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チートがほぼ無い冒険
PHASE-249【マウサーかな?】
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「よっしゃ! トロールを討伐したぞ! 今までダイヒレンやゴブリンだけだったのに。大きな飛躍だ!」
ライの喜びよう。未だかつて対峙したことのなかった脅威を自らが倒した事に興奮している。
ダイヒレンを討伐していることが俺は凄いと思うけどな。
「まだ終わってないよ」
「言うわりに声は喜んでるじゃん。副会頭風に言うなら喜色に染まるってやつだな」
「頭悪いのが使っても響かないよ。副会頭を例えに出すのも生意気」
「なにおう!」
とか言い合いながらも笑みを湛えてのやり取り。ライとクオンは楽しげにハイタッチ。
黒色級とはいえ、流石は先生が見出した存在。二人も先生のことを尊敬してるみたいだし。
物怖じしない戦い方に実力。今後もギルドにとって頼れる者たちとなるだろう。
――――と、多分だが二、三歳しか変わらないであろう二人に対して、俺の感想はおっさんみたいな内容だ。
けどそれ以上にさ……、年下がハイタッチする姿を見れば、リア充なんだろうなと、俺の心にはどす黒い何かが堆積していく。
なぜに異世界に来てまでリア充を目にしないといけないのか……。
当面は黒色級で頑張ってもらおうかな。なんて、職権乱用を行使しようという濁った心になってしまう狭量な俺。
「さて――――」
残り一体となったところで、戸惑うトロールに対して、有利となれば途端に強気で活発になるのが一人。
「ファイヤーボール」
ノービスを元気に唱える。
他者の活躍を自分の物にしようとする事が出来る図太い神経の持ち主は、相手が弱腰になると、それを嗅ぎ取り一気に強気になるという思考を持っている。
それがコクリコだ!
「グォォォォ……」
「うぬ……」
双方、共に苦悶の声。
仲間が倒されて、及び腰のところに襲ってくる痛み。対して、決定打になり得ない悔しさからのもの。
「ガァ!」
やけくそとばかりに、棍棒による上下運動を繰り返せば、コクリコは華麗に躱していく。
「ほお! 軽業じゃの~」
コクリコの敏捷さにギムロンが感嘆の声。
自分には出来ない動きだから特になんだろう。
バク転に側転。片手でのバク転も見せてくれる。
あそこまでアクロバティックなコクリコは初めて見る。
俺たちと出会う前はああやって敵対者相手に立ち回っていたんだろうな。
ベルやゲッコーさんがいるから、あんな回避方法をとる必要が無くなったんだろう。とる必要がなく戦闘を終えることが出来るからな。
見れば見るほどギムロンが発したように、軽業という単語が似合う。やはりウィザードなんて辞めて、前衛になればいいと思う。
「うん、うん」
「何を頷いてるんですか!」
回避しながらも俺の方をチラチラと一瞥していたコクリコが吠える。
「どうした?」
「どうした? じゃないですよ! 早くフォローを! 私がさっきまでトールの為にやっていたように!」
会話しつつも回避。まだまだ余裕があるようじゃないか。
「ニヤニヤしないで早く!」
俺がここに来たのはお前への復讐だからな~。
「会頭!」
タチアナの真剣な声。
「仕方ないな~」
あれだけ余裕で躱してるから問題はないだろうが、怪我をされては俺が復讐できなくなるからな。
――――うん。まるで主人公のライバルポジみたいな思考だ……。
あいつを主人公にするのだけはゴメンだけどな。
刀を手にしてラピッドによる移動。
ひっとぶように駆ければ、コクリコに集中していたトロールは俺が間合いに入り込んだことも気付かず、膝裏を斬られた激痛でようやく俺の存在に気付くことになる。
駆け抜けて、軽い跳躍から袈裟斬りをイメージした斬撃だった。
片膝を突いてズザーッと滑る感じで停止する俺。
完全に止まれば、羽織ったマントがバサッと俺を包み込むような軌道を描く。
姿勢は片膝を突き、刀を振り切った状態で静止。でもってマントの軌道。
多分だけど今の俺、スゲー格好いい姿勢だと思うの。
勇者シリーズのフィニッシュシーンみたいだよ。
背後で大爆発が起これば大正義だろう。
「よしいけコクリコ!」
肩越しで語る俺の声は、イケメンボイスの声優さんで脳内再生したいところ。
「感謝します。声はアレですが」
は?
「ファイヤーボール」
人が悦に浸っている時になにその言い方。
俺の睨みは無視してパターンな魔法。
ボカンと轟音が再びトロールの頭を襲う。
あいつ、的確に頭を狙うのが上手いな……。ヘッドショットの鬼だな。マウサーだな。間違いねえ、CSなのに公式で許可されているマウス風のやつじゃなくて、お高いコンバーターを使用したダークサイドマウサーだ。
PC版を買え! でもってPC勢にボコボコにされてしまえ!!
