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チートがほぼ無い冒険

PHASE-265【帰省】

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「ひっぐ……」
 うむ小生意気なのを泣かすことに大成功だ。
 俺、女の子を泣かせてもまったくもって罪悪感を感じていないっていうね。それだけの事をされてるからね!
 結構な時間、無限軌道で追いかけ回してやった。
 逃げ回る時に、ギルドメンバーには合流しようとしたが、弱っていたコボルト達の方へ逃げようとしないコクリコの姿勢は素晴らしかった。
 なので追いかけ回す時間をちょっとだけ短縮してやった。

「会頭の事は怒らせないようにしましょうね」
 と、慰めているのは、一緒に先発として行動していたクオン。

「こんなルートもあったんだな」

「新しく造られた道だからの。ワシらは知らんわけじゃ」
 と、クラックリックとギムロン。
 魔王軍の拠点となろうとしていた洞窟。
 トロールが通れるような道が洞窟内にあるって事は、外に続く道も無論あるってこと。
 コルレオン氏もこういう道を使って俺たちから逃げたんだな。

 コクリコたち先発組は、地図をリュミットから貰ったはいいが、得意げに先頭を歩んだコクリコが原因で、俺たちが入ってきた場所からは進入せず、この場所から進入したそうだ。
 
 コボルト達とはそこで出会い、彼らの状況を耳にしている時にトロール達と遭遇。
 自分たちが囮となり洞窟内部を逃げ回り、あの大空洞での戦闘に発展したそうだ。
 その間に子コボルト達は大人たちと合流できたんだな。
 よくやった! そこは素直に称賛するぞ。

 コクリコが原因で先発組は遠回りとなったが、それがいい結果に繋がった。
 トロールとの戦闘が始まってから、程なくして俺たちが駆けつけたって事だった。
 地図通りに到着していたら、俺たちが駆けつける前にやられていた可能性もあった。

 今回はコクリコの駄目なところに救われた。
 たしか、コクリコと初めて出会った森でも、得意げになって目的の方向とは逆の方角に進もうとしたよな。
 コイツ方向音痴だな。

「この道からだと、湿地に入らなくても町までいけます」

「ほう、そりゃいいの」
 ライの話を耳にすれば、ギムロンは満面の笑みだ。
 ドワーフの体型で、足を水に浸からせるのはきついご様子。遠回りになってもそっちの方がいいんだろう。

「正解じゃないかな」
 言って後方のコボルト達を見る。
 流石に弱った小柄の体で、水の中を歩かせるなんて出来ないからな。
 巨大ワームであるウォーターサイドが現れて襲ってくる可能性もあるし。
 流石に百ほどいる大人数をカバーしながら戦うのは難しい。

 以前のようにトラックを召喚して運べばいいんだけども、俺は運転が出来ない。
 出来ない人間の運転で、横転なんてした日には怪我じゃ済まないからな。

 ゲッコーさんのゲーム内に出て来る乗り物は、ゲーム内でそもそも使用するって演出がなかったせいか、プレイギアで操作するって事が出来ない。
 ミズーリやティーガー1のような、ゲーム内で操作できる乗り物だけが、プレイギアでの操作が可能って仕組みのようだな。
 
 プレイギアでの操作だけでなく、車の運転をきちんと教わろう。こういう時に役に立つからな。

「休憩を取りつつ町まで戻ろう」
 東の空が白んでいる。
 もうすぐ朝だ。洞窟にいたせいで、時間の感覚が分からない。
 
 ――――洞窟を歩き、Gにトロールとの戦闘を終えて、コボルト達と一緒に外に出れば、新たな一日に突入していた。
 どうりでしんどいわけだよ。

 元々の世界でも徹夜には慣れてはいたけど、激しい動きをしての徹夜は初めてだったからな。
 白んだ空を見た途端に、眠気が襲ってくる俺の体と精神のなんと単純なことか。

「会頭」

「なに?」

「一度町に戻ったら、ワシらはもう一度ここに来る」
 なんで? とは口にするまい……。
 忘れたかったのに……。

「ダイヒレンの亡骸を回収せんとな」
 ほくほくの笑顔で言うんじゃないよ。俺としてはあのまま洞窟の壁に立てかけて、オブジェとしておきたいのに……。
 
 お前達も手伝えと、ライとクオンにも言えば、ライは赤色級ジェラグに頼られるのがうれしいのか、快活のいい二つ返事。
 反面、クオンの表情は暗い。
 女性にとってGは恐怖の存在でしかないようだな。俺もその気持ちは凄く分かる。
 あいつこそ最強の敵だ――――。




「ありがとうございました」
 と、カリナさんから典雅な一礼を受ける。

「いえ、最悪の結果にならずによかったですね」
 最悪ってのは、コボルトを討伐してしまうというバッドエンドのこと。
 
 町に戻れば、入り口にて代表のカリナさんと、町の顔役と思われる人達がリュミットたちと共に待機していた。

 町まであと少しってところで、ライとクオンに先行してもらい、コボルト達が攻撃してきた経緯と、さかのぼっての状況を説明してもらっていた。
 話を理解した町側に、脅威を抱いた素振りはない。

 一様に申し訳ないといった表情で、横一列に並んでいた。
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