179 / 1,668
王族の湯治場クレトス
PHASE-179【変なスイッチが入ったベル】
しおりを挟む
「僕も捕まってしまったからね、何も言えないんだけどね。とにかく無事で良かった」
「ワックさんもね」
「この方々が僕を助けてくれたんだ」
「ワックさんを助けてくれて、そしてボクも助けてくれてありがとう」
白い毛並みのぬいぐるみのような子グマが愛らしく一礼。
だけども、どうしても声がハードボイルドすぎて、見た目よりそっちが目立つぞ。
ゴロ太君よ~。
「か、かまわない! 当然のことをしただけだ」
――……ベルさんの鼻息が荒いんですけど……。
こんな興奮している美人は初めて見るよ。
若干ひいてしまうよ。その姿。
普段は切れ長な目だが、現在はくわっと見開いて、指をわきわきしてるし……。
「捕まってはしまったが、とても勇敢だったぞ。小さい体で疲れただろう。私が、だ、だだだ抱っこしてやろうじゃないか!」
目が危ないよ。
エメラルドグリーンの目が血走ってるよ……。
乙女モードが愛玩動物に心を奪われているよ。
俺にもそのくらいの情熱を向けて欲しい……。
ゴロ太。羨ましいぞ…………。
「お姉ちゃんごめんなさい。ボク、ちょっと怖い……」
「な!?」
流石に血走った目で見られれば、小さい体だと怖がるよな……。
ワックさんの後ろに隠れてこっちを窺う姿は可愛いが、ベルはショックを受けているようで、力なく項垂れている。
見たことない姿をたくさん目にすることが出来るな。
新鮮ではある。
「ボク、あの子と話してくるね」
そう言って、よちよち歩きでケーニッヒス・ティーガーの子供の元へと走り出す姿は確かに可愛い。
「ああ……」
ベルの心が完全に奪われているご様子。
母親のようにゴロ太の一挙手一投足を見守っておられる。
――――本当に話が出来るようで、解放された後も興奮していたケーニッヒス・ティーガーの子供が、ゴロ太と会話をしていけば、興奮が収まり、ゴロ太をペロペロと舐めはじめた。
「はやく、母親の所に返してあげて」
と、ケーニッヒス・ティーガーの子供を代弁するようにゴロ太が発言すれば、
「早く案内しろ。ゴロ太のお願いだぞ」
と、ベルがハンター達に、それはそれは酷薄に発言した。
完全に命を奪う勢いの語気だ。
流石のハンター達も、ベルの気迫に気圧されて震え出す始末だ。
――――木製だがしっかりとした檻に、四肢を鎖で拘束されたケーニッヒス・ティーガーが捕らえられていた。
「あ! このケーニッヒス・ティーガーは!」
「左目の部分に傷がある。俺たちが山道で出くわしたのと同じ虎だな」
俺とゲッコーさんが確認しあう。
知っていたケーニッヒス・ティーガーだから、ベルは怒りの瞳でハンター達を睨んでいた。
「見た感じ、怪我とかはないようだ」
素人の俺が見たところではっきりとは診察なんて出来ないけども。
「当然さ。怪我を負わせたら価値が下がるからな」
「今回はそれが功を奏したな。怪我でもして、子供とゴロ太が悲しんだら、貴様らは首と胴が離れていただろう」
「こえぇよ! さっきからよ!」
怖がられたのを払拭させて、ゴロ太から気に入られようと必死かよ!
俺にその思いをぶつけてくれよ。俺ならいつでもオープンなのに!
こんなにもベルの心を虜にするとは! ゴロ太、おそろしい子!
震えるハンター達が急いで檻から解放しようと近づけば、
「ガァァァァァァァ!」
まあ、威嚇するのは当然。
そこにゴロ太が近づき話をすれば、母親のケーニッヒス・ティーガーも静かになった。
「なんて優秀な子なのだろう」
ここまで来ると、付き合いの長い俺とゲッコーさんは、ベルの変わり様を半眼で見る事しか出来ない。
――――山賊退治も成功。
ワックさんもゴロ太も救えて、怪我人もなし。
ケーニッヒス・ティーガーの親子はゴロ太となにか話、無事に山の中へと帰ることが出来たが……。
ベルの興奮が凄いよ……。
ゴロ太のちょっとした行動の一つ一つに、称賛の声をずっと上げている。
本当に、いままでに見たことないよ。
新鮮を通り越して、恐怖だよ……。
俺とゲッコーさんだけでなく、コクリコまでひきはじめる。
「あんなの、私の知ってる格好いいベルではありません……」
「言ってやるな。褒められているゴロ太は、ベルの興奮した言い様を恐怖という形で受け取っている。で、それにショックを受けているベルの姿も見ないようにしてやれ。それが大人になる為の一歩だ」
ゲッコーさんは疲れたような語調で言う。
語調がその時点で、ゲッコーさんもベルの変わりように恐怖をおぼえているのかもしれない。
「ワックさんもね」
「この方々が僕を助けてくれたんだ」
「ワックさんを助けてくれて、そしてボクも助けてくれてありがとう」
白い毛並みのぬいぐるみのような子グマが愛らしく一礼。
だけども、どうしても声がハードボイルドすぎて、見た目よりそっちが目立つぞ。
ゴロ太君よ~。
「か、かまわない! 当然のことをしただけだ」
――……ベルさんの鼻息が荒いんですけど……。
こんな興奮している美人は初めて見るよ。
若干ひいてしまうよ。その姿。
普段は切れ長な目だが、現在はくわっと見開いて、指をわきわきしてるし……。
「捕まってはしまったが、とても勇敢だったぞ。小さい体で疲れただろう。私が、だ、だだだ抱っこしてやろうじゃないか!」
目が危ないよ。
エメラルドグリーンの目が血走ってるよ……。
乙女モードが愛玩動物に心を奪われているよ。
俺にもそのくらいの情熱を向けて欲しい……。
ゴロ太。羨ましいぞ…………。
「お姉ちゃんごめんなさい。ボク、ちょっと怖い……」
「な!?」
流石に血走った目で見られれば、小さい体だと怖がるよな……。
ワックさんの後ろに隠れてこっちを窺う姿は可愛いが、ベルはショックを受けているようで、力なく項垂れている。
見たことない姿をたくさん目にすることが出来るな。
新鮮ではある。
「ボク、あの子と話してくるね」
そう言って、よちよち歩きでケーニッヒス・ティーガーの子供の元へと走り出す姿は確かに可愛い。
「ああ……」
ベルの心が完全に奪われているご様子。
母親のようにゴロ太の一挙手一投足を見守っておられる。
――――本当に話が出来るようで、解放された後も興奮していたケーニッヒス・ティーガーの子供が、ゴロ太と会話をしていけば、興奮が収まり、ゴロ太をペロペロと舐めはじめた。
「はやく、母親の所に返してあげて」
と、ケーニッヒス・ティーガーの子供を代弁するようにゴロ太が発言すれば、
「早く案内しろ。ゴロ太のお願いだぞ」
と、ベルがハンター達に、それはそれは酷薄に発言した。
完全に命を奪う勢いの語気だ。
流石のハンター達も、ベルの気迫に気圧されて震え出す始末だ。
――――木製だがしっかりとした檻に、四肢を鎖で拘束されたケーニッヒス・ティーガーが捕らえられていた。
「あ! このケーニッヒス・ティーガーは!」
「左目の部分に傷がある。俺たちが山道で出くわしたのと同じ虎だな」
俺とゲッコーさんが確認しあう。
知っていたケーニッヒス・ティーガーだから、ベルは怒りの瞳でハンター達を睨んでいた。
「見た感じ、怪我とかはないようだ」
素人の俺が見たところではっきりとは診察なんて出来ないけども。
「当然さ。怪我を負わせたら価値が下がるからな」
「今回はそれが功を奏したな。怪我でもして、子供とゴロ太が悲しんだら、貴様らは首と胴が離れていただろう」
「こえぇよ! さっきからよ!」
怖がられたのを払拭させて、ゴロ太から気に入られようと必死かよ!
俺にその思いをぶつけてくれよ。俺ならいつでもオープンなのに!
こんなにもベルの心を虜にするとは! ゴロ太、おそろしい子!
震えるハンター達が急いで檻から解放しようと近づけば、
「ガァァァァァァァ!」
まあ、威嚇するのは当然。
そこにゴロ太が近づき話をすれば、母親のケーニッヒス・ティーガーも静かになった。
「なんて優秀な子なのだろう」
ここまで来ると、付き合いの長い俺とゲッコーさんは、ベルの変わり様を半眼で見る事しか出来ない。
――――山賊退治も成功。
ワックさんもゴロ太も救えて、怪我人もなし。
ケーニッヒス・ティーガーの親子はゴロ太となにか話、無事に山の中へと帰ることが出来たが……。
ベルの興奮が凄いよ……。
ゴロ太のちょっとした行動の一つ一つに、称賛の声をずっと上げている。
本当に、いままでに見たことないよ。
新鮮を通り越して、恐怖だよ……。
俺とゲッコーさんだけでなく、コクリコまでひきはじめる。
「あんなの、私の知ってる格好いいベルではありません……」
「言ってやるな。褒められているゴロ太は、ベルの興奮した言い様を恐怖という形で受け取っている。で、それにショックを受けているベルの姿も見ないようにしてやれ。それが大人になる為の一歩だ」
ゲッコーさんは疲れたような語調で言う。
語調がその時点で、ゲッコーさんもベルの変わりように恐怖をおぼえているのかもしれない。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる