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チートがほぼ無い冒険
PHASE-263【Return to the Darkside】
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「ああ……私は汚されてしまいましたぁぁぁぁぁぁあ!」
尻をさすりながらとんでもない事をとんでもなくでかい声で発するコクリコ。
「汚してねえよ!」
反論すれば、
「あのまま力の前に屈服させられていれば、衆目に晒されながら陵辱されていたに違いありません」
「十三歳がそんな発言をするんじゃねえ!」
陵辱って単語をサラッと口に出すんじゃねえよ!
「言いふらしますから。私はもう少しでトールの子を無理矢理に身ごもるところだったと!」
「アホか!」
俺のこの異世界での経歴に汚点を残すようなことをするんじゃない!
しかも冤罪でだ!
そもそもがなんで俺が悪い感じになってんだよ! ふざけんなよ! 責任の所在を俺にするんじゃねえぞ!
「いいか! お前、今回の事は本気で反省しないとパーティーから追放するどころか、ギルドからも追放するからな。見てみろ! ここにお前以外で魔法を使える有能さんが二人もいる。いつでもお前と代わってもらうからな」
俺たちのパーティーはベルとゲッコーさんがいる時点で、攻撃力はオーバーキルなんだ。ノービスの攻撃魔法なんて別にいらないんだよ。回復の方が価値があるんだよ!
そこら辺を理解して、自分の現状の立ち位置に危機感を覚えろ! と、怒濤の勢いで言ってやった。
「反省します! ごめんなさい」
おう! 口先だけの反省じゃないみたいだな。直立からの綺麗な一礼じゃないか。そうやって素直にしてりゃいいんだよ。
素直になっても折檻は止めなかったけどな。
タチアナに救われたな!
「ですが弁解もさせてください」
「そんなもん存在しないだろうが、大海の如き器を持つ俺だ。作り話を聞いてやる」
「……あ、ありがとうございます」
なんだ? 得心がいかないといった表情だな。
あれだけボコボコにされたのに、この程度で許してる俺の器は大海と比べても何ら遜色はないだろう。
「私の教え方だって間違いではないんです」
「あ!」
こいつ! 適当なことを!
イラッとしたので、圧をかけるようにコクリコに接近すれば、両手を前へと突き出しながら、
「ほ、本当です! ああやって追い込むことでイメージして習得だって出来るんです。現に覚えたでしょ。驚きでしたよ。使用者に干渉してもらうことで簡単にも覚えられますが、こういうのは痛みと共に経験して習得するからこそ感慨深く、修行をしているとも思えるじゃないですか」
アホか! 喋々と!! こちとらチートが当たり前な作品で目を肥やしてきてる世代だぞ。
泥臭い特訓で覚えるよりも、インスタント感覚でちゃちゃっと覚える事が出来るなら、後者を迷わず選択するっての!
それよりも――――だ。お前は気になることを発したな…………。
「……俺はな、一欠片程度だがお前を信じようとした気持ちもあったんだ……。だが、やはりお尻ペンペンだけでなく、拳骨とグリグリのコンボもちゃんとやるべきだったな……」
王都から逃げ出してクエストに参加している時点で、確信犯だというのは理解していた。
でも、そこそこ一緒に旅もした間柄だ。真っ黒であっても信じたいと思った俺もいるわけだ。
洞窟ではコクリコたち先発が、もしかしたら最悪の状況になっているかもと思い、焦燥感だって芽生えた。
俺は仲間として、コクリコをなんだかんだで大事だと思ってもいたのに……。
コイツの発言の中にあった一カ所で、俺の思いは今ここで完全に崩壊した。
タフネスを習得するために、コイツは自信過剰だからイメージだけで楽に習得したとか思いつつも、俺と同じように痛く辛い思いを経験したんだろうとも考えた。
ああいう方法でしか体得できないという知識しか持ち合わせていないのだろうとも思っていた。
だが、コイツは言った。使用者に干渉してもらうことで――――と……。
つまりは、お手軽に習得できる事を確実に知っていたということ……。
俺を昼過ぎまでボコボコにしなくても、俺の頭に手を置いて習得させる事もコイツは容易く出来たんだ……。
なのに俺は馬鹿みたいにサンドバッグを演じさせられたわけか……。
本当に馬鹿だな……俺は…………、一欠片でもコクリコの事を信じようとしたんだから…………。
「殴り心地は……さぞよかっただろう……」
自分でも驚くほどに、それはそれは仄暗い声だった。
奈落の底から響いてきそうな、魔に染まった存在を彷彿させたものだった……。
尻をさすりながらとんでもない事をとんでもなくでかい声で発するコクリコ。
「汚してねえよ!」
反論すれば、
「あのまま力の前に屈服させられていれば、衆目に晒されながら陵辱されていたに違いありません」
「十三歳がそんな発言をするんじゃねえ!」
陵辱って単語をサラッと口に出すんじゃねえよ!
