178 / 1,668
王族の湯治場クレトス
PHASE-178【その声……】
しおりを挟む
「え、嘘だろ。じゃあ、本当に……」
「噂だと、パーティーには赤い髪の美姫がいると聞いたが」
「そうだ、六花のマントは偽物の可能性もある。赤髪の美姫はどこだ!」
俺の外見を上から下まで見た後に、偽物の可能性とか言わないでくれる……。
こういうところなんだよな、マントの効果が薄れるのって……。
威厳がないのは、俺自身がちゃんと理解してるから……。
「……そこにいるだろう」
落ち込みつつベルを指差して、ハンター達を誘導してやろうとすれば、
「ここです!」
と、赤髪でもないまな板が、アホな自意識を見せてきたので、
「あいた!」
尻に蹴りを入れてやった。
「話が進まんから出しゃばるな。聞けハンター達! いま現在は色々あって白い髪になっているけども、お前等の言ってる美姫ってのは、このベルヴェット・アポロ中佐の事だ!」
きまったね。俺の口上。
六花のマントを見せた時以上にきまった。
メインを支えるバイプレーヤーのような立ち位置だけども。
ふう、勇者である俺がバイプレーヤーって……。
「本当にお宅らが――――」
「まだ信じないか! 俺たちが勇者一行だよ!」
「必死になって発言すれば、虚言にも聞こえてくるから落ち着いたらどうだ」
うむ。ベルの発言は正しいな。
これだと偽物が必死になっているようにしか見えないからな。
「もし本当なら、剣を一振りするだけで、多くの敵を炎で呑み込むって話だったな」
「いまは使えないが、お前たち程度ならば無手でも十分だ」
しゃなりしゃなりと接近。ハンター達は後退りしつつ、両手を前に突き出して、
「あんたの実力は理解している。戦う気なんてない」
白い髪ってところで、本来ならブラフとも考えていいんだろうが、そこそこのやり手と思われるハンター達は、明らかに自分たちでは太刀打ち出来ないと判断したようだ。
その辺の察知力は素晴らしいな。
「素直に動物たちを解放すれば、話は会頭が聞いてくれるだろう」
そこは俺に丸投げかよ。
まあ、会頭ですから。
俺は大人と違って、責任がとれる責任者を目指しますよ。ベルの好感度ポイントを上げるためにも!
最近は、忠誠心のポイント確認をまったくしないな~。
上がってないって分かってるから確認しないだけだけど。
だって、普通に殴られるし蹴られるし、踏まれるし。
そもそもゼロって数字を見るだけで、メンタル豆腐な俺は、結構な時間ヘコむからね。
絹ごしから木綿メンタルになったとしても、ヘコむ事は変わりないからね。
「中々のやり手みたいだし、こちらの指示に従うなら、ギルド加入願いの話が出来るようにしてやるよ」
どう言おうが、魔王軍と行動している山賊たちと悪さをしてたんだ。
当人たちは山賊たちを利用してたんだろうが、一発で加入なんてのはさせられない。
ここは先生に判断してもらうのがいい。
人物鑑定は、適材適所の神に頼むのが一番だ。
橋渡しとして、紹介状を書いてやると伝える。
二人は顔を見合わせてからややあって、
「分かった、指示に従う。こいつらも解放する」
素直に応じてくれた。
「先ほど倒れた二人も頼む」
ほうほう。逃げ出したが、仲間の事はちゃんと考えられるんだな。
了解したと返せば、
「親の所に案内する」
言って、捕まえていたケーニッヒス・ティーガーの子供と、ぬいぐるみみたいな子グマのゴロ太が、もぞもぞと動く麻袋から解放された。
「ゴロ太!」
駆け出すワックさん。
「ワックさん!」
ゲッコーさんに負けないくらいの渋い声なのに、よちよちとした駈け足でワックさんに抱きつく――――というか、抱っこされるゴロ太。
「ああ! 可愛い!」
隣のベルの様子がちょっとおかしいが、とりあえず二人のやり取りを見守ってみる。
「心配したんだよ」
「ごめんよワックさん」
声で台無しだよ……。可愛さが台無しだよ。
語り口が子供口調なのに、アニメ作品より、洋画吹き替えで活躍してそうな男前な声だよ。
「噂だと、パーティーには赤い髪の美姫がいると聞いたが」
「そうだ、六花のマントは偽物の可能性もある。赤髪の美姫はどこだ!」
俺の外見を上から下まで見た後に、偽物の可能性とか言わないでくれる……。
こういうところなんだよな、マントの効果が薄れるのって……。
威厳がないのは、俺自身がちゃんと理解してるから……。
「……そこにいるだろう」
落ち込みつつベルを指差して、ハンター達を誘導してやろうとすれば、
「ここです!」
と、赤髪でもないまな板が、アホな自意識を見せてきたので、
「あいた!」
尻に蹴りを入れてやった。
「話が進まんから出しゃばるな。聞けハンター達! いま現在は色々あって白い髪になっているけども、お前等の言ってる美姫ってのは、このベルヴェット・アポロ中佐の事だ!」
きまったね。俺の口上。
六花のマントを見せた時以上にきまった。
メインを支えるバイプレーヤーのような立ち位置だけども。
ふう、勇者である俺がバイプレーヤーって……。
「本当にお宅らが――――」
「まだ信じないか! 俺たちが勇者一行だよ!」
「必死になって発言すれば、虚言にも聞こえてくるから落ち着いたらどうだ」
うむ。ベルの発言は正しいな。
これだと偽物が必死になっているようにしか見えないからな。
「もし本当なら、剣を一振りするだけで、多くの敵を炎で呑み込むって話だったな」
「いまは使えないが、お前たち程度ならば無手でも十分だ」
しゃなりしゃなりと接近。ハンター達は後退りしつつ、両手を前に突き出して、
「あんたの実力は理解している。戦う気なんてない」
白い髪ってところで、本来ならブラフとも考えていいんだろうが、そこそこのやり手と思われるハンター達は、明らかに自分たちでは太刀打ち出来ないと判断したようだ。
その辺の察知力は素晴らしいな。
「素直に動物たちを解放すれば、話は会頭が聞いてくれるだろう」
そこは俺に丸投げかよ。
まあ、会頭ですから。
俺は大人と違って、責任がとれる責任者を目指しますよ。ベルの好感度ポイントを上げるためにも!
最近は、忠誠心のポイント確認をまったくしないな~。
上がってないって分かってるから確認しないだけだけど。
だって、普通に殴られるし蹴られるし、踏まれるし。
そもそもゼロって数字を見るだけで、メンタル豆腐な俺は、結構な時間ヘコむからね。
絹ごしから木綿メンタルになったとしても、ヘコむ事は変わりないからね。
「中々のやり手みたいだし、こちらの指示に従うなら、ギルド加入願いの話が出来るようにしてやるよ」
どう言おうが、魔王軍と行動している山賊たちと悪さをしてたんだ。
当人たちは山賊たちを利用してたんだろうが、一発で加入なんてのはさせられない。
ここは先生に判断してもらうのがいい。
人物鑑定は、適材適所の神に頼むのが一番だ。
橋渡しとして、紹介状を書いてやると伝える。
二人は顔を見合わせてからややあって、
「分かった、指示に従う。こいつらも解放する」
素直に応じてくれた。
「先ほど倒れた二人も頼む」
ほうほう。逃げ出したが、仲間の事はちゃんと考えられるんだな。
了解したと返せば、
「親の所に案内する」
言って、捕まえていたケーニッヒス・ティーガーの子供と、ぬいぐるみみたいな子グマのゴロ太が、もぞもぞと動く麻袋から解放された。
「ゴロ太!」
駆け出すワックさん。
「ワックさん!」
ゲッコーさんに負けないくらいの渋い声なのに、よちよちとした駈け足でワックさんに抱きつく――――というか、抱っこされるゴロ太。
「ああ! 可愛い!」
隣のベルの様子がちょっとおかしいが、とりあえず二人のやり取りを見守ってみる。
「心配したんだよ」
「ごめんよワックさん」
声で台無しだよ……。可愛さが台無しだよ。
語り口が子供口調なのに、アニメ作品より、洋画吹き替えで活躍してそうな男前な声だよ。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる