉ですらおっつかないよな……。
 
 ちなみに後者のアンチドーテは、解毒薬なんかで治せない猛毒を即効で治してくれるアイテムだそうで、これまたシャルナは生成できるだけの才能を持っているとのこと。

「で、これらの頂に立つのが、死んでないなら何でも治せる奇跡の霊薬エリクシールね」

「エリクサーってやつだな」
 ここまでくると、巨龍の爪やらの高難易度の素材に、大魔法を封じるってのが必要だそうで、流石にシャルナでも無理だって話。
 
 現在の大陸情勢からして、素材も人材も獲得が難しいことから、エリクシール生成は不可能に近いらしい。
 
 正に霊薬を冠するだけの代物だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

処理中です...