「言いふらしますから。私はもう少しでトールの子を無理矢理に身ごもるところだったと!」
「アホか!」
俺のこの異世界での経歴に汚点を残すようなことをするんじゃない!
しかも冤罪でだ!
そもそもがなんで俺が悪い感じになってんだよ! ふざけんなよ! 責任の所在を俺にするんじゃねえぞ!
「いいか! お前、今回の事は本気で反省しないとパーティーから追放するどころか、ギルドからも追放するからな。見てみろ! ここにお前以外で魔法を使える有能さんが二人もいる。いつでもお前と代わってもらうからな」
俺たちのパーティーはベルとゲッコーさんがいる時点で、攻撃力はオーバーキルなんだ。ノービスの攻撃魔法なんて別にいらないんだよ。回復の方が価値があるんだよ!
そこら辺を理解して、自分の現状の立ち位置に危機感を覚えろ! と、怒濤の勢いで言ってやった。
「反省します! ごめんなさい」
おう! 口先だけの反省じゃないみたいだな。直立からの綺麗な一礼じゃないか。そうやって素直にしてりゃいいんだよ。
素直になっても折檻は止めなかったけどな。
タチアナに救われたな!
「ですが弁解もさせてください」
「そんなもん存在しないだろうが、大海の如き器を持つ俺だ。作り話を聞いてやる」
「……あ、ありがとうございます」
なんだ? 得心がいかないといった表情だな。
あれだけボコボコにされたのに、この程度で許してる俺の器は大海と比べても何ら遜色はないだろう。
「私の教え方だって間違いではないんです」
「あ!」
こいつ! 適当なことを!
イラッとしたので、圧をかけるようにコクリコに接近すれば、両手を前へと突き出しながら、
「ほ、本当です! ああやって追い込むことでイメージして習得だって出来るんです。現に覚えたでしょ。驚きでしたよ。使用者に干渉してもらうことで簡単にも覚えられますが、こういうのは痛みと共に経験して習得するからこそ感慨深く、修行をしているとも思えるじゃないですか」
アホか! 喋々と!! こちとらチートが当たり前な作品で目を肥やしてきてる世代だぞ。
泥臭い特訓で覚えるよりも、インスタント感覚でちゃちゃっと覚える事が出来るなら、後者を迷わず選択するっての!
それよりも――――だ。お前は気になることを発したな…………。
「……俺はな、一欠片程度だがお前を信じようとした気持ちもあったんだ……。だが、やはりお尻ペンペンだけでなく、拳骨とグリグリのコンボもちゃんとやるべきだったな……」
王都から逃げ出してクエストに参加している時点で、確信犯だというのは理解していた。
でも、そこそこ一緒に旅もした間柄だ。真っ黒であっても信じたいと思った俺もいるわけだ。
洞窟ではコクリコたち先発が、もしかしたら最悪の状況になっているかもと思い、焦燥感だって芽生えた。
俺は仲間として、コクリコをなんだかんだで大事だと思ってもいたのに……。
コイツの発言の中にあった一カ所で、俺の思いは今ここで完全に崩壊した。
タフネスを習得するために、コイツは自信過剰だからイメージだけで楽に習得したとか思いつつも、俺と同じように痛く辛い思いを経験したんだろうとも考えた。
ああいう方法でしか体得できないという知識しか持ち合わせていないのだろうとも思っていた。
だが、コイツは言った。使用者に干渉してもらうことで――――と……。
つまりは、お手軽に習得できる事を確実に知っていたということ……。
俺を昼過ぎまでボコボコにしなくても、俺の頭に手を置いて習得させる事もコイツは容易く出来たんだ……。
なのに俺は馬鹿みたいにサンドバッグを演じさせられたわけか……。
本当に馬鹿だな……俺は…………、一欠片でもコクリコの事を信じようとしたんだから…………。
「殴り心地は……さぞよかっただろう……」
自分でも驚くほどに、それはそれは仄暗い声だった。
奈落の底から響いてきそうな、魔に染まった存在を彷彿させたものだった……。
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