上 下
289 / 1,668
増やそう経験

PHASE-289【リベンジ開始じゃい!】

しおりを挟む
「さて――」
 ぐっぐっと、柔軟を行ってから、

「やろうか!」
 快活に継ぐ。

「よき覇気だ。お前の新たな力を私に示せ」
 力のこもった笑みを俺に向けてくる。
 やはり戦う気概を有した存在にはいい表情を見せてくれるね。
 おかげでこっちは動悸が高まるけども。
 戦う前から緊張じゃなく、美人様の笑みで心臓バクバクですわ。

「リベンジマッチじゃい!」
 高らかに両拳を掲げて、顔も空に向けて咆哮する。
 アバカンコールに混じり、「「「「おおおおぉぉぉぉぉおおおお!!!!」」」」と、王都全体に轟いたであろう、空気を振動させる野郎達の轟雷の如き咆哮。
 ドンドンとした声の衝撃が俺の体を叩き、突き抜けていく感覚。
 嫌なものではない。
 衝撃が走る度に、俺の体が滾ってくる。
 これこそ固有結界ホームの力。

「会頭ぉぉぉぉぉぉぉ!」
 仇を討ってくれとばかりに、カイルは声を張り上げる。

「刮目せよカイル! お前達に教わった俺の力を!」

「はい! しっかりと見ておきます! 勝利を得てください」

「任せてくれ!」
 まあ、勝てないだろうが、それでも俺のがんばりを見てくれ皆!

「ほお、流石に奇跡の存在だな。皆の期待が大きい。落胆だけはさせるなよ」
 ヒョイと手にした木刀を俺へと投げ渡しながら、余裕の中佐殿は、モデルのように片手を腰に当てて佇んでいらっしゃる。
 ただ立っているだけで眼福ですわ。

「いい勝負にしようぜ」

「強気なのは私が炎を使えないところから来ているのか? それとも、新たな力からか」

「後者だよ。そもそも炎を使おうが使えなかろうが、ベルはベルだからな。強者は強者のままだ」

「そうか。中々に嬉しいことを言ってくれる」
 イエーイ! 好感度アップ。
 ゲーム内だと、ベルの炎のみに頼る奴らもいるみたいだけど、俺はベル個人を頼ってますから。
 こういう発言をすると、素直に喜んでくれるのが嬉しい。
 俺にもっと女性を喜ばせるトーク力があれば尚いいんだろうけどな。

「では後者の力を見せてもらおう」
 手にした木剣を俺に向けつつ誘ってくる。

「言われなくても! インクリーズ! ラピッド! タフネス!」
 口にして直ぐに、体の中から力が湧き出てくる。
 熱い物や辛い物を食べた時に、体がポカポカしてくる感じが徐々に大きくなっていく感覚だ。
 初歩ピリアの三連コンボ。
 相変わらずビジョンの使いどころがないが、体内から湧き出るピリアの力は、自信にも変換してくれる。

「ほう――――」
 感知タイプでもあるベルは何かを感じ取ったようだな。

「余裕ぶってていいのか? 中佐殿」
 いつまで腰に手を当てて佇んでいるんだ。
 今の俺なら一足で行けるぜ。

「余裕ぶってはいない」
 お! なんだかんだで俺の事を一目置いてくれているって事かな。
 心なしか誇らしくなるぜ。
 なんて喜びを抱きつつ、

「じゃあ、何なんだよ?」
 って、聞いてしまう俺。

「余裕なのだ。ぶっているのではなく、余裕そのものなのだ」
 ――……言ってくれるじゃないか……。
 俺のちょっとした喜びを物の見事に粉々にしてくれたな!

「その余裕を粉々にしてやる」
 俺の思いと同じようにな!
 この固有結界、凄く尊き理想胸アバカンの空間で俺が負けるわけがない! ――――と、信じたいだけ。
 ホームなんだ。野郎達が俺の思いを口にしてくれている以上、俺は無様には負けられない!

「今度こそ勝利を得るぜ!」
 野郎達を煽るように発せば、

「「「「おお!」」」」
 コールの中で応えてくれた。
 三種の神器装着を拒み、俺のエロエロな出店を阻もうとする風紀委員長。
 ここで評価を高くし、俺は同じ志を持った野郎達の為に、大人のお店アルカディアを建設するんだ。
 
 壊れステータスである相手であろうとも、純粋な膂力だけなら俺は負ける気はない。

「さあ、全力で来い。そのぎらついた感覚は不快だが」
 だろうな。俺はショッキングピンク街建設を諦めない思いも、ピリアと共に体から迸らせているからな! 
 乙女はやはり受け付けないか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

処理中です...