ライの喜びよう。未だかつて対峙したことのなかった脅威を自らが倒した事に興奮している。
ダイヒレンを討伐していることが俺は凄いと思うけどな。
「まだ終わってないよ」
「言うわりに声は喜んでるじゃん。副会頭風に言うなら喜色に染まるってやつだな」
「頭悪いのが使っても響かないよ。副会頭を例えに出すのも生意気」
「なにおう!」
とか言い合いながらも笑みを湛えてのやり取り。ライとクオンは楽しげにハイタッチ。
黒色級とはいえ、流石は先生が見出した存在。二人も先生のことを尊敬してるみたいだし。
物怖じしない戦い方に実力。今後もギルドにとって頼れる者たちとなるだろう。
――――と、多分だが二、三歳しか変わらないであろう二人に対して、俺の感想はおっさんみたいな内容だ。
けどそれ以上にさ……、年下がハイタッチする姿を見れば、リア充なんだろうなと、俺の心にはどす黒い何かが堆積していく。
なぜに異世界に来てまでリア充を目にしないといけないのか……。
当面は黒色級で頑張ってもらおうかな。なんて、職権乱用を行使しようという濁った心になってしまう狭量な俺。
「さて――――」
残り一体となったところで、戸惑うトロールに対して、有利となれば途端に強気で活発になるのが一人。
「ファイヤーボール」
ノービスを元気に唱える。
他者の活躍を自分の物にしようとする事が出来る図太い神経の持ち主は、相手が弱腰になると、それを嗅ぎ取り一気に強気になるという思考を持っている。
それがコクリコだ!
「グォォォォ……」
「うぬ……」
双方、共に苦悶の声。
仲間が倒されて、及び腰のところに襲ってくる痛み。対して、決定打になり得ない悔しさからのもの。
「ガァ!」
やけくそとばかりに、棍棒による上下運動を繰り返せば、コクリコは華麗に躱していく。
「ほお! 軽業じゃの~」
コクリコの敏捷さにギムロンが感嘆の声。
自分には出来ない動きだから特になんだろう。
バク転に側転。片手でのバク転も見せてくれる。
あそこまでアクロバティックなコクリコは初めて見る。
俺たちと出会う前はああやって敵対者相手に立ち回っていたんだろうな。
ベルやゲッコーさんがいるから、あんな回避方法をとる必要が無くなったんだろう。とる必要がなく戦闘を終えることが出来るからな。
見れば見るほどギムロンが発したように、軽業という単語が似合う。やはりウィザードなんて辞めて、前衛になればいいと思う。
「うん、うん」
「何を頷いてるんですか!」
回避しながらも俺の方をチラチラと一瞥していたコクリコが吠える。
「どうした?」
「どうした? じゃないですよ! 早くフォローを! 私がさっきまでトールの為にやっていたように!」
会話しつつも回避。まだまだ余裕があるようじゃないか。
「ニヤニヤしないで早く!」
俺がここに来たのはお前への復讐だからな~。
「会頭!」
タチアナの真剣な声。
「仕方ないな~」
あれだけ余裕で躱してるから問題はないだろうが、怪我をされては俺が復讐できなくなるからな。
――――うん。まるで主人公のライバルポジみたいな思考だ……。
あいつを主人公にするのだけはゴメンだけどな。
刀を手にしてラピッドによる移動。
ひっとぶように駆ければ、コクリコに集中していたトロールは俺が間合いに入り込んだことも気付かず、膝裏を斬られた激痛でようやく俺の存在に気付くことになる。
駆け抜けて、軽い跳躍から袈裟斬りをイメージした斬撃だった。
片膝を突いてズザーッと滑る感じで停止する俺。
完全に止まれば、羽織ったマントがバサッと俺を包み込むような軌道を描く。
姿勢は片膝を突き、刀を振り切った状態で静止。でもってマントの軌道。
多分だけど今の俺、スゲー格好いい姿勢だと思うの。
勇者シリーズのフィニッシュシーンみたいだよ。
背後で大爆発が起これば大正義だろう。
「よしいけコクリコ!」
肩越しで語る俺の声は、イケメンボイスの声優さんで脳内再生したいところ。
「感謝します。声はアレですが」
は?
「ファイヤーボール」
人が悦に浸っている時になにその言い方。
俺の睨みは無視してパターンな魔法。
ボカンと轟音が再びトロールの頭を襲う。
あいつ、的確に頭を狙うのが上手いな……。ヘッドショットの鬼だな。マウサーだな。間違いねえ、CSなのに公式で許可されているマウス風のやつじゃなくて、お高いコンバーターを使用したダークサイドマウサーだ。
PC版を買え! でもってPC勢にボコボコにされてしまえ!!
応援ありがとうございます!
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