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色々と進めていこう
PHASE-215【弦をグンッとね!】
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どうも俺の言っている事が、カイルとピリアが使える面々に上手く伝わっていない。
距離感を感じてしまうな。
共通点は、皆して首を傾げるって事だが。
「会頭は魔法が使えますよね」
「うん。魔法じゃないけどね。大魔法」
どやって感じで言うよ。事実だから。
「そうでした。大魔法でしたね。大魔法発動において、マナは大気中のネイコスを使用。対してピリアは、体内のマナをコントロールします」
「知ってるよ。基本マナなら、体内コントロールのピリアが覚えやすいんだよな」
覚えやすいわりに、長時間、痛みに耐えたけどな。
「覚えやすいというより、基礎のピリアが使用出来る者に師事を受ければいいんですよ」
「分かってるよ。だから俺はコクリコにボコボコにされたんだよ。シャイニング・ケンカキックの影響で、未だに外側翼突筋が痛いよ。顔側面に直撃だったんだからな。タフネスやってても痛かったわ!」
――…………ねえ、何なの。なんで俺がコクリコにボコボコにされた師事を力説すると、その度に怪訝な表情になるの?
不安になってくるんですが……。
「実際にやった方が早いですね。強弓を」
カイルがそう伝えれば、即座に用意される弓。
皆して青空修練場の射場へと移動。そこでも新米さん達と挨拶を交わし、カイルが手にした弓を、
「どうぞ――」
と、俺へと手渡す。
まあ、何の変哲もない弓だ。強弓だから、弦の張力が強いんだろうが。
「引いてみてください」
「いやいや、強弓だろ。俺じゃ引けないって」
「まあ、試してください」
カイルに言われるままに弦を指で摘まんで――――、
「ん! ふんぎぃぃぃぃ!」
摘まむ程度じゃどうにもならんので、五本の指でしっかりと掴んで全力で引っ張ってみるが、弦の力に負けて指が吹っ飛びそうになる恐怖が脳裏をよぎる……。
「ごめん、無理……。俺の膂力じゃ無理」
「まあ、この強弓は俺でも引き切ることは出来ませんよ」
筋肉の塊である偉丈夫でも出来ない事を俺のような中肉中背にやらせないでほしい。
「では会頭、ちょっと失礼します」
言えばカイルは、俺の頭にポンと手を置き、やおら目をつぶる。
なにをするんだろう? と、様子をうかがう。
「では――、目を閉じてください」
――……変な事になるんじゃないよな。
男二人が向かい合って目を閉じるとか、ある意味、異世界に来て一番の恐怖を感じるんだけども。
筋肉が迫ってきて、そのままバラの香りが漂うって状況だけは起きないようにと祈りつつ、瞳を閉じる――。
「――――もういいですよ」
「おう!」
快活よく応えてしまうのは、なにも起きなくてよかったという安堵からだ。
――で、カイルは何がしたかったのだろう?
「弓を引いてください」
「おっと、ループかな?」
「今度はインクリーズと発しながらです。口に出すのが嫌なら、心の中で念じるのもいいですが、初めてなら声にした方が発動のタイミングが掴みやすいですよ」
発動……だと?
カイルに向けて、俺は訝しい顔になっているだろう。
だがカイルを筆頭に、皆もどうぞどうぞと促してくる。
仕方ないので――――、
「インクリーズ!」
発しつつ、弦を摘まむのではなく、さっきみたいに手でぐっと握って引いてみると――、
「おお!? あ! え!? なんじゃこりゃ!?」
驚きの声の連続だ。
引っ張れば、ぐんっと弦が弧を描き、弓が大きくしなる。
引けないという想像を容易く裏切る俺の膂力。
軽い。先ほどまでとは別物だ。
幼児専用の、おもちゃの弓を引いているような軽さだ。
距離感を感じてしまうな。
共通点は、皆して首を傾げるって事だが。
「会頭は魔法が使えますよね」
「うん。魔法じゃないけどね。大魔法」
どやって感じで言うよ。事実だから。
「そうでした。大魔法でしたね。大魔法発動において、マナは大気中のネイコスを使用。対してピリアは、体内のマナをコントロールします」
「知ってるよ。基本マナなら、体内コントロールのピリアが覚えやすいんだよな」
覚えやすいわりに、長時間、痛みに耐えたけどな。
「覚えやすいというより、基礎のピリアが使用出来る者に師事を受ければいいんですよ」
「分かってるよ。だから俺はコクリコにボコボコにされたんだよ。シャイニング・ケンカキックの影響で、未だに外側翼突筋が痛いよ。顔側面に直撃だったんだからな。タフネスやってても痛かったわ!」
――…………ねえ、何なの。なんで俺がコクリコにボコボコにされた師事を力説すると、その度に怪訝な表情になるの?
不安になってくるんですが……。
「実際にやった方が早いですね。強弓を」
カイルがそう伝えれば、即座に用意される弓。
皆して青空修練場の射場へと移動。そこでも新米さん達と挨拶を交わし、カイルが手にした弓を、
「どうぞ――」
と、俺へと手渡す。
まあ、何の変哲もない弓だ。強弓だから、弦の張力が強いんだろうが。
「引いてみてください」
「いやいや、強弓だろ。俺じゃ引けないって」
「まあ、試してください」
カイルに言われるままに弦を指で摘まんで――――、
「ん! ふんぎぃぃぃぃ!」
摘まむ程度じゃどうにもならんので、五本の指でしっかりと掴んで全力で引っ張ってみるが、弦の力に負けて指が吹っ飛びそうになる恐怖が脳裏をよぎる……。
「ごめん、無理……。俺の膂力じゃ無理」
「まあ、この強弓は俺でも引き切ることは出来ませんよ」
筋肉の塊である偉丈夫でも出来ない事を俺のような中肉中背にやらせないでほしい。
「では会頭、ちょっと失礼します」
言えばカイルは、俺の頭にポンと手を置き、やおら目をつぶる。
なにをするんだろう? と、様子をうかがう。
「では――、目を閉じてください」
――……変な事になるんじゃないよな。
男二人が向かい合って目を閉じるとか、ある意味、異世界に来て一番の恐怖を感じるんだけども。
筋肉が迫ってきて、そのままバラの香りが漂うって状況だけは起きないようにと祈りつつ、瞳を閉じる――。
「――――もういいですよ」
「おう!」
快活よく応えてしまうのは、なにも起きなくてよかったという安堵からだ。
――で、カイルは何がしたかったのだろう?
「弓を引いてください」
「おっと、ループかな?」
「今度はインクリーズと発しながらです。口に出すのが嫌なら、心の中で念じるのもいいですが、初めてなら声にした方が発動のタイミングが掴みやすいですよ」
発動……だと?
カイルに向けて、俺は訝しい顔になっているだろう。
だがカイルを筆頭に、皆もどうぞどうぞと促してくる。
仕方ないので――――、
「インクリーズ!」
発しつつ、弦を摘まむのではなく、さっきみたいに手でぐっと握って引いてみると――、
「おお!? あ! え!? なんじゃこりゃ!?」
驚きの声の連続だ。
引っ張れば、ぐんっと弦が弧を描き、弓が大きくしなる。
引けないという想像を容易く裏切る俺の膂力。
軽い。先ほどまでとは別物だ。
幼児専用の、おもちゃの弓を引いているような軽さだ。
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