145 / 1,668
火龍
PHASE-145【アイガー】
しおりを挟む
「大変だ……。コクリコが瘴気に支配されてしまっている……」
「馬鹿な!? 火龍は確かに解放した。浄化も目に見える限り問題ないはず……。まさか、ガスマスクでは防げなかったのか? 自由を奪ってしまった状態で、吸引してしまったのか……」
可能性は高いぞベル。喋るのきつそうみたいだけど。
大丈夫? と、心では思っているから。
玉々が痛くて、まともな呼吸と会話が出来ない俺を許せ。
それにベルに落ち度はないぞ。
ここに来るまでに再三注意はしたんだ。それを覚悟できたコクリコの責任だ。
冷たい考え方だが、事実だ。
股間がズンガズンガと鈍痛に見舞われた状態だと、まともに口も開けない。
なので、ジェスチャーで拘束を指示すれば、それを得意とするゲッコーさんが、即座にコクリコの背後に回る。
「心配ご無用。私は正常ですよ」
へ?
大きく深呼吸をしてから――、
「じゃあ……、なんで俺の子孫繁栄を司りし玉々様を……?」
「私だけを除け者にして! 私の自伝に、大きな損失が発生してしまいましたよ!」
それでお怒りなわけか……。
まったく! マジでふざけんなよ! 俺たちは優しさで実行したんだよ!
「うう……」
言い返したいが、大声を出そうとすれば、口からもどしそうなくらいに、股間からのズンガズンガが、全身を駆け巡る。
火龍との戦闘より辛い……。
「大丈夫か?」
「ベル……」
最近は本当に優しいな。自分だってしんどそうなのに、俺の心配をしてくれるとは……。
「腰をさすってくれい……」
その優しさに甘えさせてくれ……。
「まったく……」
おお! 本当にさすってくれるとは。
美人にさすってもらえれば、治りも早そうだ。
「ふん!」
「ぐえ!?」
「これくらいで、いいんですよ!」
この! 三大北壁は、アイガーの如き断崖絶壁な胸の所有者め!
俺が抵抗できない事をいい事に、踏みやがった!
「やめてやれ、活躍したんだ」
「だから許せないのです。痛がるふりをして、ベルに優しくしてもらいたいだけですよ」
よく分かってるじゃねえか。だがな、ふりってなんだよ!
この原因を作ったのは、お前だろうが!
「この痛み、無い奴にはわからんだろ゛!?」
「下品だ」
だからってベルさん。思いっ切り踏まなくてもいいじゃんよ……。
ベルはいいとして、一緒になってゲシゲシ踏んでくるアイガー! テメーはマジで許さねえからな!
ゲシゲシと続く中で、トサッと音がすれば、四つん這いの俺の背に重みが発生。
けっして不快な重みではない。
「?」
なんだ? と、背中を見るように頭を動かせば――、
「はふんっ!?」
ベルが俺に覆い被さっている。
なに!? なに? この状況!?
「おいベル?」
急な事で、俺の声が上擦ってしまったが、
「ベル!」
ゲッコーさんのただ事じゃない声に、俺は股間の痛みを忘れて起き上がる。
覆い被さったベルが地面に倒れないようにゆっくりと。
「ど、どうしたんですか!?」
コクリコも慌てふためいている。
――地面に寝かせれば、
「不甲斐ない姿を見せたな……」
声に覇気はないが、仰臥の状態でも気高さは消え失せない。
「どうしたんだよ」
「力を使いすぎた……」
火龍の時の青い炎。
クラーケンの時は感情にまかせて使ってしまった事を反省していた。
今回は俺たちを守るために、極限状態での使用だった。
「猛省せねば……」
「猛省はいいから、大丈夫なのか?」
冷静に応対しようとしてるつもりだが、俺の声は震えている。
「情けない声を出すな……。それでも勇者か……」
やめてくれるその言い方。まるで死ぬ前みたいじゃないか……。
「俺が情けないのは元々だから。それよりもベルが大丈夫なのかと言ってるんだ」
「心配ない。少し横になっていれば問題はない」
「本当だな」
「私は大言と虚言を嫌うと以前も言った。嘘は言わない」
「「「ふぅぅぅぅ――」」」
それを耳にして、三人で大きく安堵の息を漏らした。
「……え!? え!? え!?」
安堵したのも束の間。
ベルの姿に、俺は大いに慌てる。
「おい、ベル!」
「うるさい。少し眠る……」
いやいやいや! えぇ!?
「馬鹿な!? 火龍は確かに解放した。浄化も目に見える限り問題ないはず……。まさか、ガスマスクでは防げなかったのか? 自由を奪ってしまった状態で、吸引してしまったのか……」
可能性は高いぞベル。喋るのきつそうみたいだけど。
大丈夫? と、心では思っているから。
玉々が痛くて、まともな呼吸と会話が出来ない俺を許せ。
それにベルに落ち度はないぞ。
ここに来るまでに再三注意はしたんだ。それを覚悟できたコクリコの責任だ。
冷たい考え方だが、事実だ。
股間がズンガズンガと鈍痛に見舞われた状態だと、まともに口も開けない。
なので、ジェスチャーで拘束を指示すれば、それを得意とするゲッコーさんが、即座にコクリコの背後に回る。
「心配ご無用。私は正常ですよ」
へ?
大きく深呼吸をしてから――、
「じゃあ……、なんで俺の子孫繁栄を司りし玉々様を……?」
「私だけを除け者にして! 私の自伝に、大きな損失が発生してしまいましたよ!」
それでお怒りなわけか……。
まったく! マジでふざけんなよ! 俺たちは優しさで実行したんだよ!
「うう……」
言い返したいが、大声を出そうとすれば、口からもどしそうなくらいに、股間からのズンガズンガが、全身を駆け巡る。
火龍との戦闘より辛い……。
「大丈夫か?」
「ベル……」
最近は本当に優しいな。自分だってしんどそうなのに、俺の心配をしてくれるとは……。
「腰をさすってくれい……」
その優しさに甘えさせてくれ……。
「まったく……」
おお! 本当にさすってくれるとは。
美人にさすってもらえれば、治りも早そうだ。
「ふん!」
「ぐえ!?」
「これくらいで、いいんですよ!」
この! 三大北壁は、アイガーの如き断崖絶壁な胸の所有者め!
俺が抵抗できない事をいい事に、踏みやがった!
「やめてやれ、活躍したんだ」
「だから許せないのです。痛がるふりをして、ベルに優しくしてもらいたいだけですよ」
よく分かってるじゃねえか。だがな、ふりってなんだよ!
この原因を作ったのは、お前だろうが!
「この痛み、無い奴にはわからんだろ゛!?」
「下品だ」
だからってベルさん。思いっ切り踏まなくてもいいじゃんよ……。
ベルはいいとして、一緒になってゲシゲシ踏んでくるアイガー! テメーはマジで許さねえからな!
ゲシゲシと続く中で、トサッと音がすれば、四つん這いの俺の背に重みが発生。
けっして不快な重みではない。
「?」
なんだ? と、背中を見るように頭を動かせば――、
「はふんっ!?」
ベルが俺に覆い被さっている。
なに!? なに? この状況!?
「おいベル?」
急な事で、俺の声が上擦ってしまったが、
「ベル!」
ゲッコーさんのただ事じゃない声に、俺は股間の痛みを忘れて起き上がる。
覆い被さったベルが地面に倒れないようにゆっくりと。
「ど、どうしたんですか!?」
コクリコも慌てふためいている。
――地面に寝かせれば、
「不甲斐ない姿を見せたな……」
声に覇気はないが、仰臥の状態でも気高さは消え失せない。
「どうしたんだよ」
「力を使いすぎた……」
火龍の時の青い炎。
クラーケンの時は感情にまかせて使ってしまった事を反省していた。
今回は俺たちを守るために、極限状態での使用だった。
「猛省せねば……」
「猛省はいいから、大丈夫なのか?」
冷静に応対しようとしてるつもりだが、俺の声は震えている。
「情けない声を出すな……。それでも勇者か……」
やめてくれるその言い方。まるで死ぬ前みたいじゃないか……。
「俺が情けないのは元々だから。それよりもベルが大丈夫なのかと言ってるんだ」
「心配ない。少し横になっていれば問題はない」
「本当だな」
「私は大言と虚言を嫌うと以前も言った。嘘は言わない」
「「「ふぅぅぅぅ――」」」
それを耳にして、三人で大きく安堵の息を漏らした。
「……え!? え!? え!?」
安堵したのも束の間。
ベルの姿に、俺は大いに慌てる。
「おい、ベル!」
「うるさい。少し眠る……」
いやいやいや! えぇ!?
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる