158 / 1,668
お久しぶりの王都
PHASE-158【ジャイアニズムの名の下に】
しおりを挟む
三十畳ぐらいの広い場所には、宝箱をはじめ、槍や剣、その他の利器が飾られている。
甲冑も丁寧に並べられていて、生産性重視の鋳造物じゃなく、一つ一つが違う作り。
職人が手間暇をかけて製作したであろうワンオフの特注品だ。
よく見れば鎧は、部分部分が蛇腹状に出来ている。
素人目だけども、蛇腹を伸縮させることで、様々な体型にも対応した甲冑になるんだろう。
それだけでも手の込んだ一品である。
「こいつは運び出すだけでも時間がかかりそうだ」
「ですが、これを報酬とすれば、ギルドの者たちも今以上に励みますよ」
先生も大喜びだ。
「見てください主。この刀、大業物ですよ」
「お目が高い。それは蠱毒の太刀と名付けられた大業物です。職人が刀を打つ時、側にいるウィザードが様々な毒魔法を唱え、刀身に魔法を注ぎ込んでおります。斬られた対象は、斬られた箇所より肉が腐れて崩れ落ち、苦しみながら絶命します」
なにそれ怖い!
「どうぞ」
ナブル将軍が、俺におっかない刀を笑顔で手渡そうとしてきたので、全力で別のところに目を向ける。
「ん?」
なんだあのタンスは? えらく場違いなような気もするが、何かいいアイテムでも入っているのかな?
気になったので足を進めれば、
「いやいや、これには大した物は入っておりませんよ」
大の字で立ちふさがっている時点で、大した物だけが入っているよね。
汗まで流して、なにをそんなに必死になって隠したいのかな。子爵殿?
俺の背後では、先生が魔法の封じられた鉄扉を持ち帰りたいからと、窓から顔を出して、大声で下にいる兵達に手伝ってほしいと言っている。
人が増えると知れば、子爵の冷や汗の量が増えてくる。
怪しいと、俺は半眼で凝視。
流れる汗は、滝のようだ。
「お願いします」
先ほど同様に、一言そう言えば、ゲッコーさんが気付かれることなく子爵の背後に回り込み、羽交い締め。
その間に俺は、タンスの引き出しに手を伸ばす。
下段から開ける空き巣のテクニックで――――。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ」
しつこいな。
六花のマントを俺が羽織っている以上、この宝物庫の物は俺の物。俺の物は俺の物。の主義で、好き勝手やらせてもらう。
おっさんの悲痛な叫びを無視しつつ、下段に入っていた物を確認。
「――――? 巻物?」
が、整理されて収納されていた。
「おお! これはスクロールですね」
ゲームにもあるな。
「たしか、魔法が封じられているとかってやつですよね」
俺の側でタンスの中身が気になっていたのか、ナブル将軍が覗き込んでいる。
質問をすれば、首肯で返してくれた。
「これの使用方法は?」
「簡単です。開いて、描かれてある魔法陣に手を当てれば、それだけで封じられた魔法が使用出来ます」
「凄いですね」
「ですが、とても貴重です。これだけ集めるだけでも相当ですよ」
コレクターなのか、タンスの主と思われる子爵に目を向ければ、空笑いである。
「どんな魔法が封じられているんですかね?」
「印をしているようですよ」
スクロールには火のマークや、水滴マークがある。
これで炎系や水系と判断しているわけだな。
「魔法の使えない者たちには、起死回生の代物。持っていて損はないですね」
「なるほど。てことで、ください」
ナブル将軍の会話内容は、すでに俺の所有物のような発言だが、一応の許可を取る。
「構いませんとも。それは譲りますからもういいでしょう」
子爵のこの焦り方からするに、残りの引き出しにも、さぞいい物が入っているのだろうね~。
悪い笑みを浮かべて、次の引き出しに手を伸ばす。
子爵が血涙を流しそうな勢いで、開けないでと懇願してくるが、引き出しを開ける手は止まらない。
「――――こ、これは!?」
「やあ、ベル」
「どうした? なにやらギルドハウス周辺が賑わっているが、王城から得られた物は良い品だったのか?」
「とってもだよ」
「何とも明るい声だな。良かったではないか」
ああ、最高に良かったよ。
先生は早速、ドワーフたちに、魔法の注がれた鉄扉を溶かして、武具製作を指示し、ワンオフの武具は、一時的にギルドハウスの二階の倉庫にしまい込む。
ギルドハウスの隣に、武具と鍛冶屋を一体化した建物を建築予定で、竣工すれば、武具屋の蔵に収める予定だそうだ。
功績の著しい者には、最高の装備とスクロールを渡すと発すれば、大歓声が沸き起こり、一帯に響き渡る。
報酬内容を耳にして、ギルドメンバーは気合い十分だ。
これで更に皆が励んでくれるし、これを機に、冒険者を目指す! と、希望と野心に満ちた声が、俺の耳朶に届く。
目を向ければ、コクリコくらいの年齢の男の子が、木の棒を自慢の得物かのように空に向けながら発していた。
うむ、一生懸命に励んで、冒険者、よければ俺のギルドに入って活躍する存在になってね。
甲冑も丁寧に並べられていて、生産性重視の鋳造物じゃなく、一つ一つが違う作り。
職人が手間暇をかけて製作したであろうワンオフの特注品だ。
よく見れば鎧は、部分部分が蛇腹状に出来ている。
素人目だけども、蛇腹を伸縮させることで、様々な体型にも対応した甲冑になるんだろう。
それだけでも手の込んだ一品である。
「こいつは運び出すだけでも時間がかかりそうだ」
「ですが、これを報酬とすれば、ギルドの者たちも今以上に励みますよ」
先生も大喜びだ。
「見てください主。この刀、大業物ですよ」
「お目が高い。それは蠱毒の太刀と名付けられた大業物です。職人が刀を打つ時、側にいるウィザードが様々な毒魔法を唱え、刀身に魔法を注ぎ込んでおります。斬られた対象は、斬られた箇所より肉が腐れて崩れ落ち、苦しみながら絶命します」
なにそれ怖い!
「どうぞ」
ナブル将軍が、俺におっかない刀を笑顔で手渡そうとしてきたので、全力で別のところに目を向ける。
「ん?」
なんだあのタンスは? えらく場違いなような気もするが、何かいいアイテムでも入っているのかな?
気になったので足を進めれば、
「いやいや、これには大した物は入っておりませんよ」
大の字で立ちふさがっている時点で、大した物だけが入っているよね。
汗まで流して、なにをそんなに必死になって隠したいのかな。子爵殿?
俺の背後では、先生が魔法の封じられた鉄扉を持ち帰りたいからと、窓から顔を出して、大声で下にいる兵達に手伝ってほしいと言っている。
人が増えると知れば、子爵の冷や汗の量が増えてくる。
怪しいと、俺は半眼で凝視。
流れる汗は、滝のようだ。
「お願いします」
先ほど同様に、一言そう言えば、ゲッコーさんが気付かれることなく子爵の背後に回り込み、羽交い締め。
その間に俺は、タンスの引き出しに手を伸ばす。
下段から開ける空き巣のテクニックで――――。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ」
しつこいな。
六花のマントを俺が羽織っている以上、この宝物庫の物は俺の物。俺の物は俺の物。の主義で、好き勝手やらせてもらう。
おっさんの悲痛な叫びを無視しつつ、下段に入っていた物を確認。
「――――? 巻物?」
が、整理されて収納されていた。
「おお! これはスクロールですね」
ゲームにもあるな。
「たしか、魔法が封じられているとかってやつですよね」
俺の側でタンスの中身が気になっていたのか、ナブル将軍が覗き込んでいる。
質問をすれば、首肯で返してくれた。
「これの使用方法は?」
「簡単です。開いて、描かれてある魔法陣に手を当てれば、それだけで封じられた魔法が使用出来ます」
「凄いですね」
「ですが、とても貴重です。これだけ集めるだけでも相当ですよ」
コレクターなのか、タンスの主と思われる子爵に目を向ければ、空笑いである。
「どんな魔法が封じられているんですかね?」
「印をしているようですよ」
スクロールには火のマークや、水滴マークがある。
これで炎系や水系と判断しているわけだな。
「魔法の使えない者たちには、起死回生の代物。持っていて損はないですね」
「なるほど。てことで、ください」
ナブル将軍の会話内容は、すでに俺の所有物のような発言だが、一応の許可を取る。
「構いませんとも。それは譲りますからもういいでしょう」
子爵のこの焦り方からするに、残りの引き出しにも、さぞいい物が入っているのだろうね~。
悪い笑みを浮かべて、次の引き出しに手を伸ばす。
子爵が血涙を流しそうな勢いで、開けないでと懇願してくるが、引き出しを開ける手は止まらない。
「――――こ、これは!?」
「やあ、ベル」
「どうした? なにやらギルドハウス周辺が賑わっているが、王城から得られた物は良い品だったのか?」
「とってもだよ」
「何とも明るい声だな。良かったではないか」
ああ、最高に良かったよ。
先生は早速、ドワーフたちに、魔法の注がれた鉄扉を溶かして、武具製作を指示し、ワンオフの武具は、一時的にギルドハウスの二階の倉庫にしまい込む。
ギルドハウスの隣に、武具と鍛冶屋を一体化した建物を建築予定で、竣工すれば、武具屋の蔵に収める予定だそうだ。
功績の著しい者には、最高の装備とスクロールを渡すと発すれば、大歓声が沸き起こり、一帯に響き渡る。
報酬内容を耳にして、ギルドメンバーは気合い十分だ。
これで更に皆が励んでくれるし、これを機に、冒険者を目指す! と、希望と野心に満ちた声が、俺の耳朶に届く。
目を向ければ、コクリコくらいの年齢の男の子が、木の棒を自慢の得物かのように空に向けながら発していた。
うむ、一生懸命に励んで、冒険者、よければ俺のギルドに入って活躍する存在になってね。
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる