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チートがほぼ無い冒険
PHASE-225【絶対領域は神秘の魅力】
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「今まではあんな事はなかったんです」
と、カリナさん。
町自慢のクランベリージュースを俺たちに振る舞ってくれながら語ってくれる。
ギムロンは嬉しそうに腰に下げた酒瓶を取り出す。
ジュースで割って飲むと美味いそうだ。
これから洞窟に向かうっていうのに、飲酒とはな。
ドワーフは酒に強いってのが相場だし、問題ないのかな。
それよりもだ、
「あんな事とは? コボルトがこの周辺に出没したことがないとか?」
「そうではありません。彼等はこの町で我々に協力をしていたのです」
「協力――――?」
首を傾げてしまう。
コボルト、つまりは亜人。
そんなのと一緒に生活をしていたのか?
――――聞けば四十人ほどが町に住んでいたとのこと。
体とか匹という単位を使わないことから、対等な関係だったんだろうな。
亜人と対等な付き合いって不思議だな。
「元来コボルトは臆病での。争い事は好まん」
「魔王軍なのに?」
「簡単に魔王軍って一括りにするもんじゃねえな」
げふっと酒気を帯びた息を吹き出すギムロン。
いつの間にか敬語が無くなっている……。酒が影響しているのか? それともくだけた関係に発展したのかな? まあ、年上だしいいんだけどさ。
魔王軍に与するコボルトもいるが、野生のモンスターと同様に、亜人だからといって、全てが魔王軍に従っているわけではないそうだ。
自分の存在が正にそれだろうと、グラスに二杯目を手酌で注ぎつつ、ドワーフであるギムロンは語る。
説得力がある。人間ではなく、亜人の発言だからな。
外見だけで、魔王軍とか決めつけてはいけないんだな。
以前、ホブが戦いの最中に、人間は亜人を見下すと言っていたが、俺の考えは正にそれだ。
そんな考えにならないようにと誓っていたのに……。反省である。
「じゃあ、ここのコボルトは何で襲ってきたんだろうか?」
「そりゃ、聞けば分かることだろう」
二杯目も剛気に一口で飲み干して、酒気を漂わせつつ口を開く。
飲酒は喋る為に必要な一連の動作なのかと思ってしまう。
「あの馬鹿が話も聞かないで、ファイヤーボールを放ってないことを祈るよ……」
想像しただけで、無用な混乱が生まれていそうだと、背筋が寒くなるのは第六感であってほしくないな。
「大丈夫ですよ。黒色級が三人とはいえ、会頭のパーティーメンバーであるコクリコさんがついているんですから」
だがら心配なのだよ。リュミット。
それと、さんなんてつけなくていい。つけるような人徳はあいつにはない。そもそも君の方が位階は上なんだから。
――――詰所で一息ついた後、直ぐに洞窟へと続く道を歩み始める。
「一雨きそうだな」
晴れていたのに、これからの事を暗示するかのような曇天模様。
やはりコクリコがやらかしているのだろうか……。
洞窟までは舗装がなされておらず、湿地の上を進むことになる。
洞窟近くの畑で頑張る農夫の人達は凄いね。こんな足場の悪いところを移動してるんだから。まあ、今はコボルトが原因で立ち入り禁止になっているようだが。
湿地を移動ということで、愛馬ダイフクも馬車も使えない。最低限の必需品だけを持っての移動となるわけだ。
「相変わらず気に入らん場所じゃて。クランベリーは最高だけんども」
「ギムロン、ここ知ってんの?」
「ワシだけじゃなく、こっちのハンターも知っとるだろうさ。なあ」
「ああ」
首肯と共に返すクラックリックは、町で借りた小舟を引いてくれている。
ここは駆け出し冒険者が挑む場所だそうだ。
もちろん相手はコボルトとは別物。駆け出しとして有りがたい素材を有したモンスターがいるそうだ。
「ああ。つらいわい!」
いらついているな。ドワーフだからな。身長が低い分、湿地に苦戦している。
俺たちは臑部分までしか水に浸かっていないが、ギムロンは膝頭まで浸かっていて、足を上げるのに難儀している。
水面を叩いて不機嫌を表現。
様々な作品に出て来るドワーフって、屈強で大酒飲みで頼りになるけど、短気で喧嘩っ早いってイメージ。
で、実際に俺の目の前のドワーフはそれに当てはまる。
加えて不機嫌さに拍車をかけるように、曇天模様からぽつりぽつりと雨が降ってきて、今ではサーっと音を立てる雨量だ。
「これに乗るか?」
小舟には俺たちの荷物が乗っている。小舟のおかげで俺たちは無手で移動出来るから楽なんだが、それでも身長が原因でギムロンは辛いご様子。
「いや、いい。水深の低いとこでワシが乗れば沈んで進まんくなる。ドワーフの足腰の強さを見せてやる」
つらいとか言ってたけども、大きな手を振って好意を断る。ドワーフらしい負けん気の強さが、甘えに勝ったようだ。
「タチアナは大丈夫か?」
「あ、はい」
白樺で作られたスタックをしっかりと握ってバランスをとりながら、青いローブは膝上で結んでいる状態。
流石は冒険者というべきか、膝が隠せるロングブーツを履いているから、水の跳ね返りや、靴の中に水が入ってくるというのは皆無。
対して俺ときたら半長靴……。
現在、半長靴の中はグッショグショだ。この辺の準備が出来ていないのが冒険者として三流以下だな。
そんな反省もしつつ、俺の視線は自然とタチアナの膝上で結ばれたローブと、ロングブーツによって出来る絶対領域に向けられている。
湿地の中をむさ苦しい野郎たちと歩く中で、アコライトの絶対領域は最高の清涼剤である。
と、カリナさん。
町自慢のクランベリージュースを俺たちに振る舞ってくれながら語ってくれる。
ギムロンは嬉しそうに腰に下げた酒瓶を取り出す。
ジュースで割って飲むと美味いそうだ。
これから洞窟に向かうっていうのに、飲酒とはな。
ドワーフは酒に強いってのが相場だし、問題ないのかな。
それよりもだ、
「あんな事とは? コボルトがこの周辺に出没したことがないとか?」
「そうではありません。彼等はこの町で我々に協力をしていたのです」
「協力――――?」
首を傾げてしまう。
コボルト、つまりは亜人。
そんなのと一緒に生活をしていたのか?
――――聞けば四十人ほどが町に住んでいたとのこと。
体とか匹という単位を使わないことから、対等な関係だったんだろうな。
亜人と対等な付き合いって不思議だな。
「元来コボルトは臆病での。争い事は好まん」
「魔王軍なのに?」
「簡単に魔王軍って一括りにするもんじゃねえな」
げふっと酒気を帯びた息を吹き出すギムロン。
いつの間にか敬語が無くなっている……。酒が影響しているのか? それともくだけた関係に発展したのかな? まあ、年上だしいいんだけどさ。
魔王軍に与するコボルトもいるが、野生のモンスターと同様に、亜人だからといって、全てが魔王軍に従っているわけではないそうだ。
自分の存在が正にそれだろうと、グラスに二杯目を手酌で注ぎつつ、ドワーフであるギムロンは語る。
説得力がある。人間ではなく、亜人の発言だからな。
外見だけで、魔王軍とか決めつけてはいけないんだな。
以前、ホブが戦いの最中に、人間は亜人を見下すと言っていたが、俺の考えは正にそれだ。
そんな考えにならないようにと誓っていたのに……。反省である。
「じゃあ、ここのコボルトは何で襲ってきたんだろうか?」
「そりゃ、聞けば分かることだろう」
二杯目も剛気に一口で飲み干して、酒気を漂わせつつ口を開く。
飲酒は喋る為に必要な一連の動作なのかと思ってしまう。
「あの馬鹿が話も聞かないで、ファイヤーボールを放ってないことを祈るよ……」
想像しただけで、無用な混乱が生まれていそうだと、背筋が寒くなるのは第六感であってほしくないな。
「大丈夫ですよ。黒色級が三人とはいえ、会頭のパーティーメンバーであるコクリコさんがついているんですから」
だがら心配なのだよ。リュミット。
それと、さんなんてつけなくていい。つけるような人徳はあいつにはない。そもそも君の方が位階は上なんだから。
――――詰所で一息ついた後、直ぐに洞窟へと続く道を歩み始める。
「一雨きそうだな」
晴れていたのに、これからの事を暗示するかのような曇天模様。
やはりコクリコがやらかしているのだろうか……。
洞窟までは舗装がなされておらず、湿地の上を進むことになる。
洞窟近くの畑で頑張る農夫の人達は凄いね。こんな足場の悪いところを移動してるんだから。まあ、今はコボルトが原因で立ち入り禁止になっているようだが。
湿地を移動ということで、愛馬ダイフクも馬車も使えない。最低限の必需品だけを持っての移動となるわけだ。
「相変わらず気に入らん場所じゃて。クランベリーは最高だけんども」
「ギムロン、ここ知ってんの?」
「ワシだけじゃなく、こっちのハンターも知っとるだろうさ。なあ」
「ああ」
首肯と共に返すクラックリックは、町で借りた小舟を引いてくれている。
ここは駆け出し冒険者が挑む場所だそうだ。
もちろん相手はコボルトとは別物。駆け出しとして有りがたい素材を有したモンスターがいるそうだ。
「ああ。つらいわい!」
いらついているな。ドワーフだからな。身長が低い分、湿地に苦戦している。
俺たちは臑部分までしか水に浸かっていないが、ギムロンは膝頭まで浸かっていて、足を上げるのに難儀している。
水面を叩いて不機嫌を表現。
様々な作品に出て来るドワーフって、屈強で大酒飲みで頼りになるけど、短気で喧嘩っ早いってイメージ。
で、実際に俺の目の前のドワーフはそれに当てはまる。
加えて不機嫌さに拍車をかけるように、曇天模様からぽつりぽつりと雨が降ってきて、今ではサーっと音を立てる雨量だ。
「これに乗るか?」
小舟には俺たちの荷物が乗っている。小舟のおかげで俺たちは無手で移動出来るから楽なんだが、それでも身長が原因でギムロンは辛いご様子。
「いや、いい。水深の低いとこでワシが乗れば沈んで進まんくなる。ドワーフの足腰の強さを見せてやる」
つらいとか言ってたけども、大きな手を振って好意を断る。ドワーフらしい負けん気の強さが、甘えに勝ったようだ。
「タチアナは大丈夫か?」
「あ、はい」
白樺で作られたスタックをしっかりと握ってバランスをとりながら、青いローブは膝上で結んでいる状態。
流石は冒険者というべきか、膝が隠せるロングブーツを履いているから、水の跳ね返りや、靴の中に水が入ってくるというのは皆無。
対して俺ときたら半長靴……。
現在、半長靴の中はグッショグショだ。この辺の準備が出来ていないのが冒険者として三流以下だな。
そんな反省もしつつ、俺の視線は自然とタチアナの膝上で結ばれたローブと、ロングブーツによって出来る絶対領域に向けられている。
湿地の中をむさ苦しい野郎たちと歩く中で、アコライトの絶対領域は最高の清涼剤である。
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